X

政治家も有権者からの「無茶な要求」は突っぱねるべき

日本国内においては、多くの場合、レストランではムスリム(イスラム教徒)に対応したハラール対応の食事を提供できるケースは多くありません。こうしたなか、東京のレストランでイスラム教徒が豚肉入の食事を提供され、激怒した、といった記事を見かけたのですが、これはモノの例えとしていかがなものでしょうか。自民党が高くてマズい料理を出すレストランなのだとしても、さすがに無茶な要求には答えるべきではないからです。

自民党は高くてマズいレストラン

自民党は、高くてマズいレストランのようなものだ」―――。

これは、当ウェブサイトにおいて、長らく繰り返してきた論点のひとつです。

自民党は2010年の参議院議員通常選挙を皮切りに、合計10回の大型国政選挙で常に第1党の地位を獲得し続けています。先月の衆議院議員総選挙では、衆議院としては獲得議席数が約12年ぶりに過半数を割り込みましたが、それでもいちおう「第1党」の地位を維持しています。

ただ、今般の衆院選で減税を掲げる国民民主党が獲得議席数を4倍に増やした事実からもわかるとおり、正直、自民党は国民が望む政策を100%実現してくれているわけでもないでしょう。

とりわけ2回に及ぶ消費税・地方消費税の増税などはその典型例でしょうし、また、長らく見直されていない所得税の基礎控除などに関する論点も無視することはできません。さらには一向に見直されない再エネ賦課金制度、2020年になかば強引に始まったレジ袋有料化も、その政策効果が検証されているフシもありません。

どれも、自民党の政策が経済理論に照らしても正しいとはいえず、また、少なくない国民を失望させてきたことは間違いありません。

国民民主党躍進は「メニューが評価された」から?

もちろん、消費税の増税は旧民主党政権時代に成立したものであり(奇しくもその時の首相である野田佳彦氏が現在の立憲民主党の代表です)、こうした観点からは、誤った政策の全てを自民党のせいにするのはやりすぎではないか、といった批判があることは間違いありません。

ただ、それでもやはり、自民党の経済政策などには必ずしも正しくないものが多く混じっていることは事実ですし、「よくそれで有権者が自民党を選び続けているものだ」といった論評をする人がいるのも、さほど不思議なことではありません。

しかし、ここで指摘しておきたいのは、選挙というものがそもそも「よりどりみどり、素晴らしい候補者のなかから最も理想的な候補者を選ぶ手続」ではない、という点です。

わかりやすくいえば、傷んだ食材の中からまだ食べられる部分を選り分けるようなものです。

あるいは、あなたが空腹であれば、やはりどこかの食堂には入るべきでしょう。

こうしたなかで、「自民党食堂」には高くてマズい料理しかないのだとしても、まだ食べられるものが出て来る以上は、人々は我慢してその自民党食堂に入り続けてきた、というのが、これまでの選挙の実情ではないでしょうか?(あるいは自民党食堂のファンがそれなりに多かった、ということでしょうか?)

そして、今回、国民民主党が躍進したのは、自民党食堂と比べてまだ食べられそうなメニューを示してくれていて、それに期待して若年層などを中心に「国民民主党食堂」にやってくる人が増えたのだ、といった説明は成り立ちそうです。

豚肉入りのレストランにイスラム教徒が激怒

こうしたなかで、『Yahoo!ニュース』に18日付で掲載された、こんな記事が目に付きました。

「豚肉が入ってるぞ!」イスラム教徒を激怒させた日本のレストランに呆れるフランス哲学者「自民党はこの店と同じ対応して負けた」

―――2024/11/18 09:10付 Yahoo!ニュースより【みんかぶマガジン配信】

「レストラン」という単語に反応してしまったのですが、正直、内容自体はあまり頭に入ってきません(もうしわけありませんん)。興味があるという方は直接、記事をお読みください。

ただ、本稿で注目したいのが、とあるエピソードです。

記事を執筆した人物がフランスで教鞭を取っていたころの教え子であるアルジェリア人(※イスラム教徒)が日本にやってきたので東京のレストランで会食をしたところ、そのレストランでアルジェリア人が注文したカルボナーラに豚肉が入っていた、というのです。

『豚肉が入っているじゃないか! メニューにはそんな材料名が書いてなかった。作り直してくれ』。憤然としてそうスタッフに告げた」。

スタッフは『承知しました。作り直します』と神妙に応え、<中略>『お待たせいたしました。ベーコン抜きでございます』/アルジェリア人は、『ただベーコンを抜いただけで、もとのものと同じじゃないか! 俺は、作り直せ、と言ったんだ』

…。

さすがに、これはちょっと客の方があんまりではないでしょうか?

そもそも日本ではイスラム教徒が食べられるハラール対応の料理を出すレストランは限られています。さすがに一般的なレストランでは、客がムスリム(イスラム教徒)であるという理由で、それに対応した料理を提供しなければならないという法的義務はありません。

また、記事だと入ったレストランがハラール対応をしているのかどうかは定かではありませんが、前後の文脈からして、おそらくはハラール対応していない一般的なレストランに入ったのだとすれば、ちょっと理不尽です。

無茶な要求は突っぱねるべき

もちろん、客に提供された料理に不備があれば、客には「料理を作り直せ」と要求する権利はあるかもしれませんが、一般に「俺はムスリムだ」、「この料理には豚肉が入っているから作り直せ」、は、少し権利の濫用のし過ぎではないでしょうか?

これに加えて、正直、店としては「当店ではイスラム教に対応した料理は提供しておりません」と突っぱねるべき事案だったのではないかと思えてなりません。

ちなみに本件について、記事の著者の方は、こう述べます。

厨房のスタッフは、おそらくイスラム教の戒律についてタカをくくっていたのだろう。要するに視界から豚肉をはじいておけばいいんだろ、くらいの認識だったにちがいない。しかし、イスラム教徒にとって、豚といっしょに調理したもの、豚の成分が混入しているものは、たとえ塊としての肉片が入っていなくても、〝穢れたもの〟として拒絶される」。

これもまた困りものです。

もちろん、レストランも可能な範囲で、お客さんの要望に応じた料理を提供できるべきかもしれません。

しかし、これはあくまでもレストラン側の善意でそうすべき話であって、一般的にそれを強制することは適切ではないのではないでしょうか?

そして、私たち有権者の側も、政治家に対し、あまりにも無茶な要求をすべきではない、といった教訓が出て来る気もします。

もちろん、適切な経済政策、外交安全保障政策を採用するように、私たち国民は政治家や政権に対し要求する権利がありますが、それと同時にたとえば次のような、明らかに不可能なことは依頼しないでほしいものです。

  • 原発をすべて廃止し、再エネ比率を100%にしたうえで電気代を安くしてほしい
  • マイナ保険証を廃止し、紙・プラスチックの保険証を継続的に使えるようにしてほしい
  • 憲法をいつまでも変えず、専守防衛を貫いてほしい

いずれにせよ、イスラム教徒に適した料理を提供せよと要求する態度を石破政権や自民党政治の失敗に結び付けるにはかなりの無理がある気がしてなりませんし、むしろ政権としては、有権者の無茶で理不尽な要求は撥ねつける、といった態度が必要ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (11)

  •  豚料理頼んで豚肉にキレるってマ?カルボナーラって"豚肉と卵とチーズのスパゲティ"のことなんですが。まずムスリムとして"カルボナーラを注文すること"そのものが戒律に背くことなのでは……まぁさておき。

     リンク先のような"分析"が、最も価値のない分析です。
     まずもう結論「こうだから自民党はダメに違いない、皆もそう思うべき」が決まっている。そして例示するエピソードに信憑性が無い。仮に事実だとしても、自民党は悪の組織だという前提を維持するために、豚肉を抜いたレストランの対応を手抜きで本質を掴めていない対応だと断じてしまっていて、"悪の自民党と同様の店である、あるべきだ"と偏向しきっている。別に善意と無知かもしれないし、こんな客と呼べぬ相手に対応するだけ無駄と合理的に判断しただけかもしれないのに(だからこそジャーナリスト気取りはそのムスリムとレストラン双方に真意を取材して事実を明らかにすれば、迷惑性はともあれまだ存在意義があるのに)。
     結果として、自民党の悪性を強調したいために持ち出した例が"悪くないかもしれないし相手が悪いかもしれない"というなんとも言えないものになってしまっていて、果たして自民党の悪かった部分とやらが真実なのかどうかがわからなくなってしまっている。分析というかただの悪文。

     締めくくりだけ引用しますが、
    >しかし、本当に責任を取るべきなのは、国民の苦境をよそに、ただ自らの保身と金権の温存を図るためにだけなりふりかまわず姑息に動き回った裏金議員、および反社会カルト教団と持ちつ持たれつの関係を維持していた議員であり、彼らにロクな社会的制裁も課せない自民党の体質に依存する議員たちの方ではないか。

     要はこれ言いたいだけですねこの人。社会制裁とやらは、まさに選挙の結果として受けたでしょうに、仕組みわかってないのかな。法に則らず誰かの溜飲を下げるだけの下らない私刑がお望みということでしょうかね。ついでにこの理屈なら対象となる政党は野党にも及びますし。
     もう支離滅裂しっちゃかめっちゃか。ほんま悪文。こんな記事で金貰える事の方がよほど社会的制裁とやらの対象になるべき。

  • そのアルジェリア人の教え子がカルボナーラを注文した時点で、この記事の筆者である仏ぶっB学者が「そのパスタには豚肉を原材料とするベーコンが入っているよ」と教えてあげなかったことに、酷く違和感を覚えました。

    要するに師弟揃って当たり屋ビジネスをやらかした、と指摘されても致し方のない事案ですよね?

  • 元記事読んでみたけど、ただの「アベガー」記事でした。
    4ページも読んで損した。

    自民党はもともと党内に多様な意見の人達がいて、保守の受け皿にもなっていたと思うけど、最近はすっかりリベラルと化してしまって、日本の伝統を大切にしたい保守層はどうすればいいのか本気で悩みます。

    ほとんどの人は政治家に無理な要求をしているとは思えないけれど、やっているのは左巻きの人達じゃないでしょうかね。
    「自衛隊は違憲だ!すぐに無くすべきだ!でも災害時には救助しろ!」って感じで。

  • リンク先読みました。
    結論ありきで枕にもならない豚肉&カルボナーラの件(くだり)。
    チーズやオリーブオイルの香りは感じ取れず、むしろ滲み出るレフト臭に、
    因果を理解できないとこうなる、典型的なピンボケ文章でした。
    これで大学講師とは・・・
    そこの学生が不憫ですし、何より作り直すことで廃棄となったカルボナーラが不憫です。
    カルボナーラを学んでほしいです。

  • 高くてまずい自民党食堂に対して、お品書きにはやたら料理名が並んでいるものの、オーダーしてもさっぱり出てこない野党食堂、という例えはお馴染みですが、

    新装開店、暖簾を石破軒と付け替えた自民党食堂は、高い、まずい、に加えて、ニラならぬスイセン、シイタケならぬツキヨタケ入りの料理を出すそうな。

    ハラ壊すくらいで済めば良いんだけど・・・

  •  私が店主だったら、「カルボナーラが駄目ならボラギノール食わしてやろううか?」ですね。

     下品でごめんなさい。m(_ _)m

  • 「みんかぶ」って個人投資家向けのコミュニティサイトらしいですね。ベースは投資情報。
    サイドの賑やかしコンテンツとしてのマガジン。
    どんだけ読まれてるんだろうか・・・よくこんな記事見つけましたね。(笑)

    2章目「精神分析医フロイトが指摘したこと」。
    これ、いりますかね?結論に影響しますかね?
    とすると、タイトルに挿入された「呆れるフランス哲学者」のワードも不要になって、もっとシンプルで意図が伝わりやすい文章になる気がしますね。

    筆者はフランス哲学者を名乗っておられる福田肇さん。

    インスタ自己紹介:
    福田 肇
    新島学園短期大学、中島義道主宰「哲学塾カント」などで哲学を講じる哲学者です。フランス近現代哲学が専門です。またネットマガジンに寄稿するコラムニストでもあります。
    https://www.instagram.com/ethiquedudesir/

    みんかぶ寄稿は主要なお仕事なのでしょうかね。おフランス哲学で頑張ってください。

  • あまりにも我が儘なお客は論外として。もう少し現実的な人が望むのは、普通の値段で普通の味が出てくるところでしょう。

    しかし、往々にしてその当人がイメージする普通というのは、人によって多種多様であり、現実に沿わないことがままあります。
    婚活あたりの話題を見掛けるとよくこんな愚痴を目にします。どうして普通の異性がいないのだと。
    そりゃあ、いませんよ。一つ一つが普通でも、そのどれもを掛け合わせた上でどれもが普通を備えた異性なんて。当たり前の話ですが。
    それどころか、普通のつもりがもう、現実的には手が届かないものだったりする。つまりは、普通のつもりで、非現実的な贅沢を望んでしまっている。
    それを考えると、限られた予算と機材で、なるべく多くの人が納得出来る品揃えを用意するというのが、如何に難しいことかと思います。

    自分の理想通りの普通を実現してくれないのは何故か?
    普通に実現出来ると思っているつもりのものが、本当に実現可能なものなのか?
    値上げするなとか、質を下げるなと店に言いたくなるのももっとも感情ですが。それが本当に可能なのか、現実的な検証をした上で、是々非々で評価する意識を有権者は常に持つべきだろうと思います。
    作物の不作とか、光熱費等の高騰といった外部要因を無視して、それでも以前と同じままか、もしくはよりサービスを向上させろと。そういうのを普通のつもりで言っていないかというのは、気になるところです。

  • この論考を書いた先生は、ベーコン入りのカルボナーラを出してきたお店を批判する前に、イスラム教徒でハラル食しか受け付けない教え子を、ハラル認証を取得してないレストランに連れて行っちゃいけないよね、っていう話だと思います。

    ていうか、普通だったらそのぐらいの気は回るもんだと思うので、このカルボナーラのエピソード自体が作り話なんじゃないかっていう気がしちゃうんですよね。

    そう考えていくと、他の人が指摘しているとおり、この先生は、主張したいことさえ言えれば、その根拠なんて半ばどうでもいいと思ってるのかもしれません。読む価値のない論考の典型例ですね。

  • 政治家は外国人の意見に耳を傾けるべきですよ。
    外国人は国の宝です。