時事通信によると、ブラジルでX(旧ツイッター)が連邦最高裁からサービスの停止を命じられたそうです。本件については現時点で、X側に非があるのか、それとも同裁判所の判断が行き過ぎているのかについての論評は避けたいと思います。ただ、ネット空間は発展途上にあるため、さまざまなトラブルが生じるのはある意味で当然であるものの、だからといって安易なネット規制論に走るのは正しい態度とは言えません。
宗教改革に匹敵するネット革命
先日の『宗教改革にも匹敵し得る現代の「インターネット革命」』では、SNSを含めた現在のインターネット革命が、グーテンベルクが活版印刷を発明し、ルターが宗教改革を始めたころと、状況がよく似ているのではないか、とする仮説を提示しました。
カトリック教会が大きな権力を持ち、宗教で人々を支配していた中世西欧社会において、カトリックの権威を否定するような論題があっという間に広まったのも、活版印刷技術や製紙技術の発展により、ルターの主張が大量の印刷物で各地に伝播した、といった事情が大きかったはずです。
そして、これは著者自身の私見ですが、一般的に、宗教は事実に弱い、という特徴があります。
宗教改革とほぼ同じ時期に、天動説を否定する地動説が出現し、天文学が飛躍的な発展を遂げ始めたのも、宗教という不合理な権威を振りほどくだけの知的好奇心、科学的思考態度を求めるという人間の理性の賜物ではないでしょう。
グーテンベルクの活版印刷術をインターネット、カトリック教会をマスコミや財務省など「国民から選ばれていない人たち」になぞらえれば、現在、まさに宗教革命や科学革命に匹敵する変革が、日本を含めた世界各地で生じようとしているのではないでしょうか。
交通事故の頻発と同じでトラブルも生じる
ただし、新たなテクノロジーが出現すれば、必ず、摩擦が発生するものです。
とりわけ、SNSなどが急速に発達したことで、従来であれば考えられなかったトラブルも頻発します。ちょうど自動車が出現し、普及し始めたことで、人々は高速で快適な移動ができるようになった反面、交通事故が頻発するようになったようなものでしょう。
そして、ネット(とりわけSNSなど)では私たち一般人でも気軽に情報発信できるようになったため、不用意な発言で他人の名誉を傷つけてしまうこともありますし、それによる訴訟沙汰も発生しています。X(旧ツイッター)では誹謗中傷による開示請求も頻繁に行われています。
(※余談ですが、開示請求されている者のなかには某大手メディアの記者やその経験者なども含まれています。新聞記者らはひと昔前ならば「情報発信のプロ」だと思われていたフシもありますが、そんな新聞記者らのなかには、信じられないほど低レベルな情報発信も見られるようです。)
ブラジルでXに対するサービス停止命令
こうしたなか、興味深い事例があるとしたら、南米・ブラジルでのXのサービス停止命令でしょう。
ブラジル最高裁、Xサービス停止命令 アカウント凍結拒否 マスク氏「言論の自由破壊」と批判
―――2024/08/31 06:06付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】
時事通信が31日に報じた記事によれば、ブラジル連邦最高裁は30日、Xに対し、ブラジルでのサービス停止を命令したそうです。
なんでも同国の最高裁はこれまで、たとえば「2022年のブラジル大統領選に絡んだ捜査の一環」として、「Xへの投稿で偽情報などを流した利用者のアカウント凍結」などを命じるなどしてきたのですが、X側はこれを拒否してきたのだそうです。
また、今回のサービス停止命令も、同裁判所が命令した一部利用者のアカウント凍結にX側が応じなかったためで、Xのオーナーのイーロン・マスク氏は「検閲」だ、などと述べていたのだとか。
同国最高裁とXやマスク氏のやり取り、言い分などについてはリンク先記事を直接読んでいただきたいのですが、これについて当ウェブサイトとしては、現時点において、どちらの主張に正当性があるかに関する論評は避けたいと思います。
トラブルも目に余るが…ネット規制論は行き過ぎ
ただ、あくまでも一般論として申し上げるなら、Xは快適な言論空間であるという側面もありつつも、一部ユーザーの無法行為は目に余ります。
Xという空間で、お互いに面識がないにも関わらず、いきなり「バカ」だ、「アホ」だといった罵倒語が飛び交うのもさることながら、「相手をブロックしたうえで罵倒」、「多数のフォロワーを持つユーザーが自身のフォロワーに特定のユーザーを攻撃させる」といった行為も横行しています。
さらには、最近話題となっているのが、俗に「インプレゾンビ」と呼ばれるユーザーで、これはおそらく発展途上国あたりのユーザーが「バズコメント」に群がっている、というものです(正直、Xで話題となっているポストのツリーが読めなくなるため、大変に迷惑です)。
こうしたトラブルも、結局のところ、XなどのSNSが発展途上だから生じるものであり、また、ルールが整備されていくのを待つしかないのではないでしょうか。
いずれにせよ、SNSを含めた現在のネット空間に問題が全くないとは申し上げませんが、「ネットは怪しいもの」、「ネットを全面禁止せよ」、といった極論につながるのであれば、それはそれで行き過ぎであり、本末転倒ではないかと思う次第です。
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X(旧Twitter)に問題があった場合、自分と価値観(?)があう人に嫌われないためには、法による規制を言い出す方が簡単ではないでしょうか。
蛇足ですが、ブラジル最高裁もイーロン・マスク氏が旧Twitterを買収する前なら、価値観(?)があっているので、法規制に反対するのではないでしょうか。
「イーロン・マスク氏がトランプ前大統領を支持したので、ハリス副大統領と民主党極左に忖度して、X(旧Twitter)に停止命令をだした」と考えるのは、陰謀論でしょうか。
現代中国社会を理解するキーワードの一つが「和諧」だそうです。「和諧社会」に対する当てこすりで、実体は発言封殺のことです。
旧ソビエト圏では好ましからぬ人物と判定されると当局が社会的抹殺を行う。消息不明になるだけでなく、まるでその人がこの世に居なかったのごとく記録が組織的に消去されていたとのよし。「和諧される」「和諧社会」とは本当に恐ろしいですね。
横から失礼しますけどこのフレーズは日本語で「わかい」と読み、古くは聖徳太子の第17条憲法にも使われていたとか。
中国ではお上がスローガンとして広めたいようですが、人民ははにわファクトリーさんのおっしゃるようなニュアンスで使っているようで
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E8%AB%A7
ブラジル国民が
偽情報に扇動されるデメリットは防げても
失うメリットは計り知れないと心配します。
それにしても
中国やロシアやそ子分お北などの
独裁国家ではないブラジルで、
このX一律禁止決定は、
私はその背景状況と影響が知りたくて興味深いです。
一方
日本のネット掲示板などの意見には
ブラジルの問題や背景などはすっ飛ばして
イーロン・マスクは悪い奴だから当然だあ(?)
的な意図の書き込みが散見されます。(笑)
そして面白いのはその書き手さんはどうも日頃は
「言論の自由があ 政府の弾圧があ」(?)的な
主張をしている人たちのようだと透けて見えることです。
一昨年イーロンマスク氏がtwitterを買収し
「キュレーションチーム」(笑)を即時解雇した途端に
それまで
「えっ?こんな記事ほんとにトレンド上位なの??」
という朝日新聞資本のHuffpostなどのフェミ記事が
流れてこなくなったことは当時大きな話題になりました。
https://togetter.com/li/1973726
そしてそれ以降ネットでは、
なにかにつけてイーロンマスク氏をけなすコメントが
日々涌いているようです。
(^^);
実際、Xやマスク氏を恨んでいる人達は少なくないでしょうからねえ。
マストドンに引っ越す!とかやっても上手くいかなかったみたいですし。
「言論の自由を守ると言いながら、実際には言論の独占を欲しがる」人達が
この世に実在すると言うのは忘れてはならない。
雪団子さまおっしゃるように
彼の斬新な行動力実現力なので
当然良い面悪い面はあり 賛非両論です。
なので
「 異-論 ま、少・・なからず」
といったところでしょう(笑)。
そして日本ではそれに紛れての、
トレンド操作排除逆恨みの人たちの
いじっこい非難が滑稽で観賞価値を感じます。
今夜のダジャレは冴えてますね
グーテンベルクによる印刷技術は、書物が容易に手に入るようになった結果、当時の人々の識字率の向上を促したと思います。
ただ、書かれていることの真偽についてはそれを読んだ人が確認する手段は限られていたと思います。偽の情報で世論を煽ることもあったかもしれません。
インターネットが普及している現在、個々の情報の真偽については当時と似たようなものかもしれませんが、ネットにおける数多くの主張を比較検討することが可能になり、いわゆる情報リテラシーはこれからも向上するものと期待しています。
マスコミなどが発信する情報も、これからはネットで即座に厳しく検証される時代になっていくのではないでしょうか?
Googleのロシア法人はロシアのウクライナ侵攻後に資産をロシア政府に没収されて破産申告して撤収しています。
自国SNS検閲つきしか使えない中華人民共和国も含め、自称グローバルサウスには自由も権利も存在しないようです。
ゴメンだね!