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与党が年収の壁に後ろ向きなら国民民主が怒るのは当然

9日から審議入りする令和6年度補正予算を巡って、国民民主党が賛成しない可能性が出て来たようです。そのスピード感のなさもさることながら、やはり「減収予測」が非常に雑な計算式に基づいたものだったという事実が国民民主党側の怒りを買っているようだからです。そして、同党が予算に賛成しなかったとしても、それは同党としての公約に照らし当然のことであり、少なくない国民がそれを支持するのではないかと思います。

議論の出発点は客観的事実

当ウェブサイトに掲載する記事は、基本的には何らかの一次情報(多くは官公庁や国際機関の統計データ、政府・政党などの公式なニューズ・リリース)、あるいはマスコミ各社などが配信した『Yahoo!ニュース』記事などをもとに、何らかの考察を経て一定の結論ないし仮説を提示する、というパターンが多いです。

当ウェブサイトは「独立系ウェブ評論サイト」であり、いわゆるニューズ・サイトではありませんし、そもそも著者自身は単なる金融評論家に過ぎず、ジャーナリストではありませんし、職務経歴上、新聞社やテレビ局、雑誌社やラジオ局、通信社といった、いわゆる「マスコミ」に勤めたことすらありません。

もちろん、著者自身も都内在住のビジネスマンですから、何らかの人脈からちょっとした情報を掴んだり、近所で何らかのイベントが行われているときにはちょっとした取材に出掛けたりすることもありますが、それはあくまでも「本業として」行っている活動ではありません。

逆にいえば、当ウェブサイトの場合、議論の出発点が「客観的に誰もが確認できる事実」であることが多く、これは議論の透明性を高めることになる反面、著者自身がいい加減なことを書けば、それにより多くの人からの批判を喰らう、という事態にもなりかねないことを意味しています。

炎上した経験はほとんどない

ただ、非常に不思議なことに、当ウェブサイトを2016年7月からこの方、約8年半運用してきて、炎上しかけたのはコロナ禍初期に「コロナ対策は科学的根拠をもって行うべきだ」と主張したときに、いわゆる「反アベ派」(?)の人たちからの攻撃に晒されたときくらいなものです。

(※ちなみにコロナ対策のみならず、「科学的に安全性が確認されている原発は積極的に再稼働させる」、「資金循環構造に照らして適切に把握した限度額の範囲で国債を発行して積極財政を行う」など、国家のすべての政策は科学的に決定されるべきだというのが著者自身の持論でもあります。)

当ウェブサイトではまた、散発的に、ロシアのウクライナ侵攻に際しては「ロシア・フレンズ」と思しき者からの意味不明な書き込みが寄せられたり、日韓関係を巡り日本が韓国に譲歩することを批判した際には官庁系のコメント主から「政府批判をするな」という趣旨のコメントが寄せられたりすることもありました。

最近だと、財務省を批判すると、支離滅裂な論調で財務省を擁護するコメントが寄せられることもあります。

彼らが政府の職員なのかどうかはわかりません。

政府・官僚などの立場に立って、政府の政策を擁護する立場から書き込みをしているのか、それとも単に自身の持論に基づいて書き込みをしているだけなのかについては、こんな泡沫サイトの運営者にとっては判断が付き辛い点でもあります。

異論を大切にしたい

ただ、著者自身は当ウェブサイトの主張に関し、読者の皆さまに「全面的に正しいものとして盲信してほしい」とはみじんも思っていません。むしろ、当ウェブサイトの主張に反する内容を、それなりの論拠を持って書き込んでくれた方が嬉しいです。

異なる意見(異論)を通じ、当ウェブサイトにおける議論の穴を発見することができるからです。

こうした観点から、簡単にコメントしておきたいのがXを通じた情報発信です。

著者自身は最近、X(旧ツイッター)での情報発信にも力を入れており、おかげさまで一昨日、Xのフォロワーが15,000人を突破しました。

フォロワー数が5,000人を突破したのが、たしか今年6月頃だったと記憶しているのですが、9月頃から「認証マーク」を取得し、本腰を入れて情報発信をするようにしたところ、3ヵ月ほどで一気に1万人、フォロワーが増えた格好です。

ただ、Xの空間は当ウェブサイトと比べ、ユーザーはそれこそ千差万別です。

当ウェブサイトを訪れて下さるのは一定水準以上の方であり、読者コメントも世間一般のニューズサイトと比べてかなりレベルが高いのですが、それと同じ感覚でX上で情報発信していると、やはりちょっと信じられないレベルの人に出会うこともあります。

  • 現実を正確に直視できない
  • 自分で事実関係を調べない
  • 知識量が絶対的に足りない
  • 他人様の意見のヨコナガシ
  • 反論できないと論点逸らす
  • 都合が悪くなると罵詈雑言
  • 最終的にブロックして逃亡

…。

こういう人たち、ちょっと実社会でも通用するのか疑問でもありますが、大丈夫なのでしょうか?

反論は本人に対してではなく「周囲に対して」行っている

ただし、Xの良いところは、やはりオープンな場でブレずに一貫した議論をしていると、一定数、ツリーを遡って各自の発言をちゃんと確認してくれるユーザーがいることです。

だから、極端な話、べつに相手を「論破」する必要などありません。一連の流れ、見る人はちゃんと見てくれますし、どちらの言い分がより説得力を持っているか、より合理的であるかについては、Xのユーザーが各自判断してくれるのです。

もちろん、なかにはあまりにもレベルが低い煽りをしてくるユーザーもいますが(昨日だけで3人もいました)、こうしたユーザーに対しても、煽りに乗らず、相手の主張の弱点を粘り強く突き続けたら、少なくない人たちが、「このユーザーの主張、おかしくね?」と気付いてくれるのです。

また、ここ数日に関していえば、国民民主党が主張する「年収の壁」上限の引き上げに対して反対していると思しきユーザーの代表的な思考パターンが判明したのも大きいです。

  • 「年収の壁」問題は岸田政権時代からすでに取り組みが始まっており、ある程度は解消されている。
  • 「年収の壁」問題をクリアするためには複雑な制度をひとつずつ議論しなければならず、時間がかかる。
  • 基礎控除を拡大すれば、それに伴い社会保険料の計算にも影響が生じるため、システム対応が必要。
  • そもそも国民民主党側は減税をするために必要な財源をまったく示していない。
  • 人材教育や源泉徴収票のフォーマット変更なども必要になるため2025年からの適用は不可能。

ほかにも細かい項目・派生的な項目などはいくつかあるのですが(たとえば「剰余金は自由に使えるものではない」、など)、それらの多くが事実誤認、事実歪曲などです(これらについて逐一指摘しても、たいていの場合は「アーアーキコエナイ」、といった反応が返ってきます)。

年収の壁問題はいろいろある

そもそも「年収の壁」は103万円、106万円、130万円などいくつかあり、岸田政権が社会保険料の徴収を猶予する仕組みを導入したりしているのですが、それらは国民民主党が現在主張している「所得税法上の壁」とはまったく別問題です。

また、「年収の壁」をすべて解決するためにはさまざまな法制度を動かす必要がありますが、少なくとも基礎控除を引き上げるくらいならば、所得税法第86条第1項と地方税法第34条第2項、そして甲欄表などを修正すれば良く、これらに伴う民間企業などのシステム改修のコストも微々たるものです。

あと、どうでも良い話ですが、基礎控除の金額を変えても、社会保険料の徴収額は全く影響を受けません(その理由については本稿では割愛します)し、基礎控除の引き上げを理由として源泉徴収票のフォーマットを変更する必要もありません(人材教育云々に至っては意味不明です)。

そして当ウェブサイトでは以前から何度も何度も指摘している通り、そもそも「財源」に関しては問題となりません。一般会計で財源が余りまくっている状況があるからです(※その具体的な金額については『今年度すでに税収上振れも…財務省はなぜ減税を拒む?』等参照)。

さらには、政府が出して来ている「国民民主党の減税案だと7~8兆円の減収になる」とする予測については、昨日の『根拠薄弱…ペラペラの「7~8兆円の税収減」説明資料』でまとめたとおり、基本的には誤った予測であると考えておいて良いでしょう。

国民民主党・榛葉幹事長「有権者バカにしている」と怒り

これに関連し、本稿ではひとつ、こんな話題を取り上げておきます。

「粗い試算だ」国民民主の榛葉氏、与党提示の税減収根拠に反発 「103万円の壁」協議

―――2024/12/6 19:24付 産経ニュースより

産経によると国民民主党の榛葉賀津也幹事長は6日の記者会見で、「こんな粗い試算で地方税が足りなくなると騒いでいたのか」、「納税者や有権者をあまりにもバカにしている」と声を荒げたそうです。

その姿勢で良いと思います。

国民民主党としては、「手取りを増やす」を合言葉に選挙を戦い、勢力を4倍増させたわけですから、国民民主党の立場としては、与党側が同党の政策を飲まないなら、9日に審議入りが予定されている令和6年度補正予算案に対しても賛成しなければ良いのではないでしょうか。

なにより、政府側の「税収減」の試算がろくに根拠もないということがバレてしまったわけですから、この争いは「与党対国民民主党」ではなく、どちらかといえば「財務省対減税を求める国民」の代理戦争の様相を呈し始めているのです。

もちろん、Xでもごく一部のユーザーは所得税の減税を求めていないようですので(働いていない人たちでしょうか?)、所得減税が「すべての国民の声」だと申し上げるつもりはありません。

しかし、基礎控除の引き上げは多くの労働者に恩恵をもたらすものでもありますので、もし国民民主党側が補正予算について、賛成に回らなければ、最悪の場合、補正予算が通らないという珍事も生じ得ます。

そのときに国民世論は国民民主党を支持するでしょうか?それとも許さないでしょうか?

どちらであったとしても、国民民主党も国政政党として選挙を戦った以上、自党の公約を貫くべきでしょうし、国民民主党がそれに失敗したとしても、いったん国民的関心事になった「年収の壁」問題を鎮静化させることなどできません。

毎年のように巨額の剰余金が計上されているという事実が白日の下に晒されているなかで、毎年補正予算を組んでおカネを消費し尽くすのではなく、「そもそも税金を徴収しない」という考え方の大切さに、少なくない国民が気付いてしまったからです。

いずれにせよ、国民民主党が今後の政権運営に対する非協力を持ち出して自公政権を揺さぶったとしても、国民としてはそれに納得するのではないか、などと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (21)

  • 榛葉会見では、共同通信がイヂられてましたね。
    「正確な報道がモットーの、共同通信さんが、まさかこんな雑な試算を鵜呑みにして報道なんてしないよね、頼むよ~」

    で、その共同通信の別の報道。

    >石破茂首相は6日の参院予算委員会で、自民党の政治資金規正法再改正案で、政治資金の使途公表に配慮が必要な「要配慮支出」を設けたことについて「抜け道として、いいかげんなことをやろうとは全く考えていない」と述べた。
    動画再生:0:47 配信期間:12/6(金)

    石破はダメですなあ。
    「考えてるか考えてないか」
    が問われているのではなくて、
    「いい加減かどうか」
    が問われているのにさあ。

    考えてよくできてる。
    考えていい加減。
    考えてなくてよくできてる。
    考えてなくていい加減。

    XY軸マトリクスで全部成立する言い方では反論になってない。
    そもそもお気持ちなんかどーでもイイ。

    真心をこめて増税すれば許されるのか?
    いい加減な気持ちでなければ万引きしてよいのか。

    なんか腹立ちますなあ。

    • 石破茂議員は、文句と批判だけの(与党内)野党議員だった、ということでしょうか。どうやら、(与党内)野党議員時代が長すぎたようです。
      蛇足ですが、マスゴミは、ネットで批判されている石破首相を守らなければならない、と思っているのではないでしょうか。(逆にネット以上に批判せざるを得ないも、ありますが)

    • >真心をこめて増税すれば許される
      ザイム真理教の人達は本気で思ってそうで怖い。
      「未来の子どもたちにツケを残さないために増税します!」

  • >国民民主党の立場としては、与党側が同党の政策を飲まないなら、9日に審議入りが予定されている令和6年度補正予算案に対しても賛成しなければ良いのではないでしょうか。

    そのとおりと言いますか、国民民主党は、以前、「トリガー条項」凍結解除に関して、予算案に賛成したのに、実質的に自民党に騙された過去があるので、今回もヘタに甘い対応を見せてコケたら、「同じ手を2度も食う国民民主党って馬鹿じゃね?」ってことになって、それこそ2度と国民から当てにされなくなると思います。

    なので、与党側が国民民主党の政策を飲む気がないのなら、令和6年度補正予算案については、「賛成しなければ良い」というよりは、「賛成しちゃダメだ」と思いますね。

    むしろ、国民民主党は、予算案反対という切り札を、与党側の手練手管によって封じられることなく、切るタイミングで確実に切れる体制を、確実に維持し続けることが重要だと思います。

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    自民党:「もし年収の壁を引き上げたいのなら、国民民主党が財務省を説得してくれ」
    蛇足ですが、次は、財務省主導の減税反対政党の連立政権でしょうか。

    • 国民「そこまで考え方が他人事なら自民党より、少なくとも減税に向けて行動している党に投票しよーっと」
      財務省「減税勢力がどんどん増えてきてるぞ、マスコミは!増税政党は!何やってんの!!」

  • 年収の壁を解決して景気が良くなりかえって税収が増えるようなことになったら財務省は困るだろうね。なんたって30年ほっとらかしてきたんだから。
    「デフレの犯人はお前だったか」と言われるのを恐れてるんじゃないかな。

    • ほっとらかしてません!政治家とタッグ組んで社会保険料、税金爆上げ、一時金バラマキで集票、簡単な仕事して来ましたキリッ!

  • 財務省発の稚拙なレクチャーがオープンになることはよいこと。
    国民民主党は、税収根拠のインチキぶりを具体的に明らかにすることを期待したい。
    小林鷹之議員ら「税調インナー」はこの批判に耐えられるのか。
    https://www.fnn.jp/articles/-/792532

  • >「年収の壁」問題は岸田政権時代からすでに取り組みが始まっており、ある程度は解消されている。
    これ、何言ってんだかわからないですね、岸田政権の成績がここにありました。
    https://www.dlri.co.jp/report/macro/384858.html

    時給を1500円に上げるなんて言っていても、閾値を低く維持したままですから意味がない。
    それ以前の問題として成長がない。
    ばら撒きに頼るだけの思考しか持たないし、持てない。しかも瞬間消滅するばら撒き。
    しかし、税収の枠はどんどん広がる? あっちで徴税、こっちで徴税、ここで徴税。
    現在の自民党政権では経済成長が望めないのは確実だと考えています。
    というよりは、最早日本の経済成長はしないと、考えているフシすらあります。
    悪循環を維持するような政党、もしくは政治家は「必要ない」ですね。

    それから、システム云々が散見されますが、非常に出来の悪いシステムならば時間がかかって
    当たり前かもしれません。それよりも、出来の悪いシステムのバグのほうが気になります。
    人材育成? 論外ですね。

  •  立憲民主は反対が標準でしかなく、支援者からは当然視され(る故にもはや反対するしかない)非支持者からは呆れられるため評価を得られず、無駄に第2党が故にキャスティングボートたり得ず、"野党の反対"というものの価値をとことん低下させてきました。
     現在の国民民主のように、妥当性の高い提言で、世論に強く訴えることに成功し、ついでに抵抗勢力をパブリックエナミーにすることに成功した(勝手になったというか、ただの事実というか……)上での"反対"は、かなりの意味、威力を持つと思われます。

     石破政権は、倒されることによって意味が生まれるかもしれませんね……

  • 自民党税調のネタを、昨日高橋洋一氏が自信のyou tubeチャンネルで披露されてました。

    それによると、財務省から参加している主要メンバーが「内閣府の短期経済予測モデル」なる資料を出してきたら要注意なのだ、とか。

    詳しくは下記のチャンネルからどうぞ。

    https://www.youtube.com/watch?v=TAy_8SkBqiI

  • 政治に清廉さは必要ですが、企業献金の廃止後に待ち受けるのは、政党交付金或いは歳費の増額と、その財源確保の増税だと邪推しています。
    立民さんは、そこまで考えているのでしょうか。

    話は変わりますが、先日、とある立民議員のパンフレットを拝見いたしました。
    年収の壁を『崖』であるとして、事実上の減税拒否を掲げていました、給付で対応するとも。
    毎年給付するのでしょうか?

  • しかし、真面目に減税を唱えている政党が国民以外はなあ・・・。自民上げ潮派は岸破に抑え込まれてるし、れいわは何というか。

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