日経・テレ東が実施した緊急世論調査で、次期衆院選での投票が「自民党」と答えた割合が39%で、立憲民主党(11%)、日本維新の会(10%)を大きく上回りました。自民党は立憲民主党の3.5倍もの票を獲得するかもしれない、ということです。この調査をどこまで信頼するかという問題は脇に置くとして、もし本当に小選挙区で自民党が立憲民主党の3.5倍の票を得たら、議席数では3.5倍どころでは済まないほどの差がつき、立憲民主党が潰滅的敗北を喫するかもしれません。
目次
対照的な自民総裁選と立民代表選
『立憲民主党では枝野幸男前代表が代表選への出馬を表明』などでも取り上げたとおり、自民党総裁選と立憲民主党の代表選の期間が丸かぶりしているなかで、双方の「盛り上がり方」に、非常に大きな違いが出ているようです。
もちろん、非常に盛り上がっているフシがあるのは自民党総裁選の方であり、これに対して立憲民主党代表選の方は、どうにも話題性に欠けているきらいがあるなど、両者は対照的です。
自民党側は、40代の「無名の新人」(?)でありながら、いち早く出馬を表明した「コバホーク」こと小林鷹之氏、同じく40代で下馬評では本命のひとりと見られている小泉進次郎氏らを含め、最大で10名前後の出馬が取りざたされているそうです。
また、当選の確率がどの程度なのかはともかくとして、高市早苗氏や上川陽子氏ら女性政治家も出馬が取りざたされていますし、「変わり種」でいえば参議院議員の青山繁晴氏も立候補の意向を表明しているそうです(といっても、青山氏は参議院議員ですので、総裁に選ばれる可能性は極めて低そうですが…)。
すなわち、派閥を「ぶっ壊した」岸田文雄首相が自民党総裁選に出馬しないと表明したことで、従来の派閥力学とは無関係なところで、さまざまな候補(あるいは「候補」の候補)が取りざたされている格好です。
正直、その票の動向を正確に読むのは、現段階ではまだ難しそうですが、多くの人にとって、今回の自民党総裁選が「面白い」と思えるものであることは間違いありません。
参考:自民党総裁選2024サイト掲載の画像
(【出所】自民党ウェブサイト)。
なにせ、(当選可能性云々の問題は脇に置くとして)10名前後の総裁候補が取りざたされていて(実際に立候補するためには、推薦人を20人集める必要はありますが…)。そして、そのなかには若手あり、女性あり、ベテランあり、と、それなりにさまざまな候補者が含まれているからです。
こうした観点からは、自民党総裁に選ばれた人物次第では、「政治とカネ」の問題で傷ついた(とされる)自民党への信認が大きく回復し、衆院選が新総裁(=新総理)の下で速やかに実施されれば、自民党が圧勝する可能性も出て来ています。
現職の泉氏以外は「60代男性」が主体?
対する立憲民主党は、どうなのでしょうか。
現時点で出馬の意向を示しているのは、泉健太・現代表と枝野幸男・前代表という「新旧対立」であり、また、これに加えて一部報道によれば野田佳彦元首相、江田憲司氏、馬淵澄夫氏あたりの出馬も取りざたされているようです。
ただ、少なくともこの5人のなかで、60歳の枝野氏、68歳の江田氏、67歳の野田氏、64歳の馬淵氏は全員「60代男性」で。辛うじて現職の泉氏が50歳で「もっとも若手」だったりします(どうでも良い話かもしれませんが、立憲民主党の女性候補として、ネット上では「あの人物」を推す意見もあるようです)。
しかも、立憲民主党代表選は9月7日告示、23日投開票であり、これに対して自民党総裁選は9月12日告示・27日投開票です。
もしも立憲民主党側で23日に「60代男性」が代表に選ばれ、その直後の27日に、49歳の小林氏や43歳の小泉氏という「40代男性」や、あるいは上川氏や高市氏のような女性が総裁に選ばれれば、「いつものメンツ」の立憲民主党、「フレッシュ」な自民党、という対立軸ができてしまいかねません。
人物本位で見るべきだが…目立つ立民の人材不足
なお、念のために述べておきますが、当ウェブサイトとしては、「自民党の次期総裁は若手や女性が良い」、などと申し上げるつもりはありません。新総裁はあくまでも「人物」で評価しなければならないからです。
また、立憲民主党にも「若手」や「女性」はいますので、万が一、こうした「若手」や「女性」が立憲民主党代表選に出馬し、当選する可能性もないわけではありません。しかし、上記とまったく同じ理由で、「若手である」、「女性である」などで無条件に褒めそやす、といったことは控えるべきでしょう。
それに、自民党の次期総裁を決めるのは自民党所属の国会議員と全国の自民党員です。私たち一般国民にできることといえば、世論などの形で間接的に影響を与えることと、自民党員らの選択で決定された新総裁が率いる自民党を、選挙で信任するかどうかを選択することです。
ただ、誰が次期総裁に就任したとしても、「数多くの候補者のなかから選ばれた」という事実は重く、また、現状では立憲民主党代表は「旧態依然としたメンツ」から選ばれる可能性がそれなりに高いことは、注目点のひとつと考えて良いでしょう。
立憲民主党には人材不足が目立つ、というわけです。
日経・テレ東世論調査の衝撃:自民が立民の3.5倍の票を得るのか?
こうしたなかで、日経新聞とテレビ東京が21日と22日の両日、共同で実施した緊急世論調査の内容が配信されています。
衆院選の投票先、自民39% 立民11%・維新10%
―――2024年8月23日 5:00付 日本経済新聞電子版より
日経によると、緊急世論調査の結果、次期衆院選で投票したい政党のトップは自民党の39%で、前回調査からじつに9ポイント上昇。これに対し立憲民主党は逆に2ポイント下がって11%だった、などとしています。
ここで調査結果を信頼して良いのか、といった点に加え、「投票したい政党」という設問の意図がよくわからないという問題点はあると思います(小選挙区の話をしているのか、それとも比例代表の話をしているのかが明確ではありません)。
ただ、この調査結果を信頼したうえで、設問の「自民党に投票したい」を「小選挙区では自民党公認候補、比例では自民党にそれぞれ投票したい」という意味だと解釈すると、なかなかに恐ろしい事態が発生します。
単純計算して、自民党が立憲民主党の3.5倍の票を得る、ということを意味するからです。
そして、仮にそうなった場合、自民党が得る議席数は、立憲民主党の3.5倍どころではなく、それより遥かに大きな差が付き、潰滅的敗北を喫するかもしれません。当ウェブサイトではこれまで何度も指摘してきたとおり、衆議院議員総選挙では参議院議員通常選挙と異なり、「小選挙区比例代表並立制」を採用しているからです。
小選挙区制による得票率と議席数の関係
そもそも衆院選では定数465議席のうち、小選挙区に配分された議席は289議席と全体のほぼ6割少々を占め、これに対し比例代表に配分された議席は176議席と全体の4割弱に過ぎません。
そして、小選挙区ではその選挙区で1位となった候補者が当選し、2位以下となった候補者は全員、小選挙区では落選します。例外的に比例重複立候補をしていた場合、惜敗率が高ければ比例復活当選もあり得ますが(いわゆる「比例ゾンビ」)、その政党の得票が少なければ、比例復活すらできないこともあります。
ということは、全国的に平均して最大の支持を受けている政党(直近4回の衆院選では自民党、2009年の衆院選では民主党)が全国の多くの小選挙区で当選し、結果的に少ない票数で圧倒的多数の議席を占めることができるかもしれないのです。
2005年以降の総選挙について、自民党が小選挙区で獲得した票数と議席数を列挙していくと、こんな具合です。
自民党の獲得票数と獲得議席数(小選挙区)
- 2005年…32,518,390票(47.77%)→300議席中219議席(73.00%)
- 2009年…27,301,982票(38.68%)→300議席中*64議席(21.33%)
- 2012年…25,643,309票(43.01%)→300議席中237議席(79.00%)
- 2014年…25,461,449票(48.10%)→295議席中222議席(75.25%)
- 2017年…26,500,777票(47.82%)→289議席中215議席(74.39%)
- 2021年…27,626,235票(48.08%)→289議席中187議席(64.71%)
(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』データをもとに作成)
2005年、および2012年以降の4回の選挙では、自民党の小選挙区における得票率は、いずれも50%に少し足りないくらいですが、小選挙区では定数の3分の2前後、多いときには80%近くの議席をかっさらっています。
また、自民党が「惨敗した」とされる2009年の選挙でも、得票率自体は40%を少し割り込んだくらいだったのですが(自民党が圧勝した2012年のときと比べ、わずか4.5ポイント程度下回る程度です)、獲得したのは全300選挙区のうちたった64議席、つまり20%少々に留まったのです。
これが、小選挙区の恐ろしいところです。
民主党と立憲民主党の過去の得票数と議席数
同じ要領で、民主党(※2014年まで)と立憲民主党(2017年以降)の得票数と獲得議席数を列挙してみると、同じようなことがわかります。
民主党・立憲民主党の獲得票数と獲得議席数(小選挙区)
- 2005年…24,804,787票(36.44%)→300議席中*52議席(17.33%)
- 2009年…33,475,335票(47.43%)→300議席中221議席(73.67%)
- 2012年…13,598,774票(22.81%)→300議席中*27議席(*9.00%)
- 2014年…11,916,849票(22.51%)→295議席中*38議席(12.88%)
- 2017年…*4,726,326票(*8.53%)→289議席中*17議席(*5.88%)
- 2021年…17,215,621票(29.96%)→289議席中*57議席(19.72%)
(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』データをもとに作成)
小選挙区では300議席中221議席を獲得して圧勝した2009年に関しては、小選挙区の得票率は全国で47%少々に過ぎませんでしたが、この2005年以降、2009年の選挙を除いて最も多くの議席を獲得した2021年の選挙では、30%弱の得票率で獲得したのが57議席(つまり20%弱)でした。
つまり、2021年に関しては、小選挙区で自民党候補者に投票した有権者が全国で48%だったのに対し、立憲民主党候補者に投票した有権者は30%弱も存在した格好であり、両者には倍以上の差がついていたわけではなかったのです。
もしこれが、自民党が立憲民主党の3倍を超える票を得る、といった事態になれば、小選挙区における立憲民主党の獲得議席数は、2012年の9%(300議席中27議席)をさらに下回ることになるでしょう。下手をすると、289議席中17議席(6%弱)しか獲得できなかった2017年の再来もあるかもしれません。
(※ちなみに2017年総選挙といえば、当時の民進党が空中分解し、同党が立憲民主党、およびのちに「国民民主党」となる「希望の党」などに分裂したタイミングであり、立憲民主党はむしろ健闘したほうだとされています。)
この9月は日本を変えるタイミングになるのか?
もちろん、現実には比例代表もあるため、自民党、立憲民主党ともに、最終的な獲得議席数はもう少し増えるのですが、それでも多くの場合、小選挙区で圧倒的な議席差が生じてしまった場合、それを比例で挽回することはできません。
もし本当に自民党が立憲民主党の3~4倍という票を得た場合は、立憲民主党は自民党に惨敗し、現在の100議席近い勢力を半分以下に激減させることになる、といった事態も想定できます(新聞社やテレビ局などが実施する世論調査をどこまで信頼するか、といった問題はありますが…)。
いずれにせよ、著者自身は立憲民主党という政党が「最大野党」という地位にあることが、日本の根源的な不幸の源泉だと考えている人間のひとりですが、その立憲民主党の代表選が自民党総裁選と比べ埋没し、それに続く衆院選でも振るわなければ、「野党再編」もあり得る話です。
その意味では、この9月は日本の将来を決めるうえで、非常に大切なタイミングといえるのかもしれない、などと思う次第です。
View Comments (22)
現時点で野党で期待できるのは国民民主党しかいません(それでも不満点は少なからずありますが)。立憲との合流抜きで勢力拡大してもらいたいものです。
私も匿名さまと同じ想いです。
榛葉幹事長のYoutubeはいつも見てますが
でも、地域に候補がいないので
国民民主党に投票したことはありません。
立憲民主党の中央は2009年以来
あんな人達ばかりが幅を効かせてますが
地方の議員さんは歪みが少ない人も多くいる
と感じますので、先の都議選結果も参考に
国民の意向を真摯に感じて所属政党を代える人が
多く出てきてほしいと期待します。
ただ、
その割にはそうした動きが
目立って出てこないのが私は不思議なのです。
立憲民主党好きという人と話をしたら
それは「立憲民主というブランド愛」(?)
だと言われてしまいました。
まあ、私からしたら
「立憲民主の 腐”乱度合い」(?)
にしか感じられませんでしたが。
案外立憲支持層は岩盤になっているような気もしてて、補選なんかではある程度健闘するような気もしています。ただ、総裁選効果を最大限に受けた解散総選挙では無党派層の逆風で中レベルの敗北、小選挙区で30議席前後あたりを予想します。
毎度、ばかばかしいお話しを。
立憲:「アメリカのハリス副大統領をみると、わが党も女性党首にすれば、政党支持率で自民党を逆転する」
ありそうだな。
ふと思ったのですけど、重要なのは今の自民立憲の政党支持率ではなく、党首選後の政党支持率ではないでしょうか。その時、政党支持率の差が広がっているのか、狭まっているのか、逆転している可能性もない訳ではありません。(党首選後、自民立憲以外の政党の政党支持率も多少は変化するのでしょうか)
「自民党をぶっ壊す」
かつて先代小泉さんが威勢よく放った言葉が大いにマスコミ受けました。
「立憲民主党をぶっ壊す」
R4議員が立民党に電撃復帰してこれを叫び立民代表選に名乗り出たら、自民党総裁選に比べどう見ても影の薄い立民の惨状に頭を抱えているマスコミも大喜びすることでしょう。
ホントにぶっ壊す気がしますけど…。
L氏「今度は2番になれます!」
都知事選では当たり前に、
一位どころか2位にもなれず、
なぜだか悔しがってた
蓮舫さんなのですが、
最近の週刊誌のアンケートではすでに
女性政治家のなかで念願の?
堂々の一位を獲得なされています。
(^o^)
https://smart-flash.jp/sociopolitics/299944/
彼女にも誰にも負けない点があったのは多少は救いになるかもですね。
(いやいや・・・)
打たれ弱いので、
二位にもなれず消沈していた
彼女の支持者さんたちでしょうが
一方、この堂々一位の結果には、
「にゃにおう~! われえ~!」と
きっと反発し奮起なさると思われるので
その勢いでの立憲民主党代表選挙が
とても楽しみです (^^)/
都知事選では、非小池非左翼(R4)の2位の候補者を支持してました。
この夏から、維新が地方の組織づくりに汗を掻いていれば、野党第一党になりそう(自民批判の受け皿)。
R4の立民への政界復帰、違った意味で密かに期待します。
かつて泉代表の「非難から提案へ!」の心意気を折った立民の重鎮たち。
立民の代表は、選挙互助会の調整役(=広報兼雑務係)でしかありません。
*はっきり言って、中堅・若手が刷新感で選ばれても罰ゲームやん。
NHKの反日捏造報道と訂正しないNHKを見るに野党も含めたメデア業界は国民の支持を上げることを止めたと思うのです。
新聞の凋落が止まず、TV視聴率低下も止まらず、今更報道姿勢を変えることもできない
となれば野党の動きはますます先鋭化し隣国の為の行動となるでしょう
国民から離れてしまった活動では資金が集まらず隣国からの資金に頼ることになります。
お金を握られたら従うしかありません。朝鮮総連と共産党がいい例です
NHKも含めてとなりますが役人と国会議員への接待攻勢を益々強めるのでしょう
天下り、子息の就職先をオールドメデアがしていることは明らかでしょう
さてどうしたものか
自民党の勢力ばかり記事に出ていますが、金権政治、統一教会等の問題はもう忘れてしまったのでしょうか。
総裁候補者が10名以上といわれています。
石破茂 父=石破二朗鳥取県知事
加藤勝信 父=加藤六月農水大臣/統一教会問題
上川陽子 三菱総合研究所研究員
小泉進次郎 父=小泉純一郎総理大臣
河野太郎 父=河野洋平
小林鷹之 大蔵省/統一教会問題
齋藤健 通商産業省/埼玉県副知事
高市早苗 松下政経塾/テレ朝キャスター
野田聖子 帝国ホテル社員/祖父=野田卯一衆院/警察庁のDBに,夫が過去に
暴力団に所属
林芳正 父=林義郎大蔵大臣
茂木敏充 丸紅,読売新聞社員/平成維新の会事務局長/2020,22年(政)資金,使 途不明支出9,400万円
この中に、伊藤博文を超える人はいますか。
よくよく、高市早苗しか残らなかった。
青山繁晴さんを忘れてませんか?
総理になる可能性は極端に低いですが、一石を投じることになるはず。
全員超えるんじゃないですか?
伊藤博文と井上馨は若いころに、横浜にある外国人領事館に放火したテロリストです。
逮捕されていれば、総理にもなれなかった。上記の人たちは、グレーであってもテロリストじゃない。
伊藤博文の何を超えているかを問うているのでしょうかね?
経歴の美麗さ?期待値の判断材料にはなるかもしれませんがそれだけでしょう。
伊藤博文と比較するのはなぜ?故人だし今回の総裁選候補でもないのに?
相変わらず何を言いたいのか意味分かりませんね。
もしかして、ただの構ってちゃん?
なら、こんな論理性のカケラもない炎上狙いのコメントをすることは腑に落ちます。
選挙期間中ではないので自由に言わせていただきますと、立憲民主党・社民党・れいわ新撰組・いわゆるN国とかが何故存在するのかすらわかりません。
そりゃ思想信条や結党の自由でしょうよ。
なにをしたいのかが見当もつきません。
共産党や公明党はなぜ存続が許されているのかすらわかるません。
世界中みても「政治や政治家ってなに?」と疑問しかわきません。
なんだかな…
いい加減立憲民主党には議員数で他の政党に抜かれて欲しい物ですが、
維新も国民もまだそこまでの票は獲得できなさそうかな……
議員が減ったとしても、最大野党のままなら相変わらずうざったい妨害を
してきそうで、中々スカッとする事態にはならなさそうです。
これもまた政治と割り切るしかないか。
2021年に泉が民主党の代表に就任したのは、今の自民党に置き換えればコバホークが総裁になるようなもの。
民主党政権時に色々やらかした古株が裏に回って、泉を代表に相応しい人物に育てる、といった動きが出来ていれば、こんな事態には陥らなかったろうに。
蓮舫の泉への態度なんて、ホント酷かったもんな。