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舌鋒鋭くトヨタ批判の朝日新聞…自社記事訂正は十分か

朝日新聞が12日の社説で、トヨタ自動車に対する国交省からの是正命令を巡り、「自浄能力を疑わざるをえない」、「真摯に反省し、再発防止に全力を挙げるべき」、「トップが問題に正面から向き合わなければ、信頼回復は出発点にも立てないだろう」などとしたうえで、今回の是正命令を契機に「経営姿勢を根本から改めなければならない」と求めました。ずいぶんと舌鋒鋭い批判ですが…。

朝日社説「トヨタ是正命令、不正の事実に向き合え」

車の「形式指定」を巡るトヨタ自動車の不正が拡大したとして、朝日新聞が12日付で、こんな社説を展開しています。

(社説)トヨタ是正命令 不正の事実に向き合え

―――2024年8月12日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

朝日新聞社説によると、トヨタ自動車は6月、形式指定の認証試験で不正があったと公表。先月5日には社内調査の結果、「新たな事案は確認されなかった」と発表したのですが、立入検査した国交省がさらに7車種での不正を指摘し、先月末、道路運送車両法に基づく是正命令を発表したのです。

トヨタ側は今回の7車種について、自動車の安全性を直接揺るがす不正ではなく、「直ちに使用をとめる必要はない」としているのだそうですが、これについて朝日新聞社説は、こうも述べています。

だが、車の安全性を直接揺るがす不正ではなくても、メーカーへの信頼を前提にした認証試験で、規定された条件や手順がおろそかにされていたことは、軽視すべきではない」。

この点、(あくまでも個人的見解ではありますが)トヨタ自動車の豊田章男会長自身が認証制度のプロセスへの疑問を表明していたという事実などに照らし、正直、国交省がトヨタに対する是正命令発出に踏み切ったのは少しやり過ぎではないかと思いますし、朝日新聞が官僚側に立っている点にも違和感はあります。

しかし、法令の逸脱は、本来、あってはならない話であり、是正命令は是正命令として真摯に受け止め、トヨタは再発防止に努めるべきでしょう。

舌鋒鋭い批判

ただし、本稿でこの社説を取り上げる理由は、この社説自体、朝日新聞が企業不祥事に際し、どう批判するのかという事例として参考になる部分があるからです。

朝日新聞社説のなかで、朝日新聞がトヨタを批判するのに用いた表現を列挙しておくと、こんな具合です。

  • 自浄能力を疑わざるをえない
  • 法令逸脱を真摯に反省し、再発防止に全力を挙げるべきだ
  • グループの統治に大きなほころびがあると疑うべきだ
  • トップが問題に正面から向き合わなければ、信頼回復は出発点にも立てないだろう
  • 今回の是正命令を契機に、経営姿勢を根本から改めなければならない

…。

なかなかに、力強い批判です。

他社に対しここまで舌鋒鋭い批判を展開し、「経営姿勢を根本から改めよ」と要求する。

トヨタ自動車の役員や従業員の皆さんにとっても、あまり気分の良い社説ではないことは、想像に難くありません。

「議事録の発言を切り取った」とする苦情

では、こんな事例はどうでしょうか。

国立科学博物館の研究主幹の谷健一郎氏が12日付で、朝日新聞の記事について、「朝日新聞から取材を受けていないこと」、「議事録の発言を切り取ってまったく異なる文脈で使われたこと」などについて指摘。そのうえで、こう述べているのです。

私が日々伝えたいと思っていることと真逆の内容が(私の発言として)、報道されているのが大変悲しいです。せめて取材してほしかった」。

この谷氏の「朝日新聞が谷氏に取材もせず、議事録の発言を切り取り、真逆の内容が自身の発言として報じられた」とするポストが正しいとすれば、これはとんでもない話です。今回の朝日新聞の記事は、(少し言葉はきついかもしれませんが)記事に虚偽の内容が混じっていたということだからです。

そもそもトヨタ自動車が消費者の信頼を裏切らないよう、自動車という「自社が作る製品」の安全性には十分に注意しなければならない(そして朝日新聞自身もそう求めている)のと同様、朝日新聞社も新聞社である以上は、新聞記事に虚偽の内容が混じらないよう、細心の注意を払うべきではなかったのでしょうか。

え?これでお終いですか?

ただ、それ以上に驚いたのが、こんな趣旨のポストです。

朝日新聞は公式Xアカウントで「おわび」と題し、(問題の谷氏の)「発言を含む段落を削除し、見出しを直した」、などと説明しました。

あれ?

これでお終いですか?

先ほど紹介した、トヨタ自動車に関する社説では、冒頭で「自浄能力を疑わざるをえない」、「法令逸脱を真摯(しんし)に反省し、再発防止に全力を挙げるべきだ」と指摘していませんでしたか?

「グループの統治に大きなほころびがあると疑うべきだ」、「トップが問題に正面から向き合わなければ、信頼回復は出発点にも立てないだろう」と主張していませんでしたか?

あるいは、社説の中で朝日新聞は「命令を謙虚に受け止め、先週国交省に報告した再発防止策を実行するとともに、足らざる点がないか、不断に検証していく必要がある」と求めるなどしたうえで、末尾をこう締めくくっていませんでしたか?

今回の是正命令を契機に、経営姿勢を根本から改めなければならない」。

少なくとも、ご本人の発言内容を曲解して伝えたことについてはもちろん、新聞記事を信頼して読んでくれた読者に対しても、謝罪の言葉は十分なのでしょうか?

果たして「経営姿勢を根本から改めるべき」なのは、トヨタ自動車なのでしょうか?それともそれ以外の会社なのでしょうか?

謎は深まるばかりです。

新宿会計士:

View Comments (24)

  • 未だに「うそのしんぶん」検索でトップに来ますしね。鋭いのは舌鋒よりもブーメランの刃先。

  • 「問題を解決するべきだ」
     朝日新聞が言っているのは、何やら言葉数が多くて偉そうなものの、ただのこれだけです。
     そこに何の提案も無ければ(具体性の欠如)。世間が見落としてしまう事を指摘するような慧眼も無く(専門性の欠如)。推測に偏っていてろくな根拠もありません(論理性の欠如)。
     問題を解決するべきだなど誰にでもわかりきったこと。本件で評判を落とす(かもしれない)トヨタ社自身が一番わかっており、顧客にしたって読者にしたってわかっている。
     世の中で誰もわかっていない者がいないような問題提起と解決要求。……あ、朝日新聞だけがわかっていないかもしれませんね。こんなことをドヤ顔で書き散らかして、自らを省みていないわけですから。
     トヨタよりも朝日新聞が評判を落としているってのは渾身のギャグです。

  • トヨタ自動車、型式指定申請における調査結果を公表(トヨタイムズ)
    https://toyotatimes.jp/toyota_news/1060.html

    書類申請上の不備は否めないものの、安全検証としては申し分ないようですね。
    より厳しい条件での検証実施が、「認証プロセス違反」に問われるなんてですね。

    • 当該記事の頭の方で豊田会長自身が
      「日本国内における「認証制度」は、 主に「安全」と「環境」の分野において、ルールに沿った測定方法で、定められた基準を達成しているかを確認する制度でございます。」
      と述べているのだから、仮に結果が問題なかったのだとしても、ルールに沿っていない訳だから「認証プロセス違反」となるのは致し方ないのでは?

      とはいえ、ルールに沿わず実施されたメーカー自社試験をそのまま通してしまった「審査機関の確認」も相当にお粗末で、むしろゲートキーパーとしてこちらの検証と改善も図る必要があるとは思うけれど。

      • ラグビーでは、反則があっても結果的に相手側が有利に展開してるならば、
        「アドバンテージ」
        といって、摘発せずに流します。

        TOYOTAの件でいうならば、消費者側がなにひとつ損してないのに、
        「認識プロセス違反」
        で納期が遅れる、品質が下がる、対策費用は回り回ってユーザー側が負担するとなると、
        「スルーして流しとけ、ヘボ主審!」

        としか思えませんわ。

        • それはそれ、これはこれ。
          その様な筋違いな例えは無理筋と思います。

          会社も本来は正しい方法でやり直すべきだったと(内心はともかく)明言してますし、安全に関わる分野で手続き通りにやらず、なにか問題が起きたら、その逸脱行為にいかに合理的な理由があろうとも、批判や処分の対象になります。少なくとも私の業界では。

        • さらに言うと、ラグビーのアドバンテージはその適用条件や解除条件などがルールにきちんと定められていますので、反則の黙認でもなんでもありません。

          トヨタの行為の擁護に使うのはラグビーに対する侮辱的行為と思います。

          • どのあたりが「侮辱的」なのか、差し支えなければ教えて下さい。

            小学生に書くみたいで恐縮なのですが、
            ①反則したTOYOTA
            ②利益をえたはずの消費者
            ③なのに試合を止めるレフェリー(役所)

            の三者関係は説明で押さえて下さいね。
            無用な行き違いはミニマムで行きましょう。

          • CRUSH殿

            前提が違うと思います。
            このケースでは反則されたのは規定を逸脱したデータで申請された国であり、消費者はせいぜい「ひいきのチームを応援している観客」と捉えるのが妥当では?
            むしろ、利を得たのは規定通りのお客検査を省いて手間とコストを削減したトヨタでは?

            いずれにせよ、ラグビーのアドバンテージは、適用条件やその後の処理までルールに定められている中で両チームが試合しているのに対し、トヨタの行いは(現状では)ルール違反を許容する規定もないのに、結果が良いと反則した側が主張しているだけで、何ら情状酌量の余地はないと思います。

            あと、「小学生に書く見たい」などと余分なことを書くのでは、行き違いを解消したいという意思は感じられませんね。

          • トヨタのクルマに乗る消費者が被害者でしょ。
            役所が定めるルールは消費者を守るための方法の一つでしかない。
            そのルールが最先端メーカの基準より劣っていても、ルール通りやれ!というのがお役所のご指示。トヨタも、手順を守らなかったことは否定できないし認可元のお役所には勝ちきれないから一応謝ってる。
            けど、消費者の為に最善の手段を講じているという自負は捨ててないですね。
            試験をしてないとか、国の基準に不合格なものを合格としているとか、そういう本質的な不正ではないと言える事例でしょうね。

          • 「わかってない」

            ことが判ったので、僕としてはもはや書き足すことはないですわ。

            わかってないんだから小学生と言われて、そりゃカチン!と来たことでしょう。
            そこは共感します。

            侮辱的とまで受け止める感性といい、素晴らしいセンサーをお持ちなのだと感心しております。

            でも、ご自身の解釈がどうこう以前に僕の解釈も思い付いて当たり前な次元の例え話だと思います。
            反対陣営の立場で被告人弁護を脳内シミュレーションしてから、ラグビーさんに対して侮辱的かどうかの判定をなさるべきかと。

            老婆心ながら、
            「青信号と法律で規定されてるのに緑色の灯火なのは許せない!」
            とか、四角四面に解釈してると町を歩けなくならないのか心配ですわ。

            誰も損してないならプレーを止めない、てのがそんなにわからん例え話なのかなあ。
            難しいもんですな。

      • 書かれていることにはおおむね同意しますが、例えばトヨタイムズでの指摘事例4番目の後方衝突試験などはどうでしょうか。

        法令では後方から1100kgの台車を衝突するところ1800kgの台車を衝突させて問題なしだったようです。

        明らかにより安全方向に振った試験なのでさすがに「それでよし」としてよいように思います。車ももったいないしね。

    • お役所の定めた基準・手順に従わなかったので、それはそれは厳しくやられますよね。
      キャリアのお役人の顔潰したんだから。

      法律、業界規定などは時間を掛けて同業各社が合意できるレベルまでで止まっていて、最先端メーカではもっと厳しい試験をやっているけどそれは業界共通規定ではないから認められない場合に、面倒でも自社最新試験と共通規定の試験との両方やれ!!!
      というお役所のご指示に従うしかない・・・
      最終的にそのコストは消費者にツケが回ってくるんだろうけど。

  • あ~~~哀れみを感じます。
    悪臭を放ち腐敗が進しんでいる生ゴミを土に混ぜ微生物に分解させると虫もわかないようになります。この過程を正しくまっしぐらに進んでいる朝日新聞社。そっと見守ってあげたいと思います。

  • 某歴史的大誤報で、米英国などで記者会見をして真摯に謝罪しましたか?
    また、その誤報により損害を被った、日本国民に対する損害補填を国庫へ返納しましたかと聞いてみたいです。

  • まだまだ朝日はやらかしてます。

    https://www.asahi.com/sp/articles/ASS8733T3S87ULBH00QM.html

    玉木なる記者はインタビュー等の取材すらせず、脳内思いつきで実在する著名人が語ったかの如くインチキ書いて撤回もせずに嘘詫びと言い訳を文末に書きたくって済ませる気のようです。
    捏造記事ならきちんと捏造だと記事冒頭に書くか削除するべきなのでは?

    • それにしても、
      同じ捏造するなら
      本人からの反論ですぐにバレるような
      記事を書いてしまうとはとても不思議です。

      彼らのその理由を無理に推測してみると
      ①捏造されても朝日さまの御威光にはたてつけまい。?
      ②ネットでバレてもお仲間たちが
       声高にかき消してくれるのでノープロブレム。?
      ③日本近海資源を無法にご所望する方面から
       なんとかあのしんかいを叩き潰せとのご意向に
       焦って忖度して捏造に走った?

      うーん ふつうならそんなことで手を染めないものですが
      過去の朝日新聞の軌跡をみるとそれぐらいしか
      妥当なものは思いつきません。

  • まじで、新聞社や雑誌社にもPL法の適用を求めたいですね。
    要は商品を売るために消費者を騙しているって事でしょ。社会的影響力を考えれば、健康食品やサプリメントなどの表示違反よりも悪質であると言えます。(両方ダメだけど)

    沖縄タイムスは、セミを接着剤で木に貼り付けて記事を捏造したらしいです。
    https://twitter.com/neokuikui/status/1823199346810396781

    もうさ、新聞社の捏造は、会社が潰れて二度と立ち上がれないくらいの罰金を科してもいいんじゃないかと思います。それくらいしないと、彼らは捏造辞めないと思う。

  • 【お断り】
    以下のコメントは紛うことなき「陰謀論」です。「陰謀論チェッカー」に掛けたら、星いくつくらいになるのかな。でも、こんなコメントを付けたくなるような記事(社説、その他諸々)いつも書くから、朝日読むのを止められない(笑)。

    朝日がね、本エントリーのような反撃を喰らうことはおそらく百も承知で、なんでこんな社説を載せたのか。それは、海外では「朝日」と言えばクオリティペーパー、日本の良識を代弁する新聞という、いつ頃成立したのか、何を以てそうなったのか今では不明なんだが、そもかくそういう定評を、消滅しちまう前に精一杯使って、影で操ってるご主人様に媚を売っとこうというのが、隠れた(というか、ミエミエの)意図なんですよ。

    >『中国製EV、欧州でシェア維持-EUとの通商対立エスカレートでも』Bloomberg 2024/7/4
    https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-04/SG2ILRT0AFB400

    *注 シェア維持と言ってますけど、欧州でのEV販売数は最近大幅に落ち込んでるから、総販売台数は12%減。

    >『日本勢2桁伸び、HV好調 上期の欧州新車販売』時事通信 2024/8/13
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024071800557&g=int

    *注 これも欧州市場でのはなし。因みに日本車ではトヨタ自動車が20.7%増、日産自動車が17.3%増、スズキが31.0%増。一方で米EV大手テスラは9.1%減だったそう。

    トヨタに取って代わって、盟主の座をなんてイキってたのにねえ。そのご主人様のご機嫌取るために、ここは一番、汚れ役を買って出て、とにもかくにもトヨタにケチ付けといたら、「うむ、ういやつじゃ」ってことになる(のかな?)

  • 有識者会議を傍聴したけど、ちゃんと聞き取りが出来ておらず、発言内容を取り違えて、公式の発言要旨と食い違っちゃいました。
    意図的に問題を大きくしたのではなく、単純な聞き取り能力不足ってことですね。

    か、普通に正確な記事を書いたら上に怒られて、ちょっとなら良いだろうと直してやっと通って記事にしたら公式が要旨出しててバレた。

    昔なら後者だけど案外前者もあり得るかなぁ。どっちにしろ取材なんて行かず公式の要旨をそのまま記事にした方がよっぽど正確ってことですね。

  • 今日も今日とて朝日新聞は「お前が言うな」なのに、どこ吹く風の馬耳東風。
    まあ、それが彼らの仕事ですからね……

    一度朝日新聞社内の雰囲気を観察してみたいものです。
    ネットユーザーの反発を恐れたりすると、「敗北主義者」として「反省部屋」に
    送り込まれたりするんでしょうかね?

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