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NHKがまた不適切放送…今度は「尖閣は中国の領土」

NHKが関連会社を通じて業務委託している中国籍の男性が、NHKのラジオ放送で尖閣諸島を「中国の領土だ」と述べるなど不適切な発言を行ったそうで、NHKはこれについて謝罪したうえで「再発防止策を徹底します」と述べたそうです。誤って済む問題ではありません。放送内容の適切性を事前に担保する仕組みが確保されていないNHKの在り方自体の問題です。

報道の役割を勘違いする日本のジャーナリスト

日本の報道機関、ないしジャーナリストらの問題点といえば、彼らの多くが自らの役割を勘違いしているフシがある、ということでしょう。

以前の『日本のメディアは客観的事実軽視=国際的調査で裏付け』などでも取り上げた、WJS(Worlds of Journalism Study)が公表した調査なども参考になるかもしれません。

これは、WJSが世界67ヵ国・27,500人以上のジャーナリストへのインタビュー調査結果をもとにした、世界各国のジャーナリズムの傾向で、その結果の概要については、現在でも “Country reports – WJS2 (2012-2016)” のページで閲覧・ダウンロード可能です。

調査自体が少し古いものではありますが、ここで日本のメディアに共通する特徴を改めて指摘しておくと、諸外国と比べ、日本のジャーナリストには、だいたい次のような傾向があります。

  • 政治リーダーを監視・精査することを何よりも最重要視している。
  • それら権力の監視と時事問題の分析、人々の政治的意思決定に必要な情報提供こそがジャーナリズムと捉え、それは事実をありのままに伝える責務以上に優先される。
  • 人々が意見を表明できるようにすることへの関心は極端に低い。
  • 政治的アジェンダ設定も人々に代わりジャーナリズムが主導するべきで、それは事実をありのままに伝える責務に比肩するほど重要な役割と考えている。

この4点、大変に重要な指摘です(指摘自体は『林智裕氏が公表の待望「ネチネチ論考」が素晴らしい件』でも取り上げた、ジャーナリストの林智裕氏のものを借用しています)。

つまり、日本のメディア産業関係者にとっては、事実をありのままにつたえることよりも、自分たちが正しいと(勝手に)思い込んでいる内容を人々に伝えることで、結果として世論誘導を行うことの方が、優先順位が高いのだ、といった仮説が成り立つのです。

切り取り報道が常態化する日本のメディア

そして、こうした日本のジャーナリストの腐敗ぶりを裏付ける証拠は、いくつもでてきます。以前の『切り取り報道の責任は切り取られる側にあるとする珍説』でも取り上げた「珍説」が、その典型例です。

以前の上川陽子氏の「産まずして」発言、あるいは豊田章夫・トヨタ自動車会長の「今の日本は頑張ろうという気になれない」発言は、いずれも全文をきちんと読めば、問題発言でも何でもないことは明らかです。しかし、これらの切り取り報道のせいで、あたかも問題発言であるかのように見えてしまっています。こうしたなか、「切り取り報道は、そのように発言を切り取られる側に問題がある」。こんな発言が、X(旧ツイッター)で話題となっているようです。専門家とわかりやすさ朝っぱらから小難しいことを言います公認会計士とは「監査...
切り取り報道の責任は切り取られる側にあるとする珍説 - 新宿会計士の政治経済評論

これは、とある新聞社系の雑誌での編集長などを経て、現在はフリージャーナリストとして活動しているとする人物がX(旧ツイッター)に投稿したもので、わかりやすくいえば、「切り取り報道の責任は切り取られる側にある」、とするものです。

たとえばトヨタ自動車の豊田章男会長は7月18日、長野県茅野市にある蓼科山聖光寺で実施された交通事故死者の慰霊などを祈願する「夏季大祭」で、メディアに対し、「今の日本は頑張ろうという気になれない」と発言しました。

この発言だけだと、トヨタ自動車の会長が日本を否定する暴言を吐いたかのような印象を受けます。

しかし、『豊田会長の「問題発言」真意はメディアに対する苦言か』でも取り上げたとおり、これは日本を否定した発言などではなく、むしろマスコミ報道の在り方に強い苦言を呈したものだと解釈するのが妥当でしょう。『ベストカー』が配信した次の記事が、もっともわかりやすいです。

豊田章男会長「今の日本は頑張ろうという気になれない」の本当の宛先は…メディアだった

―――2024/07/23 10:49付 Yahoo!ニュースより【ベストカーWeb配信】

この豊田会長の「問題発言」など、メディアによる切り取り報道の典型例でしょう。

それなのに、新聞、テレビ、雑誌といったオールドメディア関係者らは、悪びれず、「切り取り報道の責任は切り取られる側にもある」、といった珍説を、なかば平然と唱えたりしているようなのです。

なんともやり切れません。

報道は「第四の権力」…そのわりに選挙で選ばれていない

このあたり、マスメディアが社会全体に及ぼす影響力は大変に大きく、メディアによるその力の使い方が不適切であれば、それによって多くの人に誤解が生じることもあります。2009年8月の総選挙のときには、一種の「メディアスクラム」の効果もあってか、政権交代まで生じているほどです。

つまり、メディアが自身を「第四の権力」などと称しているとおり、そのメディアの権力はなかなかに強力です。

しかも、非常に困ったことに、メディア自身が持つその巨大な権力を、国民が監視することは困難です。

これが国会議員等であれば、権力の使用が不適切だと有権者が判断すれば、選挙を通じてクビにすることができます。参議院議員であれば任期は6年ですので、任期途中で本人が辞めなくても、任期満了時の選挙で有権者がその者に投票しなければ、あえなく落選します。

都道府県知事や市区町村長などは任期が4年、衆議院議員に至っては最長4年、下手をすると衆院解散総選挙がなされれば、在任期間はそれよりも短くなります。

よく自民党を巡って「権力者だから問題だ」、「事実上の1党独裁だ」、などと述べる人はいるのですが、自民党が2012年12月の衆院選以来、大型国政選挙で8回連続して第1党となり続けているわけであり、これらの選挙は少なくとも自民党が大掛かりな言論弾圧や不正を行ったものではないと考えられます。

つまり、自由で公正に実施された普通選挙で、自民党は8回連続、勝利し続けているわけであり、その意味で自民党政権が「1党独裁」だとする指摘は、まことにピント外れと断じざるを得ません。

これに対し、メディアの支配は、どうでしょうか。

少なくとも新聞記者、テレビ局員らは、私たち日本国民から直接選挙で選ばれた存在ではありません。新聞社やテレビ局という、(多くの場合は民間の)企業から雇われた従業員に過ぎません。

そのような人たちが「我々は第四の権力だ」などと騙っているのは、さすがに問題ではないか。

当ウェブサイトとを運用しているのも、結局は、そのような問題意識が背景にあるのです。

NHKの問題は「国民がNHKの存続を決定できないこと」

こうしたなかで、さらに問題があるとしたら、NHKでしょう。

NHKはメディアの中でも、自らのコンテンツの収益ではなく、テレビを設置した家庭からの「受信料」という事実上の税金のようなもので運営されているからです。

新聞社や民放テレビ局の場合だと、私たち一般国民が総意として、それらのメディアを「購読しない」、「視聴しない」という手法を使えば、うまくすれば損益分岐点割れに追い込み、事業撤退・廃業に追い込むことができなくはありません(実際、新聞業界は現在、廃業の危機に直面している社が多くあるようです)。

これに対し、NHKの場合、そのコンテンツがどんなにひどかったとしても、私たち一般国民が「総意として」、「不視聴をすることで廃業に追い込む」、ということができません。

裏を返せば、NHKは自分たちを「公共放送」だと名乗っているわけですが、そのNHKが流す番組が「公共放送」に相応しいものであるかどうかを担保する仕組みがありません。

実際、NHKは過去に問題のあるコンテンツを放送し、これにBPOという組織が「放送倫理違反」を指摘した事例もあるからです(ただし、『BPO「NHK放送倫理違反」指摘も…肝心の処分なし』でも指摘したとおり、BPOにNHKを処分する権限はありませんが…)。

NHKの新たな不祥事

こうしたなかで、当ウェブサイトでは、「NHKを巡る不祥事はこれまでも多数あったし、これからも多数出て来る」と考えて来たのですが、今度はこんな話題が出てきました。

NHK国際放送で「尖閣諸島は中国の領土」 中国人外部スタッフが不適切発言、NHK抗議

―――2024/08/19 22:02付 Yahoo!ニュースより【産経新聞配信】

産経などによると、NHKは19日午後1時過ぎから短波ラジオなどの国際放送、ラジオ第2放送で伝えた中国語の報道のなかで、外部スタッフが尖閣諸島を「中国の領土である」と述べるなど、不適切な発言を行ったそうです。NHK自身が同日夜に放送した報道番組で明らかにしたそうです。

ちなみに産経によると、このスタッフは「NHKの関連団体」が業務委託契約を結ぶ中国籍の40代男性で、日本語の原稿を中国語に翻訳し、ラジオで読み上げる業務を担当しているとのことで、NHKはこれについて、次のように謝罪したそうです。

ニュースとは無関係の発言が放送されたことは不適切であり、深くおわび申し上げます。再発防止策を徹底します」。

謝罪して済む問題ではありません。NHKの社内で再発防止策を講じれば済む、という問題でもありません。受信料という、事実上の国民の税金で運営されていて、その組織が放送で日本の国益に反する内容を報じたという事実については、かなり重く見る必要があります。

結局のところ、NHKはその放送内容が公共性に適っているかどうかを外部者が検証する仕組みが欠落しているという問題がありますし、こうした問題を放置したまま、視聴者から受信料を事実上、半強制的に徴収するという仕組みを維持して良いものか、議論が必要でしょう。

ちなみにNHK自身は子会社・関連会社を多数有しているようですが、NHK本体、およびこれらの子会社、関連会社に外国人のスタッフがどれだけいるのか、資料を開示している形跡はありません。

このあたりは早ければ9月か10月にも発足する新政権でも、NHKを巡る議論が続けられることを期待したいと思いますし、著者自身も在野のウェブ評論家として、NHK問題をしつこく取り上げていくつもりであることについては付言したいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • 勤続22年の中国籍社員が滔々と中国共産党の論を放送したそうですね。

    語った中国籍社員は退職(解雇とも発表されていない)だそうですが、音声だけだとしても独りで放送出来るものではなく日本政府や日本国の立ち位置と全く違うものを放送して別会社の嘱託首位をだので済むと思ってるのでしょうか?
    放送を乗っ取られたのなら40代といい大人の犯人の実名くらい報じるのがジャーナリズムなんじゃないですか?

    会長はじめ何人が責任とって辞めるのか早急に決めて下さい。
    もう電波は飛んでしまいました?
    出した電波は戻せません。
    ゴメンで済むかよ!

    直近三年くらいだけでもロシア・中華人民共和国・韓国・北朝鮮絡みや似非難民ネタや第二次世界大戦ネタでNHKやらかしまくってるじゃないですか。
    今回のが「事故」とは全く思えません。
    なんでもNHKの報道局は根性が無いから日和るが、大河や朝の連ドラをやっている部局は腹が座っているから堂々と台詞や演出の中で関東大震災だの南京だの慰安婦だのを真っ正面から放送する!とか嘯く輩がいましたよね?

    もはや朝日新聞や中小企業毎日新聞並みじゃないですかNHK

    嘘捏造垂れ流してカネはくれだと?

  • これって放送テロじゃん。

    ところでN党なにやってんだ。
    出番が来たぞ~

  • >ニュースとは"無関係の発言"が放送されたことは不適切であり

    無関係の発言ではなく、虚偽でしょ。誤報でしょ。発言の中身について詫びていません。
    これがNHKの正体なのでしょうか?
    今まで、色々な事象を見聞きして疑問に思っていましたが、これで確証に変わった気がします。
    NHKは解体すべきだと思います。

    • >再発防止策を徹底します

      1,原因究明とは?
       ・当人の発言真意(中国との関係性等の背景等)の究明
       ・なぜ外部委託していたのか
       ・当事者は中国籍とのことですが、思想的な検証(?)の有無
      2,再発防止策
       ・原因に基づいた対策であり、抽象的なものではなく、具体的に示すべき
        例えば、国籍チェック、思想チェック(?)、外国籍者の場合の録画/録音放送など

      徹底的な調査と報告を求めますが、多分出てこないと予想します。
      こんな時こそ国会議員さんの追及が欲しいのですが。
      今話題の自民党総裁選の記者会見の場で、質問が出るのを期待するのは無理でしょうか。

  • ~ニュースとは無関係の発言~

    そこじゃないだろ、何逃げてんだよ

    「尖閣諸島は我が国固有の領土であるにもかかわらず、このような事態を招くこととなり、日本国民の皆様に不快な思いをさせたこと、心よりお詫び申し上げます。」くらい言えよ

  • 業務委託契約を結ぶ中国籍の40代男性は 当然解雇だろうけど。NHK関連会社 要するにNHKの利益団体、天下り先のは 強い処分されるのでしょうかね。この中国籍男性を雇用した責任は この関連会社に強くあり、放送の信頼性を壊したのですから NHKは当然この外部企業との契約を切らねばいけません。切らなければ再び同様な放送テロが起こることになりかねません。役員の首くらいさしだすくらいでは甘いです。

  • >同番組によると、このスタッフはNHKの関連団体が業務委託契約を結んでいる中国籍の40代の男性で、日本語の原稿を中国語で翻訳してラジオで読み上げる業務を担当。NHKは関連団体を通じて本人に厳重に抗議し、関連団体は本人との契約を解除する方針だとしている。

    解除だけで、違約金とか分捕れないのかも。

    業務委託契約を失った事が当人にとってどれだけのダメージになるんでしょうね?

    あと、当人が日本に入国出来ないようにする措置も大事なんじゃないかと。

    抗日の英雄にならん、と、何かやらかすかもですし。

    • そうです、国外追放処分が妥当です。まさか退職金とか払って無いでしょうね。明日受信料の解約をします。

  • 再発防止策を徹底しますと、コメントしたそうですが、いつ、その策は公開されるのでしょうか。
    24時間テレビのように一年近く経ってからでしょうか。
    あれほど、裏金(政治資金収支報告書不記載)問題やトヨタの型式検査不正問題は、時間をかけて取り上げ指摘してきたのですから、それはもう早急に対処されること期待しています。
    過去の国会答弁によると、優秀な人材を集まっているそうですから。
    あれ、優秀な人材が集まっているのに、中国語を喋れる正職員がいないのですか、実に不思議です。

    • あ、一字間違えた、再発防止策を講じ、これを徹底して参ります。

  • NHKの国際放送って国営でしたよね?

    切り取りについては、本人が何を言おうとしていたことを伝えるよりも、必要な文字数に押し込んでセンセーショナルな表題をつけることの方が重要と考えているとは、さすがプロの煽動家は違います。

  • NHKといえばちょっと前にも朝ドラでやらかしてますね
    https://tsuisoku.com/archives/61689737.html
    単なる想像ですが、もう局内はサヨクとか活動家もどきや、ポリコレ傾倒者のパラダイスで「学級崩壊」状態なんですかね・・・?
    NHKという試みはもはや失敗ともいえると断ずる時なのではと思ったりです。

  •  不適切な国際放送を聞かされた外国人に対しても間違いであった旨とお詫びを行うべきでは。
    その際には、「ニュースとは無関係の発言が放送されたことは不適切であり、深くおわび申し上げます。」では何のことやらわかりませんので、「尖閣諸島(沖縄県石垣市)は「中国の領土である」との放送を行いましたが、日本の領土であるが正当です。お詫び申しあげます。」とわかりやすく国際放送で伝えるべきです。加えて、都合よく訂正放送を聞いているのかも不明ですから、繰り返し訂正放送を行うべきではないでしょうか?

    • まったく同感です。
      お詫びやら再発防止策などの謝罪の決まり文句を並べるだけで、訂正した放送を世界に発信しようとしないのは何故なのか、ぜんぜん説明がありません。普段から政治家や民間企業の不祥事に対しては説明責任を果たせとうるさく叩くくせにね。

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