トランプ再選を受け、韓国はどこに行くのか―――。韓国観察者の鈴置高史氏が待望の新論考をウェブ評論サイト『デイリー新潮』に寄稿しました。尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領は「保守派」で、トランプ氏も保守派だから、保守派同士、気が合うんじゃないか―――。そう単純に考えてしまいがちですが、鈴置氏の見解はNOです。
目次
鈴置氏の名著、日本人は何度でも読み返す価値がある
鈴置高史氏といえば、自ら「韓国観察者」と名乗り、として知られ、今年、『韓国消滅』という書籍を出版した人物です。個人的に、この鈴置氏の『韓国消滅』に加えて『米韓同盟消滅』、『韓国民主政治の自壊』の3部作については、日本人ならば何度でも読み返す価値があると考えています。
ただ、鈴置氏が「韓国観察者」と名乗っていることは事実ですが、著者自身は、鈴置氏が「韓国観察者」であるとはあまり考えていません。
たしかに一連の鈴置論考は、韓国、朝鮮半島を観察しているかにも見えるのですが(そしてそこら辺の物知り顔で韓国論を語っている人たちと比べ、遥かに洞察は深いのですが)、やはりその本質は、「韓国というフィルターを通して垣間見える日本の姿」ではないかと思うのです。
鈴置氏はじつは「日本観察のプロ」
なぜ当ウェブサイトで鈴置論考を「絶対読むべき」と推しているのかといえば、一連の鈴置論考、「知的好奇心を刺激する」という意味では大変素晴らしいものであるだけでなく、私たち日本人にとって、さまざまな指針を提供しているからです。
その分野はさまざまですが、一例を挙げると、韓国の外交関係が参考になります。とりわけ米韓関係や中韓関係を通して、日米関係や日中関係を垣間見ることができるのです。すなわち鈴置氏は「日本観察のプロ」ではないでしょうか。
一例を挙げましょう。長らく鈴置論考を読んでいる人なら常識かもしれませんが、韓国は米国の同盟国という地位にありながら、長年、外交の軸はふらついている国でもあります。
もしも米国の同盟国として、西側諸国の自由・民主主義の価値に強くコミットするならば、米国だけでなく米国の同盟国である諸国―――NATO加盟国や豪州、そして日本と台湾―――との関係を深めていくのが筋です。
ところが、韓国が現在、経済的にも人的にも、最も関係を深めようとしている相手国は、中国です。
韓国というのは大変不思議な国で、反日感情は強いのですが、反中感情というものはほとんど存在しないらしく、日本大使館前での反日デモなるものが大々的に行われるとしても、中国大使館前での反中デモが大々的に行われるという報道は、ほとんど目にしません。
やはり、歴史的な関係もあってか、あるいは民族のDNA的なものもあってか、韓国は中国に逆らえないのでしょうか。
そして、米国の同盟国でありながら中国との関係を深める姿勢を、鈴置氏は「米中二股外交」と呼んでいます。
言い得て妙です。
論拠付きで議論する鈴置氏
ちなみに日本では、現在の韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が前任の文在寅(ぶん・ざいいん)政権と比べ、親日的であるとの評価をする人が多いのですが、鈴置氏は一貫して、尹錫悦政権下で韓国が親日国となったとする見方を否定しているのです。
しかも、ただ否定するだけではありません。
鈴置論考のもうひとつの(そして他の一般的なジャーナリストではほとんど考えられない)特徴が、外部リンクの多さです。
私たち読者としては、鈴置氏の、ときに「決めつけ」にも映る議論展開を見て、「あれ?でもこれって違うんじゃないの?」と思うことがよくあるのですが、そんなときに鈴置氏は我々読者の疑問を先読みしたうえで、その論拠をこれでもかというほど見せつけてくるのです。
こうした手法は、確たる裏付けを持っている人物ならではのものであり、読む者としてはただひたすら、「参りました」というほかありません。
最新論考は「韓国は焦って中国側に走るのか?」
ただ、じつは、当ウェブサイトでもこの鈴置氏の手法を部分的に剽窃しているつもりなのですが、やはり本家にはかなわないようです。鈴置氏が26日付でウェブ評論サイト『デイリー新潮』に寄稿した、こんな記事がそれです。
トランプ再臨で“損切り”される韓国… 焦って中国側に走るのか
トランプ(Donald Trump)政権の復活で韓国は大騒ぎだ。米国はロシアや北朝鮮との関係改善に動く一方、中国との対決姿勢を鮮明にするからだ。対ロ・対北強硬策と米中二股を外交の基軸に据えてきた韓国は困惑するほかない。韓国観察者の鈴置高史氏は「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は結局、中国側ににじり寄る」と読む。<<…続きを読む>>
―――2024年11月26日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
ウェブページ換算で4ページ分という長文ですが、朝鮮半島問題、ひいてはわが国の先行きに関心を持っている人であれば、長文という負担を感じさせないほど、あっという間に読めてしまう―――そして、「もっと読みたい」「続きが知りたい」と思ってしまう―――ことは間違いありません。
著作権の都合もあり、全文を当ウェブサイトに転載することはしません。とりあえずそのまま読んでいただくことを強くお勧めしたいと思いますが、簡単にいえば、米国でドナルド・J・トランプ氏が大統領に再選されたことで、韓国の外交が破綻するかもしれない、とする指摘です。
「鈴置さん、何をおっしゃっているのですか。尹錫悦(イン・シーユエ)大統領は親米派で親日派ですよ?文在寅(ウェン・ツァイイン)前大統領と異なり、韓国が米国とうまくやっていけないということはあり得ません。米国とうまくやっていけない可能性があるのは、むしろわが国の石破茂首相では?」。
こんな反論の声が聞こえてきそうです(そういう反論を加えそうな人を、個人的に何人か存じ上げています)。
じつは、国際情勢を読む変数は、「各国の大統領・首相が誰であるか」、といったものだけではありません。私たち日本人が無視しがちなのは、韓国という国の動き方は、米国と中国、そして最近だとロシアと北朝鮮の動向からも大きな影響を受ける、という点でしょう。
鈴置論考の要諦は、こうです。
- ウクライナ戦争を受けロシアと北朝鮮の関係が軍事同盟レベルにまで高まっている
- 韓国はウクライナに砲弾を提供し、ロシアからの恨みを買っている
- 冷戦期と違って「トランプの米国」は同盟国に冷たく、韓国は粗雑に扱われる可能性がある
- 米下院議長が訪韓した際に対面会談を拒絶した尹錫悦氏を米国は信頼していない
- トランプ2期目で圧力が強まると予想される中韓両国は利害が一致している
…。
結局我々日本国民がどう判断するかが問題
ちなみに、先ほど記した、「日本も石破(氏)が首相じゃないか」、「日米関係はどうなるんだ?」、という視点に関しては、鈴置氏は本文で石破首相をチクリと刺しているのですが、これに関しては結局、日本の立ち位置そのものとも関連してきます。
暴徒にも指摘したとおり、著者自身は鈴置氏を「韓国観察者」ではなく、「韓国という鏡に映った日本を観察している人物」と見ているのはそういうことで、トランプ再臨で右往左往する韓国をどこまで「他山の石」にすることができるか、という話です。
もっといえば、この鈴置論考を読んだ私たち日本国民ひとりひとりがどう考えるか、という話であって、まずは来年夏の参院選で私たちがいかなる投票行動をとるかが問われているのではないかと思います。
いずれにせよ、鈴置論考は「右往左往する韓国を小気味よく眺めて楽しむ」というものではなく、私たち日本人の指針として活用すべきものではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
View Comments (11)
鈴置氏のような人をぜひ国会に送りたいですね。鈴置氏所属の政党は、かなり支持率があがるのではないか?国宝的存在です。歴史上の人物に例えるなら、ナポレオン戦争前に大活躍した、英国の外交官ジェームズ・ハリス(初代マームズベリー伯爵)ですね。第一次フォークランド紛争を解決し、オランダから親フランス勢力をたたき出すなど数々の外交的手柄を立てナポレオンにおびえる
イギリス若手政治家を𠮟咤激励した。こうゆう政治家を一人でもいいから日本に誕生してほしい。
議員になるとかえって発信力が落ちそう
政党の色を着けずガンガン情報発信できる立場のが活きそうに感じまス
骨太な信念。安倍元首相の骨格部分の思想は、不変と言っても過言ではない程確固たるものがあり浮ついた感じはなかったように思います。
こういったものは、その人から滲み出てくるもの。しかもそれは万人が持つことができるものではない。
人たらし感のあるトランプ元大統領は、安倍元首相が纏ったその雰囲気を感じ取ることができたのだと推察します。
鈴置さんが指摘している韓国社会における民主主義の底の浅さ。
これもトランプ元大統領は感じ取っていたように思います。
さて、石破現首相。既にトランプ次期大統領は、コイツ骨が無いわ。と見切っているように感じます。
これから先、今まで日米合意できた事柄もいちいちつっかかるような予感しかしません。
比較もしたくは無いのですが、米日、米韓、五十歩百歩になりそうで不安です。
米国と違って政権交代しても日本の官僚は総取っ替えのようにはならないはず。ましては弱小化したとはいえ、安倍元首相時代と同じ自民党政権です。
こういうときこそ、官僚はダメ総理を補完し日米関係の悪化を最低限に抑えてほしいものです。→外務省、防衛省、経産省。
特に外務省。元防衛大臣だった岩屋外務大臣が中国賄賂とか。サイテーな出発となりそうです。与党である自民党は官僚に借りができるのが如何ともしがたい。
韓国は一刻も早く中国側に行って欲しいですね
「トランプに損切りされて、韓国は中国に走るか」ですけど、そんな度胸はなくて、これまで通り二股外交するんじゃないですか、韓国のことですもの。
トランプのやることは、予想困難です。「メキシコやカナダから犯罪や薬物の流入が止まるまで両国からのすべての製品に25%の関税を課す」そんなことを言われて、メキシコやカナダもそうでしょうが、協力する国があると、信じているんですかね。極めて稚拙な外交です。
あのメルケルさんだって、トランプと、ケミストリーは合わなかったんですからね。安倍さんが合ったのはある意味奇跡的で、尹大統領も石破さんも、合わないのが普通ですよ。
日本としてどうすれば良いかは、英国と仲良くして、もし何かどうしてもトランプの意に添わないことを言わなければならない時には、連携して言うぐらいしか、思い浮かばない。
騎手は馬より早く走る必要は無く、猛獣使いは猛獣より強い必要は無い、というところでしょうかね。安倍総理のトラ使い(あと寅使い)はうまかった。
ノウハウが遺されていれば良いのですが。岸田前総理はまだしも、石破総理は安倍流にはまず従わないでしょうし……安倍総理に懐いていたトラには、舐められるどころか反発まであるようだし。
ココに来て危惧シテルこと
「南鮮に於ける社会不安の極大化」→「南鮮脱出して日本への入国者増加」→「腐敗三角が一部与党を巻き込んで労働人口不足対処等の名目で移民として受け入れ主張」→「一部産業界同調して移入開始」→→→「“日本”社会の崩壊」
…鬱いでんナ
日本政府は鈴置氏の言を1000回復唱すべきですが、韓国政府こそが鈴置氏に助言を求めるべきに思えます。応じるかはともかく。
"敵の立場から弱点欠点をズケズケと言ってもらえて"
"味方から見えないことを敵が利用する前に開示してくれている"
こんなのむしろボーナスタイムですよ。日帝の極右の論難だとか認定している場合じゃ無いでしょうに。
日本の総理が変わっても世界にはなんの影響もないが、アメリカの大統領が変わると世界に影響が及ぶと仰っている方がおりました。その通りだと思います。
一時期話題になりましたが、トランプ大統領の首席補佐官はアメリカ初の女性となったようですが、かの首席補佐官はかなりの切れ者のようです。大統領選挙期間中も首席補佐官がトランプ大統領の発言を制御していたことはトランプ大統領自らが勝利演説の際に話していました。
首席補佐官は Gate Keeper の役目を担う。出口と入口は主席補佐官が管理しているのですね。
トランプ大統領は Make America Great Againと言っているのですから、その目的を達成する為には行動に躊躇はないでしょうし、アメリカも必死であるということでしょう。
では日本の必死さはどれほどか、これはもう政治家の認識にかかっているとしかいえません。
どうなることやら。
トランプ次期大統領は、経済も安全保障もアメリカばかり当てにせず、自分でももっと努力しなさいよという考えです。
韓国の場合、トランプへの対応は、トランプのアメリカは当てにならないので他の国(中国)との関係にも配慮が必要だ、が答えのようです。
まあ私としては、中国と仲良くしてもらった方が面白い事になりそうなので、是非韓国には中韓友好に励んで頂きたいと思います。
大雑把な傾向ですが、アメリカ大統領は
①民主党の時に戦争が始まって、
②共和党の時に戦争が終わる。
太平洋戦争はルーズベルトが始めた。
ベトナム戦争はケネディが始めた。
冷戦はレーガンが終わらせた。
ノーベル平和賞のオバマはアラブの春で山ほどの内戦国家群をつくりだしておいて、知らん顔。
バイデンの時にウクライナとハマスがホットになって、トランプが勝ったら今日はパレスチナで停戦合意なのだそうな。
固い頭を少しは休めて、インプットとアウトプットの因果関係を冷静に眺めてみたらどうか、と思いますよ。