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    Categories: 金融

「1ドル=200円」は「恐ろしい円安水準」…なぜ?

1ドル=200円は「恐ろしい水準」の円安なのだそうです。なぜ1ドル=200円になると、それが「恐ろしい」のでしょうか?なんだかよくわかりません。この点、当ウェブサイトでは一貫して申し上げてきたとおり、現在の日本経済の状況に照らすならば、円安は悪い影響よりも良い影響の方が大きいといえます。いずれにせよ、経済記事を読む際には、「恐ろしい」などの主観的表現が出て来るときには要注意といえるのかもしれません。

円安は総合的に日本経済に良い影響を与える

現実の金融市場の相場(株価、金利、クレジット、為替など)について、当ウェブサイトにおいては、可能な限り、あまり予断めいたことは申し上げないことにしています。

著者自身は証券アナリスト・ストラテジスト等ではなく、また、現時点では金融商品取引業者に勤務しているなどの事情もないため、金融市場の各種相場・指標を予測したり、金融商品の投資を勧誘したり、あるいは著者自身の投資内容を開示したりすることはしません。

ただ、くまでも「円高や円安が日本経済にいかなる影響を与えるか」という観点からは、純粋に一般的な経済学の原則・理論、あるいは各種統計データに従って議論することは可能だと考えており、実際、当ウェブサイトではそのような分析を呈示してきました。

結論的にいえば、円安は日本経済に対し、短期的には物価上昇などの悪影響も与えるものの、中・長期的に見たら、良い影響をより多く与えるといえます。

端的にいえば、円安効果で巨額の外貨建ての対外投資が莫大な含み益を生じる効果(いわゆる資産効果)に加え、中・長期的には輸出競争力が増進し、輸入代替効果(円安で高くなった輸入品の代わりに国産品需要が増える効果)も発生するからです。

日経新聞自身が「悪い円安」論を否定してしまう

ちなみに「悪い円安」論は日本のメディアが大好きであり、各種メディアが「円安の弊害」をさかんに法度するためでしょうか、ヤフコメなどを眺めていても、やはり「円安は悪いこと」という認識に基づいたコメントは数多く見かけます。

しかし、現実問題として円安状態のために輸出企業を中心に業績が伸びていたことは事実であり、そして、大変興味深いことに、「悪い円安」論をさかんに唱えていた日経新聞でさえ、8月上旬の円高を受けて「円安効果が剥落する」などと報じています(『あの新聞が「円安効果」と報道…「悪い円安」設定は?』等参照)。

余談ですが、理論的に一慣性のない主張を繰り広げる(しかも不適切な報道に対する反省もない)のは日本の新聞の悪いところですが、逆に日本の新聞がそうだからこそ、当ウェブサイトのような独立系の無名なウェブ評論家が書く文章を読んでくださる方がいらっしゃるといえるのかもしれません。

また出た!「悪い円安」論

それはともかくとして、円安は日本経済に良いことなのか、悪いことなのか。

これに関しては先ほども触れたとおり、8月上旬に1ドル=140円台前半に円高が進んだあたりで、一部メディアは「円安の効果が剥落する」、「日本企業の業績は悪化する」などと平気で論じていたのですが、円安になればなったでこんな記事も出て来るようです。

トランプでもハリスでも日本はヤバい!?日経平均が再び大暴落の危機に直面する「イヤだけど納得の理由」

―――2024/08/19 09:05付  Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】

1ドル=200円って本気?米国の「景気回復」が日本にもたらす「悪夢の物価高」ふたたび

―――2024/08/19 10:04付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】

『週刊現代』2024年8月24・31日合併号に掲載された記事だそうですが、これがまた強烈です。

米景気の後退を示唆する経済統計が出て来ているなか、米FRBの金融緩和政策の「対応が後手に回ると株式市場に混乱が生じる」などとしたうえで、11月5日の米大統領選という「大きなイベント」では、ドナルド・J・トランプ、カマラ・ハリス両氏のどちらが当選しても「大きなリスクとなり得る」、などと論じるものです。

そのうえ、中東情勢のきな臭さから、万が一、第5次中東戦争が始まった場合は「マネーの多くがドルに向かい」、「有事のドル買いで円はさらに安くなる可能性もある」、としたうえで、これに加えて中国経済の減速は「世界の金融市場を動揺させる危険性が大きい」、などとしています

なんだか「イフ」がいくつも連なるため、仮定に仮定を重ねる議論が多いようにも見えてなりませんが、ネガティブ要因・リスク要因をいくつも連ねたうえ、来年1月に米国で新政権が発足すれば「大規模な景気対策が行われ」、「日本にとっては再び円安に苦しむ局面が戻ってくる」、といったものです。

なぜ?1ドル200円は「恐ろしい水準」

さらには、「経済ジャーナリスト」という人物が、「長期的には1ドル=200円という恐ろしい水準を予測する」、などとしています。ちなみに記事では、なぜ1ドル=200円が「恐ろしい水準」なのかに関する数量的な根拠はほとんど示されていません。

正直、この手の「短期的な話」と「中長期的な話」、「円安のメリットとデメリット」などを混同した議論を眺めていると、正しい経済知識に加え、一貫性に基づいた視点が重要だと思ってしまいます。

なお、当ウェブサイトが「円安は総合的に見て、日本経済に良い影響を与える」と申し上げている根拠については、以前の『【総論】円安が「現在の日本にとっては」望ましい理由』などで論じてきたとおりであり、その内容について基本的な変更はありません。

いずれにせよ、経済記事を読む際には、「恐ろしい円安」などの主観的な形容詞にはくれぐれも注意することが重要ではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (24)

  • このサイトで今まで指摘していたかどうかわかりませんが
    基本的に中小企業は輸入額>>輸出額 です。
    円安になると材料費が上がって、でもすぐには価格に転嫁できずに円建てで大企業に売ります。大企業は中小企業から円建てで安く中間部材を買って(つまり、リスクを中小企業に負わせて)大きな利益を上げます。
    つまり、円安だと、大企業はもうかってもともと収入の多い大企業に勤める人の収入は増えますが、中小企業は損をして、勤める人の収入は減り、なおかつ一般消費財も値上がりします。
    結果として、円安だと国内の格差が増えます。格差=悪と思う人から見ると、円安は悪、という結論になるのだと思います。

    • > 基本的に中小企業は輸入額>>輸出額 です

      なにかそーゆーデーターでもあるんですか?

    • みずほリサーチ&テクノロジーが、企業規模の違いによる円安の影響を試算したレポートを出していました。

      円安で広がる企業の規模間格差
      中小企業では円安が 2024 年度利益を 1.3%下押し

      https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2024/pdf/insight-jp240618.pdf

      大企業では経常利益を1.9%押し上げる一方、「中小企業は輸入コスト増加の負担が大きいほか、対外直接投資の収益増加メリットを得にくいことが原因」とのこと。

      大企業が中小企業に円安のデメリットを押し付けて儲けているのではなく、企業規模に関わらず円安によるコスト増の影響は受けているが、大企業の場合は、円建てによる輸出金額の増加、海外子会社からの収益がそれを上回る構図のようです。

      図表4から、企業規模によって、経常利益に占める対外直接投資収益の割合が大きく違うことが見て取れます。モノを売るだけでなく、他に円安で儲かる手段を持っているかが差のようです。

      一方、
      > 結果として、円安だと国内の格差が増えます。

      これはレポートでも同じです。
      どの程度の格差なら許容範囲かは意見が様々でしょうから、政府が対策しようがすまいが、必ず批判は出てくるでしょう。「俺は損してるのにアイツは得しやがって」と人の負の感情に訴え易いので、恐らく事実に基づかない世論誘導を謀る記事も出てくると思われます。冷静に判断したいものです。

    • 中長期的にみれば輸出が増えて取引量が増えるのでは、納入価格は収れんします。
      80円から120円時代になったときに倒産が増えたとは寡聞にして存じ上げません。
      逆はありましたね。

    • その議論は単純化し過ぎです。

      中小企業の現在の輸出、輸入の割合はそれが有利だっらからそうなっているだけで、状況が変化したらそれに対応して変化させなければならず、それは大企業も中小企業も変わりません。
      構造を変えられず、大企業に美味しいところ吸われるだけの中小企業は程なく淘汰されるでしょう。
      むしろ変化への対応は身の軽い中小企業の方が有利と単純には思いますが如何でしょう。

      • 海外に販売するためのコストは大きいものです。普通は中小企業にそんな販売網は期待できません。BtoCであれば、いまならAmazonなどの経路を使えますが、BtoBであれば、最初は言葉の通じる国内に販売するのが普通です。そして売り上げが大きくなって、大企業と呼ばれるころには海外に売れるようになるわけです。特に、日本のように言葉が独立していて、国内にそれなりに大きなマーケットがあればそうなるのは必然です。

  • 1USドル=200円のレートは1985年のプラザ合意の前の水準ということになる。わが国の経済構造が当時とは大きく異なっているが、プラザ合意がなぜ為されたのかを考えるとプラザ合意前の水準は(米国にとって)「恐ろしい円安」なのかもしれません。

  • 近隣諸国、特に輸出で我が国と競合する諸国にとって恐ろしい円安水準なのだろう。

  • 『「1ドル=200円」は「恐ろしい円安水準」』

    これは確かに恐ろしいでしょう。「日本」にではなく「米国」にとって。

    黒田バズーカ以降の「異次元の量的緩和」によって、市中に放出された日本円。差引ネットで言えば、アレ全く日銀には回収されていないことになるんですが、そんな膨大な通貨が、日々日本の社会を駆け巡っているわけじゃありません。どこへ行ったかと言ったら、貿易、財政赤字垂れ流し、海外からの資金がぶ飲みの米国へが、ほとんどなんでしょう(より正確に言えば、米ドル建ての証券類に化けて、日本国内に溜まってるってことなんでしょうが)。

    海外からの投資で米国経済が強くなっていくんなら、こんな構造もその内逆転するんでしょうが、まずそんなことは期待できなさそうです。もう何十年来この構図は不変。ますます経済にガタが来てるんじゃないかとすら思わせるのが、米国の第一次所得収支の一貫した減少傾向です。

    科学、技術の最先端をガッチリ抑えてるなんてイメージで米国を捉えがちですが、海外投資による収益で、かつては貿易赤字をソコソコ穴埋めできていたものが、最近では海外への利子・配当の支払いがかさんで、今や赤字入り寸前です。ヤバいよ、この国。

    日本からのカネ引き寄せようとしたら、当然買ってもらう証券類にそれなりの利息を付けなければいけない。それで日本でのドル需要が増えれば、当然為替は円安ドル高に傾く。そうすると、ドルの調達コストが上がる分、その需要は減るはずだから、それでも日本のカネが欲しいなら、もっと利息を上げなきゃイケナイ。これが厳然たる経済取引の掟。

    これ、地獄だよ。利払いが級数的に増えていくのがお約束なんだから。それ考えたら、1ドル200円なんて相場は、先ず現わるはずないだろうけど、経済音痴のバイデンと違って、ドル高のデメリットは十分認識しているらしいトランプにしても、この難問、どうか解決できるものなのやら。

  • >なぜ1ドル=200円が「恐ろしい水準」なのかに関する数量的な根拠はほとんど示されていません。

    「 ”情報” の定義」が違うんだと思います。

    ①情報は本来、社会の実情(ジョウ=正しい状況)を報じること。
    ②彼ら的には、弱者の実情(ナサケ=記者の主観)を報じること。

    *①は、ジャーナリスト。②は、書き散らかすだけのエッセイストですね。

  • 1ドル200円という円安は日本にとって3つの点で有害であり重大な危険を有する(短期的には円建てGDPの額が史上最高値を更新するとしても)と考えます.

    まず第1点は,円安が進めば進むほど,ドル(米ドル,以下同様)なりユーロなりの価格で判断する外国資本にとっては日本国民の財産(例えば高級観光地や都心一等地にある優良な不動産やホテル・旅館等とか日本企業など)が安くなってしまい,外資による買収が容易になってしまう(逆に日本資本にとっては外国の優良な資産の円ベースでの価格がどんどん高額になり,事業の世界展開が困難になる)ことです.

    ちょうど今日も,我が国のコンビニで最も収益を上げている企業の親会社であるセブン&アイに対するカナダ資本からの買収提案がなされて,後者は,早速,社外取締役だけによる検討委員会を設置して買収の受け入れ可否の検討に入ったとのことです.

    今後も日本が円安の進行を食い止めなければ,国際的に見て価値の高いと判断される日本のトップ企業たちが外資によってどんどん買収されることになるでしょう.例えば半導体製造など高度な工業製品に不可欠な素材の製造メーカでその分野で世界トップシェアを握っている企業が日本には少なくありませんが,そういった企業に対して外資が食指を動かしても何も不思議ではありません.

    買収を提案して来た相手が日本と戦略的に対立する国(例えば中共など)の資本であれば,日本政府が介入して差し止めることも可能でしょうが,仮に同盟国(というよりは我が国の国防をオンブにダッコされてしまっている相手)のアメリカの資本から買収提案をされたならば,日本政府がそれを差し止めることは外交的にかなり難しいと予測されます.

    その結果,日本政府(そしてそういう一般人には名前をロクに知られず地味だが世界一の地位を築いているという価値を理解する少数派の日本国民)は指を咥えて我が国経済の将来を握っている貴重な世界的企業を外資に格安で買われてしまうのを黙って見送る以外にないのです.

    次に第2点ですが,それは日本経済の「質」の面からです.一言で纏めるならば,1ドル200円とかそれ以上の円安とかは,日本経済にとって一種の麻薬か覚醒剤のような代物です.つまり円安の追求は,言ってみれば覚醒剤を使うと一時は頭が冴え渡り気力が充実して元気が出るように感じても,最終的(つまり長期的)にはその人の精神も肉体もボロボロに蝕んで再起不能に陥らせるのに相当する致命的な悪影響を日本の経済構造に及ぼすということです.

    国の経済の発展段階や経済構造に応じて,その国の通貨にとって経済が発展する観点から望ましい為替レートがあると私は考えます.そして1ドル200円は現代の日本の経済構造から判断すると極めて不適切だと私は判断します.

    つまり,度が過ぎた円安は,民主党政権&白石日銀総裁の時代に経験した度が過ぎた円高と…破壊のやり方は全く異なりますが…同じ様かそれ以上に悪質な形で日本の経済を最終的には破壊してしまう危険性が高い.

    但し,民主党政権と白川総裁による度が過ぎた円高が日本の製造業の製造拠点の海外移転を実質的に強制して即座に日本経済を破壊した訳ですが,日本経済の現状や今後の日本経済が目指すべき方向に反する過度な円安は円高とは全く異なる形で日本経済を破壊すると予測します.以下にそれを説明します.

    かつての度の過ぎた円高とは対照的に,度が過ぎる円安は…あくまでも自国通貨ベース限定ですがGDPを一時的に増やす「ハッピー」な効果を生み出します.ですが,その裏側で…付加価値が乏しい製品でも凄まじい円安のお蔭で輸出競争力を持ってしまうが故に,(そして円安ゆえに海外から高度な製品…例えば2nmルールの半導体製造の為の装置や高価なレアメタルなど…は高価過ぎて日本に輸入することが困難になり,徐々に日本の経済構造を付加価値が低いものばかりが輸出品目という開発途上国の経済構造へと変貌させてしまうことになるだろうと推測し危惧します.

    そうなると,長期的に見て円安が進み続けるのを日本政府が「円安ハッピー」とばかりに放置しているならば,高価な装置や特に高価なレアメタルなどを事業で不可欠な企業は,輸出や海外法人の稼ぎとして得た外貨をどんどん価値が下がる円貨には変えず(つまり日本国内には持ち込まず),外貨のまま高価な設備やレアメタルを購入する方が得だと理解するでしょうし,そうなれば製造拠点も日本国内から海外に移して,本社だけが日本に残るという事態にさえなりかねません.

    実際,安倍総理によるアベノミクスとそれを支えた黒田日銀総裁の通貨政策の結果として生まれた円安によっても,日本企業の海外製造拠点の国内回帰は為替レートから単純に予測されたほどは進みませんでした.これは,トヨタなど日本の製造業が輸出や海外法人で得た外貨を日本に持ち帰らずに海外に置いたまま海外への新たな投資や資材調達の備えた結果と推測できます.(但し私はアベノミクスについては一定のポジティブな評価はしています.何しろ大学を卒業しても就職できないのが当たり前だった状況を,給料は安い人が多いとは言えども,大学を卒業したらちゃんと就職できる社会へと回復させたのがアベノミクスですから)

    今後の日本が遂げねばならない経済発展は単純なGDP(それも自国通貨ベース)の額の増大ではなく,日本が海外相手に行う商売で売る製品の付加価値を高めて,他国が簡単にキャッチアップできない地位を確保し続ける(そのためには常に工業製品ならばハイテクを,農産物なら圧倒的な美味や安全性などを追求する)ために日本国民すべてが走り続ける必要があります.

    つまり喩えて言うならば,今後の日本経済発展のためにすべきことは,頭をロクに使わず仕事をしてサビ残時間を増やすことではなく,頭をフルに使って知恵を絞り続けることです.

    円安にすれば円建てのGDPの額が増えるからOKというのは,言ってみれば社員がどんどんサビ残すれば会社の業績があがるぞとハッパをかけているようなものです.

    実態が伴わない(つまりその土地での生産活動によって得られる経済的利益が増えていないにも拘らず)土地価格だけが高騰したバブル経済に狂乱した時代は別でしょうが,それ以外の日本の1人当たりのGDP額がアメリカや西欧諸国(特に英独仏)に届かない状態は,言い換えれば日本国民は欧米諸国民よりも貧しい状態だということです.

    その原因は日本国民の産み出す付加価値の一人当たりの額が少ないからであって,日本国民が豊かになるには,自分達の仕事が産み出す付加価値を増やす以外にありません.

    過度な円安は低い付加価値しかもたないローテクな品物でも輸出できてしまい,そういう産業を温存するどころか日本経済に占める比率を増加させてしまう助けとなってしまいます.つまり日本の開発途上国化・後進国化を推し進める助けとなるのが一層の円安です.

    第3点は既にnamunyさんが指摘しておられる点,つまり貧富の格差の拡大に関連します.

    国内の経済格差が無条件に悪いとは私は思いません(何故ならば,収入の多寡という御褒美/ペナルティがなければ多くの人間は真面目に労働しようとしなくなるという性悪説が正しいと考えているからです)が,格差が余りにも大きくなれば国民の一体感が失われ,その結果として例えば共産主義のようなトンデモ信仰(私は共産主義は「マルクス・レーニン教」とでも呼ぶべき人間社会にとって極めて危険なカルト宗教の一つと考えます)に貧者が縋り,この危険なカルト宗教が貧困層に広まるチャンスを与えてしまい,日本社会の共同体意識を破壊し,例えば中共を南西諸島侵攻に誘惑する危険性が無視できない(それどころか共産主義に染まった貧困層の少なからずが「日本なんて中共に占領されてしまえば良い」と考えて中共の破壊工作に協力しかねない)と考える次第です.

    社会の分断がどれほど国を危うくするかは現在のアメリカを見れば良く分かると思います.

    小泉による「改革」という名の改悪によって日本社会から中間層が徐々に失われ貧富の差が拡大し続けて来ました.

    一口にインフレと言っても,まだ国内経済の活発化によるインフレであれば,マイナス面だけでなくプラス面もあり,経済的に乏しい層にも多少のお裾分けがあるかも知れませんが,今回のインフレのような海外の戦争に起因したエネルギー資源や食糧の国際価格高騰と円安による二重のインフレの場合,(国際価格高騰で利益を得る企業からの配当という名のインフレのお裾分けを得られる株式投資をしている富裕層とは違って)株式投資など夢のまた夢の貧困層にとっては国内価格の高騰で収奪されるだけでインフレのお裾分けとは全くの無縁です.

    アメリカのような国内経済の好調によるインフレでさえ貧困層にとってはマイナスの方が大きい訳ですが,日本のように国内経済の好調が原因ではなくて国際価格高騰と通貨安という外的要因によるインフレでは経済格差は拡大する一方で,この拡大し続ける格差が国民の意識の分断へと転化して日本国民の少なからずが共産カルト教徒と化さない保証はないのです.

    なお,しばらく前に,中小企業のほうが給与所得のアップ率が大企業よりも上だという趣旨のエントリがあったと記憶していますが,大企業の多くが今回のインフレに対して月給のアップで対応したのに対して,経営基盤が弱い中小企業は固定的な支払額が上がってしまうのを避けるために下方硬直性が強い月給でのアップを避けて賞与を引き上げることで対応した(賞与なら次回や次々回に下げるのは容易ですから)のが原因であり(これは先週のWBSでも指摘されていました),今回のインフレに対する経済的な補填に関して,中小企業の従業員のほうが大企業の従業員よりも恵まれているという判断(推論)は正しくないと考えます.

  • ここは経済評論のサイトですし,日本経済には,円安は悪い影響より良い影響をもたらすという本稿の結論はその通りなのだろうと思います.マクロで見れば,輸出競争力が増し近隣窮乏化してメリットが大きい.含み益はそのままでは含み益のままだけど,これも良しとしよう.
    しかし,私個人のミクロのレベルでは,日本円でもらう収入は,大企業とか中小企業とか関係なく,円安になったからといってほとんど増えていない.日本国内にいて日本の商品だけ買ってる人は問題ないかもしれないが,海外から日常的にお取り寄せする,またはお取り寄せ品を買うことが多いと,今回の円安は本当に堪えます.窮乏化するのは私自身だったりします.それと,仕事で海外に出ようとしても,飛行機やホテルが高くて無理だったりもする.
    今回はメディアの記事への反論ですし,ブログ主の正しい経済知識や一貫性に基づいた視点もその通りですが,個別には状況が異なる場合があることを視野に入れて議論を進めた方が良いと思います.高橋洋一チャンネルなんかは,その点を必ずひと言触れていたりして,議論の精度が高いと感じます.

  • >ちなみに記事では、なぜ1ドル=200円が「恐ろしい水準」なのかに関する数量的な根拠はほとんど示されていません。

    「200円」って感覚的に聞き慣れない数字を言ってみたいだけなんでしょう。
    世に数多はびこる「悪い円安論」の中で如何に目立つか競争。(笑)

  • 繰り返しですけど1ドル200円を恐れているのはアメリカです。
    もしそんなことになったら政策を総動員して解消にあたるでしょう。FRBに利下げを強烈に促しますし、日本にも利上げを要求。日本の介入を認めるだけでなく、協調介入も辞さない。

    放置したらアメリカの産業が崩壊します

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