ウクライナは対外的に発行した債券のデフォルトに追い込まれたのですが、このほど、これに関するリストラクチャリング(債務再編)が完了しました。ウクライナはたしかにデフォルトしたのですが、対外的な債権者との間で債務再編に合意し、また、ロシアの凍結済みの外貨準備からの支援なども期待できることから、今回のデフォルトでむしろウクライナの今後の資金調達における不安が払拭され、資金面でウクライナがロシアに対し、優位を確立するきっかけとなる可能性があります。
目次
ウクライナのデフォルトに歓喜するロシア・フレンズ
ウクライナが対外的に発行した債券について、事実上のデフォルト状態に追い込まれた、とする話題は、以前から一般のニューズ・メディアの紙面などにもチラホラ登場しています。
この点、一部の方が読者コメント欄で、「わずかばかりの利息も支払えずにウクライナがデフォルトした」、「日米欧はこれでも資金援助をするのか」、といった問題提起(?)をしたことで、コメント欄がちょっとした盛況になっていたので、覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。
この話題については、当ウェブサイトでは『円安でも円高でも結局「円は紙くず化する」という主張』などで傍論として少しだけ触れたことがあるのですが、冷静に考えたらほとんど話題として取り上げて来ませんでした。結論的にいえば、この話題、ウクライナ戦争の行方に大きな影響を与えるものではないからです。
報道等によれば、ウクライナが外国に対して発行している債券総額はだいたい200億ドル程度だそうで、先日話題になった「利払いができなかった金額」に至っては3400万ドル程度に過ぎません。
もちろん、債権者にとって、貸したカネが返ってこないのは、通常であれば大きな問題ですが、現在、ロシアという無法国家からの侵略を受けているウクライナを財政的に支える国際的な枠組みが次々と成立していることなどを踏まえると、今回のデフォルトでウクライナの資金調達が行き詰まることはありません。
また、国際決済銀行(BIS)統計によれば、オフショア債券市場の規模は2024年3月末時点において28兆9137億ドル(!)であり、ウクライナの対外債務残高(200億ドル強)といえば、国際的な債券市場と比べて0.1%にも満たない水準です。
正直、国際的な債券市場のボリューム感に照らし、ウクライナのデフォルトが債券市場を揺るがすということはありえません。
国際的な債務総額も国際与信総額から見れば微々たるもの
また、債券以外にも、ウクライナは外国の金融機関からおカネを借りていますが、BISの『国際与信統計』と呼ばれる統計によれば、「報告国」と呼ばれる外国の銀行からウクライナへの債権は2024年3月末時点で137億ドル(※所在地ベース)で、うち外貨建てが40億ドル程度とされます。
また、この137億ドルのうち最も多額を占めているのは50億ドルのフランスで、以下、オーストリア(41億ドル)、米国(19億ドル)が続き、この3ヵ国で総額の80%程度を占めています(図表)。
図表 所在地ベース・債権【債権国側】(債務国:ウクライナ・2024年3月末時点)
債権国 | 債権額 | 構成割合 |
1位:フランス | 50億ドル | 36.67% |
2位:オーストリア | 41億ドル | 30.14% |
3位:米国 | 19億ドル | 13.72% |
4位:英国 | 2.7億ドル | 2.00% |
5位:スイス | 1.9億ドル | 1.36% |
6位:スペイン | 3258万ドル | 0.24% |
7位:日本 | 1870万ドル | 0.14% |
8位:ベルギー | 1200万ドル | 0.09% |
9位:デンマーク | 500万ドル | 0.04% |
10位:ポルトガル | 448万ドル | 0.03% |
その他 | 21億ドル | 15.57% |
報告国合計 | 136億ドル | 100.00% |
(【出所】The Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statistics をもとに作成)
ただ、金融機関による国境を越えた資金の貸し借りの総額は33兆1250億ドル(※最終リスクベース)であり、金融機関の国際的な与信取引においても、ウクライナのシェアは極めて低いというのが現状です。
なお、「ウクライナの対外債券が200億ドル」、「外国銀行のウクライナ向け与信が136億ドル」、と、金額がズレている理由は、前者は純粋に政府等による債券の発行残高を指すのに対し、後者は債権者が銀行等金融機関、債務者がウクライナの政府、企業、銀行等である場合に限定しているからでしょう。
つまり、2つの数字はおカネを貸している主体・借りている主体が異なっているのであり、「両者の数値が大きく異なっている」からといって、2つの統計が矛盾している、という意味ではありません。
このあたりは短絡的にご判断にならないようにお願いしたいと思います(一般人には不要な注記かと思いますが、一部の「ロシアフレンズ」の皆さまのなかには数字が読めない方もいらっしゃるようですので、念のため)。
リストラクチャリングで合意したウクライナの対外債券
さて、「ウクライナの対外債券200億ドル」に話を戻しましょう。
先月報じられたウクライナの債券デフォルトには、続報があります。ロイターが配信した次の記事で、債務再編(リストラクチャリング)の概要が掲載されています。
Ukraine’s bondholders approve crucial $20 bln debt restructuring
Summary
- Ukraine wins agreement from bondholders to write down its debt
- Deal sees bondholders take 37% cut on face value of holdings
- Ukraine officials say move was necessary due to war with Russia
<<…続きを読む>>
―――2024/09/03 08:35 GMT+9付 ロイターより
記事の日付は9月3日ですが、オリジナル記事は8月28日付のもので、サマリー部分に記載があるとおり、ウクライナ財務省はとりあえず国際的な債権者との間で額面の37%の削減などで合意した、などとするものです(債券利子のステップアップ条項などの詳細条件は記事本文をご参照ください)。
(※なお、余談ついでに申し上げておくと、資本市場で「リストラクチャリング restructuring 」と呼ぶときは、それは債務弁済条件の変更などを意味する専門用語であり、「人員整理・解雇」などを意味する日本語の「りすとら」とはまったく異なりますのでご注意ください。)
こうしたなかで、同じくロイターが3日、この迅速な債務再編の舞台裏として、ウクライナ政府にアドバイザリーとして、ロスチャイルド・アンド・カンパニーがかなり早いタイミングで入っていたことが説明されています。
Conflict, creditors and a car crash: How Ukraine clinched a wartime debt restructuring
―――2024/09/03 15:03 GMT+9付 ロイターより
200億ドルというのは、国際的なオフショア債券市場全体から見ればさほど大きな額ではありませんが、ロイターによると、国際的な債務再編としてはアルゼンチン、ギリシャに続く史上3番目の規模で、債務再編は6月にいったん決裂しかけたそうです。
しかし、いくつかの不確実性はあるとはいえ、記事を読む限り、債務者の合意が得られた背景には、やはりロシアの凍結資産の元利金をウクライナ支援のために流用するとする、今年6月のG7会合の合意などが効果をもたらした可能性は高そうです。
資金面ではロシアに対し優位を確立しつつあるウクライナ
いずれにせよ、ウクライナが国際的な債務のデフォルトを余儀なくされたことは事実にせよ、このリストラクチャリングが一巡したことで、今後、当面の資金調達面の不安はほぼ払拭された格好です。
かたやロシアはSWIFTなどの国際的な決済システムから排除され、米ドルやユーロ、日本円といった国際的に便利な通貨の使用を事実上禁じられ、貿易決済は人民元やローカル通貨などの利用を余儀なくされるなどの状況にあります。
しかも、『深まるロシアの中国依存…「友好国」も取引を続々中断』でも取り上げたとおり、最近だと米国のセカンダリー・サンクションを恐れ、中国の銀行がロシア企業との取引を断る事例も相次いでいます。
物量では依然、ロシアの方が圧倒的な優位だとされていますし、石油・ガス等の売却でロシアには継続的な現金収入などが見込めるにせよ、少なくとも「金融専門家」的な視点に立てば、資金面ではウクライナがロシアに対して優位を確立しつつあるのではないか、と思えてならないのですが、いかがでしょうか。
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ロイター記事には以下の文言があります(ググるでチープに翻訳)
『この債権再編プロセスは猛スピードで進み、交渉にはわずか4か月しかかからなかった。これは、2022年夏にウクライナに認められ、現在期限が切れようとしている2年間の債券支払い猶予に代わるものである』
これに続く段落において、ウクライナ側は国家運営の失敗や経済不振によるものでないと強調しています。言い分が認められたということです。国際金融環境にあって着実に事態に対処しているという見方は正しそうです。
ウクライナ応援団はやたらと国際法やICCにこだわるようです。
中にはプーチンを「容疑者!」と連呼している自称・金融専門家もいましたw
https://news.yahoo.co.jp/articles/bbc68b40ad2870d6a4e7d7465b728ca7e2788992
プーチン「容疑者」がモンゴルを訪問。
だがICCに加わるモンゴルはプーチンを拘束せず。
ICC、国際法など何の意味を持たないことが証明されました。
もちろん、このモンゴルの行動が正しいことは言うまでもありません。
西側の言うことを聞いてウクライナのような惨状になるのか?
西側の言うことを聞かずにモンゴルのように行動するのか?
西側以外はもう答えを持っています。
それにしても普段から「数字ガ~」という連中に限って、国際法やICCにこだわっているのは何かの冗談なのでしょうか?
ウ応援団は戦況の推移や国際情勢がまったくわからないようです(^^♪
モンゴル訪問ですが現地発動画報道が Youtube 出始めており、各方面が刮目して恐らくはニヤニヤしながら推移を見守っている状況にあります。ロシア、かまされるのないか。帰りの飛行機の中でプーチンが何をどう考えることになるのかは文字通り見ものと思います。
連投すみません。
プーチン大統領はトゥーバ Tuva 共和国に立ち寄ってからモンゴルへ向かったのだそうです。Tuva といえばショイグ前国防相の出身地、傭兵として名をはせた勇敢な民族という社会的な立ち位置になっているとどこかで読みました。ショイグ一族は竜宮城のようなアジアンな屋敷を持っているとの写真を目にしたことがあります。さてプーチン大統領は北朝鮮訪問に先立って東シベリアのロケット打ち上げ施設を視察もしています。二つを照らすとどんなメッセージ性がこめられていることやら。
北朝鮮訪問ではプーチンはロシア製最高級車を黒電話にプレゼントし、あげく自らの運転で若き将軍殿と一緒にドライブしてもてなす様子が動画に上がりました。国格上がったのう。ネットはやんやの喝采を送ったものです。しかし同時に両名の間に流れるシンパシー波動を読み解いて青年指導者が老人を気遣っているのだという分析が出たりもしました。今回ウランバートルはどんな貸しを作ってみせているのやら。
アオキさんや、君、ピエロになってるのそろそろ自覚したのがええで…
自覚できない、いや自覚できる能力がないから分かりようがないのですよ。
>それにしても普段から「数字ガ~」という連中に限って、国際法やICCにこだわっているのは何かの冗談なのでしょうか?
数字を重視することと、法の支配を重視することと、何も矛盾しない。
誰かのように感情に流されないことで一貫してる。
いったいどんな理解をしてるのやら。
>ウ応援団は戦況の推移や国際情勢がまったくわからないようです(^^♪
そっくりそのまま返してやるよ。相変わらずり見事なブーメランだな。
じゃあ、どこのどんな情報ソースを参照すれば正しい情報を得られるのか、”具体的”に教えて貰えないかな?
出所が怪しい情報源や自分の勝手な解釈で全てを語ろうとする辺り、全くわかっていないよなw
スプートニク
このアオキ?アキオ?って人、確かスプートニクとかを情報源で出してなかったっけ?
教えてください。
>もちろん、このモンゴルの行動が正しいことは言うまでもありません。
これはどこから導かれたのでしょうか。
論理的でロジカルなアオキさまの回答を教えていただきたく。
もし、ロシアからみて「正しい」のであれば、
「あ、そっすよね(棒)」
で終わりになってしまいますので、どうか宜しくです。
「覇道」が正義とする世界観に違和感を感じないのであれば、
このブログのみならず、日本では生きづらいとお察しいたします。
今の時点でモンゴルがプーチンを招聘したという伝聞は出ていません。プーチンが押し掛けた可能性もあります。ですので勝利を確信しておりエネルギー依存で困っているから招聘というのは短絡的な結論過ぎませんか。
モンゴルを縦断するシベリアの力2パイプライン計画は頓挫したとの見方もあります。
現地からは騎馬部隊がプーチン大統領を取り囲み馬の頭を一列に向けている映像が出て来ています。彼らは武装しているのでしょうか。海外要人のために身辺警備をしてあげているのではないのかも知れないという印象を受けています。時代が時代なら彼らは背に矢筒をしょっているはず。メッセージ性とはこうゆうものです。
モンゴル通信社 Montosame.mn 記事が紹介するフレルスフ大統領の会見結果報告文章を読みました。あとで気が付きましたが日本語もあったんですね。例によって英文からチープに邦訳した文章を一度作りましたが、機械翻訳の結果は通信社の邦文とだいたい一致していました。
実に見事な教科書的声明文と思います。ウクライナのことはまるで知らないふりを推し通しました。唯一関係していそうなのは
『モンゴルは、国際的な困難や誤解は相互理解、相互信頼、相互尊重、対話を通じて克服し、国際法規範の枠で解決するべきであると考える。従って、私は、モンゴルの永遠の隣国であるロシアが、世界の平和、安全保障、持続可能な開発、人類の福祉のための偉大な事業においてリーダーシップを発揮し、世界諸国の信頼、相互尊重、協力の強化に貴重な貢献をすると確信している』
他2点
・自国の火力発電水力発電強化に関してロシアと合意した
・ロシアの「グレーターユーラシアパートナーシップイニシアチブ」、中国の「一帯一路イニシアチブ」、「モンゴルのステップロード計画」の下での3国間協力の強化
に言及しています。2国に挟まれた内陸国モンゴルの意向は世界に知れたという結果に終わりました。
はにわファクトリー 氏
https://x.com/DD_Geopolitics/status/1830857329694384524
こういうとき米国は反対運動を画策します。
ただ、今回の運動は低調で逮捕者はわずかに6人だけでした。
今回の戦争で純粋に一番利益を得たのは北朝鮮でしょう。
兵器、弾薬で特需が発生し、ロ占領地の東部復興にも人員を派遣しています。
モンゴルのこのタイミングでのプーチン招聘はロシアの勝利を確信しているから。
見返りは安価なパイプラインガスです。
転勤族 氏
>これはどこから導かれたのでしょうか。
論理的でロジカルなアオキさまの回答を教えていただきたく。
西側はプーチンを拘束、逮捕するよう求めた。
米国は以前よりモンゴルにPLを建設しないよう圧力をかけていた。
それに対してモンゴルはプーチンを拘束、逮捕しなかった。
またプーチンはモンゴルへのPL建設と国内供給について言及した。
西側から見たらモンゴルのこの行動は正しくない。
逆に西側以外から見たらこの行動は正しいとなります。
少し前ならICC加盟国がICC容疑者を拘束しないなどありえないことでした。
これだけ見ても西側の影響力の凋落がわかるでしょう。
相変わらずいつも通りですね。
色々突っ込まれまくっているので、私はシンプルに一つの問を。
「西側と西側以外、どっちに住みたいです?どっちに将来性を感じます?」
私は西側を選びますね。中国、インド、ブラジルなどを見る限り、
後進国が先進国に追いつける確率はかなり低いと言うのが私の結論なので。
小国ならともかく、大国が追いつくのはとても難しい様です。
宇宙の片隅にある小さな星で、ひとりの男がロシアンフレンズを名乗り、ロシアのために戦っていた。しかし彼の目的はただひとつ、自分がゴキゲンになるために目の前にいる者たちをフキゲンにさせることであった。ロシアを利用しているだけなのである。ロシアンフレンズの風上にも置けない。
しかしよく考えてほしい。彼のような者が集まるのがロシアンフレンズなるものの集団であるのかもしれない。
はにわファクトリー 氏
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240905-OYT1T50019/
露大統領を招待とあります。
モンゴルが自分から招いたのでしょう。
それにロシアが訪問を打診したとしてもモンゴルは断ればいいだけです。
去年の南アフリカで行われたことで、当然モンゴルも知っているはずです。
いずれにせよロシアの勝利を確信してないとこんな行動はとれません。
パイプラインは中露で長いこと調整中です。
中国がロシアの影響力が増すことを警戒しています。
ただモンゴルにとって安価なガスと輸送量が入るPL建設は長年の悲願。
PL建設が実現するならモンゴルルートで確定でしょう。
今回の訪問ではレッドカーペットと儀仗兵で迎えました。
騎馬部隊もモンゴル式の儀礼であり深い意味はありません。
モンゴルは中国とロシアに挟まれています。
両国に睨まれない中立の立場が必須であり、そう振舞ってきました。
今回の件は西側よりも国益を優先した結果と言えるでしょう。
雪だんご 氏
私は日本の左傾化が確定するまで日本を離れることが出来ません。
(極めて稀なケースですが)デフォルトしても、その国の信用が傷つかないケースもある、ということでしょうか。
世論の圧倒的支持があっても、世論は金を貸してくれませんからね。
(文字通り現金な世の中)
金を貸してくれるのはプロ。
思い出されるのは昔に、高橋という人物を通じて極東の小国がヴィッカースの戦艦を買うためのポンドを貸してくれたプロ。
お陰でロシアに勝つことができました。
ありがたや、ありがたや。
債務者・債権者ともに合意の下での計画倒産的なデフォルトでウクライナの負債を消した、という風に見ればいいのかな?
そうなると、間接的な資金援助ということになりますね。
戦争は国の経済戦略に関わる一行為、あるいは経済を離れて戦争は語れないとも言います。
ロシアはウクライナ侵攻が、こんな長期戦、泥沼状態になるなど、全く想像の他だったから、かくも愚かな振る舞いに及んだんでしょう。ウクライナにしても、曲りなりにも国連常任理事国たるロシアが、まさかいきなり他国の首都を制圧して国全体の簒奪を図るほどの、凶悪さと強欲さを、白昼堂々、世界に見せつけるところまでやってくるとは、おそらく予期していなかったのではないでしょうか。
しかし、ことは始まってしまった。とにもかくにも行くところまで行くしかない状況で、両国とも、経済面では完全に戦時体制、軍事最優先でこの戦争を継続しているはずです。いかなる国も戦時経済を保つことが出来るのは、長くて5年という説を、どこかで聞いたことがあるのですが、それはまあそうでしょう。国民生活に長く犠牲を強いれば、厭戦気分が募り、政権への不満が嵩じてくるのは避けられないでしょうから。
武力で屈服させることが難しいとなってロシアが採った手段は、電力インフラ等の破壊でウクライナ国民に冬期の生活を耐えがたいものにするというものでした。しかし、日本も相当数の自家発電装置の提供を行ったようですが、西側諸国の支援で、ウクライナ国民の抗戦の気概を挫くことは出来なかった。今冬もまた同じことをやるでしょうが、ウクライナにはまた同様の支援を得られることが期待できるでしょう。ロシアに、それほどミサイルの生産能力、過去からのストックが残ってものやら、懐疑的な見方もあるようですが。
さらに、今度はウクライナがロシアの石油施設、発送電施設の破壊を相当の規模でおこない始めました。それがなかった昨シーズンの冬でさえ、経済の軍需全振り、現業労働者の戦場への動員で、地域暖房施設等のインフラの劣化が顕わになって、ロシアの各地で相当悲惨な状況が現れ始めていたようです。この冬を乗り切って更にその先まで戦争を継続するのは無理、ロシアがそう覚らざるを得ない事態がやってきそうな気がします。
戦時経済体制は、できうる限り早く、平時のものに戻さなければいけない。今回のウクライナのデフォルト事態に、西側諸国が採った好意的な協調行動は、この国の復興に対する支援に対しても同様に期待できることを示していると思います。
対するロシア、まあ日本国内のロシアンフレンズなんかは何の力にもなれないでしょうが、戦争そのものについては、今のところ肩を持つような素振りを見せている国々の中に、この国の戦時から平時への経済の切り替えに喜んで力を貸してくれるようなお友達って、果たしているものやら。弱り目に祟り目で、ここぞとばかりに屍肉に群がるハイエナまがいの振る舞いに出られても仕方がない、そんなことになりそうな気までしてきます。
ウクライナ復興はビッグビジネスです。戦闘が終了した暁には隣国ポーランドを拠点として各国が腕を揮うことになるのでしょう。日本の貢献は水ビジネスあたりじゃないですか。
昨年だったかポーランドで開かれたトレードショーに日本企業の出展がひとつもなかったと現地リポートした日経記者が嘆いていました。
はにわファクトリー様
日本が戦後の荒廃から立ち直れたのは、朝鮮戦争特需のおかげ。われわれの蒙った困苦を肥やしに、経済成長したんだから、その分ウリに貢ぐのは当然ニダ、がカノ国のいわゆる用日派の共通認識みたいなもののようです。
それがなけりゃ、日本がいつまでも瓦礫の中に立ち竦んでたってことはないでしょうし、まあ、あれだけの経済援助をした後になって、そんなムシのいい話、いつまでも蒸し返される筋合いではないにしても、あながち根拠のない集りとばかり言い切れないのが、鬱陶しいところ。
実際、朝鮮戦争特需は、当時の日本にとって、干天の慈雨みたいなものであったのは、事実でしょうしね。しかし、ここまで国力の充実を遂げた今の日本にとって、ウクライナの「復興特需」なんてものに、これを好機とばかりに血道を上げたりするのは、いかにもさもしい振る舞いのように思えます。
瓦礫や地雷の撤去、破壊された社会インフラの修復、不足する日用品の生産設備の増強の支援などなど、モノ売りつけて一儲けを企むより、ウクライナ経済、社会の立ち直りにとって必要な事柄を、日本のカネを使ってやるのが、今の日本にふさわしい経済戦略のように思えます。
ロシアの凍結資産が2000億ユーロ以上とかいう規模だそうで、利益がウクライナの武器調達基金へ→砲弾数十万発規模に化けるそうですよ。
基金があっても買うモノが無ければ無意味……だったのですが。アメリカが自国用砲弾を割いても足りず生産も間に合わずと言っていたのも、気づけば結構経ちます。なんやかんやでウクライナ協力側諸国で年産100万発を超えていたようです。あ、ロシア側も砲弾は協力を受けていましたっけ。北朝鮮製の……
凍結資産の運用は、各国の所謂"支援疲れ"を直接軽減しますし、戦争が長引けば長引くほどウクライナ復興等でロシアに賠償をさせる必要が増していきます。勝てるかどうかというよりも"勝たせる"理由が着々と積み上がっている。
ゼレンシキー大統領は自由と正義のための戦いを演出して欧米を巻き込み、次第にカネのための戦いにすげ替えて抜けられなくした……のかはわかりませんが。戦術が絶望的に苦しくとも戦略で生き残ることができるかもしれないという事を示しているかもしれません。