X(旧ツイッター)で、「飲み会の後で電動キックボードが役に立つ」とする趣旨のポストを発見し、驚いてしまいました。もし飲み会で酔っ払った状態で電動キックボードを運転すれば、それは飲酒運転になる可能性が高いからです。ちなみにこうした電動キックボードとの付き合い方は、外国でも問題となりつつあるようで…。
自転車と違法駐車問題
当ウェブサイトで不定期に取り上げる話題のひとつに、新たな電動モビリティの交通安全、という問題があります。
道路交通法規では、自転車は基本的に車道を走らなければならないとされていますが(警視庁ウェブサイト等)、だからといって、自転車で歩道を走ったとしても、ただちに違法となるわけではありません。
正確にいえば、歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識などが掲げられている場合や、「13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人」が自転車を運転している場合などは、自転車も歩道の通行が認められています。
普通自転車歩道通行可
(【出所】警視庁ウェブサイト)
しかし、道路交通の実情でいえば、歩道上を自転車が走っているというケースは大変に多いでしょう。(とくに都市部の場合は)自転車で車道を走ると非常に危なく、やむなく歩道を通行せざるを得ない場合が多いようです。
東京都心部の道路では最近、自転車専用レーンなどが指定されている箇所もあるのですが、そのような通行帯に自動車が駐停車していることが大変に多いからです(多くは配送中のトラックであったり、コンビニなどに立ち寄るための路駐であったりします)。
そうなると、自転車がチャリチャリとベルを鳴らしながら、明らかに時速6㎞を超える速度で歩道をかっ飛ばしているのが実情です。自転車の利用者は道路交通法規に従い、やむを得ず歩道を通行する場合は、歩行者の通行を妨げないようにしなければならないはずであるにもかかわらず、です。
自転車と歩行者の衝突事故も!
結局のところ、警察が違法な駐停車をちゃんと取り締まっていないという問題もあってか、そのしわ寄せが交通弱者に押し寄せている格好です。
ひと昔前の、いわゆる「ママチャリ」などと呼ばれる自転車だと、軽車両といいながらもさほどの速度が出なかったために、そこまでの問題にならなかったのかもしれません。
しかし、現代の自転車は、(その構造などにもよりますが)かなりの速度が出ることも多く、最近だと「歩道上で自転車と歩行者がぶつかる」という事故も発生しています。
「歩道で時速35キロ」自転車、男性はねて死なせ罰金70万円…県警「自転車も車両」
―――2024/04/06 13:33付 読売新聞オンラインより
自転車だけでない、新たなモビリティ
そして、現代社会の交通安全という論点を、さらにややこしくしているのが、あらたなモビリティの出現です。
電動アシスト付き自転車に加え、いわゆる電動キックボードと「モペッド」(ペダル付原動機付自転車)などが、その典型例でしょう。
このうち電動キックボードは、東京都心部などでは最近、よく見かけます。歩道を歩いていたら、歩道上を縦横無尽に電動キックボードが走り回っていて、危ないと感じた方も多いかもしれません。また、自動車を運転する人にとっては、ノーヘルで電動キックボードを使っている人も見かけることも増えているのではないでしょうか。
さらに著者自身が遭遇した事例としては、電動キックボードの「信号無視」、「逆走」などがあります(ちなみに信号無視や逆走は違法であるだけでなく、大変危険な行為でもあります)。
また、モペッドは、自転車のような見た目でありながら、乗っている人はペダルを漕いでいないことも多く、かなりの速度で車道や歩道を走っているケースが多いです。ちなみに著者自身が見たところ、運転者の大部分はヘルメットもつけていませんし、ナンバープレートも確認できません。
当ウェブサイトでは『電動キックボードの事業者は現状をどう考えているのか』などを含め、この電動モビリティの交通安全の問題についてはしばしば話題として取り上げて来たのですが、ここで、法的な区分を整理すると、こんな具合でしょう。
①軽車両
自転車、基準を満たす電動アシスト自転車
→歩道走行可能、運転免許不要
②原動機付自転車のうち、特例特定小型原動機付自転車
時速6㎞を超える速度を出すことができないなどの原動機付自転車
→歩道走行可能、運転免許不要(※運転者は16歳以上であることなどが必要)
③原動機付自転車のうち、特定小型原動機付自転車
時速20㎞を超える速度を出すことができないなどの原動機付自転車
→歩道走行不可、運転免許不要(※運転者は16歳以上であることなどが必要)
④一般原動機付自転車
→上記以外の自転車等。歩道走行不可、運転免許必要。いわゆる「原チャリ」だけでなく、最近話題の「ペダル付原動機付自転車」(いわゆるモペッド)もこれに該当することがある
問題は切り分けてみるべき?
上記のように整理すると、道路交通上の問題がいくつかに分けられることがわかります。
- 現在の法令の基準自体は適切であるが、警察当局の怠慢のためか、違法駐車の取締等が行われていないために、結果的に道路交通が危なくなってしまっている状況(上記①)
- その法令自体が不適切ではないかと疑われる事例(上記②、③)
- 基本的に違法であるはずだが、取り締まりが行われていない事例(上記④)
これについて、どうすれば良いのか―――。
まず、①の「車道で違法駐車が多く、自転車が歩道を走らざるを得ない」という問題については、「国交省と警察庁が連携し、車道の違法駐車を取り締まれ」、という話に尽きます。
また、これに加えて一般の自転車にも危うい運転が見られますが(たとえば信号無視やスマホを見ながらの運転など)、こうした運転についても取り締まるべきでしょう。これらは法令改正を伴わず、現行法令で対処できる問題です。
その一方で④に示すような「明らかな違法モペッド」についても、「取り締まるべき」、というのが答えでしょう。
問題は、②や③です。
電動キックボードは免許なしに乗れてしまうため、道路交通法規に疎いドライバーが多く、また、一定のものであれば歩道を通行することも可能であるため、結果的に道路上の安全が阻害される状況となっているのではないでしょうか。
それって飲酒運転では?
こうしたなかで、外国ではこんな動きもありました。
メルボルン市が電動キックボード全面禁止、事故や苦情増加 オーストラリア
―――2024.08.16 12:10 JST付 CNN.jpより
米メディア『CNN』によると、オーストラリアのメルボルン市議会は13日、電動キックボードの業者との契約打ち切りを決議し、30日以内にキックボードを撤去するよう要請したのだそうです。
背景には電動キックボード関連の事故の急増があります。CNNによると王立メルボルン病院が2023年12月の報告書で、電動キックボードに関連して256人が負傷し、うち1人は衝突事故で死亡したと述べたそうです。
これについては業者との争いやビクトリア州政府などの介入の可能性が残るなど、キックボードが完全撤去されるかどうかはよくわからない状況だそうですが、ひとつの事例としては参考になるかもしれません。
ただ、この報道を受け、X(旧ツイッター)では先日、こんな趣旨のポストも見られました(出所の明示は控えます)。
「電動キックボードに対する批判は多いが、飲み会が終わって終電がなくなった時なんかは電動キックボードがめちゃくちゃ役に立つので絶対に日本は撤去しないでほしい。タクシーの深夜料金を払わないといけないなんて馬鹿馬鹿しすぎる」
…。
アルコール飲料をまったく口にしていないならばともかく、もしも飲み会で酔っ払った状態で電動キックボードを運転すれば、飲酒運転ではないでしょうか?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ちなみに同じくXでは、「いま話題の電動キックボードに乗ってみた」とするポストや、キックボードの目撃情報などもあり、このなかで、こんな趣旨のものがありました。
「話題の電動キックボードに乗ってみたが、警察からも歩行者からも車からも敵視されるのを感じた」。
「日本では周囲の冷たい視線を受けながら電動キックボードに乗れたら立派な大人です」。
「朝歩行者で大渋滞の歩道を大学生が電動キックボードで疾走するのを人々は冷たい目で見ていた」。
思わず苦笑した次第です。
View Comments (6)
電動キックボード(自転車・馬車・牛車・トナカイ馬車・犬ぞり・人力車も同じ)
「酒酔い」 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
「酒気帯び」 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
デタラメです
自転車は軽車両
現時点で酒気帯びは違反であるが罰則はない
以下GoogleによるAI生成から引用
<2024年11月1日施行予定の改正道路交通法により、自転車の酒気帯び運転に罰則が新設されます。酒気帯び運転の罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。また、酒気帯び運転をほう助した者にも罰則が適用されます。
自転車の飲酒運転は、飲酒の程度にかかわらず禁止されており、いわゆる酩酊状態で運転する「酒酔い運転」のみ処罰の対象でしたが、酒気帯び運転についても罰則規定が整備され重罰化されました。
自転車には自動車のような運転免許が必要ないため、免許違反点数は発生しませんが、自転車の飲酒運転によって重大な事故を起こした場合、自動車運転免許の停止処分の可能性があります。
つい最近有名な韓流スターさんが韓国でそれで免許取り消しになったような。。
アニメで電動キックボードを乗り回し交通を混乱に陥れる天才少年君は少年院に送還しなければならないとして、都市における交通事情と田舎の交通事情が同じ法律なのは正しいことなのか疑問に思います。
田舎でも、古都の狭い道路の町と北海道のようなアスファルトがバキバキで人より動物との衝突を恐れるような地域がウーバーの闊歩する大都会と同じなのは不可解に思えます。
①軽車両、②原動機付自転車のうち、特例特定小型原動機付自転車、③原動機付自転車のうち、特定小型原動機付自転車、④一般原動機付自転車と見た目だけではどれに属するのか、それぞれの規定がどうなっているのかを一般人が正しく理解するのが、複雑なことが混乱の根底にあるように思います。
いっそのこと、歩道を時速6km以上で走行しているすべてのモノは誰でも殴り倒してよいという法律を作った方が分かりやすく徹底も容易です。
昔のヨーロッパの映画で日本で言うところの原付サイズですが、エンジン始動をキックでなくペダルを漕ぐことで動かす乗り物が出てました。
いっそのこと自転車やそれに類するもので、何かしらの動力が必要なものは原付で良いのではないでしょうか?
昔話題になったセグウエイも行動ではナンバーとヘルメットが必須でしたよね。
機械式や電気式の速度制限は後付けなので取り外しも可能になります。原付のリミッター同様に。性善説での運用は当てはめにくい乗り物とあきらめたほうが良いと思います。