国民民主党が自民党と政策協議を行うことになるのか―――。維新や国民が自公連立にも立民を主体とした政権にも参加しないとすれば、今まで通りの自公連立政権が続く可能性が最も高そうです。ただし、この場合は少数与党となりますので、国民が閣外から是々非々で協力し、責任は自公に押し付けるするなど、非常に良い立場に立つことになりそうです。それが良いか悪いかは別として。
いわゆる「腐敗トライアングル」の議論
政権交代ありきなのか、政策ありきなのか。
著者自身が当ウェブサイトを立ち上げた大きな動機のひとつが、「政治家なら政治家の、ジャーナリストならジャーナリストの使命をしっかりと果すこと」という観点から、現在の社会に大きな問題があると考えたことにあります。
以前の『【総論】腐敗トライアングル崩壊はメディアから始まる』でも取り上げたのですが、日本には「選挙で選ばれたわけでもないくせに、非常に大きな政治権力ないし社会的影響力を握っている」という勢力が、少なくとも3つあります。
それが官僚、メディア、野党議員です。
野党議員は「選挙で選ばれている」ため、厳密にいえば「選挙で選ばれたわけでもないくせに」、のくだりは正しくありませんが、ここで言いたいことは、彼らの多くが「選挙で有権者から信任された以上の政治権力や社会的影響力を握っている」という意味です。
それはともかく、当ウェブサイトにて「腐敗のトライアングル」と称している構図は、典型的には、こうです。
官僚機構は記者クラブ制度や税制優遇、許認可権などを使い、新聞、テレビを飼いならす。
新聞、テレビは報道の力で与党を糾弾し、野党を擁護することで有権者の意思決定を歪める。
野党議員は圧倒的な国会の質問時間を使い、与党議員をスキャンダルなどで徹底追及する。
これが、当ウェブサイトの有力仮説である「腐敗トライアングル」です(ちなみに余談ですが、野党議員が官僚を下僕のように呼び付けたり、質問通告が遅れに遅れて官僚に深夜残業を強いたりするなど、官僚いじめに加担しているのは、なんとも皮肉な構図ではないかという気がしてなりません)。
崩壊が始まった腐敗トライアングル
もちろん、こうした構図の中にあって、心ある官僚やジャーナリスト・メディア関係者、野党議員などがいることは間違いなく、また、この点については公正さのためにきちんと指摘しておく必要があります。きちんとした仕事をする人たちに対しては、当ウェブサイトとしても、ちゃんと評価しなければならないと考えています。
ただ、それ以上に著者自身の現在の持論を述べておくならば、この「腐敗トライアングル」が確実に崩壊の兆候を示しています。
今回の衆院選では、まさにマスコミの誘導報道の影響もあってか、立憲民主党が大躍進したわけですが(※これについては公的な情報源が出てきた段階で分析をやってみようと考えています)、これについては正直、個人的には大変強い不満を持っています。
『「2%から0%超」…立憲民主のトンデモ物価安定目標』などでも述べたとおり、立憲民主党といえば、事実上の「デフレ政策」を政権公約に掲げるなどの、わりとトンデモ系の経済・財政・金融政策を公約に掲げているからです。
今回、立憲民主党に投票した人たちは、本当にこれらの公約を読んでそのように意思決定をしたのか―――。
この点については、非常に大きな謎でもあります(というよりも、今回の選挙については、おそらくは立憲民主党が躍進したというよりは、単純に自民党・石破茂執行部がズッコケただけだとも思いますが…)。
国民民主党が4倍に躍進した背景
ただ、それと同時にもうひとつ興味深い兆候があるとしたら、それは国民民主党が公示前の7議席から一気に28議席へと、勢力を4倍に増やしたことです。
著者自身が見たところ、とくに大手メディア(新聞やテレビなど)は、多くの場合、「裏金問題」にフォーカスを当てた報道を繰り返していたフシがありますが、国民民主党はおもにネット(YouTubeやSNSなど)を使い、スキャンダルよりも政策を強調していたように思えます。
普段、当ウェブサイトにて報告している通り、そもそも衆院選は小選挙区に議席が重点的に配分されている仕組みでもあり、また、小選挙区で当選するためには「地盤」がモノを言うため、どうしても大政党(自民、立民)に有利に働きやすく、国民民主党や日本維新の会などの小規模な政党が勝利を収めるのは難しいところです。
しかし、国民は小選挙区での獲得議席は11議席にとどまりましたが、比例代表では17議席と、自民(59議席)、立民(44議席)、公明(20議席)に続く第4勢力となり、維新(15議席)を抜きました。
これが意味するところは、有権者の側も、メディア報道を鵜呑みにする人だけでなく、政策をちゃんと聞き分けようとする人が増えてきた、という可能性です。というのも、少なくとも国民民主党は今回の選挙戦で「政策」を訴えていたからです。
著者自身が国民民主党の政策に賛同しているかどうか、あるいは国民民主党の政策実行力を信頼しているかどうかについては、とりあえず脇に置きます(ただし、個人的に、国民民主党の経済政策については、野党の中で最もまともだとは思います)。
この国民民主党が「政局よりも政策を訴えた」こと、国民民主党が唱えた政策を大手メディアがあまり報じていたフシはないことを踏まえると、先ほど指摘した「腐敗トライアングル」のうちの「メディア→野党議員」部分の利権構造の崩壊が始まったことを示しているのではないでしょうか。
そして、現在の国民民主党は、(自民党支持者にとっては不本意かもしれませんが)非常に良い立ち位置にいることは間違いありません。
維新、国民民主党が自民党、立憲民主党のいずれとも連立を組まないならば、議会の数の法則からすれば、自公連立政権が少数与党のままで継続する可能性が最も高くなります。少なくとも立民が維国以外のすべての野党と組んでも政権は成立しないからです。
国民民主党は大変良い立場に
こうした状況が生じるとの前提に立てば、国民民主党は自公連立政権には加わらず、法案や予算には是々非々で賛成したり、反対したりすることができますし、また、ここぞという重要な場面では、国民民主党としての意見を自公両党に呑ませることができるかもしれません。
なにせ、今のままでは自公政権が発足したとしても、予算が国会を通らないからです。
そうなると、自民党としては政策的に最も近いであろう国民民主党(や日本維新の会)との政策協議を個別に行わざるを得ず、こうしたなかで強い政策の芯を持っている国民民主党の意向が実現する可能性も出て来るからです(といっても、維新が自公政権に入る事態があれば話は別かもしれませんが…)。
そのうえで、国民は口だけ出して責任は自公に押し付ける―――。
うまく立ち回れば、そんなことも可能かもしれません。
こうした状況を踏まえると、気になるのがこんな話題です。
自民・公明、国民民主と「103万円の壁」協議へ 経済対策
―――2024年10月30日 1:00付 日本経済新聞電子版より
記事タイトルにある103万円の壁問題は、国民民主党が長らく提唱して来た税・社会保障上のパートタイム労働者の制約に関するもので、日経電子版は自公両党がこの103万円の壁問題に加え、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除などを巡り国民と協議すると報じています。
これは、国民民主党の「政策本位」という姿勢のあらわれでしょうか。
実際、玉木雄一郎代表は以前から、政策が一致できない立憲民主党との連立が「あり得ない」とする見解を繰り返して来ましたので(『野党結集政権に否定的=玉木代表』等参照)、こうした発言と今回の自公との協議開始は、なにも矛盾するものではありません。
玉木氏は立民・野田代表との会談を拒否か
ついでにもうひとつ、こんな話題にも触れておきましょう。
【独自】国民民主が立憲との首脳会談断る…玉木代表が連立政権入り否定「政策実現に全力傾ける」 総理大臣指名選挙「玉木雄一郎」に投票の意向
―――2024年10月30日 11:20付 FNNプライムオンラインより
FNNは玉木氏が立民の野田代表との党首会談を拒否しているとしたうえで、首班指名選挙でも国民が玉木代表に投票すると述べた、などと報じています。
もちろん、現時点において国民、維新の両党が土壇場で首班指名において立憲民主党に投票する、という可能性は(理論上は)あり得なくはないのですが、基本的には自公少数与党で、これを国民(や維新)が閣外から政策でコントロールする、といったパターンが想定されるといえるでしょう。
それが良いことなのか、悪いことなのかは別として。
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選挙結果としワーストだったのは
社共連立の人民戦線内閣の成立です。
これらの政党で政権を取ると安全保障もへったくれもありません。
今回の件自公政権の継続
現実的な政策を語れる維新か国民の協力が必要という状況は
自民党に灸をすえる目標を十二分に達成しているのではないでしょうか?
国民には今後強力な野党になって欲しいです。
国民民主党の玉木代表に「若者を潰さない政治勢力を結集をはかる」と言って欲しいものです。
蛇足ですが、立憲民主党は、国民民主党が(いざという時は)自分に従うのが当たり前と、思っているのではないでしょうか。
野党連立とか自立大連立よりかはまだ日本にとってマシなコースですね。遅くとも参院選までの付き合いでしょうが
「国民民主の玉木氏を総理大臣に」と言われても賛同できない。
玉木氏の実力があればいいというだけの問題でもなく仮に総理大臣になっても、政策・課題解決は自民党の操り人形になってしまうのではないか。
村山富市が社会党から総理大臣になってから、社会党は衰退、分裂し社民党になっている。国民民主も同様の状況になる可能性がある。
国民民主党には大臣を出して政策を進めて欲しいって気持ちがあります♪
パート収入の壁には所得税法の103万円の壁と国民年金法の130万円の壁の2つがあって財務・厚労のふたつを抑えるのは流石に難しいのかな?
政権に入らないにせよ、早めに議員立法をして欲しいと思うのです♪
103万円の壁の次に130万円の壁(健保、年金保険料が発生する収入)がある。
178万円との間の150~160万円くらいで妥結かな?
けっこういい政策かも。人手不足の緩和、消費拡大。
まあ、大した話ではないのですが、プライムニュースで「党首会談拒否」を本人が否定していた部分は、youtubeのダイジェスト版ではカットされてました。
思い返せば党首会談の要請があったかどうか、言及を避けていたので幹事長クラスでは突っぱねたのかもしれませんね。
昨夜頃からの立憲幹部をはじめとする左翼界隈のネット世論は
「国民民主が野党連立をしようとしないのは民意に反する」
キャンペーンのようです。
またいつものようにあることないこと噂を広めて、国民民主に安売りさせようという魂胆かどうか知りませんが、それをやったら国民民主が支持を失うという「敵方の事情」をまったく想像しないのは相変わらずです。
そんなもん無意味でしょう。
特別国会は11日召集の方向で与党はまとまったようですし、とりあえずは石破+森山体制、少数与党での船出になりそうな情勢ですね。
まあちょっと見かけたので。
前回総選挙で"市民連合"を率いて顔と名前を前面に出し、立憲共産共闘を進めた、山口二郎御大。
選挙後のツイートは同意できるものが多いです。
野党連立を訴える左翼界隈の意見に対して。
https://x.com/260yamaguchi/status/1851244559399039006
何とも荒唐無稽。こんな奇策で政権交代を起こしても半年も持たないだろう。そのあとはまた自民党政権へと、元の木阿弥。
山口御大は前回選挙で責任を背負って前面に立ち、敗北の責任を認めた男気ある御仁です。他責指向の左翼界隈では珍しい。
敗戦後の発信は割と同意できるものが多く、責任から逃げ回ってばかりの人と、責任を背負った人では視界が変わるのかもしれないと思ったものです。
逆に、他の左翼アカウントは、玉木氏に対する罵詈雑言が凄まじい。ホントにあの界隈って、他責指向、他責思考。
玉木のこの行動は大変良いと思います。
本人は意識していないかもしれないけど、自身(自党)をなるべく高く売る方法としても最適ではないでしょうか。
こうなると自民党は、首班指名の人数集めが難しいですね。
・世耕、西村、萩生田、平沢の4氏に自民会派入りを党幹部が打診
https://mainichi.jp/articles/20241030/k00/00m/010/087000c
こんなニュース合ったけど、必死なのわかるけど石破は面の皮厚すぎでしょ。
私なら、戻る条件は石破の退任以外ないでしょう。
世耕氏以外の3人の「会派入り」は石破執行部になんらかのペナ無いと~ですが…
早々に離党していた世耕サンは『和歌山の事情』を上手く掻き込んで当選しているだけに、『和歌山の自民党支持層からも党と本人双方に働きかけありそうッス』
*首班指名
自民党の機構図では、「党大会」が総裁の上位にあり、総務会の承認(県連と議員による総裁選決議?)を経なければ、石破体制の続投はなさそうですね。
いずれにも石破氏を待つ命運は、やめるのか?やめさせられるのか?
引責辞任はみじめだけど、引責解任は”もっとみじめ”なのにね・・。
私の見立ては、来年の参院選挙までは、国民党は政策毎に”部分連合”と予想します(今回の選挙結果ははずしているので、あてにはなりません)。
参院選挙までに、石破首相が支持率を戻すことが出来て勝利すれば、国民党は選挙後に連立入りすると予想します。支持率が回復していなければ(その可能性の方が高い)、参院選挙後に石破退陣となり、いわゆる「日本の首相の回転ドア化」が生じ、日本の国際的地位は低下していくでしょう。
国民民主党もねえ、財源を語らず、やれ「年収の壁撤廃」だの「ガソリン税のトリガー条項凍結解除」だの、バラマキ志向ですもんね。今回は、「自民党支持勢力のうち中道系で、裏金議員への対応が不十分と感じる人たち」の不満の受け皿になったに過ぎません。政党としての実力は取るに足りない。