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訪日外国人は過去最多…オーバーツーリズム対策は課題

日本政府観光局(JNTO)が20日に公表した『訪日外客統計』によると、2024年10月に日本を訪問した外国人(速報値)は、なんと3,312,000人と、単月でみて過去最多となりました。また、訪日者の出身国で見ても、日本の近隣の中国、韓国、台湾、香港の4ヵ国・地域出身者の割合が6割程度となり、それら以外の国・地域の出身者が増えていることも事実です。ただ、増え続ける観光客を適正化するという視点も、現在の日本の観光行政には必要です。

単月の訪日客が過去最多に!

ここ最近、所得制限を巡る話題であったり、マスメディアのSNS規制に関する話題であったり、といった具合に、どうしても論じるべき話題がたくさんあったためか、後回しにしてしまっていた話題がありました。

それが、インバウンド観光客の急増という論点です。

日本政府観光局(JNTO)が20日に更新した『訪日外客統計』によると、2024年10月に日本を訪れた外国人(速報値ベース)が、なんと3,312,000人(!)を記録しました。月次レベルで見ると、過去最高です(図表1)。

図表1 過去の訪日外国人数ランキング
年月 人数
1位:2024年10月 3,312,000
2位:2024年7月 3,292,602
3位:2024年6月 3,140,642
4位:2024年3月 3,081,781
5位:2024年4月 3,043,003
6位:2024年5月 3,040,294
7位:2019年7月 2,991,189
8位:2024年8月 2,933,381
9位:2019年4月 2,926,685
10位:2018年4月 2,900,718

(【出所】JNTO『訪日外客統計』データ)

このペースでいけば、今年を通じた訪日客は3600万人前後と過去最高を更新する可能性が濃厚です。

また、これを月次でグラフしたものが図表2です。

図表2 訪日外国人・月次グラフ

(【出所】JNTO『訪日外客統計』データ)

トップは韓国、これに中国、台湾などが続く

なんとも凄い話です。

例年、10月といえばそこまで訪日客数が増えることはない、という傾向にあるようですが(私見)、その10月の訪日客数が過去最大というのは印象的です。また、訪日外国人の国籍別内訳をみると、トップは韓国で、2番目が中国、3番目が台湾、などとなっています(図表3)。

図表3 訪日外国人・国籍別内訳(2024年10月)
人数 構成割合
1位:韓国 732,100 22.10%
2位:中国 582,800 17.60%
3位:台湾 478,900 14.46%
4位:米国 278,500 8.41%
5位:香港 198,800 6.00%
6位:タイ 132,200 3.99%
7位:豪州 90,200 2.72%
8位:フィリピン 80,200 2.42%
9位:シンガポール 68,800 2.08%
10位:カナダ 66,500 2.01%
その他 603,000 18.21%
総数 3,312,000 100.00%

(【出所】JNTO『訪日外客統計』データ)

近隣国・地域以外の訪日客は?

これについて、コロナ前の2019年10月とも比較しておくと、図表4のとおり、「ノージャパン」の影響が剥落したためか、韓国人が約53万人(+271%)増えるなどしているのですが、それだけではありません。米国、豪州、カナダなどからの訪日客も急増しているのです。

図表4 訪日外国人・国籍別内訳(2024年10月vs2019年10月)
人数の変化 増減・増減率
1位:韓国 197,281(7.90%)→732,100(22.10%) +534,819(+271.10%)
2位:中国 730,631(29.27%)→582,800(17.60%) ▲147,831(▲20.23%)
3位:台湾 413,701(16.57%)→478,900(14.46%) +65,199(+15.76%)
4位:米国 153,363(6.14%)→278,500(8.41%) +125,137(+81.60%)
5位:香港 180,562(7.23%)→198,800(6.00%) +18,238(+10.10%)
6位:タイ 145,333(5.82%)→132,200(3.99%) ▲13,133(▲9.04%)
7位:豪州 51,563(2.07%)→90,200(2.72%) +38,637(+74.93%)
8位:フィリピン 64,690(2.59%)→80,200(2.42%) +15,510(+23.98%)
9位:シンガポール 41,937(1.68%)→68,800(2.08%) +26,863(+64.06%)
10位:カナダ 37,667(1.51%)→66,500(2.01%) +28,833(+76.55%)
その他 479,840(19.22%)→603,000(18.21%) +123,160(+25.67%)
総数 2,496,568(100.00%)→3,312,000(100.00%) +815,432(+32.66%)

(【出所】JNTO『訪日外客統計』データ)

また、訪日外国人は長らく、中国、韓国、台湾、香港の4ヵ国・地域出身者に偏っていたのですが(多い時で訪日外国人の8割を超えていたこともあります)、多少の季節変動があるとはいえ、割合で見れば近年低下傾向にあります(図表5)。

図表5 中韓台港からの訪日客の割合の推移

(【出所】JNTO『訪日外客統計』データ)

やはり訪日外国人の6~7割は近隣諸国からの入国者に偏っているわけですが、それでも3~4割はこれら近隣国以外の出身者で占められており、とりわけ米国、カナダ、豪州といった「非アジア圏」からの訪日客の動向は気になるところでしょう。

とりわけ観光業を振興し、インバウンド客が増えていけば、世界中に日本のファンを増やすことにもつながりますし、そうなれば日本の安全保障にも非常に良い影響を生じることは間違いありません。

旅行収支の黒字はたしかに巨額だが…所得収支と比べると?

なのより、過去最多の訪日客と聞くと、やはり私たち日本人にとっては「嬉しい」という気持ちが先に立ちがちですし、実際、経常収支統計で見ても、旅行収支の黒字が近年、非常に巨額になりつつあることも、観光業にとっては追い風でしょう(図表6)。

図表6 国際収支の状況(前年10月~当年9月)

(【出所】財務省・国際収支統計データをもとに作成)

東日本大震災以降、わが国が貿易赤字国に転落してしまったことを思い出しておくと、旅行収支の黒字は重要でもあります。

ただし、図表6で見ると旅行収支の黒字は巨額に見えますが、第一次所得収支の黒字額と比較してみると、金額としてはじつは微々たるものでもあります(図表7)。

図表7 国際収支の状況(前年10月~当年9月)

(【出所】財務省・国際収支統計データをもとに作成)

また、観光業は典型的な労働集約産業でもありますので、労働力不足が叫ばれている昨今の日本において、観光業をどんどんと振興していくことが産業論として賢明なのかどうかについては微妙ではないでしょうか。

とりわけ、インバウンド客の急増によるいわゆる観光公害を巡っては、各地で問題となりつつあります。

正直、外国人観光客の急増は日本経済にとっても「諸刃の剣」のようなものでしょう。

このような観点からは、やはり適正な額の入国税あるいは観光税のような制度も重要ではないでしょうか(※ただ、増税が大好きなはずの財務省から、観光税構想が出てこないのは不思議な気がしてなりませんが…)。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • >やはり適正な額の入国税あるいは観光税のような制度も・・

    財務省は、何を傍観してるんだろうね・・?
    大好きな「NEW国税」のチャンスなのにね。
    ・・。

    • >財務省は、何を傍観してる

      なんで乗り気じゃないんでしょうね。
      旅行者数は「水物」。浮き沈みが大きいところでしょうか。税金取っても逃げないやつ、やはり消費税とか所得税が美味しいんでは。(所得税減税なんてもってのほか)
      あと、入国税を取って天下り先確保につながるかというとどうなんでしょうかね。入管の権限と体制強化?

      フリートーク、失礼しました。

      • 返信ありがとうございます。

        >入国税を取って天下り先確保につながるか

        結局のところ、これに尽きるように思えます。
        でなければ、日本人から徴収し日本人に配る「内弁慶体質」なのかもですね。
        ・・・・・

        そうだ!入国税は在籍国の単位通貨で×100にしよう!
        日本国民にとって優しい税制(負担金100円)の誕生だ!!

        なぁ~んてですね・・。

  •  訪日観光客の増加は、基本的に良いことです。聞くところによれば、タイなどの東南アジアに加え、インド等でも中間層が育ちつつあるそうですから、今後も増えることが期待できるでしょう。その中で、中間層のみならず富裕層にも来てもらえるよう、一度ならずリピーターになって貰えるよう、努力が望まれます。
     一般的な産業が、東京・首都圏・大都市に集中しがちになるのに比べ、観光は地方都市でも、十分に対抗できます。地方活性化の目玉となりえます。
     それによるオーバーツーリズムは確かに問題です。地方自治体は、それによる集客減と地元民の迷惑を秤にかけながら、宿泊税や差額入場料などを、検討してもらいたい。日本全国どこでもオーバーツーリズムが問題になっているわけではないので、日本全体での入国税等は時期尚早です。
     それよりも、「大量に購入した免税品を転売し、不正に利益を得るケースが相次いでいる」訪日外国人の消費税免税制度が先だと主張してきましたが、来年度からは諸外国並みになるよう改正の予定で、税制改正に盛り込まれる方向です。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241127/k10014651481000.html

    • 「宿泊税」いいですね。
      地元民は当然 地元のホテル・旅館に泊まることはまれなので 負担なしですから。
      日本人であっても外国人にとっても 宿泊することはその地域のインフラを使うことになります。たとえば きれいで無料の公衆トイレも使用頻度が増え 維持のために地元自治体の負担も増えます。
      雇用増や消費税以外の恩恵が 地元にくる仕組みができなければ なりません。

  • >>インバウンド客が増えていけば、世界中に日本のファンを増やすことにもつながりますし、そうなれば日本の安全保障にも非常に良い影響を生じることは間違いありません。

    新宿会計士さんがこういうことを考えているとは気づいてませんでした。
    お詫びしなければ(私のお詫びなんか要らないでしょうけど)なりません。

    最近よく思うのが、敵国?に対する強硬姿勢ばかりもてはやされて融和姿勢が批判される風潮が強いということ。
    日本を安全にするのに最も良い方法は敵国の国民を味方につけることなのに、逆に対日感情を悪化させるような主張が目につきます。
    軍備増強で防備を固め、敵国に「勝てそうもない」「勝てるとしてもこたらの被害もかなり大きくなるから戦争は得策ではない」と思わせるのも当然必要です。
    しかし、政府が攻めようとしても国民が反対する形を作る策も同時に使うべき。
    であれば、日本旅行の人気の高さを考えると、中国人観光客を受け入れれば受け入れるほど、中国人観光客に良い気分で帰国させればさせるほど、日本の安全度が高くなっていくということ。
    中国人観光客が日本のファンになるようにするには、親切にしてあげれば良い。
    尖閣諸島を狙って来てる国の人に心から親切にするの難しいことですが、政府と国民は別と割り切って、腹の中はどうあれ表面上だけでも歓迎してあげれば日本の安保に貢献できます。
    もちろん、中国だけでなく他の国も全部同じ。
    欧米にファンを作れば、万が一戦争になっても日本を助けろという声が上がりやすくなる。
    現状だと中ロ朝が主敵ですが、中国と友好関係になればロ朝はもう問題にならないでしょう。
    せっかく向こうがビザ免除でほんの少し融和姿勢を見せて来た時に「すり寄って来た」「騙されるな」ではチャンスを逃すことになります。
    特に「融和姿勢を見せて来た今こそこちらの要求を通すチャンスだ」などというのは、韓国が過去の日本にやって来たことと同じであり、対日感情を悪化させて将来にツケを回すことになりかねません。

    観光公害の問題をどうするかというのが私には思いついてないんですが、基本的には観光客を入れれば入れるほど日本の将来のために良いと思ってます。

  • 韓国と日本の一部が ノービザどころかノーパスポートでの入国を許容しようと画策してます。もうこれ 法律体系の違う国に自由に入国して なんでもやり放題、都合が悪くなったら 自国に逃亡が 可能という 恐ろしいことになります。
    日本への入国履歴も残らないことになり 闇就労、突撃型犯罪、政治思想家の自由入国、オーバーステイを 許すことになります。
    パスポート不要は 外国人の本人確認もできません。
    ESTAのようなことで入国審査を簡略化させようというのでしょうが、信頼できるでしょうか。竹島上陸者は犯罪者です。
    おざなり審査で入国させては いけません。

  • 基本的な姿勢としては、来るものは拒まず、お客さんには主義主張が違ってもおもてなしは心を込めてという事でしょうね。
    しかし、悪意を持って入国する人は排除する必要がありますので、入国審査は厳しくしないといけません。
    私は京都に住んでいますが、喫茶店では英語、中国語、朝鮮語、フランス語、スペイン語に加えて先日は隣の人がロシア語を話していました。ロシア人入国できるのですかね?
    京都は現在紅葉の季節ですので観光客は異常に多いです。
    嵐山や清水寺、大原あたりは混雑が怖くて近寄る気がしないので、上賀茂神社へ行きました。近くの鴨川の堤防も夕日に照らされた紅葉が大変きれいでした。
    観光郊外という観点では、京都の場合道路の渋滞が酷いので、やはり移動手段が課題です。
    私としては自動車やバスでの輸送は限界だと思っていまして、廃止された市電の復活しか無いのではと思っています。LRTですね。
    架線の不要な燃料電池などで動く車両が開発されれば、敷設費用なども安くできるのではないかと思います。
    今後も日本を目指す観光客が増えることが予想されますが、日本全国の自治体は、これを地域活性化に役立てていく努力必要なのではないでしょうか?

  • 当方、地方在住者。インバウンド増加の思わざる効果として海外へ出かける際に成田や羽田乗り継ぎのための前泊が必要無くなった。ただ海外に行きやすくなったものの海外のインフレで効果半減ですけれどものね。