やっぱり。予想通りでした。本日自民党総裁選が告示を迎えましたが、令和のコメ不足は解消に向かい始めたようです。頑なに在庫がなかったコメが、少しずつ出回り始めたのです。著者自身が調べたところ、近所の4つの店舗のうち3つの店舗で、5㎏のコメ袋が少しずつ売れ残っていました(価格は若干上がっていますが…)。少なくとも著者自身の近所については、おそらくあと数日で、コメの在庫が以前どおりに戻ることでしょう。
令和のコメ不足の正体
- 「『令和のコメ不足』は単なるパニック消費者の異常な投資行動が原因だ」。
- 「コメの流通能力と精米能力が一部消費者の異常行動に追い付いていない」。
- 「コメの供給量自体は、日本人の消費量に対し、十分に足りている」。
これらは、当ウェブサイトではここ数週間、繰り返し訴えてきた内容です。
たしかに店頭ではコメ袋の姿が消えてしまっていたものの、回転ずし大手チェーンや牛丼大手チェーンがコメ不足のために営業を停止したという事実がないこと、農水省の統計データ上、少なくとも昨年までに関していえば、コメの生産量はここ数年の消費量を十分に上回っていること―――などがその根拠です。
この点、ごく一部には「コメの供給量が需要量を上回っているかどうかは、8月の統計を見てみないとわからない」、などとしたり顔で主張する人もいるようですが、正直、局地的に8月分の統計だけを見ても、あまり意味はありません。
前年度、つまり2023年のコメの生産量についてはすでに確定しているからであり、年間を通じたコメの需要量(※実需)も、統計データを見れば十分に予測可能だからです。
それに、8月分のデータで例年と比べて需要量が増えていたとしても、それはパニック的に需要量が増えただけのことだ、という可能性が濃厚ですので、単純に「コメ不足の原因はこれらのパニック需要にあった」と結論付けられるに過ぎません。
過去のトイレットペーパー不足、マスク不足とまったく同じパターン
それに、べつに農林水産省や農水相、あるいはJAなどの肩を持つわけではありませんが、さすがに令和のコメ不足を彼らの責任にするのは筋が違います。極端な話、この「令和のコメ不足」と似たような状況は、ほかのどんな製品にも、同様に発生する可能性があるからです。
たとえば2007年頃、とあるテレビ番組が「納豆にダイエット効果がある」などと報じたところ、全国各地の小売店の店頭から納豆がいっせいに売り切れるという事態が発生しましたが、これも「パニック消費者による異常な消費行動」の典型例でしょう。
(ちなみにこのテレビ番組は、「納豆のダイエット効果」の根拠を捏造していた自体が発覚し、急遽、番組が打ち切りになるというお粗末なオチも付きました。)
また、2020年のコロナ禍の当初は、オイルショック当時のようなパニック購買行動により、トイレットペーパーが、続いて衛生マスク、さらには消毒液などが全国の店頭から姿を消したのですが、これも基本的には消費者のパニック行動でほぼ説明が付きます。
そして、これらのパニック行動の裏側では、多くの場合、それを煽っている者が存在している可能性が濃厚です。
端的にいえば、その「煽り犯」として最も可能性が高いのは、テレビではないでしょうか。
著者自身がそう考える理由は、テレビ局には前科が多すぎることです。
たとえば『コメ不足に見るメディア影響力が大きすぎることの弊害』でも説明したとおり、総務省の調査によれば、コロナ禍の時期のトイレットペーパー不足は、テレビが煽っていたことが明らかになっています。
令和のコメ不足、さまざまに考察していくと、やはりテレビなどのメディアが煽っている可能性がそれなりに高そうです。そう判断する根拠はいくつかあるのですが、そのひとつが、コロナ禍のトイレットペーパー不足です。総務省の調査によれば、コロナ禍トイレットペーパー不足の原因を作った最大の犯人のひとりがテレビであることが示唆されているのです。災害に備える明日・9月1日といえば、1923年に発生した関東大震災から101回目です。日本がいかに災害の多い国であるかについて、改めて考えておく必要があるのではないでしょうか。... コメ不足に見るメディア影響力が大きすぎることの弊害 - 新宿会計士の政治経済評論 |
具体的には、総務省『令和3年版情報通信白書』の『偽情報に関する情報の入手』という節では、総務省『ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究』によると、偽情報の入手源としてはテレビが最も多かったのだそうです(図表1)。
図表1 2022年2月のトイレットペーパー不足に関する偽情報の入手源
(【出所】総務省『令和3年版情報通信白書』の『偽情報に関する情報の入手』図2-5-2-3を加工)
今回の「令和のコメ不足」に関しては、正直、原因がテレビなのかどうか、まだ断定することはできません。
しかし、一部消費者の間でコメの需要量が異常に膨らんだことはおそらく間違いなく、状況証拠に照らしてその原因を推察するに、やはりテレビが煽ったという可能性は濃厚でしょう。
実地調査を行ってみた
そして、この推察が正しければ、テレビ報道が沈静化すれば、順次、コメ不足も沈静化していくはずです。
先日の『自民党総裁選が始まれば「令和のコメ不足」は解決する』で予言したのが、「自民党総裁選が始まり、メディアがコメ不足よりも総裁選の話題をより多く取り上げるようになれば、一部のパニック消費者の買占め行動は収束するはずだ」、という仮説です。
実際、どうなったのか―――。
これについて本日、実地調査を行った結果が、これです(図表2)。
図表2 コメの在庫調査(2024年9月12日)
店舗 | 在庫状況と税抜価格 | 備考 |
生鮮コンビニエンスストア(A) | 5㎏が4袋(2,899円~) | すべて新米で1袋は無洗米 |
大手ドラッグストアチェーン店 | 5㎏が2袋(2,780円) | 新米かどうかは不明 |
大手スーパーマーケット | 5㎏が9袋(2,980円) | すべて新米 |
生鮮コンビニエンスストア(B) | 在庫なし | ― |
(【出所】都内某所で著者が目視にて調査。調査日時は2024年9月12日午前11時~午後2時頃)
著者自身が確認した限りでは、ふだん、コメを販売している代表的な5店舗のうち、著者自身の時間の関係で行けなかった1店舗、および在庫が払底していた1店舗を除く3店舗については、少なくとも「コメ在庫が全くない」という状況は解消されています。
これらの店舗はいずれも、著者自身がここ数週間、おもにご高齢の方がアサイチで並んでいる姿を目撃していたたのですが、正午前後になってもコメ袋が売れ残っているということ自体、おそらくはパニック購入が終了したと感がられる論拠のひとつでもあるのです。
あと数日もすれば、コメ不足は広範囲に解消する
いずれにせよ、これもパニックが突然収束するときの兆候と、まったく同じです。
少なくとも著者自身が調査した4店舗のうち3店舗では、「店頭にまったく商品がない」という状況が解消したわけですから、あとは商品が入荷し、棚が充実していくのを待つのみです。ちょうど新米が出回る時期でもありますので、(価格は昨年より上がっているとはいえ)商品はこれから増えていくでしょう。
このあたりは結局、「商品がある」から「今無理して買わなくても良い」、となり、商品棚には徐々に商品が充実することで、あと数日もすれば、コメ不足は全国各地で徐々で順次解消していくことになります。
想像するに、本日、自民党総裁選が告示を迎え、明日以降はテレビの話題もコメ不足をすっかり忘れることでしょう。なので、テレビに踊らされてコメを買い占めている者たちの頭の中からも、コメ不足に関する話題は忘れられていくことでしょう。
残るのは、これらの者たちが買い占めた、おそらくは一世帯あたり下手をすると数十キロの令和5年産米です。これは来年秋口に令和7年産の新米が出回る頃になっても消費し切れず残るであろう量かもしれません(あるいは育ち盛りの男子が4人いるとか、「妖怪二口女」がいるとかでしょうか?)。
妖怪二口女とは…
頭の後ろに食いしん坊の口がある妖怪。わるいことをしたため、頭の後ろに口ができてしまいました。
(【出所】株式会社Gakken『はっけんずかんプラス 妖怪』ISBN978-4-05-205695-6のP3~4を要約)
いずれにせよ、精米後の白米の賞味期限は冬場で2ヵ月程度、夏場で1ヵ月程度とされているようですが、風味が落ちようが、虫がわこうが、彼らには責任をもって古米を消費し切っていただきたいと思う次第です。
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今だから言いますが、私の居る田舎ではずっと店頭に米は並んでいましたよ。
新米の出回る時期に一年分の米を玄米で買う人も多いので、パニックになる人も少ない(そもそも人が少ない)
新聞・テレビは百害あって一利なしと思ってます
もし一利があっても、それが無くなって困ることが無い。
うちの周りもそうです。
値段はずいぶん高くなったなぁとは思いましたが、売り切れになるようなことはありませんでした。
なのでニュースを見ても「えっ?そうなの?」という感じでした。
同僚で兼業で農家やってる人が「今年の新米は値上がってくれて助かった」と言ってました。
でも機械が買い替えられないから自分で作るのは今年で終わり、来年からは別の人に頼むそうです。
消費者からすると値上がりは困りますが、今の米価では経営が成り立たないそうなので、まだ安過ぎるんだと思います。
でも昨年比70%の価格アップは消費者側としてはキツ過ぎます。
農水省・農協団体?が米の行方を把握しているはずなのに、買い占めている企業に是非を問うていない。これが米不足になっている原因ではないか。
SBI証券が2024年8月20日から大阪の「堂島コメ平均」先物市場を開始してから、これが原因で米騒動が始まり、価格上昇したのではないか。
そうであれば、管轄は農水省からはずれてしまうような気がする。
国民は、これからもっとコメ離れするような気がするのでは。
どちらの記事のコメントとして書いたかは忘れましたが。お米が買えなかったらどうしようかと心配する人に、うちの近所ではもうお米が棚に並ぶようになったので安心して欲しいと返信しました。
ちなみに、都内在住です。あと、8月20日近辺に旅行で東北の田舎に行ったときは、その土地では普通にお店にお米がありました。
ただ単に新米が出回って、買い溜めに走った人も、家の中で積み上がった米袋と、お店に並ぶ米袋を見て冷静さを取り戻しただけでしょう。
こんな具合に、総裁選が始まる前から解消の傾向が見られたこと。総裁選の候補者についての報道は以前からあったこと。総裁選との因果関係を考慮しなくても成立する話であることから。米不足の解消に総裁選はほとんど関係無いと思います。
追記です。
すみません。このコメントは返信として書くつもりではありませんでした。
「米は買いだめしたけどまだ安心できない。そうだ、しばらく米を食うのを我慢しよう」
なんて人も、後からちゃんと食べてくださいね。
>農水省の統計データ上、少なくとも昨年までに関していえば、コメの生産量はここ数年の消費量を十分に上回っている
私の見た農林水産省のデータでは令和6年6月末で需要量702万トン、生産量661万トンで約40万トンの生産量不足となっています。6月末民間在庫量156万トンで「最近の米の需給は、令和5年産米の需要が堅調に推移したことから、令和6年6月末の在庫量は近年では低い水準となっている。」との説明がついています。
(米の需給状況の現状について>(1)最近の米の需給動向(需要量、生産量、民間在庫)より)
スーパーの棚に常時米袋があればパニック買いも「米騒動」も終わりでしょう。
西日本では南海トラフ地震情報が出ている間、ミネラルウォータが店頭から姿を消し、1人一箱(2Lが6本)まで、と貼り紙が貼られていましたが、今では店頭に在庫がうず高く積んであります。同時に特定メーカーのカップ面も地震需要で品薄、と張り紙されていました。
1人一箱とかかれると何度も並んだり家族でバラバラにレジに並んだり、スーパーをハシゴしたりしている人をよくみかけました。
新聞見たからはあまりなくて、テレビが言っていたから、という話題がちらほら聞こえてきていたのを記憶しています。
毎度、ばかばかしいお話しを。
マスゴミ:「コメ不足。そんなこと言ってましたっけ」
次は新聞紙不足と言えば、新聞を買いだめしてくれるでしょう。
この期に及んでもこんな戯言をhttps://news.yahoo.co.jp/articles/c56d33aa75f3d841151c1d0624d82447c32e0ee4?page=2
来月あたりどこかで大災害が起これば、ここぞとばかりに被災地にコメが送られてくるのかもしれませんね。
農水省・農協団体?が米の行方を把握しているはずなのに、買い占めている企業に是非を問うていない。これが米不足になっている原因ではないか。
SBI証券が2024年8月20日から大阪の「堂島コメ平均」先物市場を開始してから、これが原因で米騒動が始まり、価格上昇したのではないか。
そうであれば、管轄は農水省からはずれてしまうような気がする。
国民は、これからもっとコメ離れするような気がするのでは。
本日、スーパー・コンビニに行きましたが、弁当コーナーには白米の弁当、寿司、おにぎりが豊富に並んでいました。スーパーやコンビニの本社が長期契約でコメの調達を計っていたことは言うまでもないでしょうが、白米の鮮度から考えて、事前にストックしていたとは思えません。つまり、コメの需給バランスが崩れてはいないことは、明らかです。
まだ懲りずにテレ朝のワイドショーでは新潟の道の駅で県外ナンバーの車がお米買いに列作ってるとかやっていて
「宝物探し」
とかインタビューを放送していたらしい。
破壊活動なんじゃないか?
マス媒体は本当に要らない。
不安を煽るなら放送するな。