先日、当ウェブサイトでは、沖縄県が株式会社琉球新報社に対し、長期無利子貸付の実行を含んだ予算案を県議会に上程したらしい、とする話題を取り上げました。これについて、「ふるさと融資」の仕組みをもう少し調べてみました。結論的に言えば、これは利息の75%を日本国民全体の税金で、残り25%を沖縄県民の税金で負担するという仕組みであるようです。
(株)琉球新報社に対する経営支援
日曜日の『沖縄県が新聞社に対する長期無利子融資の支援を計画か』では、沖縄県が株式会社琉球新報社に対し、長期無利子貸付(約8.5億円)の実行を含んだ予算案を県議会に上程したらしい、とする話題を取り上げました。
沖縄県が琉球新報に8.5億円もの長期無利子貸付けを実行しようとしている―――。情実融資ではないか、県政と特定メディアの癒着ではないか、あるいは沖縄県から融資を受けた新聞社が、行政を批判できるのか、など、即座に疑問がいくつも浮かびますし、「反知事派」が過半数を占める現在の沖縄県議会で、そのような予算案が通る可能性がどれほどあるのか不明です。ただ、個人的には新聞社が公的融資に頼ろうとする事例が出て来たという意味で、新聞業界はついに一線を越えようとしているようにも見えます。沖縄県が新聞社への長期無利子貸... 沖縄県が新聞社に対する長期無利子融資の支援を計画か - 新宿会計士の政治経済評論 |
報じたのは石垣市に本社を置く八重山日報ですが、同記事によると問題の長期無利子融資は総額8億5300万円で、同社による印刷機更新費用(総事業費26億8200万円)の一部に充てられる見通し、とのことだそうです。
琉球新報に8億5千万円貸与へ 自民、県の予算案疑問視
―――2024/10/05 04:00付 Yahoo!ニュースより【八重山日報配信】
改めて指摘しておきますが、さまざまな意味において、おかしな話です。
そもそも普段、新聞業界は「我々は権力と対峙するのが仕事だ」、などとうそぶいておきながら、実際には無利子での融資を受けようとしているという事実自体、彼らが「権力と対峙している」ようにはまったく見えません。
「ふるさと融資」の仕組みとは?~総務省の天下り団体?~
ただ、それ以上に疑問があるとしたら、株式会社琉球新報社という会社はあくまでも私企業であり、その「私企業」に対し、県が特別に無利子で資金を貸与するのは、自治体から私企業への利益供与ではないかとの疑いが生じて来ることでしょう。
もちろん、この融資は形式上、違法なものではありません。八重山日報によると、「ふるさと融資」の制度を利用して行われるものだからだそうです。
この「ふるさと融資」とは、いったいなにでしょうか。
一般財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団)の『ふるさと融資とは【制度融資、無利子・無利息融資】』のページには、こんな説明が掲載されています。
「ふるさと融資制度は、地域振興に資する民間投資を支援するために都道府県又は市町村が長期の無利子資金を融資する制度で、ふるさと財団は地方公共団体の依頼を受け事業の総合的な調査・検討や貸付実行から最終償還に至るまでの事務を行っています。/ふるさと融資を行う場合、地方公共団体は資金調達のために地方債を発行し、その利子負担分の一部(75%)が地方交付税措置されます。/ふるさと融資の申込先は、事業地の都道府県又は市町村となります」。
「ふるさと財団」、いかにも総務省(旧自治省)の天下り先のにおいがプンプンと漂ってくる団体です(実際に調べてみると、たとえば同財団の末宗徹郎理事長は総務省自治財政局調整課長などを歴任していることがわかります)。
ポイントは利息を国民や県民が負担する
それはともかくとして、同財団の(無駄に容量が大きい)パンフレットなどによると、ポイントは次の通りです。
- 対象業者…「法人格を有する民間事業者」
- 貸付団体…地方公共団体(都道府県、市町村)
- 対象事業…「地域振興につながるあらゆる分野の民間事業で、新たな雇用が見込まれること」
- 対象費用…設備の取得等に係る費用
- 融資期間…5年以上20年以内(うち据置期間5年以内)
- 貸付利子…無利子(ただし、民間金融機関等の連帯保証<保証料>が必要)
- 融資財源…地方債(利子負担分の75%は地方交付税により賄われる)
…。
これは、なかなかに強烈な仕組みです。利息の75%を地方交付税で賄うということは、間接的には、利息の75%を国民が負担する、と言っているようなものだからです。
そもそも論として、同社は資本金1億円、2024年3月期の売上高は62億850万円に過ぎず、経常利益は330万円(前期比96.5%減)、純利益に至っては93万円(前期比96.3%減)(※)、そのような企業にとって、26.8億円という設備投資は、明らかに過大ではないでしょうか。
(※株式会社琉球新報社の財務データは株式会社琉球新報社のウェブサイトや沖縄タイムス・2024年5月31日 3:57付『琉球新報社は減収減益決算 専務取締役に松元氏』などによります。)
また、同社の従業員は2024年6月1日現在で255人なのだそうですが、沖縄県が8.5億円も融資したところで、100人、200人と雇用が生まれるものなのでしょうか。
地方債の問題点
そして、この「ふるさと融資」制度は貸付を行う自治体が財源として地方債を発行する、という仕組みです。
今回の融資の期間はよくわかりませんが、仮に10年だったとすれば、日本国債の利回り(コンスタント・マチュリティベース)が直近で0.886%であり、仮にスプレッドが10~15ベーシス程度だったと仮定すれば、年金利1%(8.5億円に対し年間850万円の利息負担)ほどです。
経常利益330万円の株式会社琉球新報にとって、年間850万円の利息負担をしなくて済むというのは非常に大きなメリットですが、その850万円のうちの4分の3(つまり640万円弱)が、私たち国民の税金から充てられることになります(残額は沖縄県民の負担です)。
さらには、新聞業界において売上高が短期的に改善する見込みがないなかで、8.5億円という融資が焦げ付いた場合には沖縄県庁などの損失となるでしょうし、沖縄県庁がその損失を負担しきれなければ、やはり私たち国民がその損失を負担しなければならない可能性を疑わなければなりません。
沖縄県ホームページによると、令和6年度の沖縄県の予算は当初予算額ベースで8421億円だったそうですが、この予算規模に照らし、8.5億円という金額は、決して少なくありません。
いわば、県民と国民の将来的な税金負担の可能性を高めながら、雇用創出効果すら疑われる融資で私企業の経営を助けるという仕組みを放置することが、国民経済にとって良いことなのかどうかは極めて疑問でもあります。
想像するに、この財団を巡っても、政治家の監視の目が十分に行き届いていないのではないでしょうか。
いずれにせよ、総務官僚(やその天下り職員)や沖縄県庁職員らが、政治の監視の目が届き辛いところで好き勝手な融資を行っている仕組みというのは大きな問題です。そして、それを八重山日報以外の新聞社がろくに報じないというのは、もっと大きな問題でもあります。
こうした点からは、国民から選ばれたわけでもない者たち(官僚やマスメディアなど)が不当に大きな権力ないし社会的影響力を握ること自体、極めて大きな問題があると思うのですが、いかがでしょうか?
View Comments (13)
本件に関し、予算委員会でどの党が村上誠一郎総務大臣に見解を質し、糾弾するか見もの。
本来であれば、自民党、維新の会に期待したいところですが、しないとすれば同じ穴の狢か。
総選挙に向けては非常に効果があると思うのだが、予算委員会が開かれないのでは・・・。
ここにメスを入れずに地方創成交付金倍増もドブに金を捨てるようなもの。
アンチの方面からでたはなしですから、どこまで真相をえぐっているのか、俄には判断できませんが、新首相の座に付いたかの人物が、なぜあれほど地方の自民党員の票を集められるかというと、地方創生担当として内閣府特命担当大臣の任に当たっていた約二年間、地方行脚を精力的に繰り返し、その地の企業経営者を集めては、補助金をバラ撒いて、従業員込みで自身を支持する党員集めに精を出していたとか。本当なら、国のカネ使って、自分の応援団を増やしていたと言われても仕方がないですね。
琉球新報のはなしと、一脈通じるような気がします。
補助金は、政治家と公務員がそれぞれの利益を図るために利用されているのないかという疑念を持たせる案件ですね。
地方も補助金を当てにする体質が染みついているようで、自立を阻害する大きな要因になっているように思います。
政治家はどの政党もお互いさまという事で黙認しているのでしょうか?
×当て
〇宛て
でした。
こんなこと自民党がしたら、、、、、
自殺テロごっこを全力で擁護する沖縄県と沖縄県紙が、お金の面でも強い繋がりを持つ事になる訳ですね。
いやぁ、反基地運動家達は韓国の労組みたいに暴行事件を起こしてもお咎め無しで沖縄社会を生きて行けそう。
まるでヤクザが仕切る社会ですね笑
報道しない自由を積極的に行使するマスコミに苛立ちを感じずにいません。
もしもこのふるさと融資が何ら問題ないものだ、と言うのであれば意見をしっかり伝えるべきです。
ひそひそと報道しない自由を行使して、利権に預かろうとするのは卑怯千万の振る舞いです。
高額な無利子貸付を県から受けるという事項は報道するに値しないささいな事なのでしょうか?
いつも楽しみに拝読しております。
琉球新報社を官報で検索してみたら、2021年7月掲載の減資の公告を見つけました。
資本金を1億円に減資して似非中小企業になりすまし、外形標準課税を逃れようとする節税策です。こんなことをしている企業を税金で助ける必要はないと思います。
ちなみに、公告に載っていた2021年3月期は、当期純損失が3億円弱になっていました。
口は出すな!カネは出せ!とはこれ如何に。
非難勧告(ひなん・かんこく)と云うが如し。
どこかの学術会議みたいですね・・。
対象事業の要件である「公益性」が疑わしいのはNHKとかとも同じですね。独立性を謳うのなら、金銭的にも独立してもらわないと困ります。公金を反社の活動に使われてはたまりません。
要するに錬金術なんだな…
それに長けているのが石破だと
怪しい制度ですよね。ゾンビ企業の延命に使われてたりして。
こんな制度知ってるのって三セクとか自治体行政と懇意な企業くらいじゃないんでしょうかね。
経営が苦しいわけではなくても、「あれおトクだよねー」くらいでお気軽に利用しているのカモ。
知る人ぞ知る制度って、たくさんあるんでしょうね。