X

野党が育たない理由は「社会が育てないから」ではない

立憲民主党代表選に関連し、同党の地方議会議員の方が、「本当にこのまま自民党政権で良いのか」、「(同党を)育てるという感覚はないのか」、とする趣旨の嘆きを、X(旧ツイッター)にポストしていました。これもおかしな発想です。立憲民主党が「育たない」の理由は、おそらく、社会が「育てない」からではないからです。立憲民主党はむしろマスコミからとても優遇されている方でしょう。

「まともな野党がない日本」という10年以上前からの認識

先日、ふとした拍子に、自分自身が2013年9月頃に執筆したブログ記事を眺めていて気づいたのですが、そのなかで「まともな野党が存在しないこと」が日本の不幸だ、とする趣旨の記述が、頻繁に出てくることです。

2013年といえば、前年12月末の衆議院議員総選挙で自民党が圧勝し、(当時の)民主党の獲得議席数が潰滅的な状態に陥った直後という時期です。

当時の安倍政権は、民主党政権でガタガタになった日本経済、外交、安全保障などのさまざまな態勢を立て直すのに必死で、これに加えて特定秘密保護法などの新たな法制を推進するなど、獅子奮迅の努力を重ねていたころでしょう。

実際、多くの国民の間で自民党に対する信頼も深く、また、政権に復帰した直後ということもあり、自民党にはさまざまな緊張感が漂っていましたが、これに対し、民主党側には「再び自民党を倒して政権に復帰してやる」、といった気概はほとんど見られませんでした(これは著者自身の感想かもしれませんが…)。

さらに、おりしも橋下徹・大阪市長(当時)らが主導した「維新改革」に注目が集まっていた時期だという事情もあってか、民主党側には何ともいえない閉塞感すら漂っていたフシがあります。

ただ、民主党はたった1年前まで政権を担う与党だったわけですし、前年の総選挙で現職閣僚ら重鎮議員が大量に落選したにせよ、首相経験者でもある菅直人、野田佳彦の両氏は依然として衆議院議員を務めていたわけですから、当時の民主党の「存在感のなさ」は、なんとも印象的なものでした。

立憲民主党は最大野党だが…弱小勢力に留まる

あれから10年あまりが経過しました。

ただ、現時点において、「自民党に代わって今すぐ政権を担い得る政党」が出現したとは言い難いのが実情でしょう。

衆議院では当時の民主党と比べ、現在の立憲民主党の方が、それなりに多くの議席を持っています。しかし、それでも立憲民主党を主体とした衆院の会派「立憲民主党・無所属」の議席数は465議席中99議席、参院の会派「立憲民主・社民」は248議席中40議席に過ぎません。

最大野党である立憲民主党ですらこんな体たらくなわけですから、大変残念な話ですが、自民党に対する有権者の不信感が仮に高まったとしても、政権交代が生じる可能性は高くないというのが現状でしょう。

では、どうして野党が育たないのでしょうか。

「(野党を)育てるという感覚はないのか」

これに関し、とある自治体の立憲民主党所属地方議会議員が先日、立憲民主党代表選を巡って、こんな趣旨のことをX(旧ツイッター)にポストしていました。

本当にこのまま自民党政権でいいのでしょうか。毎回思いますが、(野党を)育てるという感覚がないのでしょうか。残念です」。

要するに、マスコミや有識者、あるいは有権者が、立憲民主党という野党を育てようとしない、といったニュアンスでしょうか。

もしそういう理解が正しかったとすれば、こうした発言が立憲民主党関係者から出てくるという事実自体が、「立憲民主党が政権を担い得る確たる野党として育たない理由」でもあるのかもしれません。

そもそも「鶏と卵」の関係ではありませんが、まず、とある政党が国政政党として信頼されるためには何らかの実績が必要であり、そして実績を積むためには政権を担うのが手っ取り早いのですが、実績がない政党が有権者に信頼されて政権を担うことは難しいのが実情です。

なお、「立憲民主党には与党としての実績はない」、などと申し上げると、「立憲民主党が旧民主党政権時代に与党として政権を担った経験があるじゃないか」、といったツッコミが来るかもしれません。

事実、現在立憲民主党代表選への出馬を表明している枝野幸男前代表(元官房長官)や野田佳彦元首相などにみられるように、立憲民主党の現執行部を含めた主要メンバーのなかには、旧民主党政権時代の閣僚経験者、党幹部なども残っています。

立憲民主党(≒旧民主党)は、民主党政権時代の経験から、いったい何を学んだというのでしょうか。

むしろ野党こそマスコミに甘やかされていませんでしたっけ?

ここから先は著者の完全な私見です。

この民主党政権に関していえば、2009年に私たち日本国民の多くは、「自民党にお灸を据える」などと称し、当時の野党を勝たせたことで、私たち日本国民自身が手痛い打撃を受けたという経験を、決して忘れてはいないでしょう。

というのも、民主党政権を成り立たせたのは結局のところ、マスメディア(とりわけ新聞とテレビ)の「極甘報道」だったからです。

新聞、テレビが2009年、「政権交代」、「政権交代」と煽りまくり、自民党政権の功績などをほとんど無視し、麻生太郎総理大臣に対しても、「漢字も読めない」、「カップラーメンの値段も知らない」、「ホッケを煮つけにして喰う」、「毎晩高級バーに通っている」、などと攻撃しまくりました。

民主党政権を発足させた原動力も、結局のところは、メディア報道に騙された、約867万人の「情報弱者層」の投票行動が原因だったのではないでしょうか。

ちなみに衆議院議員総選挙における小選挙区の特徴は、「ウィナー・テイクス・オール」、すなわち1位となった人だけが当選し、残りは全員落選する、というものです。比例代表での重複立候補により、惜敗率などに応じて復活当選できる、といった救済措置はありますが、これはあくまでも単なる救済措置です。

小選挙区(定数は2012年まで300議席、2014年は295議席、2017年以降は289議席)における、民主党(~2014年)、立憲民主党(2017年~)の得票率と獲得議席数の関係で見ると、そのことは一目瞭然です。

民主党(~2014年)、立憲民主党(2017年~)の得票率と獲得議席数
  • 2005年…24,804,787票(36.44%)→300議席中*52議席(17.33%)
  • 2009年…33,475,335票(47.43%)→300議席中221議席(73.67%)
  • 2012年…13,598,774票(22.81%)→300議席中*27議席(*9.00%)
  • 2014年…11,916,849票(22.51%)→295議席中*38議席(12.88%)
  • 2017年…*4,726,326票(*8.53%)→289議席中*17議席(*5.88%)
  • 2021年…17,215,621票(29.96%)→289議席中*57議席(19.72%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調』データを加工)

2005年と2009年の選挙では、2480万票から3348万票へと、得票数は867万票増えたに過ぎませんが、議席は52議席から221議席へと、4倍に増えていることがわかります。得票率が10%ポイントほどしか上昇していないのに、議席数で数倍の開きが生じるのです。

これが、小選挙区の「怖いところ」です。

報道で有権者を騙せる時代ではなくなっている

ただ、その後は2021年を除いて、民主党・立憲民主党の得票数は1000万票台前半、あるいは1000万票を割り込む、といった状況にありました(2017年に関しては当時の民進党が分裂したため、極端に票が少なくなっています)。

こうした状況を踏まえるならば、マスコミ各社が再び一致団結し、「自民下げ・立憲民主上げ」報道を行えば、ほんの1000万人弱を騙すだけで、政権交代の夢再び、などと、マスコミ業界や特定野党界隈では考えているのかもしれません。

もっとも、その可能性は、年々、低くなってきています。

いうまでもなく、新聞、テレビの社会的な影響力が急降下しているからです。

著者自身の予想に基づけば、新聞は早ければあと数年で、テレビも10年単位で見ると、それぞれほとんど社会的影響力を喪失して行くでしょうし、そうなると、立憲民主党はますます政権から遠のくのではないでしょうか。

そうならないためにも、立憲民主党は心を入れ替え、「社会が我々を育ててくれない」、などと嘆くより、まずは自ら成長できるように努力するのが筋ではないでしょうか。

もっとも、それができるようであれば、今ごろもう少し議席が伸びていたのかもしれませんが…。

新宿会計士:

View Comments (30)

  • 確かに育ててませんよね。
    マスコミさ~ん育てて欲しいって
    もう甘やかすのやめて自民党と同じ基準で不祥事を報道してやってくれないかな。

  • 仕事でよく部下の育成が業務に入ります
    でも他人の育成ほどおこがましいものはありません
    なぜなら自分の育成も満足に出来ていませんからね
    育成するぞ~ とされた部下は気の毒と言うものです
    育成の簡単な解釈は「使えるところで使う」 だけです
    翻って野党の使い道はあるのでしょうか?
    東大を卒業しても日本語が怪しい党首とか、総理になったら一番にすることが韓国との通貨スワップを10倍にしたとか、パー券収入を届けてなくてもしたバックレてる野党幹部とか
    どこに使えるか教えてほしいものですね

  • 子供を甘やかすのは一見虐待に見えないけど、長期的には生きる力を育てない事に繋がるから、優しい虐待とするのを思い浮かべてました。

  • とある自治体の立憲民主党所属地方議会議員氏の発言の文脈がわからないのですが、
    「自民党の総裁選ばかり報道されているが、立憲民主党の総裁選についても報道して欲しい。その上で、相も変わらず内輪の論理で、同じような顔ぶればかりの実態に対する遠慮のない批判をして欲しい。」
    みたいな趣旨だったら、外部に依存するという問題はあるものの、まだマシだと思うのです♪

    でも、きっと違うんのでしょうね。単に「もっともっと甘やかせてもらいたい。」っていうだけなんだろうけと想像するのです♪

  • これだから立憲民主党は嫌いです。「育てる」のは周りが言うならまだわかりますが、自ら「育てろ」とは、厚かましさを通り越して怒りが湧きます。選ばれるための努力を放棄しているにも係わらず、選ばれないのは周りのせいとか、頭がおかしいとしか思えません。(何でも他人のせい)

    自民党を批判するだけを何十年も続けてきて、それで選ばれないのならば(1度だけ過ちがありましたが・・・)、その方法が間違えていたという簡単な現状分析くらい出来て当たり前だと思いますが、それすらしない政党に未来などあるはずがないです。

    まともな野党を育てるためにも、本当に、心から、早く立憲民主党は無くなって欲しいです。

  • 新宿会計士様

    >メディア報道に騙された、約867万人の「情報弱者層」の投票行動が原因だったのではないでしょうか。

    あたしも「情報弱者層」の一人だから、耳が痛いのです♪

    でも、あそこまでとは普通は思わないじゃないですか?

    「コンクリートから人へ」
    「腹案がある」
    「原子力には詳しいんだ」
    いろんなことがありました♪
    (*゚‐゚)ぼぉー・・

    このまま黒歴史を背負って生きてくのは辛いのです♪そろそろ許して欲しいのです♪
    ߹ㅁ߹) ᒡᑉᒡᑉᐧᐧᐧ

  • 仮に社会が野党を育てるとして、その野党が(現)立憲でなければならない理由はありません。立憲と全く相容れない政党である可能性もあります。

    • あの人たちは「立憲共産党」と指摘されると憤慨するみたいだけど、一般的な国民から見れば「立憲共産党」でしかないし、全く興味が沸かないし、「育てる」なんて問題外の外でしょう。

  •  私が悪夢の民主党に騙されなかったのは、政治に精通していたわけでも情報強者だったわけでもありません。2ch界隈を見ていて当時から「ミンスやべぇwww」というネタに触れていたからというだけです。ネタで済まされないヤバさで逆にいくらなんでもネタだろというレベルでしたが、恐ろしいことに現実でした。ちなみにフシギなことに同時期からの「韓国やべぇwww」というネタと彼らが妙な符合をするのですが、フシギフシギ。
     娯楽としてのネットに早くに触れていなかったら、1千万側に入っていたはずです。人生何が役に立つかわからないものです。

     そんな程度の私でも、"民主党を育てる"などという、賽の河原の石積をやるほど暇ではありません。郵便ポストに語りかけている方がいくらか有意義です。
     国民民主あたりは育てて良いかもという気がしているくらい。それは同党が育って見えるから。育つ気があり育つ見込みがあるように見えるから、赤の他人を育ててみようという気が起きるのです。「俺を育てろよ?」などと偉そうに言ってくる自活しないヨソのガキなんて誰が育てたがるのでしょう。俺はお前のカーチャンじゃねぇんだ。

    • >郵便ポストに語りかけている方がいくらか有意義です

      し、失礼な❗️
      誤れ!
      郵便ポストに誤れ‼️

      •  郵便ポストに頭を垂れる私と、意味不明な事をポストする議員と、異常なのはどちらなのでしょう……さすがに郵便ポストか。ポストさんごめんなさい。
         あと河原の獄卒さんも申し訳ありませんでした。子どもたちの積んだ石塔に向ける金棒は、どうかあの連中の方へ。(地獄へ落ちろの婉曲表現)

  • 政権を取った民主党ってほぼ完全な中道ポピュリスト政党だったんですよ。だから騙せたんです。

    左っぽいところをうまく隠せた。

    それを、「自分たちの政策が支持された!」と表に本性を出してしまったのが立憲民主党。政権奪取の原動力だった中道性を失ってしまったのでこの政党が政権奪取することはないです。
    規模が小さくてなかなか有力になれないのに、なかなか国民民主が根強いのはその中道性によるものです。

    まあ、オールドメディアの最後の砦である左翼老人が結構いて、低投票率の補選なんかでは結構立憲が勝ててしまうのが話をややこしくします。実際のところは総選挙じゃなかなか勝ち切れない。
    過去にあった「野党統一候補」戦略は党派性を薄め、批判票を最大限に取り込む良い作戦です。

    立憲の代表選は、それなりに頑張った現職の泉さんが立候補すらできなそうってなかなか面白い展開です。まあ、生暖かく見守りたいと思います。

    最近の興味は、めっきり人気をなくしてしまった維新ですね。口は達者だけど中味空っぽって維新のキャラがほぼ確定してしまいました。そりゃ偉くなったと勘違いしてパワハラするわなと納得の展開です。今や支持するのは、維新利権の恩恵ある人くらいでしょう。

    そもそも日本ではまともな人は政治家なんて目指しません。どうしようもない人たちの集まりから少しでもマシな人を探さなきゃいけない宿命です。
    案外世襲議員の方がまともってのはそう言った事情なのかもしれません。

  • 野党を育てるという意味は野党支持者とそれ以外で異なるのではないか?と考えます。

    一般的に有権者は野党に求めるのは政権を担える実力を見せつけることです。
    もう一度この政党に政権を任せてみようと、期待させるだけの技術を、と。

    野党支持者はとにかく自分達を甘やかして。
    政権担当能力とか鍛えるのは嫌、とにかくスキャンダル追求するから愚民たちは私達を支持しろと。

    リベラル野党が政権を喪ってからこの人の政治的意見は素晴らしい、ぜひとも政権を任せよう
    と思わせる人物が皆無です。
    そもそも今回の代表戦のように出てくるのは過去の政権の重鎮で、有権者から見捨てられた人達です。
    自分達で成長するつもりがないのに、上辺だけ支持してくれとは虫がいい話です。

    なぜ2009年は多くの人達から指示を受け
    現在はめっきり指示されないのか胸に手を当ててじっくり考えるべきです。

    残念ながらリベラルな人達は日本が嫌いなので再度支持を得るのは難しいと思いますが・・・。

    私は消去法で一番まともに見える国民に投票するのではないかと思います。

1 2 3