国民生活よりも原発再稼働阻止の方が大事だ―――。どうも、オールドメディアにはそんな傾向があるように思えてなりません。ジャーナリストの林智裕氏はこれについて、メディアと民意の「乖離」の存在を指摘しますが、それだけではありません。オールドメディア自身がむしろ積極的に、国民生活を改善する動きを妨害しているフシがあるのです。
目次
林智裕氏の女川原発報道に関する優れたレポート
先日の『一部メディアのSNS規制論は焦りの裏返しではないか』を含め、当ウェブサイトではしばしば、新聞、テレビなどのマスコミ(オールドメディア)が流してくる情報が、科学的に正確なものではなかったり、現実を無視したりしていて、それによって国民生活に悪影響が及んでいる可能性に言及して来たつもりです。
昨今、国民のマスコミ離れが指摘されていますが、これも著者自身に言わせれば、オールドメディアの自業自得のようなものでしょう。オールドメディアが垂れ流してきた情報が、じつは私たち国民の民意とは大きくかけ離れたものだった可能性が濃厚だからです。
これに関連し、少し古い話題ですが、ウェブ評論サイト『ウェッジ・オンライン』に11月23日付で配信されたこんなレポートが、なかなかに秀逸で興味深いので、紹介してみたいと思います。
民意と乖離するメディアの「正しさ」―女川原発再稼働報道を考える
―――2024年11月23日付 Wedge ONLINEより
民意は2年前時点で原発稼働に賛成:しかし新聞は…!?
記事を執筆したのは福島県出身・在住のジャーナリスト・ライターの林智裕氏ですが、話の東北電力・女川原発の再稼働とそれを巡るいくつかの新聞社説などを手掛かりに、はたして新聞が民意を反映しているのか、という視点を織り交ぜて執筆された力作です。
なかでも説得力があるのが、原発再稼働に関する読売新聞の一昨年前、2022年8月24日付の世論調査(全国の有権者3,000人を対象とした郵送方式、回答率69%)です。これによると原発再稼働に「賛成」が58%、「反対」が39%と、民意の多数は原発再稼働に賛成していたのです。
ところが、当時の岸田文雄首相が同年8月下旬の会議で次世代型原発の開発・建設や原発の運転期間延長の検討加速を指示したことを巡って、新聞各紙の論調は「反対が圧倒的な多数派」だった、ということです。
林氏が作成した具体的なリストは圧巻で(本稿では引用しませんので、是非、原文でご確認ください)、これをカウントしてみると、反対意見は朝日新聞、毎日新聞、しんぶん赤旗、東京新聞など合計16紙、これに対し賛成意見は産経新聞、日経新聞、日刊工業新聞の3紙だけです。
(※もちろん、これら以外にも賛否に関する意見が出ていた可能性はありますが、いずれにせよ、主要紙がこぞって原発再稼働に反対しているという事実は揺るぎません。)
リスクはトレードオフする
ちなみに原発再稼働などを巡る林氏の見解は、極めてクリアで、それは「リスクはトレードオフするもの」だ、というものです。つまり、原発には事故のリスクはつきものですが、それと同時に「原発だけがリスクや社会問題ではない」のです。
「特に原発の代替として再生可能エネルギーを急進的に推進した福島県では、太陽光パネルの乱立と杜撰な管理、今後の処分が深刻な問題として影を落とす」。
「筆者が最近福島市内で話を聞いた際に嘆かれていたのは女川原発の再稼働では全くなく、福島市のシンボルとも言える吾妻山すぐそばのメガソーラー開発に伴う極度の景観悪化と災害リスクであった」。
…。
このあたりは、福島県と深くかかわる林氏だからこその視点でしょう。
本当に参考になりますし、こうした論考を世に公表してくれる林氏のようなジャーナリストの存在は貴重というほかありません。
むしろメディアが民意を歪め、操作して来た
ただ、冷静に考えておくと、なぜ最近になって、メディア報道と民意との間の「深刻なズレ」が指摘されるようになったのか、という点については興味深いところでもあります。
じつは、これに関して著者自身は、ちょっとした「持論」を持っています。
それは、「もともと民意とメディア報道は無関係」、「メディアがむしろ民意を歪め、操作してきた」、というものです。
「民意」というのも難しい概念ですが、日本は自由・民主主義国家ですので、究極的には「選挙結果」こそが民意である、という言い方ができます。
(※なお、こんなことをいうと、ごく一部からは「投票率が低いじゃないか」、「衆院の小選挙区では死票がたくさん出るじゃないか」、といった批判も来ますし、「馬鹿に選挙権を与えるのは反対」とか反社会的な暴論を吐く者もいます。これらについてはそれぞれちゃんとした回答があるのですが、長くなるので本稿では割愛します。)
ただ、平成時代末期ごろまでは、新聞、テレビの情報支配力が強すぎて、新聞やテレビが流している情報を「自分の意見」だと勘違いしている人もそれなりにいたでしょうし、また、オールドメディア界隈の垂れ流す情報に反対の意見は、なかなか取り上げられなかったのではないでしょうか。
林氏の論考で取り上げられていた「原発再稼働阻止」は、その典型例です。
原発稼働を妨害すれば立憲民主党の支持率が上がる?
こうしたなかで、「原発」つながりで、もうひとつ興味深い事例があるとしたら、それはこれかもしれません。
「国民民主」に絶対できない政策で「立憲」が形勢逆転する方法 「原発再稼働」の条件に「避難計画」を盛り込むべし
―――2024/12/03 06:32付 Yahoo!ニュースより【AERA dot.配信】
リンク先記事では、11月24日配信の毎日新聞世論調査で、政党支持率は国民民主党が13%で、立憲民主党の12%を上回った、とする話題を手掛かりに、立憲民主党が政党支持率においても国民民主党に大きく後れを取っている現状に危機感を示すものです。
これをうけて、記事の中では「国民民主が逆立ちしても賛成できないテーマで、石破首相が譲歩する可能性のあるテーマ」として、「原子力発電の問題」が挙げられています。
早い話が、避難計画すらも原子力規制委員会の審査事項にして、原発稼働のハードルをさらに引き上げてしまえばよい、というものです。
「カメラ引き連れ押しかけよ」
大変申し訳ないのですが、開いた口が塞がらない、というのはこういうことかと思ってしまいます。
原発稼働を実質的に阻止するかのような政策を打ち出せば立憲民主党の国民からの支持率が上昇する、という思考も凄いですが、それ以上に驚くのは、この記事が原発稼働停止による電気代の高騰という現実や原発稼働を求める国民世論の存在を、完全に無視している点にあります。
しかも、記事には、こんなくだりもあります。
「 これが実現すれば、自民・立憲による賢い政策協議の前例ができ、その後の税と社会保障の抜本改革などでの成果に繋げる突破口になるかもしれない。<中略>企業・団体献金廃止、同性婚を認める民法改正法案提出、そして、避難計画を原子力規制委員会の規制対象とすることについて、野田代表は、明日にでも、テレビカメラを引き連れて、玉木代表のところに乗り込み、これらの提案に賛同するよう即答を求めるべきだ。玉木代表が面会を断ったり、カメラ入りを拒否したりすれば、なぜ玉木代表がそのような行動をするのかについて、記者たちに解説して、記事を書いてもらえば良い」。
じつはこの「カメラを引き連れてノーアポで押し掛け、新聞、テレビを通じて自分たちの言い分をごり押しする」、というのは、要するに、いままでの立憲民主党のやり方そのものです。
問題があるとしたら、これまでのそのやり方が通用しなくなっていることです。
少なくとも原発稼働にこれ以上の条件を求めるやり方が国民の支持を得られるとは思えませんし、なにより、昨今、新聞やテレビの社会的影響力が極端に低下している現状を踏まえるならば、このやり方は自殺行為ともなりかねません。
国民生活に関心はない
そして、俗に「左派」と呼ばれる人たちの言動を見ていて気付く違和感があるとしたら、彼らの提唱する「政策」とやらが、国民の関心事からは外れている可能性が高いことでしょう。
内外に課題が山積するなかで、「紙の保険証を守れ」、「夫婦別姓にしろ」、「ゼロ%超インフレ」、「財政支出が多すぎる」、と、(おそらくは)優先順序も方向性もまったくトンチンカンなものばかりを打ち出してくる―――。
先の衆院選で、立憲民主党が50議席も積み増したことは衝撃的ではありましたが、これは衆院選のシステム上、自民党がズッコケたら(何もなくても)立憲民主党が議席を増やすという仕組みがあるからにすぎません。
むしろ立憲民主党は小選挙区での得票を前回と比べ147万票も減らしているのですし、そんな立憲民主党を応援するオールドメディアもまた、国民から見限られていくことは避けられません。
結局、オールドメディア(あるいはそのオールドメディアに記事を寄稿している人たち)は、「年収の壁」引き上げにより国民の手取りを増やすことにも、原発を再稼働・新増設して電気代を下げることにも興味がなく、ただ単に「自民党政権をやっつけること」にしか興味がないのでしょうか。
あまり厳しいことは言いたくないのですが、この手の記事を配信するメディアを眺めていると、オールドメディアが廃れていくのは自業自得、という気がしてならない今日この頃です。
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毎度、ばかばかしいお話しを。
○○(好きな言葉をいれてください):「原発稼働阻止でも立憲の支持率があがらなかったら、それは国民がSNSの陰謀論に操られているからだ。ついでに、兵庫知事選で、斎藤知事が再選したのも、SNSの陰謀論に操られているからだ。だから我々が、国民を正しく導かなければならない」
まさか。
>「原発稼働阻止」なら立憲民主党の支持率は”上がる”のか
電気代高騰・大規模停電の懸念に、支持率は”干上がる”と推察。
ノイジーマイノリティに迎合しても、得票数は増えないのです。
*国民の声ではなく、特定支持層の声に応えるのが立民。
I am not ABE とかそんなん見りゃわかるんで、原発稼働阻止した後のことを聞きたいんですよ。阻止だけされましても。コア支持者は阻止だけすりゃ満足でしょうけども。
国民生活が改善してしまったら、オールドメディアと特定野党の存在意義がなくなってしまうじゃないですか。
国民は社会不安、生活不安、健康不安に怯える存在であるべし。というのが立憲民主党の基本設定です。老人対象不安商法と同じです。その設定を脅かすものは敵対視する。俺の商売の邪魔すんな〜!
立憲民主党やオールドメディアには、自分たちを支持してくれる「世の中に不満を持っている人」が必要なのです。
生活が豊かになり「世の中に不満を持っている人」が少なくなると困るのです。
日本国民以外の支持率が上がるんでしょう。海の向こうからの太陽光利権と日本国内の原発稼働停止はセットですからね。
立民に所属している議員並び野田代表らが、支持母体である連合の意思をどのように考えているのか、中々興味深いところであります。
ご存じのとおり、連合には電力総連や電機連合なども参加しており、両団体からは原発ゼロを党の綱領に明記した立民に対し、強い反発があったそうです。記事には連合の立民への不信は強い、としています。おそらくはその不振は今現在も変わらないのではないでしょうか?
https://www.sankei.com/article/20211007-XO3JG4EHBJL2BOM37UJT4ZD33A/
民意を無視して、さらには最大の支持母体を敵に回してまで原発ゼロに突っ走るのは、さながら風車に向かって突進していくその政治姿勢には、彼のドン・キ・ホーテを思わせるところがあります。しかしながらドン・キ・ホーテには滑稽ながらも自らの身を顧みぬ悲壮な覚悟がありましたが、現在の立民にはそのような覚悟は微塵も見受けられません。そこか窺えるのは先の総選挙で勝ったものと勘違いし、やがては自滅に至るであろうという予感のみです。
両方記事読んだけど、林智裕氏と古賀茂明氏で、何というか、文を書く力量が違いすぎて悲しくなる。同じ4ページでも、林氏の4ページはスルッと読めて読み足りない欲求があるのに対して、古賀氏の4ページは苦痛で苦行だった。(個人の感想)
林氏が原発再稼働は多くの民意に添って判断するような文脈に対し、古賀氏のそれは政局に利用する事しか考えてない下衆の考えでしかなかった。古賀氏は立憲民主をとにかく応援したいみたいですが、原発再稼働に限らず、あんな考え方では支持率が上がるとは到底考えられないですね。
朝日新聞、毎日新聞、しんぶん赤旗、東京新聞これらはいずれも風評被害を増長させている
主犯格のオールドメディアですね。いわば、「戦犯」です。
また、主犯格であると同時にこれらは中国共産党には至極従順でもあります。
早い話が走狗という訳ですが、オールドメディアが中国共産党の支配下にあるということも
認識しておく必要があるように思います。
面白い事に、中国共産党に従順なオールドメディアはいずれも食べることに全く困らない勢力であるということも忘れてはならない事の一つだと思います。
メガソーラーについては広大な土地が必要になりますが、以下の記事を見つけました。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240709-OYT1T50038/
これ以外にも施設の管理が杜撰であるとか、様々な問題が出てきております。
経産省に発電事業者の一覧がありますが、眺めてみると面白いかもしれません。