現代ビジネスが4日に配信した記事によると、その記事の執筆者の方は、最近、中国から知人が来日すると、寿司屋に連れて行き、福島の酒で乾杯するのだそうです。すると大方の中国人は、「こんな旨い酒や魚を、なぜわが国は禁止するのか」、「本当に危険なら、世界一神経質な日本人が飲むはずない」、などと反応するのだとか。こうしたなか、北京ではスシロー1号店も開店したそうですが、さて。
中国は大国だが…
中国といえば、いまや世界第2の経済大国であり、また、経済発展が続いていて、一部シンクタンクの予測によれば2037年にもGDPで米国を抜いて世界最大の経済大国になるのだそうです。
中国の基本データ
- 人口(2023年)…14億1071万人(世界2位)
- 面積…960.0万㎢(4位)
- 名目GDP(2023年)…17兆7948億ドル(世界2位)
(【出所】World Bank Open Data 、総務省統計局『世界の統計』等をもとに作成)
ただし、ひと昔前の人間にとっては、「中国は人口で世界1の大国だ」、という印象があるかもしれませんが、最新データによれば、これは正しくないようです。本稿末尾図表1に収録の通り、人口ではすでにインドに追い抜かれているからです。
しかし、もし仮にそうだったとしても、中国はいちおう公式統計では14億人を超える人口を抱えている大国ですから、いずれインドとともに世界最大級の経済大国となったとしても、それはそれでまったく不思議ではありません。むしろ今まで世界経済において存在感がなかった方が不思議な気がします。
※余談ですが、通貨・金融などの世界では、中国、インド、ロシアといった諸国の存在感は非常に低いのが実情です。また、『「BRICSドル離れますます顕著」→エビデンスは?』などでも指摘したとおり、現在のところ国際金融市場においてドルの存在感が低下しているという事実は見られません。
妙な大国主義の象徴:水産物等の輸入規制
さて、それはともかくとして、日中双方は隣国同士、また、経済大国同士であり、現在の両国関係に照らすと、「国交を今すぐ断絶して一切の貿易を取り止める」などということなどできませんから、どうしても日本は中国について、最低限のことは理解しておく必要があります。
その際、私たちがこの中国という国とお付き合いする際に気を付けなければならない点があるとしたら、その最たるものは、「妙な大国主義」かもしれません。
あるいは政治が科学的なエビデンスに優越するという、非常に危うい態度と呼ぶべきでしょうか。
たとえば、中国は昨年以降、日本産の海産物などの禁輸措置を講じていて、ホタテなどの水産物の対中輸出が止まったなどとして、日本でも大騒ぎとなっていたことは記憶に新しい点です。
というよりも、『【中国輸入制限】貿易統計で見るホタテの輸出先多様化』などでも指摘したとおり、中国の輸入制限の影響で、日本のホタテ産業はむしろ輸出先の多様化に成功するなど、それが日本経済にとって必ずしも悪い結果をもたらしていないという点は興味深いところでしょう。
中国人がスシロー北京1号店に殺到
こうしたなか、『現代ビジネス』が4日、こんな記事を配信していました。
中国に「スシロー」が進出、12時間待ちの大行列…!なのに中国メディアは「完全無視」の「トンデモすぎる理由」
―――2024/09/04 06:34付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】
元記事は『週刊現代』が配信したものだそうですが、これによると中国側では現在、福島第一原発のALPS処理水のことを「核汚染水」などと報じている、としています。
ただ、興味深いのは、こんな記述です。
「その3日前、『北京の新宿』こと西単(シーダン)に『寿司郎(スシロー)』が初お目見えした」。
「中国の官製メディアは無視したが、オープン初日の最大待ち時間は12時間!/SNS上には『寿司郎に行きたい~』といった投稿が相次いだ」。
これが事実なら、なかなかに興味深い記述です。
実際のところ、サイゼリヤの事例のように、日本の著名飲食チェーン店が中国などアジア諸国に進出して大成功しているという事例も多いようですし、新規開店時には大行列になる、といった話題も頻繁に目にします(もちろん、なかには「目新しさ」というケースもあるでしょうし、失敗して撤退するケースもあるようですが…)。
しかも、よりによって「日本ブランド」の「寿司」です。
もちろん、この中国の店舗におけるネタ・シャリ・海苔・わさび・醤油・ガリなどの産地については、記事だけではよくわかりませんが、想像するに、日本のスシローの原産地情報に掲載されているものと、あまり変わらないのではないでしょうか。
中国人に「福島食材は安全で美味い」という事実を教える著者
この点、現代ビジネスの記事は署名入りではないため、執筆した方の名前はわかりませんが、もっと面白いのが、こんな記述です。
「私は最近、中国から知人が来日すると、寿司屋に連れて行く。そして銘酒『冩樂(しゃらく)』で乾杯。その後で告げるのだ。/『これは福島の酒だよ』」。
何とも軽妙ですね(笑)
ただ、こんなことを述べると、当局のメディアによって「福島核汚染水」などと刷り込まれている中国の人々は焦るのではないかと思ってしまうのですが、実際の中国人の反応はどうなのでしょうか。
記事では、こう続きます。
「すると大方の中国人は、同じ反応を示す。/『こんな旨い酒や魚を、なぜわが国は禁止するのだ?本当に危険なら、世界一神経質な日本人が飲むはずないでしょう』」。
凄い説得力です(笑)。
実際のところ、風評加害に対抗するには、私たち一般人がどんどんと福島の美味しい食材を積極的に消費すれば良いのかもしれません。
このあたり、宗教が事実を嫌うのは古今東西共通の特徴ですが(『宗教改革にも匹敵し得る現代の「インターネット革命」』等参照)、中国共産党も宗教の一種だと考えると、彼らが提唱する「福島核汚染水」も、科学的根拠を欠く、悪質な宗教の一種です。
そして、こうした悪質な宗教を否定するのはコメ、酒、魚、果物、ラーメンなど、福島の食材は安全で美味いという事実です。
なによりこのインターネット時代、中国共産党という「宗教団体」も、いつまでも中国人民に自分たちのプロパガンダを押し付け続けられると思っているのだとしたら、相当におめでたいと思うのですが、いかがでしょうか?
資料集:人口、面積、名目GDP
なお、本文でも触れた、人口、面積、名目GDPのランキングを、資料集として添付しておきます。
図表1 人口ランキング(2023年)
国 | 人口 | シェア |
1位:インド | 14億2863万人 | 17.80% |
2位:中国 | 14億1071万人 | 17.58% |
3位:米国 | 3億3491万人 | 4.17% |
4位:インドネシア | 2億7753万人 | 3.46% |
5位:パキスタン | 2億4049万人 | 3.00% |
6位:ナイジェリア | 2億2380万人 | 2.79% |
7位:ブラジル | 2億1642万人 | 2.70% |
8位:バングラデシュ | 1億7295万人 | 2.16% |
9位:ロシア | 1億4383万人 | 1.79% |
10位:メキシコ | 1億2846万人 | 1.60% |
その他 | 34億4726万人 | 42.96% |
全世界 | 80億2500万人 | 100.00% |
(【出所】World Bank Open Data をもとに作成)
図表2 面積ランキング
国 | 面積 | シェア |
1位:ロシア | 1710万㎢ | 13.14% |
2位:カナダ | 998万㎢ | 7.67% |
3位:米国 | 983万㎢ | 7.56% |
4位:中国 | 960万㎢ | 7.38% |
5位:ブラジル | 851万㎢ | 6.54% |
6位:豪州 | 769万㎢ | 5.91% |
7位:インド | 329万㎢ | 2.53% |
8位:アルゼンチン | 280万㎢ | 2.15% |
9位:カザフスタン | 272万㎢ | 2.09% |
10位:アルジェリア | 238万㎢ | 1.83% |
その他 | 5618万㎢ | 43.19% |
全世界 | 13009万㎢ | 100.00% |
(【出所】総務省統計局『世界の統計』をもとに作成)
図表3 名目GDPランキング(2023年)
国 | 名目GDP | シェア |
1位:米国 | 27兆3609億ドル | 25.95% |
2位:中国 | 17兆7948億ドル | 16.88% |
3位:ドイツ | 4兆4561億ドル | 4.23% |
4位:日本 | 4兆2129億ドル | 4.00% |
5位:インド | 3兆5499億ドル | 3.37% |
6位:英国 | 3兆3400億ドル | 3.17% |
7位:フランス | 3兆0309億ドル | 2.87% |
8位:イタリア | 2兆2549億ドル | 2.14% |
9位:ブラジル | 2兆1737億ドル | 2.06% |
10位:カナダ | 2兆1401億ドル | 2.03% |
その他 | 35兆1208億ドル | 33.31% |
全世界 | 105兆4350億ドル | 100.00% |
(【出所】World Bank Open Data をもとに作成)
View Comments (14)
毎度、ばかばかしいお話しを。
中国:「食物の安全性は科学ではなく、中国共産党の指導によって決まる」
ありそうだな。
中国で起きている現実を知るのにいわゆるオールドメディアは半分くらいしか役に立ちません。
中国に都合の悪い報道は自主検閲でもしているのかたくさんいるはずの現地特派員による記事は奇妙にも内容が偏っており、特派員記事でなくって共同通信配信記事が掲出されているケースではライターの出自を隠蔽しているのではと勘ぐっています。
香港発の自由報道が潰されてしまって以来、通称李老師なる人物の X 投稿はチャイナウオッチャーには他とない貴重な情報源と見なされています。壁内 SNS からの転載で構成されています。ついさっきも学童と保護者の列につっこんだ通学バスがレッカー車で牽引されて行く様子を街のひとたちが黙然と見守っている動画が投稿されたところです。事故直後の様子は閲覧注意画像です。
25年前だが、中国にいた。
中国人は食の安全をものすごく気にしていた。
神経質過ぎないかと思うくらいに。
それは業者や国家が信じられないから。
どんな良い制度があっても、新たに作っても、
運用者も監査者も信用できないと、制度はあって無いようなもの。
日本人は中国人に比べれば食の安全を全然気にしていない。
生産者や流通業者等の努力の賜物で、とても感謝している。
農林水産物こそ日本産(生産も流通も)が必要とされている
>中国人は食の安全をものすごく気にしていた
不潔なことや賞味期限は全然気にしない割に、得体の知れない物質が混入することは異常に警戒しているように見えます。これは韓国人や台湾人でもその傾向があります。
ありがとうございます。
その通りですね。
当時、大都市でも道路は汚く、臭いも酷かったので、不潔を気にする人はあまりいなかった。もし居たらもっと綺麗な道路だったでしょう。
裏路地に入れば日本のボットン便所並みの異臭が普通でした。
2m×3m位の生ごみ箱が太陽で温められ、熟成・発酵したブツから液体が垂れ流し状態で道に小川を作っていた。
当時現地で賞味期限の記載を見た記憶がありません。
中国では燃料を運んだタンクローリーで、そのまま食用油を運ぶ慣習が発覚して大炎上したばかりです。
科学的に検出限界以下のことに大騒ぎしつつ、明らかに毒なものを摂取する中国人とは不思議な国民ですね。
それとも中国共産党が安全と定義すれば、毒も安全になり、ただのほぼ水も毒水にかわるんでしょうか。いや、すみません、日本の特定野党も似たようなことを言ってました。
中国式共産主義は非科学の極みですし、大躍進政策しかり、北朝鮮の主体農法しかり、ポル・ポト時代のカンボジアしかり…
牛肉から基準超の放射性セシウム 原発事故当時の稲わらが原因
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20240903/6050027300.html
本質的には関係ない件ですけど,記事を出したタイミングががが
>釜山市の朴亨ジュン市長は(中略)「今後も汚染水の監視・分析をしっかり行い、海と水産物の安全性を高めていく」と述べた。
(『汚染水海洋放出から1年 韓国・釜山市「放射性物質濃度に変化なし」』聯合ニュース 2024/8/22 より引用)
https://news.yahoo.co.jp/articles/cec168261b77cb646813938b700460c51027f7e2
ずいぶんと費用は掛かってるようですが、不安がある限り、どこまでも続けるってのが筋でしょう。それでこそ「科学的な」態度。科学的知見も何にもなくて、ただ気にクワ~ンだけでやってるチャイナよりは、よっぽど知性的。
そこまで放射能の人体に及ぼす影響について深刻な懸念を抱いているなら、「日韓漁業協定」を再締結して、日本の近海のサカナ漁らせろうなんて、もう言わないよね(笑)。
国内のリベラル野党と組んで
日本を貶める事が目的です。
リベラルにエビデンスや科学的根拠を求めるのは酷だと思います。
「エビデンス?ねーよ、そんなもん」
「科学を振りかざすな」
ある意味では爆笑ものの迷言がいつまでもネットに残る。
良い時代になったものです。
>YAHOOニュースによると
「中国が尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海の漁を解禁 福建省からは約1万隻もの青の大船団が出港」
だそうです。どうせなら処理水は福島から放流しないで、尖閣諸島まで運んで放流するとよいでしょう、と言うのは冗談ですが、中国は気に食わないことがあると直ぐに輸出入制限その他全く関係ない圧力を掛けるのは周知のことで、日本がアメリカに与して半導体輸出を厳格化しようとしていることに対して今度はどのような報復措置をとるのかが気になるところです。
予想としては、
(1)中国人の日本旅行を禁止とか出てきそうです。コロナや台風やら政治的思惑による火の粉まで被らされる旅行業界は大変です。個人的には中国人がいなくなると街が静かになるので歓迎ではありますが。
(2)中国軍機または測量調査船による日本領海の確信的侵犯が急に増える。→先日はわずか2分で領空外に出たので撃墜のチャンスを逃してしまった(やたら法律ががんじがらめのため)が、次回はさっさと撃墜、撃沈してしまいましょう。中国が更に硬化し国際問題になるのでダメ? もうなってます。
(3)中国が漁民を装った軍人を尖閣諸島に上陸させる。→中国がスプラトリー諸島海域においてフィリピン船に対して行っているやり方をしっかり勉強し、同じことをして尖閣諸島に上陸した人達を餓死させましょう。
(4)中国が弾道ミサイルを発射して海上自衛艦を撃沈する。そこまではしないだろうと高を括っているようですが、経済不振のため中国国内の不満が爆発しそうになったら、共産党は何でもやりまっせ。
不都合な事実はたくさんあります。
中国の漁船は日本近海でたくさん操業していて、日本の東北沿岸でも操業しています。その魚を中国の港に持って行くと中国産になる。だから、中国人も実は日本近海で捕れた魚を食べている。
昨年8月に処理水の海洋放出を開始したときに中国の清華大学の研究者が汚染水は240日後に中国の沿岸に到達すると予測してそれが中国内でかなり拡散されたので、中国産の魚もダメなはずですね。中国人がそれを真に受けて魚の消費量は減ってます。
現代ビジネスの記者の福島産のお酒を黙って飲ませる
ところは、やり口としてどうなのかな、と思いました。そもそも日本で寿司屋に行くくらいですから、そういう反応が有って当然かな、と。これもオールドメディアの作文なような気がしました。