11月以降、自転車の「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」に関する罰則が強化され、違反すれば懲役または罰金などが科せられることになります。まずは、厳罰化の方向自体は歓迎したいと思います。しかし、最近、電動アシスト自転車やキックボード、モペッドなどの新たなモビリティが出現し、それらの交通違反により怖い思いをしている人は増えているはずであり、やはり、対策としてはまだまだ不十分です。
ながらスマホと酒気帯びが11月から厳罰化へ
政府広報オンラインに先日、「自転車のながらスマホ」と「酒気帯び運転」に関して「罰則が強化される」とする趣旨の記事が掲載されました。
罰則強化!自転車のながらスマホと酒気帯び運転
―――2024年10月3日付 政府広報オンラインより
これは、自転車を酒気帯び運転した場合や、いわゆる「ながらスマホ」運転(スマートフォン等を操作しながらの運転)をした場合の罰則を強化するというもので、「ながらスマホ」については1年以下の懲役または30万円以下の罰金、酒気帯びについては3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
これについては警察庁のポスターもわかりやすいかもしれません(図表)。
図表 警察庁のパンフレット(クリックで拡大)
(【出所】警察庁)
新たなモビリティに対する規制や取締は十分か?
まずは、罰則強化自体は良いことです。
現実問題として、とりわけ都市部を中心に、「ながらスマホ」運転で危険な思いをしている歩行者は多いと思われるからです。
ただ、これに加えて少し考えておきたいことがあります。
電動アシスト付き自転車を筆頭に、ひと昔前と比べて速度性能が飛躍的に向上した自転車。
運転免許なしで乗れる電動キックボード。
自転車のような外観でありながら電動モーターを搭載した「モペッド」。
私たちは最近、街中を歩いていると、なにかと冷や冷やする機会が増えています。
多くの人が頻繁に目撃するであろう事例を列挙しておくと、これらのモビリティは最近、歩行者を縫うように歩道を明らかに高速走行しているケース(※自転車が多いです)、信号や一方通行を無視するケース、さらにはスマートフォン操作しながら運転しているケースすらあります。
危ないといったらありません。
著者自身の体験でいえば、この3ヵ月間に限定しても、信号無視で突っ込んできた自転車に轢かれそうになったことが2回あります。どちらも、とある幹線道路で車道側が赤信号、横断歩道が青信号になり、横断しようとしたところ、車道を走行している自転車が普通に赤信号を無視して交差点に進入してきたのです。
正直、警察当局はいったいなにをしているのか、という気がしてなりません。
このあたり、あくまでも想像ベースですが、こうした無謀運動が横行している理由としては、さまざまなものが考えられます。
たとえば最近流行のフード・デリバリー系の自転車の場合、時間内に配達しないとペナルティがあるのか、自転車で高速で突っ込んでくる傾向があります(無謀運転でベビーカーを押しているお母さんにぶつかりそうになり、悪態をついて去っていくのはだいたいフードデリバリー系の若い男です)。
また、車道を走行していて堂々と赤信号を無視していく自転車やモペッドなどの場合は、単純に、「赤信号では自転車だろうがなんだろうが、停まらないといけない」という事実を知らないのかもしれません(興味深いことに、赤信号を無視しているのは中高年の男が多いようです)。
さらに、電動キックボードで道路を逆走している者たちのなかには、その場に居合わせた警察官から「逆走ですよ!」と指摘されても、「何が問題なの?」といった雰囲気で開き直っているケースもあるようです(こちらは若い女が多い気がします)。
道路交通法規の知識の根本的な欠如
ただ、総じていえるのは、道路交通法に対する知識の根本的な欠如です。
冒頭に挙げた3つのモビリティ(電動アシスト自転車、電動キックボード、モペッド)のうち、最初の2つについては、基本的に運転免許なしで乗ることができます。また、ヘルメットの着用は努力義務とされ、ノーヘルで運転していても道交法違反として摘発されることはありません。
このため、実際には最低限の道交法知識すらなしに運転しているケースが非常に多いと考えられ、だからこそ初歩的な違反(例:赤信号無視、逆走)や危険・無謀な運転(歩道の高速走行など)が横行しているのではないでしょうか。
また、モペッドに関しては、法的には「自転車」ではなく「原付」ですので、これを無免許・ノーヘルで運転するのは、れっきとした違法行為です(当然、ナンバープレートの取り付けも必要です)。
なのに、残念ながらこのモペッドを使い、ノーヘル・ナンバープレートなしに、公道を堂々と運転している者は後を絶ちません(想像するに、これらの者のなかには、そもそも無免許でこうしたモペッドを所有している者もいるのではないでしょうか)。
正直、発見次第片っ端から摘発する以外に方法はないと個人的には思ってしまうのですが、残念ながら、警察当局が普段から積極的にこれらの違法(の可能性が高い)モビリティを取り締まっているフシはありません。
なかなかに、困った問題です。
受講修了証制度で代替はできないか?
もちろん、「ながらスマホ」「飲酒運転」などに対する罰則の根本強化は非常に重要ですし、また、対策としては有効でしょう。
ただ、抜本的なところで、そもそも無謀運転を可能にする法制度に問題がないのか、政策当局者にはいま一度、検討していただきたいところです。
違法モペッドを野放しにしていることは論外として、いわゆる「特定小型原動機付自転車」、「特例特定小型原動機付自転車」(電動キックボード)については、「16歳以上」という前提条件が付くにせよ、免許なしにで運転できること自体が適切なのでしょうか。
また、電動アシスト付き自転車についても、自転車とみなされるための規制自体は厳格に設けられているにせよ、やはり危険運転で自転車が歩行者などに怪我を負わせるリスクは従来より高まっているのですから、免許を持たない人に対する根本的な安全講習は十分といえるのでしょうか。
これに関しては、著者自身がかなり以前からときどき提唱してきた、「安全講習受講修了証」のような考え方を、そろそろ本気で検討してほしいところです。
これは、警察署や学校(中学校や高等学校など)で警察官が道路交通法規の基本的な内容を講習し、その講習会を終了した人に顔写真付きの「受講修了証」のようなものを渡し(あるいはマイナンバーカードに書き込み)、その講習会を終了した人しか運転できないようにする、といった構想です。
ここで著者自身が想定する「受講修了証」は運転免許証と異なり、「簡単な講習で、しかも無料で交付される」というものであり、その目的は「運転免許証を持っていない人にも道路交通法規を周知する」ことにあります。
そのうえ、違反すれば、その回数や違反の程度に応じて修了証を没収するようにすれば、危険運転を排除することができるのではないでしょうか?
このあたり、道路交通法規の改善には、今後も注目したいところだと思う次第です。
View Comments (3)
自転車の進化に法律が追い付ていない、ということでしょうか。
まず国土交通省を公明党から取り返す必要があるように思います。
法律ができても、取り締まりがされなきゃ意味無し