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子宮頸癌ワクチン巡りNHKがSNSに責任押し付ける

ついに、NHKが「歴史改竄」を始めたのでしょうか。子宮頸癌への感染を防ぐHPVワクチンの接種を妨げてきたのがマスメディアの報道であるという点については、駒澤大学の山口教授をはじめ、多くの指摘がなされているところですが、これに対しNHKは「HPVワクチンを巡り、SNSで誤情報が拡散している」として、あたかもSNSにすべての問題があるかの報道を行ったようです。そのような報道を行う前に、NHKは自分自身を含め、過去のメディア報道について振り返ってみてはいかがでしょうか?

メディアが主導した子宮頸癌ワクチン追放運動

昨年11月の『子宮頸癌巡る朝日新聞記事にコミュニティノートの指摘』では、子宮頸癌への感染を防ぐHPVワクチンの接種の危険性を一部メディアが煽り、結果的に日本のHPVワクチン接種率が激減したとする話題を取り上げました。

コミュニティノートが、再び大手新聞社に「着弾」しました。朝日新聞が掲載した「15歳~39歳の世代の癌患者数の7割が女性で、乳癌や子宮頸癌が多い」とする記事に対し、「子宮頸癌への感染を防ぐHPVワクチンの接種反対キャンペーンを最も熱心に展開したのは朝日新聞です」、と指摘されたのです。とある朝日新聞の記事朝日新聞デジタルに15日、こんな記事が掲載されました。「AYA世代」のがん、女性が7割超 乳がんや子宮頸がん多く―――2023年11月15日 0時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より朝日新聞によると、国立がん研究センタ...
子宮頸癌巡る朝日新聞記事にコミュニティノートの指摘 - 新宿会計士の政治経済評論

具体的な論証はいくつもあるのですが、そのなかのひとつが、駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部の山口浩教授が2021年9月17日で『Yahoo!ニュース』に寄稿した『新聞はHPVワクチンをどう報じたか』です。同記事によれば、こんなことが指摘されています。

  • HPVワクチンは2010年度から接種の公的助成が行われ、2013年4月に定期接種が始まったものの、「副反応を訴える人々の声」を受け、同年6月には積極的勧奨が中止された
  • 1994年~99年度生まれの女性のワクチン接種率が70%ほどだったのに対し、2002年度以降に生まれた女性の接種率が1%未満へと激減した
  • 山口教授が2013年1月から21年8月までの期間、子宮頸癌ワクチンに関する朝日新聞の235件の記事を調べたところ、2017年までの記事のほとんどはワクチン接種に伴う副反応やそれに対する不安の声、その後被害者らが起こした訴訟に関するものだった
  • 2014年にWHOが「安全性を再確認」したと報告して以降、世界中でワクチンの効果などに関する肯定的な評価が出て来るにつれ、記事数が激減。しかもこうした流れを朝日新聞は報じていない

…。

NHKがSNSに責任押し付ける

何とも気になる話です。

山口教授は朝日新聞以外にも、たとえば読売新聞や中日新聞の記事に関する分析も行っているのですが、これらについてはリンク先記事で直接ご確認ください。いずれにせよHPVワクチンの接種率激減には、メディアの報道があったことに関しては、ほぼ間違いないといえるでしょう。

ところが、こうした「メディアが主導したHPVワクチン接種率激減」という歴史を書き換えようとする試みも出て来ているようです。

このポストは、『NHKニュース』が10月3日午前7時26分に配信した『子宮頸がんなどを防ぐHPVワクチン 多くの誤情報がSNSに』と題した記事を宣伝するものです。

これによると、このHPVワクチンについて「SNSで誤った情報が多く投稿されている」と主張。そのうえで、「接種するかどうかは公的機関などの情報に基づいて判断してほしい」とする専門家の意見を取り上げている、とするものです。

これに関し、NHKは次のように報じています。

『HPVワクチン』は接種後に体の痛みを訴えた人が相次いだことなどから、一時、積極的な接種の呼びかけが中止されましたが、有効性や安全性が確認できたとして2022年4月から積極的な呼びかけが再開され、現在、接種の機会を逃していた女性が無料で受けられる『キャッチアップ接種』が行われています」。

…。

NHK自身も2014年頃にHPVワクチン障害を報じた

これには、シンプルに驚きました。

上述の山口教授の記事からもわかる通り、積極的な接種の呼びかけが中止されるきっかけを作ったのは、マスコミ報道だからです。

NHKの報道だと、HPVワクチンの接種の積極的呼びかけが2022年4月から始まり、これに対してワクチンを巡る誤情報がSNSで拡散しているかのような印象を受けますが、これはこれまでのHPVワクチンを巡る流れと事実関係が合致しません。

実際、ウェブアーカイブによれば、NHK自身も2014年12月16日付で、『緊急報告 子宮頸がんワクチン接種後の障害』とする放送を行っているほか、2016年1月27日付『クローズアップ現代』ではワクチン行政を批判するコンテンツを放送しています。

緊急報告 子宮頸がんワクチン接種後の障害

―――2014年12月16日付 ウェブアーカイブより

“副作用”がわからない? ~信頼できるワクチン行政とは~

―――2016年1月27日付 NHK『クローズアップ現代』より

そのうえで、たとえば名古屋市ウェブサイトの資料【※PDFファイル】によれば、こんな事例が取り上げられています。

娘は現在15才で、中2の頃2回の接種で身体が痛い、(筋肉痛)だるいなど、10日程訴えていたのを覚えています。その頃、ちょうど学校に行けず下半身が動かない副作用の娘さんがいるとNHKで見て怖くなり、医者と相談し3回目の接種をやめました。姉(3才上)の方は特に痛さは訴えませんでしたが、次女は平均の女子と比べ10cm身長が低く、体重もとても軽いです。なので負担がかかったのかとも思います」。

つまり、NHK自身を含めたマスメディアの報道が、子宮頸癌ワクチンの接種率を大きく下げるのに寄与していた、というわけです。

それに2010年代前半といえば、もちろん、すでにSNSなどは存在していましたが、社会的影響力など現在と比べると微々たるものであり、「不安の声」を積極的に報じて来たのはマスメディアです。

NHKはネットを批判する前に、まずは自分たちを批判したらどうでしょうか?

Xの「コミュニティノート」無視するNHK

しかも、NHKはSNSについて、性懲りもなく、次のように報じます。

このワクチンについて、SNSでは『打つと不妊になる』などといった誤った情報が拡散し、なかにはXで100万回以上閲覧されているものもあります」。

この点については、事実です。

実際のところ、X上で反ワクチン派が誤ったデマを飛ばしている例も多く、なかには「バズ」を起こしているものもあります(これに対し、著者自身もこれまでX上で何度か「反ワクチン派」と思しき者たちの支離滅裂な主張に反論を試みたこともあります)。

ただ、NHK自身が意図的に無視しているのは、少なくともXに関していえば、「コミュニティーノート」という機能が大きく活躍しており、最近だと明らかに誤った情報に対しては、このコミュニティノートで背景情報の注記が付されるようになりつつある、という点でしょう。

じつは、本稿で引用した外部リンクのなかにも、NHKのポストに付いたコミュニティノート(案)などを参考にしているものがあるなど、このコミュニティノートの威力は絶大です。市中の一般人が協力者として、ウェブ上の膨大な情報からファクトを探し出して来て提示してくれることが多いからです。

いずれにせよ、「HPVワクチン接種率急低下」という社会問題の原因をマスメディア自身が作ったという歴史を改竄し、SNSに責任を押し付けようとするかのごときNHKによる試みは、とうてい、許せるものではありません。

しかもNHKは「公共放送」という仕組みを利用してそれを行っているわけですから、なおさら悪質です。

とうよりも、当ウェブサイトではこれまで何度も指摘してきたとおり、NHKには、放送しようとしている番組が公共放送に相応しいものであるかどうかを事前に審査する仕組みが存在しません。

このあたりも現代社会における大きな問題点のひとつであるといって良いでしょう。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 自分達の記事で世論を動かす・・・というのはマスコミにとって蜜の味。
    愚民共の意識を操作して上流階級であるという自負を得られる格好の場です。

    ついこの間の米騒動も同じです。
    江戸時代に行われた打ちこわしと同じように
    米が無くなるぞー、それ買い占めろー!
    おや、政府が備蓄米の名の元に米を貯蔵しているぞー!
    この悪魔め!さっさと米を吐き出せ!
    市場価格?そんなもの知ったものか、とにかく価格を下げろ!農民の暮らしなんて知らねぇ!
    散々煽り報道で状況が悪化しました。

    本来であれば一時的な品薄→改善で収束した問題のはずです。
    ですがマスコミは政府やJAに責任転嫁していますよね。

    マスコミ内で相互批判をし合うのであれば問題は無いです。
    ですが、マスコミ同士はスクラムを組んで庇い合います。
    不祥事は隠蔽されるのです。

    報道の自由度を阻害しているのでは果たして誰でしょうか?
    それはマスコミ自身でしょう。
    自身の権力と利権を守るためです。

    •  対象の米騒動は発生元の某県で誇らしく語り継がれてますが、デマに先導された結果だとすれば「恥ずべき黒歴史」なのではないでしょうか。当該地ではそれについて検証したことがあるのでしょうか。

  • NHKもSNSのひとつになったのかも。

    昔は「あなたとは違うんです!」m9(`・ω・´)

  • もし子宮頸がんワクチンの危険性が有効性を上回ると証明された場合、NHKは、「危険性をSNSではなく、NHKが警告してきた」と歴史改ざんを行うのでしょうか。

  • まさに、「どの口が言う」です。
    NHKは、個人情報をさらすという卑劣な手段を使って医師であり医療ジャーナリストでもある村中璃子氏とそのご家族を抹殺しようとしました。しかも、自らは手を汚さずに国民にそれをやらせようとしました。
    日本のメディアの報道せいで、いったいどれだけの命が失われたでしょうか。
    恥を知りなさい。

  • 毎度、ばかばかしお話を。
    NHK:「重要なのは視聴率。だから昨日と今日。今日と明日で言っていることが違うのだ」
    民放でも成り立つな。

  • 「送りっ放し」と比べれば、十分とはいえないものの、縮刷版を発行したり各地の図書館に紙が保存されていて多少なりとも検証できたりする新聞のほうが、まだましに思えます。

    •  どことは言いませんが、縮刷版が白抜きになってるか所のある新聞があるからチェックする際は要注意ですな。

  • >子宮頸癌

    今でも冷静になれない項目です。
    私の姉は2年弱前、原発不明肉腫でこの世を去りました。 最初は腎臓に急拡大した原発不明肉腫でしたが、この辺は医者は隠すのですよね。 普通「余命」何月とかは聞きましたが、「予後」という用語を初めて聞きました。 あまりにも恐ろし過ぎて「余命と予後の違いは何ですか?」という質問は出来ませんでした。 

    最初は子宮発ではないと思っているとの担当医でしたが、数か月後に担当医(部門)が変わり最終的には ここ発の肉腫だったとの結論ででした。  CTでも分からなかったことです。

    ガンは表面にできる「デキモノ」、肉腫は筋肉内にできるガン細胞。 取り除こうとしても、肉腫はガバーッと大部分を取り除かないといけない事実を知りました。 ネットで、、、

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