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「世論の形成」はオールドメディアの役割「ではない」

2024年という年は、新聞、テレビといったオールドメディアを、SNSなどネットメディアが、「社会的影響力」という観点から追い抜いたという意味において、非常に画期的な年だったのではないかと思います。こうしたなかで、本稿で紹介しておきたい論点があるとすれば、それは「世論を形成するのは誰か」、です。これについて考えさせられる記事がありました。

SNSがオールドメディアを上回る影響力を持ち始めた

2024年という年は、新聞、テレビといったオールドメディアが、社会的影響力でSNSなどネットと逆転した年として記憶に残るのではないかと思います。

少なくない日本国民が、「日本では受けられる行政サービスと比べ、税や社会保険料が高すぎる」、「官僚、メディアなど、国民から選挙で選ばれたわけでもない者たちが力を持ち過ぎている」と気付いたことが大きいですが、それだけではありません。

「税の取られ過ぎ」に気付いた国民がSNSを手にした』でも述べたとおり、こうした不満を訴える手段として、国民はSNSなどネット上のプラットフォームを手に入れてしまったことも大きいでしょう。

2024年が社会のターニング・ポイントといえる理由
  • ①国民は税や社会保険を取られ過ぎていると気付いてしまった
  • ②国民は官僚とメディアの腐敗と癒着構造に気付いてしまった
  • ③国民は不満を訴える手段としてSNSを手に入れてしまった
  • ④SNSの社会影響力がオールドメディアを上回ってしまった

そして、おそらくこの流れは、不可逆的なものです。

オールドメディアからの「SNS規制論」には要注意

ただし、SNSの社会的影響力が強まると、これまでは「国民世論を支配する」という利権を持っていたオールドメディア、そのオールドメディアを通じて世論を支配していたフシがある官僚機構などにとっては、こうした流れは受け入れられないものではないでしょうか?

だからこそ、一部のメディア、官庁などを中心に、何らかの「ネット規制」論が出て来るのではないかと予想されますし、実際、以前の『メディアはそのうち「ネット規制」を言い出すのでは?』でも取り上げたとおり、テレビ関係者などから「ネット規制」、「SNS規制」などの発言が出始めていたりもします。

著者自身が5月、パロディのつもりで適当に書いた、「国は国民の代表者であるジャーナリストとマスコミ(とくに新聞とテレビ)を守るために、ネット規制をしたうえで、新聞社やテレビ局に対し、補助金で支援しろ」といったインチキ論説、どうもただの「インチキ論説」とは言い切れなくなりつつあるのかもしれません。テレビ局関係者から、SNS規制という本心をのぞかせるかのような発言がチラホラと出ているからです。「ネット規制をしろ、新聞やテレビに補助金を出せ」当ウェブサイトに今年5月頃に掲載した、『【インチキ論説】ネ...
メディアはそのうち「ネット規制」を言い出すのでは? - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、これもやはりおかしな話です。

本来であれば、メディアの役割はあくまでも「情報の伝達」であり、メディア自身の意見が国民世論の形成に影響を与えるというのは本末転倒だからです。

もちろん、SNSの側も、正しい情報が常に流れているわけではなく、誰でも気軽に情報発信できるという特徴もあってか、むしろいい加減な情報は多数流れています。

著者自身もX(旧ツイッター)にアカウント(@shinjukuacc)を保有しているのですが、同アカウントはフォロワー数が1万人を超えたあたりから、やはり妙なことを主張する人たちから、頻繁にウザ絡みされるようになりました。

なかには「俺が主張する内容が正しいんだ!」と言わんばかりに、妙な理論を何度も繰り返してくる人もいます。

(※ただ、非常に残念なことに、フォロワーが1万人を超えたあたりからメッセージが急増し、個別にエンゲージメントを確認することが極めて困難となったため、結果的にウザ絡みされていることにすら気付かなかったりもするのですが…。)

SNSでも情報の選別は必要

さらには、タイムラインに表示される情報も、自分自身と同じ意見のものとは限りません。

著者自身はいわゆる「国の借金」「財政破綻」論を巡って、それが理論的にも統計的にも間違っているということを、この8年半、滔々と主張し続けて来たつもりですが、大変残念ながら、いまだに「日本は国の借金がたくさんある」、「財政再建が必要だ」、などとする趣旨の認識に基づくポストも出てきます。

こうしたポストを眺めていると、「流れて来る情報のすべてが信頼できるとは限らない」、という、ごく当たり前の注意点に思い当たります。SNS上の情報なんて無条件に信頼できるものではないのです。

ただし、SNSなどネットが素晴らしいのは、なにか違和感を覚えたとしても、自分で積極的に、「これはおかしいじゃないか」、と反論できることです。

これに加えて実際、おかしなことを主張するアカウントとSNS上で議論になったとしても、たいていの場合、必ず誰かが見守ってくれています。おかしな主張をするユーザー(やその支持者)の意見を変えさせることは難しいですが、それ以上の数の人々がこちらの意見を支持してくれたりもします。

こうした「ネット空間で弁証しつつ味方を増やしていく」というのも、ウェブ言論空間における議論の醍醐味です。

そういえば、いつぞやの「馬鹿に選挙権を与えるな」などと主張していたユーザーも、パブリック空間での議論を極端に嫌っていたようですが、ネットという「誰もが気軽に情報発信できる空間」での議論を嫌うというのも、なかなかに意味がわかりません。

そして、この手の「議論に極端に弱い人たち」の素性を探っていくと、じつは官僚やメディア関係者だった、といった事例も多いのではないか、というのが著者自身の仮説のひとつでもあるのです。

世論を形成するのはだれか

さて、こうした文脈で、もうひとつ紹介しておきたいのが、こんな記事です。

「SNS無視できぬ情報源に」「物語性必要、リスクも」「第三者の拡散、選挙戦左右」 ネット選挙解禁11年、民意どう形成、課題

―――2024/12/16 09:32付 Yahoo!ニュースより【共同通信配信】

記事のタイトルからも何となく想像がつくかもしれませんが、SNSを使った選挙活動が解禁されて約11年を迎えるなかで、先月の兵庫県知事選の分析や今後のネット選挙の課題などを「専門家」に尋ねる、という趣向の記事です。

ただ、この記事を本稿で紹介する理由は、「記事自体に学びがあるから」、といったものではありません。

どちらかといえば、「こんな記事をメディアが配信するようになった」という事実について、考えておきたいからです。

記事では共同通信がインタビューした「専門家」は3人登場しますが、そのわりに、記事タイトルにある「民意どう形成」に該当する部分は、この3人の「専門家」の発言からは確認できません。

ただ、「民意どう形成」、の部分には、(あくまでも個人的な見解ですが)メディアの側の焦りが見えてきます。

そもそも論として、民意は「だれか」が形成するものではありません。

自然発生的に形成「される」ものです。

メディアがちゃんと情報を正確に伝達していれば、そして国民に一定水準以上の判断力があれば、私たちの国・日本の行方は私たち日本国民自身が適切に判断し、決定します。

もし国民の側にそれを言語化する能力がなかったとしても、それぞれの政治家が掲げている公約を見て、どの公約が自分たちの社会にとって必要なものであるかを判断ことは可能です。逆に政治家の側としても、自分が有権者に選ばれるためには、有権者にきちんと説明できる能力が必要です。

責任ある政治家だけでなく責任ある有権者が必要

その意味では、この社会に必要なのは、責任ある投票をする有権者と、有権者に対して責任ある説明ができる政治家であり、SNSは両者をつなぐ手段に過ぎないのです。

結局のところ、この社会をより良くしていくためには、私たち有権者がちゃんと判断して投票行動をすることと、政治家が有権者に選んでもらうために、新進行動することが必要なのだといえるでしょう。

そうした社会を実現するために必要なことは、単一ではありません。

ただ、少しだけヒントがあるとすれば、私たち国民の側も、多様な情報を重視するだけでなく、いい加減な情報を垂れ流しているメディアを経済競争という手段により淘汰(とうた)していく努力が必要だ、ということではないでしょうか。

本稿末尾でも、いつもの3つのお願いを置いておきます。

「いつもの3つのお願い」
  • ①納得できない報道をする新聞は、解約しましょう。
  • ②納得できない報道をするテレビは、消しましょう。
  • ③選挙では必ず投票しましょう。

ご協力できる方には是非とも実践していただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    オールドメディア:「我々から「世論を形成しているんだ」というプライドを奪うな。我々から「世論を形成する」という仕事を奪うな」
    まさか。

  • 『テレビに騙された』兵庫県知事選挙が突きつけた刃 私たちは変われるのか?https://news.yahoo.co.jp/articles/f67088c45bfc2f8b57aefdf49cf289d48beb7b08

    こんな記事がありましたので紹介です♪

    >その上で、もう1つのアプローチはSNSやネットとの対話だろう。
    (中略)
    >しかし、街頭で起きていること、ネットやSNS上での話題や言説に敏感になり、

    ・・・散々ネットから動画を拾って番組を作っておきながら、何を言ってるのかと思うのです♪

    で、最後にこんなことまで述べてるけど、根拠はわからないけどとにかくすごい自信なのです♪
    >一方で我々テレビメディアは正確性、分析力に強みとこだわりを持っている。

    悪人と決めつけてとにかく叩く。叩くために情報を選別して、出演者に叩かせる。
    正直なところ、こんな報道ばかり目についたように思うのです♪

    ご自慢の正確性や分析力を発揮するよりも、幅広く事実を集めて色をつけずに視聴者に提供してくれたら良いと思うのです♪

    • 新聞購読者数、TV視聴率の減少を受ければ影響力が落ちるのも当然かと。オールドメディアで訴えても手ごたえが得られないからネット上で意見を述べる。変なの。

  • 仏メディアが「日本の安倍元総理の夫人が、米トランプ次期大統領と私邸で面会」と報道しました。
    >https://www.afpbb.com/articles/-/3554275?cx_part=top_topstory&cx_position=3
    フランスでは、(日本のオールドメディアは気が付いていないが)この面会に大きな政治的意味を見出しているのでしょうか。

    • “日本のオールドメディア”はソノ「事象」ごと『無かった』コトにしたい…ンぢゃないスか?
      知らんけど

  • 私の周りに『夏の参議院選挙が楽しみ』と言う人がいます。

    今回の衆議院選挙の埼玉14区の公明党党首落選や、国民民主党の躍進、兵庫県知事選などをリアルタイムで見て「選挙で世の中変わる!」って思ったらしいです。
    と同時に、テレビメディアの嘘にも気付いて、毒突いてました(笑)

    少なくとも選挙に関心を持つことはとてもいい事だと思います。
    SNS規制に注意しつつ、この傾向が続いていけばいいなと思います。

  • 本文引用記事中の4人の「専門家」とかが、「SNSの活用が重要性を増す中、・・・中略・・・候補者の認知度向上には寄与する一方で、政策や理念といった本来の訴求点が希薄化する懸念がある」
    と、SNSが許可される以前の選挙戦がさも政策について論戦する選挙運動だったような書きっぷりですが、そんなことはあまり記憶にございません。一日中、候補者の名前を大音量でがなり立てる選挙カーが走り回って、公約などあまり聞いたことがないような・・・

    小選挙区での必勝アイテムの「ジバン、カバン、カンバン」を今後SNSがどう切り崩せるのか楽しみにウォッチしてゆきたいと思っております。
    カンバンはメディアの助けを借りなくとも、SNSで人々に広く訴えられるし、カバンはSNSを使ってボランティアを集めて何とか遣り繰りしてしのげそうではあります。しかし、難問は人と人の直接の繋がりの集合であるジバンですね。これ、どうすりゃいいんだろ。

    • 代々のジバンがないのならSNSで発信と議論を繰り返してファンという形でネットで形成する方法があると思います。人とは一時的な繋がりであった方がよいこともあるでしょう。しがらみや情に絆されて歪むことが減るかもしれません。ジバンの世襲は出来ませんが。

  • ま、ぼちぼちそろそろ“マスゴミ”と“官僚機構”が『身の程を知る』トキが近くまで来とるンちゃいますか??
    知らんけど

  • 大東亜戦争引き起こした挙げ句責任は一切とらず綺麗事で済ませ特例で土地成金になった不動産屋時代の思い出にすがってるんですかね?

    • あっち系の人だな。文章が繋がって無くて意味不明。しかも今回の話題であるオールドメディアと何の関係も無い。こう言う事するから社民党とか革マル派は国民の支持を失ったんだよ。いつになったら学ぶんだい?会話が成立しないと相互理解は無いんだよ。

      • 新聞社やテレビ局のシノギご存知無い?
        ばきばきに直轄してますよ?

        大東亜戦争に世論誘導したのは新聞社ですから。
        ばかくさ…

      • がみ氏が「大東亜戦争引き起こした挙句責任は一切とらず綺麗事で済ませ」と揶揄し批判しているのは朝日新聞に代表される主要新聞各社だと思いますが。

      • 当ブログの過去記事
        https://shinjukuacc.com/20240529-01/
        >同社の新聞事業は赤字スレスレであり、それを不動産事業の黒字や子会社・関連会社等からの受取配当金(または持分法PL)などで穴埋めしているという構図が見えてきます。

        私は「不動産屋」といえば大マスコミを連想します。
        過去に政府から土地取得で便宜を図られた事実もあるようです。

  • 「財政再建が必要だ」について、ふと、思い出したのですが、戦後すぐの昭和24年にGHQから緊縮財政を命令されたそうですね。とんでもないデフレが発生して失業者があまたの如く生じたとも。 恐ろしや、恐ろしや。

    自民党小野寺氏の「学生の本分は勉学である」との趣旨を持つ発言ですが、至極当たり前のことだと考えます。

    ですが、

    勉学を全うするためには。全うするだけのお金も必要でありますから、子を持つ親世代、母子家庭、父子家庭、両親が存在する家庭、すべてに手取りを増やす施策が必要だと考えます。
    国民民主党、維新が主張する教育無償化も必要でしょう。

  • 最近のメディアの報道でとにかく気になるのは
    1.速報性がない
    韓国大統領の件でも分かるように速報性がないということ
    2.正確性がない
    男女共同参画◯兆円とかこども家庭庁◯兆円削ればいいというのはデマではあるのですが、この反論は結構簡単にできるのにどこも報じられない
    3.専門家を使った世論誘導
    兵庫の一件見たら、ヤメ検がまるで有罪かのように報じているが、その理論はめちゃくちゃでネット民はわりと冷静に判断。でもワイドショーでしつこくやるため、冤罪の人でも有罪のように仕向けることができる

    セクシー田中や募金横領、大谷取材の一件など、マスコミ界隈が法律をよく知らないで報道しているのではと疑いたくなります

    • 資金、機材、設備、特権、人員などの情報収集能力はあるはずなのに速報性がないのが引っ掛かりますね。情報に色をつける過程で時間を浪費してるのでしょうか?

  • 歴史は、繰り返すというものなのでしょうか。
    廃刀令を不満に思う武士のような。

    • 廃刀令を恨んだひとたち
      うまい言い方をしたものです。
      島津藩お抱えの刀砥師の家系に生まれた方と知り合いました。お侍ではないが、刀砥師ですので職業柄ご本人が剣術に優れていたのは当然です。廃刀令が出てからも刀研ぎの注文はしばらく残っていた。祖父一家はそれで食っていた。あるときは砥師の玄関口で刺客が待っていたとも爺から聞いている。そんな昔話でした。
      西南の役のように廃刀令に納得できなかったひとたち同士の刺し合いが近く起きる予感がします。