後年の記録も兼ねて、令和のコメ不足を振り返っておくならば、端的にいえば「パニック消費者の異常な消費行動」がその最大の原因であると結論付けることができるでしょう。こうしたなか、SNSの報告によれば、コメを買い占めた者たちが店にやって来て、「今年の新米と交換しろ」、などと迫っているケースがあるのだそうです。なかなかに強烈な反応です。
目次
令和のコメ不足と「ホテルのお湯」理論
「『令和のコメ不足』の正体は、パニックに陥った消費者の異常な購買行動である』―――。
これについては、何度も何度も強調したいと思う論点のひとつです。
あらかじめ『【やっぱり】自民党総裁選開始でコメ不足は完全解消へ』などでも「予言」しましたが、自民党総裁選などが大きな話題となったためでしょうか、想像通り、遅くとも先月中旬頃までには、少なくとも著者自身の周囲では、コメ不足は完全に解消しました。
現時点においては、(昨年よりも値段は上昇しているとはいえ)おおむねどこのスーパーでもコメは比較的簡単に手に入るようになっているからです。
これについての定量的検証については農水省のレポートが出て来るのを待ちたいと思いますが、当ウェブサイトではこれについて「ホテルのお湯理論」というものを考案しています。
「ホテルのお湯理論」とは、いったいなにか―――。
まずは、「前提条件」を確認しておきます。
ホテルのお湯理論:前提条件
あるホテルには毎日、客が100人宿泊し、1人あたり平均して100リットルのお湯を使うことがわかっている。また、このホテルでは1日12,000リットルのお湯を沸かすことができるため、客が1人あたりに使用するお湯の量が1日100リットルなら、すべての客が十分にお湯を使える。
たった10人が異常行動をとるだけでホテル全体でお湯が不足する!
この前提条件をもとに、簡単な設例を置いてみましょう。
ホテルのお湯理論:お湯不足のうわさ
あるとき、「ホテルでお湯が不足している」とする噂が流れた。このとき、100人の客のうちの1割にあたる10人がパニックを起こし、本来ならば100リットルで済むところ、5倍の500リットルのお湯を浴槽に溜めた。このときに何が生じるか。
ホテルのお湯理論:お湯不足が発生
このとき、必要量の100リットルを大きく超える500リットルのお湯を出した客が10人いたため、ホテルでは1日の給湯能力(12,000リットル)のうちの5,000リットルが使われてしまい、7,000リットルのお湯を90人が分け合わなければならなくなる。
…。
つまり、この設例では、100人の宿泊客のうち10人が異常な取水行動をとったため、残り90人がお湯不足に陥ったのです。ひとり100リットルずつ使えば全員が問題なくお湯を使えたのに、500リットルも取水した10人のせいでホテル全体でお湯が不足したからです。
しかも、この500リットルを取水した者たちも、実際に使うお湯は100リットルです。
余った400リットルを、お湯不足に苦しむ人に分け与えるというのは非現実的です。衛生的に考えて、いったん水道管から出たお湯をバケツなどでお湯不足の人の部屋に運び込むというのは難しい話ですし、だいいち、お湯は取水した瞬間から冷め始め、数分も経てばすぐぬるま湯になってしまいます。
備蓄米放出が無意味である理由
コメ不足が生じるメカニズムも、これとまったく同じです。
コメは生鮮食品であり、精米したらすぐに品質が低下します(お湯を水道管から出せばすぐぬるま湯になってしまうのと同じようなものです)。
また、通常、コメはもみ殻付きまたは玄米の状態で保管されていて、精米業者が販売数量を予測し、計画的に精米して出荷しているのですが、逆にいえば、精米能力は限定的です(仮に水が十分にあってもお湯を沸かす能力が十分でないようなものです)。
「コメ不足なんだから、政府は備蓄米を放出しろ」、などと主張する者がいましたが、このような主張をする者は、コメの流通の仕組みを全く理解していないとしか言いようがありません。先ほどのホテルの例でいえば、「お湯が不足しているから給水車を出して来てホテルに横付けせよ」、と主張しているようなものだからです。
当たり前ですが、このホテルで生じているのは「お湯不足」であって「水不足」ではありません。したがって、給水車を出されたとしても、意味はありません。そこから出てくるのは水であり、お湯ではないからです。
政府備蓄米に関しても、これとまったく同じことがいえます。
コメ不足は一部のパニック消費者による異常な購買行動が原因であり、彼らの異常な購買行動が精米能力と流通能力を上回ったものであるため、世の中の(精米前の)コメの総量は十分にあるにも関わらず、スーパーマーケットなどからコメが消えてしまったというのがこの「令和のコメ不足」の正体なのです。
実際、回転ずし大手チェーン店や牛丼大手チェーン店を含め、外食産業でコメが不足しているとの事実はありませんでしたし、コメ不足の最中も、スーパーの総菜コーナーではコメをふんだんに使った食材(弁当、寿司など)が大量に並んでいました。
その意味では、コロナ禍初期のトイレットペーパー不足、マスク不足、消毒液不足とまったく同じ現象が、例脇に繰り返された、ということに過ぎないのです。
「新米と取り換えろ」という非常識な要求
こうしたなかで、SNSでは少し前から、令和5年産米を買い占めた者たちが店にやって来て、「新米と交換しろ!」、などと高圧的に要求する、といったことが話題になっているようです。
なかなかに強烈な話題です。
当ウェブサイトでも何度となく警告しましたが、コメはそもそも生鮮食品であり、精米してから1~2ヵ月で風味が落ちるため、そうならないためにはなるべく早く消費することが必要です。
しかし、一般的なコメ袋(多くの場合は5~10㎏)を消費するのは、なかなかに大変です。
5㎏は約33合、これをすべて炊けば、お茶碗に換算して70杯分程度と考えられ、そこから5㎏の袋をすべて消費するまでの期間を逆算することができます。老夫婦の世帯で、自宅でコメを炊くのが1日1食という場合、下手をすると1日に1合ちょっとしか消費しない、というケースも考えられます。
古米になろうが虫がわこうがキッチリと食べきってください
こうしたなかで、Xで少し前に流行ったポストが、こんな趣旨のものです。
てめえが犯人か
「夫の実家は老夫婦2人暮らしのはずなのに、コメが40㎏くらいあったので、『お義母さん、こちらだとコメは買えるんですね』と言ったところ、義母からは『違うの、お父さんと手分けしてあちこちのスーパーで開店と同時にコメを探して買い溜めたの』と言われ、『てめえが犯人か』と言いそうになった」。
(【出所】Xポストを参考に加工)
コメ40㎏ということは、お茶碗に換算すれば520杯(!)にも相当します。
一般に1日に1合少々しかコメを消費しないとされる老夫婦世帯のケースだと、40㎏のコメをすべて消費するまでに必要な期間は、少なくとも半年、下手をすると1年前後の時間がかかることになり、その間、すっかりコメの風味は落ち、下手をすると虫がわきます。
ただ、風味が落ちようが、虫がわこうが、コメを買い占めた者たちはくれぐれも農家の人たちが丹精込めて育てたコメを捨てたりせず、キッチリと消費し切っていただきたいところです。また、消費し切れないコメを子供世帯などに押し付ける、といったことも控えていただきたいところです。
余談ですが、令和5年産米は店頭でほとんど手に入らなくなってしまいました。少し高いですが、多くの場合、店頭で売られているのは令和6年の新米です(著者自身の近所の某スーパーでは、令和6年産米が山積みで売られています)。
今年はやたらとご飯が美味しいと感じるのは、決して気のせいではないのかもしれない、などと思う次第です。
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何故、プロの手を離れて素人の手に渡った生鮮食品の返品交換に応じられないか。
理由その1 あなたが毒を盛っていないという保証はないから。
理由その2 あなたがどんな状態で保管していたかが不明だから。
理由その3 古米と新米を等価交換できるわけないでしょ。
馬鹿だから買い占め買い溜めに走り、馬鹿だから古米と新米の等価交換を要求する…物理的に生まれ変われば良いのに。
そういう方々、「倫理的・霊的に生まれ変わる」ことができるといいですね(^^;
トイレットペーパーの買い占め、マスクの買い占め、私の印象はまず最初に動いているのは70歳台が多いように思います。レジで大声で怒鳴っているのも大体70歳台です。老害と言えば80歳台を思いますが、実は70歳台が多いと思います。
>匿名 さん
2024/10/02 11:52 11:52
>トイレットペーパー
は
>買い占め、
でなく実需だったのです。
>マスクの買い占め
は、
あの頃、米国ネットで
中華人民共和国人民が
『大量にマスクを買い占めて中華人民共和国に送付した私は愛国者』
その昔、米不足があった時も買いすぎたコメを虫が湧いたので交換しろという事がありましたよ。
当時は今みたいにスーパーではなく、個人の米屋さんがほとんどでした。
でどうなったかと言うと、お客さんから【交換してくれなければよそで買う】と言われて泣く泣く交換していましたね。
あのお米はどこに行ったのだろう?
古米と新米を交換しろ、なんて人が今の日本に居るのは信じ難い。
飼料屋さん、煎餅屋さんに持っていくか、精米機で表面剥いて大吟醸で食べるか
ですね。
毎度、ばかばかしいお話を。
○○(好きな言葉を入れてください):「古米と新米を交換しないと、よその米屋で買うぞ。このことをテレビ番組で報道したら、別の番組を視るぞ」
なるほど、SNSでネタを探しているテレビ番組が報道しないのは、これが理由なのですね。
蛇足ですが、自民党を支持するのは日本民族が劣等民族だそうですが、だとすると、「新米と交換しろ」と言っているのは自民党支持者で劣等民族なのですね。
念のため、自民党を支持するのは列島民族ですよね。
https://shinjukuacc.com/20240929-02/
それが悔しくて、劣等民族と揶揄して炎上して発言を取り消したのが共同通信出身のオ・エ~。
毎度、ばかばかしいお話を。
某共同通信出身者:「「新米と交換しろ」と言うのは、劣等民族である。自民党支持者は劣等民族である。だから、「新米と交換しろ」と言っているのは、自民党支持者である」
劣等民族だか列島民族だか知りませんが、イシバシ・ゲル政権になって今後また韓国に対して好き勝手邦題を許す「Let(レット)」民族になりそうなのが心配
備蓄米の放出の件については、口先介入すれば良かったのかなと思っています、示唆するだけでマインドは変わるものだと思うからです。
また、私の知る範囲では、都内23区ではお米は売っていました、そして神奈川中部では早々に売り切れてました。
推測ですが、自動車での買い物がメインとなる地区では売り切れているのではないかと思います
SNSでは、お米の所有量を自慢する書き込みが散見されました、スルーしましたが、何気無い発言や無自覚な行動が消費というものを左右するんだと気付き勉強になりました。
なんて言うか
日本人もここまで劣化したかと思うと悲しくなりますね。
いつの間にこんな愚かな連中が湧いて出るようになってしまったのか?
新米と替えろ?恥ずかしいと思わないのかね?本当にコイツら日本人か?
>日本人もここまで劣化したかと
本当に日本人だと!
日本人なら
あの時期にお米を買い占めても大損すると誰でも分かってましたよ。
正月とかせめて端午の節句あたりなら買い占めたお米を売り捌けると思うかもしれないが、あんな新米が出回る寸前に買い占めなんて愚かなことはしませんよ、日本人は。
「昨日買った刺身と、さっき売り場に並んだ刺身を交換しろ」
「うちのBBAと、そこの生娘を、等価交換しろ」
「外れた宝くじと、来月が当選発表の宝くじを交換しろ」
たしか中東のえらい人が昔に言ってましたね。
召使「おかえりなさい。あなたから預かった1タラントを、大事に土に埋めておいたので、いま1タラントを返します。」
主人「たわけっ!運用せん奴はクビじゃ!」
左翼とか役人は、金利とか機会費用という概念が理解できないんだろうな。
たわけっ!
なんなんでしょうね?これは。
買った生ものを時間経ったあとで新しいものに交換してもらおうなどと言える思考回路。
これまでの人生でどんな情報を摂取して生きてきたらそうなれるんですかね?
石高制度の中で生きてきて、米を貨幣とイコールで結びついてるのか?
新米に交換しろと持ち込んだ客を持って来た米の重量別にワースト100くらいまで表彰という口実で日本中にさらしてみてはいかがだろう?
顔写真付きで