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自民党は「石破体制」を挙党一致でしっかり支えるべき

連日の「石破ネタ」で恐縮ですが、どうしても記しておきたいことがあります。まだ始まってすらいない石破茂政権を巡り、「石破(氏)で日本はお終いだ~」、は、少し早すぎます。私たち有権者の側に求められるのは、石破氏が「論功恩賞人事」ではなく、「適材適所人事」ができるかどうか、悲観もせず、さりとて楽観もせず、まずはしっかりと見極めるという態度ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

どうしても言っておきたい:好き嫌いと成果は別物

金曜日の自民党総裁選を制したのは、石破茂氏だった―――。

これについては『総裁選で石破茂氏が当選…自民党政権の継続性に期待を』でも「速報」的に取り上げたとおりで、著者自身は「高市総理誕生」を前提にした予定稿を慌てて書き換えたため、『高市早苗氏、新総裁に選ばれる』という節タイトルがそのまま残ったというオチもつきました(現在は修正済み)。

連日の「石破ネタ」で恐縮ですが、どうしても記しておきたいことがあります。

それは、「石破(氏)だから日本はお終いだ」、「もう次の選挙では自民党には絶対に投票しない」、といった短絡的な発想をしないでいただきたい、というお願いです。

この点、当ウェブサイトをご愛読くださっている皆さま方はなんとなくお気づきでしょうが、著者自身、石破茂氏のことは、「好きか嫌いか」で問われれば、明確に「嫌い」と即答できます。

これにはさまざまな理由があるのですが、それらの詳細について解説し始めるとキリがないうえに、正直、あまり生産的でもありませんので、本稿ではとりあえず割愛します。

しかし、もうひとつ強調しておきたいのは、「個人的な人の好み」と、「その人が総理・総裁に就任することで日本がどうなるか」という論点は、まったく別物である、という事実です。

まず、石破氏は今回、なんらかの不正によって自民党総裁選を制したわけではありませんし、自民党が党則で定めた正式なルールに則って、正々堂々と政策論争を戦わせるなどし、その結果として誕生したのが石破茂総裁(≒石破茂「首相」)です。

そうであるならば、私たち有権者としては、まずはその自民党の選択を尊重するのが筋であり、そのうえで、どうしても今回の自民党総裁選に納得がいかないのであれば、次の選挙では自民党以外の政党や候補者に票を投じれば良いだけの話です。

だからこそ、石破政権の組閣、党役員人事については、まずはしっかりと見定めるべきでしょう。

自民党はむしろ、任期満了まで石破体制をしっかり支えよ

それに、著者自身は石破茂氏という人物、端的にいえば「嫌い」ですが、だからといって「自民党内で石破下ろしが始まってほしい」とはまったく思いません。むしろ、自分たちで総裁に選んでおきながら、その自分たちで選んだ総裁を引きずり降ろそうとする動きが出て来たならば、そのときこそ自民党に幻滅します。

著者自身が自民党の各議員に心から期待するのは、まずは自分たちで選んだ総裁なわけですから、挙党一致で石破体制をしっかりと支えることです。

また、決選投票で高市氏に票を投じた議員も半数近くいるはずですが、これらの議員も「党を割って第二自民党を作る」などと考えず、しっかりと自民党内に残り、自民党がおかしくならないよう、きちんと活動をしていただきたいと思います。

そうでなくても自民党というのは集団指導体制のような政党です。

歴代最長の政権を率いた故・安倍晋三総理大臣ですら、彼が成し遂げようと思っていたことのすべてを成し遂げることは不可能でした。いまだに改憲ができていないことに加え、安倍総理自身がアベノミクスをみずから否定するかのような、2度にわたる消費税増税を断行するなどしたからです。

靖国参拝と慰安婦合意は安倍政権の「汚点」?

もちろん、消費税の増税法案は前任者である(旧)民主党の野田佳彦元首相(現・立憲民主党代表)の置き土産であり、これを安倍総理の責任に帰することは酷かもしれない、という見方もあります。

しかし、増税法案を提出したのは民主党内閣ですが、その法案に(当時は野党だった)自公両党も賛成していたため、「消費税の増税でアベノミクスの腰を折ったこと」の責任の一端が、自民党にないはずなどありません。

さらに、安倍総理は一部の「限界右翼」から、舌鋒鋭く批判されている人物であることも忘れてはなりません。

というのも、安倍総理は再登板後の2013年12月26日に靖国参拝に踏み切った以外は、在任中、ただの一度も靖国に足を踏み入れなかったからです。

さらに、2015年12月28日の、いわゆる「日韓慰安婦合意」では、「安倍(総理)自らが慰安婦問題を事実であるかのごとく認めたではないか!」などとする批判もあり、これらを安倍政権の「汚点」に位置付ける人もいます。一部の「限界右翼」のなかには、安倍総理暗殺を喜んだとする情報もあります。

しかし、著者自身は「物事には必ずプラス、マイナス両方の側面がある」と考えている人間であり、慰安婦合意に関し、日本の名誉と尊厳を傷つけた合意である反面、これにより自称元慰安婦問題を完全に韓国の国内問題に転換することができたという成果も得られたと考えています。

また、総理大臣の靖国参拝に関しても、現状では国際社会との摩擦が不可避であり、限られた政治的リソースを費やすことにはかなりのリスクを伴うと考えています。

もちろん、待っていれば、総理大臣に加え、天皇陛下のご親拝まで実現する時代は、いずれ来るかもしれません。

たとえば靖国参拝の「ご注進報道」を行ったメディアが完全にこの世から姿を消し、ウクライナ戦争ではロシアが惨敗して国土が分割され、中国も共産党政権が崩壊して内部分裂し、台湾進攻を完全にあきらめざるを得ない状況に陥るなどすれば、総理が堂々と靖国参拝できるようになるかもしれません。

ただ、現在は残念ながら、まだその機が熟しているとは言い難い状況です。

昨日の『「石破氏を選んだ」のでなく「高市氏を選ばなかった」』でも指摘したとおり、仮に高市「総理」が実現していたならば、高市氏の靖国参拝で再び日本が外交的に孤立する状況もあり得たのです(ちょうど2013年の安倍総理の靖国参拝直後の日本のように、です)。

その人が総理になって良かったかどうかは「総合的に」判断すべき

それに、著者自身、当ウェブサイトを通じ、安倍政権時代から申し上げている通り、ある政治家が首相になって良かったかどうかについては、「総合的に見て」、日本が良い国になったかどうかで判断すべきだと考えている人間のひとりです。

こうした観点からは、安倍総理はもちろん、その後継者である菅義偉総理大臣、そしてさらにその後継者である岸田文雄首相は、いずれも十分に合格点だと考えています。

とりわけ岸田首相に関しては、(これは著者自身の勝手な見方ですが、)当初は悪い意味での「宏池会政権」風味を醸しだしており、「新しい資本主義」なる怪しい概念とともに、アベノミクスだけでなく、資本主義の根本原則を否定するかのような政策を呈示していたのです。

ただ、岸田政権も途中からかなり方針が変わり、とりわけ安倍総理が暗殺される前後あたりからは、原発の再稼働・新増設方針や防衛費の増額、安保3文書の制改定、さらには地震被害に見舞われた石川県能登半島の復興のための真摯な努力など、評価できる点はいくつもあります。

また、東京・山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士からは「やらない方がマシ」などと舌鋒鋭く批判された定額減税も、見方を変えれば、岸田首相が財務省を敵に回してでも税収増の果実を国民に還元しようとする動きと評価することができるかもしれません。

著者自身、安倍総理は2度の消費増税、菅総理は太陽光などの再エネ推進、岸田首相は稚拙な対韓外交など、それぞれに「評価できない点」もあったと考えているクチですが、それでもトータルで見て、安倍、菅、岸田の3代の政権は、日本をより強く、より良い国に変えていく成果を残したと評しているのです。

今回落選した候補者らにも可能性は十分にある

このあたり、当ウェブサイトでは、「首相なんて誰がやったって一緒さ」、といった飲み屋談義を「完全に誤った考え方だ」とこれまで主張してきましたが、それと同時に、自民党政権であるならば、誰が首相をやってもある程度は同じような成果があがるべきでもあります。

高市氏は残念ながら落選しましたが、高市氏の考え方のエッセンスは自民党内の多くの人に、共感を伴って共有されているはずです(そうでなければ第1回投票でトップになることなどあり得ません)。

また、今回の総裁選に出馬していた人物のなかでも、(あくまでも著者個人的には)小林鷹之・前経済安保担当相に加え、上川陽子・現外相や林芳正・現官房長官、加藤勝信・元官房長官らのように、主張内容に理がある人物も多々いることがわかりました。

これらの人材が石破体制下で閣僚や党幹部などの要職に起用されると、いったい何が起こるか―――。

あくまでも著者自身の理解に基づけば、石破氏自身、党内基盤が強い人物でもありませんので(※くどいようですがこれは私見です!)、うまく人事が組まれれば、結果的には「高市政権」が実現するのと大差ない成果をあげることだって可能であるはずです。

もちろん、これらの人材は、真摯に職務を全うすれば、2027年の総裁選への出馬の可能性も出て来るでしょう(※ただし、自民党総裁選の慣例として、現職が総裁選に再出馬する際、挑戦者は閣僚や党幹部などのポストから外れていることが必要だそうですが…)。

個人的な懸念事項といえば、石破「首相」のもとで、遅くとも2025年10月までに実施される衆議院議員総選挙、及び同年7月頃に実施される参議院議員通常選挙という2回の大型国政選挙を自民党が戦えるのかどうか、という点です。

保守的な政治性向を持つ人を中心に、少なくない国民は石破「首相」に厳しい目を注ぐと思われるため、石破体制が自民党の勢いを削ぎ、結果的に2009年の政権交代の悪夢が再び現実のものとなるのかは、注視したいところです。

こうした観点からは、僭越ながら石破「首相」にアドバイス申し上げるなら、もしも自民党を勝利に導きたければ、就任後できるだけ早いタイミングで衆院解散総選挙を実施すべきでしょう。一般論ですが、新政権発足直後の「ご祝儀相場」で解散総選挙をやれば、自民党が勝利できる可能性が高いからです。

石破氏は露骨な論功恩賞人事を行うのか、それとも適材適所?

もちろん、衆院選で勝利できた場合であっても、来年夏の参院選に失敗するリスクもあります(※もっとも、そのことを踏まえたうえで、自民党議員の皆さまが石破氏を総裁にしたわけですから、これも自民党議員の自業自得ですが…)。

ただ、冒頭から申し上げているとおり、あくまでも自民党の皆さまは、自分たちで定めた党則に従って総裁を選んだのですから、よっぽどのことがない限り、「石破下ろし」などせず、むしろ挙党一致で「石破体制」をしっかりと支えていただきたいところです。

もちろん、「石破氏が露骨な論功恩賞人事を行い、自民党内に亀裂を加える」、「党内にしこりが残ったまま大型国政選挙を戦うも惨敗し、その責任を取って石破氏が自主的に辞任する」、といったシナリオはあり得るところですが、いかんせん、まだ石破政権は始まってすらいません。

一部報道では、石破体制は「林芳正官房長官/森山裕幹事長/菅義偉副総裁」などの観測も出て来ており、これが事実だとしたら、(麻生太郎総理や茂木敏充幹事長は排除される方向と思われるものの)骨格的には岸田政権時代をなかば引き継ぐものと評することもできます。

あるいは、麻生総理の影響力を削ぐ代わりに菅義偉総理の影響力が伸長するなど、事実上の「宏池会+神奈川グループ」の連立政権のようなものでしょうか?

これはこれで気になるところです。

ただ、閣僚人事・党役員人事がどう転ぶにせよ、現時点で「石破(氏)のせいで、日本はお終いだ」、などと述べるのは、早すぎます。

私たち有権者の側に求められるのは、石破氏が「論功恩賞人事」ではなく、「適材適所人事」ができるかどうか、悲観もせず、さりとて楽観もせず、まずはしっかりと見極めるという態度ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (3)

  • 悲観で盛り上がれる人たちも、おっちょこちょいですね。
    ヒギンズ教授が居なくても陽はまた昇るしウインザー城は立ってるし。

    都民としては、石丸伸二に続いて
    「期待のルーキー2連敗」
    なのでへこみますが、まあ様子見するしかないし、なるようになるだば。

    小池百合子の場合、特にほめるところがないし腹は立つけどさして失点もないので、これまでと変わらないだけ。
    石破茂の場合、高市&その支持者が頑張ったおけげで、たぶんあちこちに票を頼んだだろうから、しがらみで身動きとれなくなってる様子。
    落ち着いて見守りましょう。

    自公の協力体制について、石破&フレンズはどうするのかな。
    党内の民意は「高市TOP」なので、当選がおぼつかない人たちほど、すぐに魂を売りがちなので、これまでと変わらないだけ、かなぁ。
    公明党自身がBBAばかりになってヤバいらしいので、お互い泥船みたいな。
    これも落ち着いて継続観察ですね。

    長い目でみたら、従来野党が自爆壊滅したあとの
    「まじめに政権担当できる健全な批判勢力」
    の位置づけが絶対に必要なので、高市さんには維新や国民との政策協議などをする充電期間に充ててほしいですね。

  • かなり不安ではありますが、”あの”鳩山首相時代や菅直人首相時代でも日本は
    ”終わり”はしなかったので、石破政権をあまり悲観的に捉えるのも良くないでしょう。

    とはいえ、すぐにボロを出しまくって国民からブーイングを喰らいそうな
    予感もあるしなあ……オールドメディアは「高市だけは嫌だ」の精神で庇いそうだし。

    とりあえずは、不安と共にお手並み拝見、ですかね。

  • 高橋洋一氏:
    「株価の話わかりやすいから。(総裁選)1回目の投票まで高市さんで(日経平均は)ずっと上がってて。石破さんとわかった途端、(先物が)ドーンと落っこった。マーケットというのは正直なんだよな。」

    月曜日(9月30日)は「暗黒の月曜日」になるのかな