深夜放送枠で「高校生」の「不倫」を取り扱ったドラマが10月以降、放送されるそうです。さまざまな意味で、現在のテレビ業界を象徴しているようなドラマかもしれません。テレビといえば、個人的には「善意を装って視聴者から集めた募金を流用してパチンコ」、「原作改変を苦にした原作者を追い詰めた」などのエピソードを思い出しますが…。
テレビは高齢者の娯楽に
普段、テレビを見ない―――。
若い人を中心に、そういう人が、増えて来ています。テレビは間違いなく、高齢層の娯楽となりつつあるのです。
そう判断する根拠のひとつが、総務省が公表する『情報通信白書』に掲載されている調査です(図表1)。
図表1 平日のTVの利用時間
年代 | 2013年 | 2023年 | 増減 |
10代 | 103分 | 39分 | ▲63分(▲61.76%) |
20代 | 127分 | 54分 | ▲73分(▲57.63%) |
30代 | 158分 | 90分 | ▲68分(▲42.96%) |
40代 | 143分 | 135分 | ▲9分(▲6.14%) |
50代 | 177分 | 163分 | ▲14分(▲7.64%) |
60代 | 257分 | 257分 | ±0分(±0.00%) |
全年代平均 | 168分 | 135分 | ▲33分(▲19.79%) |
(【出所】総務省『情報通信白書』データをもとに作成)
これによると、2023年における平日のテレビの視聴時間は、60代が257分で、2013年と変わっていませんが、10代~50代に関していえばいずれも利用時間が減っており、とくに30代で42%、20代で58%、そして10代だと62%も落ち込んでいます。
広告費も落ち込み続けている
これは、なかなかに驚異的な減少ではないでしょうか。
テレビといえば、ひと昔前であれば絶大な社会的影響力を持っていたはずですが、少なくとも20代以下だと1日に1時間も見ていないという状況にあります。
なぜ若年層がテレビを見なくなったのかについては、「テレビが面白くないから見なくなった」からなのか、それとも「テレビ以外に面白い娯楽(ネットなど)が増えたために、テレビに見向きをしなくなった」からなのか、などについてはわかりません。
ただ、客観的事実として、「若年層ほどテレビを見なくなってきた」という調査結果が出ているわけであり、これをスポンサーである企業も無視するわけにはいきません。
すると、何が起こるのでしょうか。
そのヒントのひとつが、株式会社電通が公表する『日本の広告費』のデータでしょう。この20年あまり、ネット広告費は伸びる一方であるのに対し、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌といった「マスコミ4媒体」の広告費は落ち込む一方なのです(図表2)。
図表2 広告費の推移(マスコミ4媒体vsネット)
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』データおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供データをもとに作成)
おそらく、この流れは不可逆的なものでしょう
とりわけ驚くのは、2023年の広告費です。
株式会社電通によると、2023年の総広告費は7兆3167億円と、前年比+2146億円(+3.02%)の伸びを示したのですが、ネットが3兆3330億円で前年比+2418億円(+7.82%)と強く伸びた一方、テレビは1兆7347億円で、前年比▲672億円(▲3.73%)の落ち込みとなったのです。
広告業界全体が伸びているにも関わらず、テレビなどオールドメディアの広告費が落ち込み続けているということであり、これは、広告主から見て、テレビという媒体が魅力のある広告手段ではなくなりつつあることを示唆しているのではないでしょうか。
深夜枠で「高校生不倫」を描く新ドラマ
こうしたなかで、テレビは面白いのか、そうでないのかについて、個人的にはちょっと気になっているのですが、これを著者自身が直接確認する手段は限られています。職場にも家庭にも、テレビを設置していないからです。
ただ、「ヤフコメ」を眺めていると、何となく、テレビ業界を眺める視線が冷ややかなものになっている可能性に気付きます。オリコンが22日付で配信したこんな記事がそれです。
“高校生不倫”を描く日テレ新ドラマ『3年C組は不倫してます。』放送決定 主演に…<略>
―――2024/08/22 08:00付 Yahoo!ニュースより【ORICON NEWS配信】
記事タイトルには役者さんの名前が出てくるのですが、役者さんを批判する趣旨はないので、省略しています。これは日本テレビが10月1日以降、毎週火曜日の深夜枠で放送する予定のドラマを取り扱ったもので、オリコンによると、こんな説明が記載されています。
「本作は、“18歳成人”の実施に伴い、親の同意なく結婚できるようになった高校3年生のクラスを舞台に、初恋、妊娠、結婚、そして不倫を描く、前代未聞の学園不倫サスペンス」。
前代未聞のサスペンスなのかどうかは知りませんし、なにせ、見ていないのに内容について「面白い」とか「つまらない」とか判断することもできません。
ただ、これに対するコメント欄を見ると、「楽しみ」という意見よりも、「低レベルだ」とする批判を多く見かけます。そのうちのいくつかについて、誤字脱字などを修正したうえで、趣旨を引用すると、こんな具合です。
「民放の放送内容は低レベル化している。プロデューサーの質の低下が原因か?良い番組をみかけなくなり、私は地上波を見なくなりました。地上波を見ない人が増えればCMも見られなくなり、CMの意味もなくなるため、スポンサー離れで悪循環になるのでは」。
「政府は民放キー局の地上波放送免許について考え直すべき。とにかく、最近の番組内容の低俗化はあまりにも酷過ぎる。朝から深夜まで下らないバラエティ番組を地上波で放送している国なんて世界広しといえ日本くらいだ」。
「いまの時代にそぐわない内容。あたかも現場ではのような光景が日常的にみられるかのようなストーリーは、視聴者に誤解を与えかねない。学校を取り上げるなら、『いじめ』の問題など、学校現場で起きている問題を取り上げた内容にしたらどうだろうか」。
…。
現在のテレビ業界を象徴する話題
どれも、興味深い指摘だと思います。
くどいようですが、この「高校生不倫」に関するドラマが面白いのか、つまらないのかはわかりません(というよりも、「面白い」「つまらない」は主観的なものなので、そもそも絶対値で示すことはできません)が、さまざまな意味で、現在のテレビ業界を象徴しているように思えてなりません。
この点、「テレビ局が深夜枠で多少過激なテーマのドラマを放送すること自体に、さほど目くじらを立てるべきでない」、「テレビ局が過激な内容のドラマを流すことなど、いまに始まったことではない」、といった意見もあるかもしれません。それはその通りでしょう。
ただ、テレビ局は電波という国民の公共財産を独占的に利用している立場でもあり、放送内容が反社会的なものであってはならないのは当然のことでもあります。
こうした視点からは、テレビ局が(たとえ深夜の時間帯であったとしても)「高校生」、「不倫」などという過激なワーディングのドラマを流そうとしているという点については、公共性の観点からは、たしかに疑問が浮かぶものでもあります。
いずれにせよ、著者自身としては、「テレビ」といえば、「原作者の意に沿わない内容改変を行い、原作者が自ら命を絶つまでに追い詰めたこと」、「善意を装って視聴者から集めた募金を着服し、パチンコなどに流用したこと」などを思い出してしまうのです。
その意味では、テレビ局を巡る話題(※良い話題とは限らない)は、これからしばらく頻繁に出て来るものなのかもしれない、などと思う次第です。
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企画意図がよくわかりません。成人年齢が20歳の今までだって、20歳になった瞬間に親に無断で結婚したり妊娠したり不倫までする大学2年生とかそんなにゃ居ないし居ても別に不思議は無いのではないかと思うのですが。
なんか脚本・プロデューサーのコメントを読むに、18歳成人というものがとても危険で衝撃的で人類には未知なもののように認識されておられるようですが……2年繰り下がって高校生が含まれるからって何だと??公共の電波だからということを差し置いても、意義がさっぱり。
異世界なろうの方がまだマシでは。「18歳の俺が18歳でも不倫できる世界で無双する件」とか既にくっそつまらなそうですが。
家畜人ヤプーくらいのトンデモ発想だとでも思っているのでしょうか。
テレビはラジオと同じ運命をたどるでしょう。
つまりテレビの出現でラジオが衰退したように、インターネットの出現でテレビが衰退する(すでに衰退しつつあるが、収益面ではまだ好調)。
ここしばらくラジオは床屋以外で聴いたことない。タクシーに乗ってもラジオつけてない。
これからテレビでも同じことが起きるのではないだろうか。
18歳で親の承諾なく結婚でき、高校生夫婦もありうる。選挙権もあり、犯罪を犯せば悪質なら死刑判決も出るのに酒、たばこでオリンピック出場辞退。
なんか変だな。
私の世代なら酒、タバコは一人前の大人になったならOKという感じでした。だから大学生の新歓コンパも問題なし、教授も同席してましたよね。個人的には体操の日本代表まで上り詰めたのであれば一人前だと思いますけどね。ちなみに体操の時のあの恐怖心、経験者しかわからないと思いますが、ちょっと飲酒する気持ちわかります
いつもお疲れ様です。
テレビというのは、高齢者とか年齢ではなく脳足りんの娯楽になりつつあるのではないでしょうか。
先週日曜昼、日本テレビの政治バラエティではトーイツキョーカイとかバカの一つ覚えのようにまたやってましたから。
目にしなくても聞くことすら不愉快になるのでは
思い出しますねえ、「14才の母」。
(本来なら物語の一番の核にしなければならないはずの)生まれてくる子供の将来について、登場人物の誰一人として言及しないという超ご都合主義に唖然、話題性狙いだけで中身皆無に等しいおぞましい作品でした。
今回の作品がどうなるかはわかりませんが、セクシー田中さんの件といい、日テレに対する印象は最悪を極めています。
ちゃんと見てなかったのですが、90年代には「高校教師」なんてドラマもありましたね。
テレビが変わっていないのか、見る側の興味関心が変わっていないのか・・・
まぁ少子化だから初婚年齢が低い方がいいとは思う
さすがに高校生で結婚はやめた方がいいと思うけど
大学に託児所を作るのは必要でしょう
深夜枠番組で思い出すのが「11PM」(古いネェ w)。
こんなの公共の電波に乗せて良いのかと、PTA協議会辺りから、クレーム付きまくりの番組でしたが、結構長く放送が続いていました。
他にも同様のもの、色々ありましたねぇ。
「ドリフだよ全員集合」で、加藤チャンの「チョットだけよ」とか、
永井豪原作の「ハレンチ学園」とか(流石に原作コミックをそのままアニメにするのは気が引けたのか、実写ドラマだったようですが)。
PTA協議会から「青少年の健全育成」に有害とクレームが付くと、当時のマスコミの論調は、おおむねそれを、修身道徳的アナクロニズムと揶揄するようなのが大半だったように思えます。こういう業界に潜り込む人間に、日本社会の文化、教養に資するなんて心積もりは、まるでないのがほとんどなんじゃないでしょうかね。
あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」の際、これを咎める社会の声に対するマスコミ報道のスタンスにしたところで、「表現の自由」を金科玉条の如くに掲げていれば、言いたい放題、やりたい放題、それを認めろという、まことに浅はかなるも傲岸不遜な「マスコミ人」の体質を見る思いがします。
マスゴミが下品な番組垂れ流すのは今に始まったことじゃないでしょ
11pmとか「おとなのえほん」とか
公共の電波でアダルトコンテンツ流すとか控え目に言って頭おかしい
高校生×不倫で涎を垂らして喜ぶ社会層はテレビマンくらいではないでしょうか。
テレビ局による業界人の為のドラマ。
日々高尚な番組を制作していると家に帰ってから息抜きに低俗なものを体が欲するのかもしれません。
業界人向けっぽいので一般人でその魅力を理解できる人はほとんどいないものと思われます。
低予算でインパクトを求めたら、こんな作品が出来てしまった感があります。