新しい政権の姿はどうなるのでしょうか。結論的にいえば、自民党を主体とする少数与党、という可能性が現状では最も高そうですが、こうしたなかでカギを握る政党のひとつである国民民主党の玉木雄一郎代表は28日、日テレのインタビューに対し、「いまの野党全部まとめて政権を取ってもらいたいと思います?」と問いかけました。
目次
選挙結果の衝撃
あの衝撃的な衆院選の投開票結果から、そろそろ2日が経過しようとしていますが、現時点での報道などを見る限りにおいて、新たな政権の姿はなかなか見えてきません。
衆院選の結果確定した新勢力は、どの政党も過半数(233議席以上)を取れず、一種の「ハング・パーラメント」状態だからです(図表1)。
図表1 第50回衆議院議員総選挙 新勢力
会派 | 当選者 | 公示前 | 増減 |
自民 | 191 | 256 | ▲65 |
立民 | 148 | 98 | +50 |
維新 | 38 | 43 | ▲5 |
公明 | 24 | 32 | ▲8 |
共産 | 8 | 10 | ▲2 |
国民 | 28 | 7 | +21 |
れ新 | 9 | 3 | +6 |
社民 | 1 | 1 | ±0 |
参政 | 3 | 1 | +2 |
保守 | 3 | 0 | +3 |
無所属 | 12 | 14 | ▲2 |
合計 | 465 | 465 | ±0 |
(【出所】各社報道をもとに作成)
単なる数合わせの議論
とりわけ自民党は比較第1党の地位を維持したものの、現実問題として65議席も勢力を後退させ、過半数に42議席足りなくなってしまいました。そうなると、もしも自民党が政権を安定的に維持・運営したければ、自民党にとっては24議席の公明党以外にも連立与党に入ってもらうことが必要です。
一方、立憲民主党は議席を50も上積みして「大躍進」した格好ですが、それでも議席は148議席と過半数ラインには85議席足りません。
単純に議席数だけの「単なる数合わせ」の議論で述べるならば、これにはいくつかのパターンが考えられます。自民党を主体とする政権(①~④)、立憲民主党を主体とする政権(⑤~⑨)について検討すると、図表2のようなパターンが出来上がります。
図表2 数合わせの議論
パターン | 議席数 | 対立政党 |
①自公 | 215 | 立民148 |
②自公国 | 243 | 立民148 |
③自公維 | 253 | 立民148 |
④自公維国 | 281 | 立民148 |
⑤立共 | 156 | 自公215 |
⑥立国 | 176 | 自公215 |
⑦立維 | 186 | 自公215 |
⑧立維国 | 214 | 自公215 |
⑨立維国共 | 222 | 自公215 |
⑩立維国共れ | 231 | 自公215 |
(【出所】図表1をもとに作成)
自民党を中心とする少数与党という可能性が最も高い
シンプルな自公政権(①)だと、立憲民主党の148議席は圧倒しているわけですが、過半数には至りません。
そこでもしも国民民主党を連立に取り込めば、243議席で辛うじて過半数を達成します(日本維新の会でも過半数要件は達成します)し、維新、国民双方に連立に入ってもらえば281議席で安定的な政権運営が可能となります(あくまでも「計算上は」、ですが)。
一方で逆に、野党連合の場合はどうでしょうか。
たとえば立憲民主党が維新、国民、日本共産党、れいわ新選組と連立政権を作れば、議席数だけで見ればそれだけで自公を上回ります(⑩)。
ただ、この⑩という最も極端な野党連合のケースでも、議席数は231議席ですので、過半数に至りません。これに無所属の野党系議員を足して、やっとギリギリで過半数に至るかどうか、と言ったレベルでしょう。
つまり、野党を主体とする政権ができたとしても、どのみち安定的な政権運営はできない、ということです。
というよりも、その「野党を主体とする政権」ができるものなのでしょうか。
玉木氏、自公連立に「与するつもりはない」
これに関しては、端的にいえば、日本維新の会や国民民主党が自民党につくか、立憲民主党につくか(あるいはどちらにもつかないか)が大きなポイントと考えられますが、これについて考えるうえで興味深いインタビューがありました。
国民民主党代表の玉木雄一郎氏が28日午後、日本テレビのインタビューに答えたのです。
動画の時間は10分弱と比較的短いものですが、「国民民主党としてどう動きますか」とする質問に、玉木氏は次のように答えたのです。
「我々、12日間政策を訴えて、とくに『手取りを増やす』っていうことを訴えて頂いた(28)議席である以上ですね、やっぱり政策政策実現にこだわりたい」。
「だから連立がどうだって話はあるんだけど、我々、そういうことに与する気はないんですが、ただ選挙で約束した政策を実現できるのであれば、政策ごとに『実現してくれるんだったら、協力してくれるんだったら、協力するよ』ということはやっていきたい」。
要するに、あくまで政策本位でひとつひとつ判断していきたい、ということでしょう。
そのうえで玉木氏はあくまでも連立を組む考えはないとし、連立入りを改めて否定した格好ですが、これも玉木氏に言わせれば、連立に入ってしまうと「我々が必ずしも同意できないことも含め、セットで同意しなければならなくなるから」だと述べています。
この「連立入りしたら是々非々で賛同することができなくなる」というのは、まったくそのとおりでしょう。
「いまの野党全部まとめて政権取ってもらいたいと思います?」
ただ、もうひとつ興味深いのは、テレビ局側のこんな質問です。
「(野党は)過半数を超えていますよね?そうすると野党系でまとまれば政権を取れる議席になるわけですけれど、そこの可能性は探らないですか?」
これに対する玉木氏の回答が、なかなかに秀逸です。
「いまの野党全部まとめて政権を取ってもらいたいと思います?私はね、一番心配してるのは外交安全保障なんですよ。いま、こういう風に与党も野党も単独でどこか政権取る(という)状況じゃない。極めて不安定」。
「来月には米大統領選挙があって、日米の安全保障を担当する責任者が変わったり、あるいはカウンターパートが変質する可能性があって、安全保障で一致できないような、そもそも閣内で揉めるような形だとそれは」。
そのうえで、玉木氏は南西諸島方面などの領空侵犯事例の頻発や有事のリスクに加え、原発などのエネルギー政策などを例に挙げ、「国家の基本政策について一致できない人が集まって(政権を運営して)も国のためにならない」と強調。こう力説したのです。
「野党がまとまるにしても、政策の一致なくしてやろうとしても、結果としてそれは安定的な国の運営に反することになる」。
著者自身、玉木雄一郎氏の普段からの主張に全面的に賛同しているというわけではありませんが、それでもこの一連の発言については正論だと考えています。
現実問題、外交安全保障、エネルギー、金融財政政策など、国家の基本政策部分で、現在の立憲民主党と国民民主党はずいぶんと相いれない部分を多く抱えていますので、玉木氏の言葉通りなら、国民民主党の立憲民主党主体連立政権入りはあり得ない、ということです。
そうなると、結局は自民党を主体とする少数連立政権が出来上がり、少なくとも安倍、自公連立政権時代のような「スピード感を持った法案提出」が停滞する可能性は出てくる、ということです(それが良いか悪いかは別として)。
いずれにせよ、石破茂首相がこうした状況でどう動くのかについては、結局は石破首相と自民党次第ではあります。
いずれにせよ、正直、石破政権を永らえさせることが自民党のため、ひいては日本のためになるのかどうか、自民党議員や自民党支持者の皆さまがどう判断するか、注目してみたいところだと思う次第です。
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来月と書くと不明確になりますが、米国大統領選挙は来週火曜日実施です。
Amazon のライブ中継、どんな楽しませ方をしてくれるのか。楽しみです。
言ってることはまともですが、玉木氏はモリカケサクラの主犯側である事の総括をしないことには、信用ならないと考えます。
モリカケサクラ?
それって冤罪にちかいのでは?
玉木氏が加計学園に疑惑ありと追及していたくせに本人がということですね。
『DIAMOND online;民進党に特大ブーメラン再び!加計学園を応援した過去 窪田順生:ノンフィクションライター 2017.5.25』
「獣医一族出身の民進党・玉木氏は安倍首相を追及する資格ナシ」
安倍首相に「仲のいい友達のための特区指定を急がせたんだろ!」と厳しく追及をしていた玉木雄一郎・民進党幹事長代理が、実は父も弟も獣医という一家で、獣医学部新設に強く反対をしている「日本獣医師連盟」から100万円の献金を受けており、2016年の日本獣医師会の集会で「おかしな方向にいったら食い止めます!」と予告をしていたことが明らかとなった。
そもそも
モリカケサクラって、何か問題でしたか?
獣医医学部新設反対の諸悪の根源は
石破(四条件のおかげ)さんじゃなかったですか?
いまさらどうでも良いことですけれども。
根拠曖昧ですが、これからの日本政界は(保守、リベラルの看板を掲げつつ)シニア代表とヤング代表に分かれるのではないでしょうか。(これには議員の年齢は関係ありません)
蛇足ですが、国民民主党の玉木党首は、今の日本政界では異端児(?)なのかもしれません。
与党に対しても政策ごとに是々非々に対応することになるのでしょう。ネットでは石破氏を叩いて渡れなどとうまい表現をされております。期待しております。
the民主党ムーブや獣医学部問題等の過去から、玉木氏を完璧で優れた政治家とはとても評せないものの(むしろ有能だが汚れた部分があるというのは今回選挙で一番嫌われている)、なんだかまさに"一番マシなゴミ"と評せる人材になってきたのかなという感です。
これ誹謗中傷で開示請求されたらゴメンナサイとしか言えない表現なんですが、今の政界を考えるに、かなりの褒め言葉のつもりです。
どの党が国政を担うべきかという点を抜きにして、玉木さんは少なくとも石破さんよりはリーダーに向いてると思う。
そして日本社会全体が「石破、素通り」「石破、期待せず」「石破、忘れ」の状態となって行く。
党再生の頃から政策を最上位概念に置いて、その他は従属要素、これで一貫していて支持を広げてきましたんで、それを曲げたら支持者が離れると思います。
一貫性が大事だと玉木氏もよく理解している。
安易には乗らないでしょう。
選挙戦最終日、あの「石丸伸二」氏が国民民主の演説台に立ちました。その後のネットの反応が興味深かったです。
インフルエンサー含め「国民に投票するのやめた!」の大連鎖。
なんで?と思ったんですが、「他党を非難しない」も彼の党が支持を集めていた大きな要因だったそうで、石丸氏はその対極のシンボルと見做されていたようです。
なるほど、でした。
しかし、石丸伸二氏、スゲー嫌われてますね。もう次の時代でも首長就任はムリじゃないのかな?(笑)
そうですね。国民の伸びは、政策本位・是々非々が支持されたんだと思います。
・・・・・
連立・閣外協力の件
総裁の交代などで基本政策のベクトルが合えば、「どうしても通したい法案は”国民”に言わせる」の一点において、連合サイドもやぶさかではない気がします。
そう思います。条件次第。
仮に今自民が連立持ちかけようとしても、少なくとも自民党内すらまとめられないんじゃないですかね。
武藤容治経産相、国民民主の主張を一蹴 「トリガー条項」凍結解除などに否定的見方
https://www.sankei.com/article/20241029-6EUVJ55PQJKFBADQU2DQKSJD24/
既定路線の党内"正論"。
武藤氏は麻生派っぽいのですが。なんか火花みたいなものが見える気がします。
閣僚の発言なのでチト違いますね。取下げです。
僕は石丸は好きなのでなんとも思わんかったですね。
つか、非難が多いのには驚きましたが。
楽韓さんがムカついてたのは意外。
あのての軽薄ムーブメントに耐性ある人なのに。
暇空が石丸嫌いなのも含めて、実力あるローンウルフの同族嫌悪なのかなぁ。
なーんて。
絡まれた相手の悪さもあったと思いますけど、ちょっと感情が表に出てたように見えました。氏の語っていた評価は本人の好き嫌いではなくて、政権を担う公党としての適否の観点だったと思います。
まあ私は現状の石丸氏を好意的には評価していませんし、彼の党の(支持者の)文化とは合わないだろうとは思うものの、壇上に上がって演説するくらい構わないんじゃないのとしか思いませんでしたけどね。
私とは彼の党へ託していたものが違うのでしょう。期待値の高さの違いも。
⑩立維国共れ
って、社民は仲間に入れてあげないんですか!?
入れても232なので1足りませんけど。
ゴメソナチュラルに忘れてた
確か無税で働ける収入を178万円にするとか言ってたけど、意外にいい政策かもしれないね。
103万円で働くのをやめている人はどっちにしろ税金払いたくない人たちなんだから、税金取り損ねたということにはならない。その分働く時間が178/103-1で72%増える。人手不足の解消になるかも。収入も178-103=75万円増えるんだから消費に回るんじゃないの?
日本はつくづく会社主義共和国だなと個人的にそう感じて来ました。
会社主義共和国の基本設計は 1930 年代新官僚の時代にまとめられたものが、実験国家満州国における国家資本主義テスト、日米開戦と敗戦を経て、戦後に華開いたものと理解しています。
税制が長い間改良されず、社会や経済の実態とは乖離していることが、閉塞感の最大原因と考えます。
まー財務真理教がイヨイヨ支配力を増すかの現政権筋は“壁”取っ払って課税枠拡げ加入者増やしたいワケでそーなから、“壁”を7割増に高くするのはイヤがりソーですンで、ハタシテ巧くブッ込めるか! 乞う御期待!!
…みたいナ???
単純に、最低賃金を約1000円から1500円にすることを狙っているから103万円を178万円に先に上げておくとの考えでないですか?
どうせ最低賃金が上がれば年収の壁を上げる必要が出てくるでしょ。
今のうちに上げておけば、最初の内は社会保険加入のぎりぎり以下でめえいっぱい働けますから、可処分所得が増えるでしょ。
どんな形でも個人消費が上がる方向に誘導もできるので一石二鳥と言うわけですね。
いままでの最低賃金の上昇率をスライドさせた数字が178万だそうです。
年金健保の両会計を改善させるにはより多くの元気な労働者に働いてもらう以外に解はありません。
名指し健康指導勧告通知が職場に送られてきたりしますから、日本国はちゃんとやれているほうです(あれは見なかったふりをしても咎められないそうです。なお、言いつけ通りにお医者に努力計画を提出して、自己申告通りにできなかったという経験談を聞きました。健康指導勧告が結実するケースもあるのでしょうが ...)
累進課税の区切り額も、1.5倍に引き上げてほしいですねえ。
物価スライドさせないとインフレで実質増税。
詐欺じゃないけど、ずるいよね。
多分自公政権が続くと思いますが、予算や法案の成立には18議席足りません。
この場合、何でも反対の立憲民主党が賛成に回るということは考えにくいので、維新か国民民主いずれかを説得する必要があります。
自公政権がは維新か国民民主どちらかを説得すれば良いのですが、自公政権に利用されないようにするにはやはり維新と国民民主の連携がとても重要になります。
自公政権はどちらかを引き込むために維新と国民民主の離反作戦に出ると思いますが、くれぐれも離反作戦に引っ掛からないようお願いしたいと思います。
玉木さんは大丈夫だと思いますが。
国会議員の最大の仕事は予算を成立させることじゃないですか。
予算が成立しなければ国の運営ができない。
玉木さんは元財務官僚だからそこのところはよくわかっていると思うけど、逆に与党の最大の弱点、自分たちの最大の武器だという事もわかっているんじゃないかな。
もう一つ国会同意人事。日銀総裁が白川氏に決まった経緯を振り返れば、困ったことが起きるかもしれない。