現代ビジネスが30日、高市早苗氏が自民党を割って某政党に合流し、そこにかなりの議員が合流するかもしれない、などとする記事を配信しました。端的にいえば、さすがにこれは少々無理があります。もちろん、私たち外部者が高市早苗氏の本心をうかがい知ることはできませんので、高市氏が本当にそういうことを考えている可能性はゼロではありません。しかし、残念ながらこの記事が述べている「高市新党結成」云々に関しては、根拠薄弱です。
目次
現代ビジネス「高市氏が新党結成か」
「ちょっと、さすがにこれは酷いな」…。
日本は言論の自由が認められている国ではありますが、裏を返せば、批評の自由もまた認められている、ということであるはずです。こうした観点からは、この「批評の自由」を行使したいと思った記事があるとしたら、これかもしれません。
【独自】「総務会長」を蹴った高市早苗が「新党結成」か…百田尚樹と河村たかしとの共闘も《渦中の人物に直撃》
―――2024/09/30 07:59付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス】
「独自」と銘打っていますが、現代ビジネスの取材に基づく記事だそうです。
記事表題で「高市早苗(氏)が新党結成か」、などとあり、冒頭の節では『幹事長か財務大臣でないのなら』、とあります。要するに、高市早苗氏が石破茂・自民党総裁(明日、首相に就任予定)から要職を任せてもらえないなら、高市氏としては自民党を割って新党を結成する(かもね)、というものです。
根拠は高市氏を支持したA議員の発言
この点、著者自身は高市氏と個人的な面識はありませんので、高市氏が現時点で何を考えているかについてはわかりません。もしかしたらこの記事の通り、本気で自民党を割るつもりなのかもしれませんし、もしかしたらそんなつもりは全然ないのかもしれません。
ただ、現代ビジネスが何を根拠に、「高市(氏)が新党結成も…」、などと報じているのかについては気になります。
現代ビジネスによるとこの「幹事長か財務大臣でないのなら」、は、「1回目も2回目も高市氏に投票したA議員」の、「いまだ憤懣やるかたない表情」での、こんな発言が根拠となっているようです。
「石破氏は高市氏を重要ポストにつけて当然。最低でも幹事長か財務相しかなかった」。
石破氏の肩を持つわけではありませんが、「最低でも幹事長か財相」というのは、少々厚かましい話ではないでしょうか。
こうしたなか、現代ビジネスの記事では、高市氏が幹事長に就任しなかった理由について、石破氏の推薦人であるB議員のこんな発言も取り上げています。
「総務会長は政調会長より格上の存在なのだから、なぜ断るのか。幹事長を所望したというが、解散総選挙も近い以上、幹事長は政治とカネの問題に直結する。総裁選の推薦人に裏金議員が13人いた高市氏を就けるわけにいかないのは当然のことでしょう。そもそも高市氏は自ら『飲み会は苦手』と言っており、党をまとめる立場の幹事長はきつい」。
この発言も、なんだかよくわかりません。
石破総裁が高市氏に幹事長職をオファーしなかった理由としては、それなりに筋は通っているのですが、肝心の「高市氏が幹事長職を所望した」というくだりについては真偽不明ですし、なにより「なぜ断るのか」の部分については、本当に自民党議員がそう述べたのか、ちょっと疑問です。
高市氏や小林氏が要職起用を辞退した合理的な理由
もちろん、著者個人の意見として見れば、高市氏には要職として活躍していただきたいという気持ちも非常に強いのですが(たとえば幹事長でなくても政調会長など)、ただ、高市氏が石破氏の「総務会長」というオファーを受けなかったことにも、ちゃんとした意味があります。
『自民党は「石破体制」を挙党一致でしっかり支えるべき』などでも指摘しましたが、自民党は関連上、総裁選に出馬するためには、閣僚や党4役に就いていないことが必要です(今回のように、現職の総理・総裁が出馬しない場合は例外)。実際、いまの石破総裁や岸田首相もそうでした。
もちろん、いったんは入閣(ないし党役職を引き受ける)などしておきながら、途中の内閣改造・党役員人事で要職から外れる、といった選択もできないわけではありません。
ただ、組閣当初から閣僚入りしない、新執行部発足時点で党幹部に就任しない、というのは、自民党有力政治家の慣例に照らし、異例ではありません。高市氏(や小林鷹之氏)の「入閣しない」「党幹部入りしない」というのも同様、なにもおかしなものではないのです。
大変失礼ながら、現代ビジネスに「苦々しげに」語ったB氏が、自民党議員でありながらこうした慣例をご存じではないとも思えません。
なお、高市氏に外相・防衛相などの要職を任せられない理由として、B氏は「靖国参拝」を挙げており、また、いわゆる「小西文書」問題を巡って高市氏が総務省の文書を「捏造」と言い切ったことを受け、「霞が関と折り合いをつけてやらねばならない財務大臣も無理でしょう」とも指摘したそうです。
もしこの「B氏」とやらが実在するにしても、ちょっとインタビューをした相手が偏り過ぎているのではないでしょうか。
「高市氏の新党結成」とは?
ただ、それ以上に驚くのは、高市氏が新党結成に踏み切る可能性がある、というA議員の言い分です。
「A議員はさらに新党結成まで口にする。『もし高市氏が自民党から保守層中心の新党結成でも走れば、総裁選の結果をみてもわかるように、かなりの議員がついていくはずだ。そういう党がすでにあるではないか』」
…??
はて?
「保守層中心の政党」なんて、ありましたっけ?
著者自身の理解で恐縮ですが、少なくとも国政政党の中で、最も保守的な政治思想を掲げる政党は自民党であり、人により異論があるかもしれませんが、日本維新の会や国民民主党も、見方によっては穏健な保守政党に見えなくもありません。
しかし、「オーガニック信仰」で知られる自称保守の奇妙な政党か、それとも「左に行き過ぎて逆に思想的に右側から戻ってきた」政党を、一般社会通念に照らして「保守政党」と呼べるのかは微妙でしょう。
こうしたなか、現代ビジネスが名を挙げるのが、政党名に「保守」の文字を使用した、作家と政令指定市の市長が共同代表を務める政党だそうです。この政党も、いちおう「保守」を名乗ってはいますが、少なくとも現時点において、「国政政党」ではありません。
国政政党としての実務感覚、ありますか?
これに関し、現代ビジネスがこの政令市市長にインタビューをしたところ、この市長は次のように答えたそうです。
「解散総選挙になれば、<もうひとりの共同代表>にも『あんたも出なあかん』と言ったところだ。<作家>氏も総裁選は高市氏を応援しとったそうだ。古い話だが、ワシは新進党時代に高市氏と一緒にやっとりますからね。もし高市氏がなんらかアクションを起こすなら、いろいろ話し合えればと思いますね」。
もし高市氏が何らかのアクションを起こすなら、この政党としては「合流を歓迎する」のは当然かもしれません。
しかし、現実問題として、実務感覚のない素人(失礼!)の方が共同代表を務める政党に、高市氏が「かなりの数の議員」を引き連れて移籍したりするものでしょうか?
以前の『【長文注意】高市早苗氏演説全文を文字に起こしてみた』でも取り上げましたが、高市早苗氏といえば、実務感覚の塊のような人物です。
そんな実務畑の人物が、国政に関する実務知識(法律、経済、金融、語学など)を欠いている人たちと一緒に新党を作るというのは、自然に考えて突拍子もない話ではないでしょうか。
それに、現在の衆議院議員総選挙の仕組みは、小選挙区・比例代表並立制であり、少なくとも衆院選では大政党の方が有利です。そのことを最も深く理解しているのは、当事者である衆院議員の皆さまであるはずです。
もちろん、高市氏が心の奥底で何を考えているのかは、私たちにはわかりませんが、それでも残念ながら、この記事が述べる「A議員の発言」だけでは、高市氏が自民党を飛び出して(保守を自称する)某政党に合流するという可能性は、決して高くないでしょう。
いったい誰に聞いたのでしょうか?
しかも、記事の問題点は、これらだけではありません。
記事では「麻生派のC議員」が「麻生派は高市氏に投じたことで、派閥全体が冷遇されている」、などと述べているのですが、実際の閣僚予測名簿で見ると、少なくとも現・麻生派から2名、元麻生派から2名が入閣しています。
「冷遇されている」のはむしろ、旧安倍派(旧清和会)や旧宏池会(旧岸田派)のほうでしょう。
このうち、旧宏池会に関しては、林芳正・現官房長官が留任し、政調会長に小野寺五典・元防衛相が就任するなど、まだ閣僚・養殖への起用は見られますが、旧安倍派に関しては、少なくとも昨晩の時点で、入閣見込みの人は見当たりません(ある意味では当たり前の話かもしれませんが)。
このように考えると、大変失礼ながら、この現代ビジネスの記事は「いったい誰に聞いて執筆したのか?」という気がしてならないのですが、いかがでしょうか?
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次の選挙で自民党は議席を減らすだろう。
大きく減らすと石破の引責辞任、石破内閣総辞職、高市総裁ということになるかもしれない。
それを考えて要職を受けずに様子見。今の時点で新党は現実的ではないように思えるが。
脱安倍派。さらば清和会王朝。これが新政権のキーワード
「高市だけはイヤだ」と言うオールドメディア関係者は少なくないでしょうから、
「高市よ、こんな形で自滅してくれ」と言う願望記事なのかな?と思いました。
こんなことになったら面白いなというマスコミの願望を記事にしただけでしょう。
今回の総裁選挙で、自民党は大変分かりやすい形に分かれたと思います。
今回の結果が、これから自民党がどのような政党に変わっていくのかを注視したいと思います。
自由民主党と立憲民主党の政策の差が無くなって、区別がつかず、どっちでも良くなった。
これらと区別できる政党があった方が、有権者としてはありがたい。
これは現代ビジネスのコタツ記事だろう。真に受けない方がいい。
今後の自民党と保守
誠に残念ながら、今回の総裁選では、高市大臣は負けてしまいました。2次投票での逆転負けというのは、党内のリベラル意識の高まり、外交関係のリスクを恐れたため、といえるでしょう。
外交圧に向かう覚悟がなければ、国の独立や繁栄はいつまで経っても平成のまま。それで良しとした、自民党議員がいかに多かったかということ。
しかし、周辺国による安全保障環境の悪化や、野党の中道保守化を踏まえると、今はリベラルか保守かを都合良く変えるであろう石破政権で良かったのかな、とも思います。
今の自民党は保守政党ではなく、保守政治家が少しいる政党です。この数年間の党のリベラル化を修正するには、安全環境の悪化やライバルの存在など、党外の圧力が活性化に必要でしょう。
また、石破氏が改憲(9条改憲は良いとして)のために、財務省の増税要求を飲むことも考えられます。
この結果、自民党の支持はダダ下がりしますので、その時の状況次第では、自民党が野党になる可能性もあります。また、石破政権には、党内野党が山ほど居ます。政権が長持ちする要素が、私には見当たりません。
高市議員に大きなうねりが来るのは、その時ではないでしょうか。
石破大臣の支持層は、総裁選の得票でも分かる通り、非都市部です。しかし、安全保障環境が悪化すれば、侵略国の脅威に直面するのは、日本海側でもあります。
大陸の脅威が大きくなったり具体化したときに、世論に押されて、初めて党内が一致するものと思います。
残念ですが今は、まだ機が熟していなかったのでは、と思いました。
私は、不承不承ですが自民党員を続け、高市議員を応援し続けます。
大変わかりやすいです。ありがとうございます。
納得する考察と思います。
ただ私は今回の総裁選で自民党には失望してしまいました。
中国共産党の台湾侵略が2027年に実施されると言われています。
もう3年を切っている状況でこの状況では、法整備も間に合わずもはや手遅れである様に思いました。
自民党員を続けられるとのことで、どうか頑張って下さい。
>いったい誰に聞いたのでしょうか?
本人の守護霊に聞いたのでしょうね。
敗北の経験も「拳拳服膺の糧」として次回に活かせれば成果です。
いまは、「国益に資する矜持で時を待つ」のがいいと思います。
総裁選での種まき(周知)に成功した高市氏。その真価が認識されるのはこれからのこと。
新たに発足する石破政権の一挙手一投足が「高市イズムの答え合わせ」なんですものね。
>石破氏の肩を持つわけではありませんが、「最低でも幹事長か財相」というのは、少々厚かましい話ではないでしょうか.
さあて,財務相はともかくとして,幹事長にすべきだという意見は一理あり,必ずしも厚かましいとは言えません.
というのも,石破さん自身,2012年の党総裁選に出馬して決選投票で安倍さんに敗れた際,安倍新総裁から石破さんは幹事長という大役を任されたのです.
要するに,石破さんは自分が敗者になった時に安倍さんから与えられた厚遇を,自分が勝者になった今回,敗れた高市さん(しかも高市さんの目指す方向は安倍さんが生前に目指した方向に全議員の中で最も近く高市さんは安倍政治の後継者と言っても過言でない)には与えようとしない器の小さな人間だったということです.
こういう狭量な人間が国民の大多数を幸せにする政策を考え出し実行できるとは全く思えない.
(そもそも仲間を後ろから撃つような真似を繰り返す人間はそれ以前であるのも事実だが)