いわゆる「立憲共産党」が推した齊藤蓮舫氏が都知事選で惨敗した件を巡って、著者自身は「もっと根源的な問題」が隠れているのではないかと思っていました。こうしたなか、その「根源的な問題」が何なのかを知るうえで、ちょうど良い題材を見つけました。とある新聞に掲載された、「都知事選の結果の背後には日本人のリテラシーの急激な凋落がある」とする珍説です。
目次
都知事選で齊藤蓮舫氏惨敗の衝撃
先般の『立憲共産党「マイナス効果」連合事務局長が適切な指摘』などを含め、最近、当ウェブサイトにて頻繁に取り上げる話題のひとつが、今月7日に執行された東京都知事選です。
なぜこの話題を取り上げるのかといえば、この都知事選自体、「立憲共産党」のこれまでの在り方、そして今後の在り方を、さまざまな意味で象徴する選挙となったと思うからです。
なんといっても印象的なのは、「蓮舫」こと齊藤蓮舫氏が、得票数で1,283,262票に留まり惨敗したことでしょう。投票総数が6,823,242票と、前回(2020年の6,132,679票)と比べて690,563票も増えているにもかかわらず、です。
これについては、本当に興味深い現象といわざるを得ません。得票率でいえば18.81%でしたので、もしも投票率がそのままで、都知事選の投票総数が前回並みだったとすれば、齊藤蓮舫氏は1,153,557票しか獲得できなかった計算だからです。
オール左翼の範囲にもよるが…「率」で考える「負けっぷり」
これに加えて、今回の齊藤蓮舫氏(そして「立憲共産党」)の「負けっぷり」は、2022年の参議院議員通常選挙と比べても、特徴的です。
参院選では、当ウェブサイトが「オール左翼」系と呼ぶ4政党(立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社民党)から5人の候補者が立ちましたが、これらの候補者が獲得した総票数が2,352,917票だったことを思い出しておくと、「立憲共産党」効果はなおいっそう明白です。
参院選の投票総数は6,295,764票でしたので、「オール左翼」の得票率は37.37%です。
これを今回の都知事選の投票総数6,823,242票に当てはめたら、もし「オール左翼」の支持層全員が齊藤蓮舫氏に票を投じた場合、齊藤蓮舫氏は2,550,051票を獲得していても不思議ではなかったはずであり、現実の得票数はこの半分ほどに留まった計算です。
もちろん、今回の都知事選では山本太郎氏率いる「れいわ新選組」が静観を決め込んだっため、「れいわ票」が逃げた、という可能性はありますが、仮にそうだとしても、「れいわ票」を除いた参院選の得票数は1,786,992票、つまり全体の28.38%です。
ということは、「率」の概念を使うなら、齊藤蓮舫氏は今回の都知事選で、投票総数6,823,242票の28.38%、すなわち1,936,436票程度(つまり石丸伸二氏を上回る得票)を取っていても良かったはずであり、こうした観点からも、齊藤蓮舫氏の「負けっぷり」は印象的です。
もっと根深いものがあるのでは?
ただ、これについては齊藤蓮舫氏本人、あるいは齊藤蓮舫氏を支持していた人たちの選挙後の言動を眺めていると、大変申し訳ないのですが、「その得票数に留まったのは仕方がない」という気がしてなりません。
そもそも論として、齊藤蓮舫氏は2010年参院選で1,710,734票(つまり全得票数の28.06%!)という票を得て圧勝していたわけです。
ちなみに当時の東京選挙区は改選5議席で、みんなの党で出馬していた松田公太氏は656,029票で当選者に滑り込んでいますので、齊藤蓮舫(当時は「村田蓮舫」)氏は当選に必要な最低票数の3倍近くを、たった1人でかっさらった格好です。
そして、その2010年参院選から14年が経過した今回の都知事選では、齊藤蓮舫氏はかつて自身がかき集めた得票数すらまったく集められなくなってしまった、ということでもあります。
これはたんに「立憲共産党効果」というよりは、もっと根深い問題が内在しているように思えてなりません。
その「根深いもの」とは、いったい何なのか―――。
とある新聞に掲載されたコラム記事
これを考えるうえでのヒントが、とある新聞に7月28日付で掲載された、とあるコラム記事かもしれません。その冒頭部分を抜粋してみると、こんな具合です(大意を変えない範囲で細かい表現については修正している部分があります)。
- 東京都知事選の結果の背後には、この25年ほどの間に発生した、日本人の「読み書き能力(リテラシー)」の急激な凋落(ちょうらく)があったのではないか
- たとえば、人々が政策を読めず、理解できないことを前提に、政策を説明せずに経験則を語って共感を呼ぶ、真剣な議論をしない、質問されると別の話題にそらす、あるいは冷笑して質問し返す<中略>という手法を徹底するなど、「できるだけ考えずに投票できるように導く」という候補に票が集まった
情報源は敢えて示しませんが、この文章を執筆したのは、とある大学の名誉教授で前総長という人物であり、ネット(Xなど)で話題となっていますので、調べればすぐにわかると思います(ただし、ウェブ版で記事のリンクがあるかどうかを調べてみたのですが、見当たりませんでした)。
「リテラシー」という単語が使われていますが、要するに「読解力」、という意味でしょう。
この前総長、あたかも今回の都知事選が「日本人のリテラシーの低下」の結果だ、とでも言いたいかのようにも見えますが、もしそうだとすれば、私たち日本国民も、なんともバカにされたものだと思います(厳密には都知事選の有権者は「日本国民」ではなく「東京都民」ですが…)。
それってむしろ齊藤蓮舫氏の特徴では?
もちろん、これらの記述は、「ポピュリスト的な候補者に票が集まった」とでも言いたいのだと思いますし、齊藤蓮舫氏が惨敗したこと自体に直接の言及があるわけではありません。
しかし、この人物が主張する特徴のうち、少なくとも「政策を説明していない」、「真剣な議論をしていない」、「質問されると別の話題にそらす」、「冷笑して質問し返す」、などは、いずれもむしろ、齊藤蓮舫氏の特徴ではないかと思えてなりません。
「できるだけ考えずに投票に導く」のくだりも同様に、日本共産党を筆頭とする特定野党、あるいはこのコラム記事を掲載している新聞を含めたオールドメディアなどの媒体の特徴そのものではないでしょうか。
すなわち、「根深いもの」の正体とは、これまでだと新聞、テレビなどのオールドメディア、あるいはオールドメディアなどを通じて世論に強い影響力を持ってきた「オール左翼」、「市民活動家」などと、一般国民との意識の乖離があまりにも大きくなっている、という事象ではないかと思うのです。
もちろん、こうした分断をもたらしたのは、ネットです。
インターネットの出現により、一般国民はむしろリテラシーを高め、この某大学の前総長の方や「オール左翼」政党の主張内容、あるいはオールドメディアの報道などに対し怪しさを感じ、もはや彼らの言いなりにならなくなってしまった、という実情です。
このように考えていくと、逆に、齊藤蓮舫氏が(ときとしてあれほどの選挙違反行為も重ねながら)なりふり構わぬ選挙活動を行ったにもかかわらず、「オール左翼」陣営の前回参院選での得票率にも満たずに惨敗したことの背景が、スッキリと説明できるのです。
想像するに、立憲民主党の支持層には、純粋に、立憲民主党に「政権を担い得る政党」としての期待を寄せている人たちもいる一方で、この社会のノイジー・マイノリティとしての立ち位置がいっそう明白になりつつある極左性向を持つ人たちもいるのではないでしょうか、
今回の都知事選は都民のリテラシーが(低下ではなく)向上した結果
今回の都知事選で、立憲民主党が日本共産党と結びついてしまったことで、少なくとも2022年さんいんせんで立憲民主党を支援していた人たち(たとえば齊藤蓮舫氏に投票した670,339人だけでなく、松尾明弘氏に投票した372,064人も含めて)が、齊藤蓮舫氏ら「オール左翼」を見限った可能性があります。
しかし、より根源には、惨敗したのは「ネットの出現でリテラシーが飛躍的に上昇した一般国民を、これまでのオールドメディア時代からまったく変わらない旧態依然としたやり方で誘導しようとしたオール左翼勢」、ではないかと思うのです。
すなわち、都知事選の結果をもたらしたものは、都民のリテラシーの凋落・低下ではなく、むしろリテラシーの向上です。
その意味では、少なくとも齊藤蓮舫氏の敗因は「齊藤蓮舫氏の主張や人となりが都民に正確に伝わらなかったから」ではなく、「齊藤蓮舫氏の主張や人となりが都民に正確に伝わり、その結果、都民が齊藤蓮舫氏を『選ばなかった』から」だと結論付けるのが正しい評価ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
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「蓮舫都知事選(元)候補に投票しなかった人は、読解力がない」と言いたいのでしょうか。だとすると、「読解力があるかないかは、都知事選で誰に投票するかで分かる」ということでしょうか。
平然と有権者を愚民呼ばわりする
リベラル野党を無党派層がどのように思うでしょうか?
蔑んでくる相手を支援しようとは到底思えません。
また気軽にそうしたデジタル・タトゥーがネットから手に入るご時世です。
興味を持って調べた有権者はドン引きでしょう。
またリベラル野党の人達は大量にコミュニティノートがつくくらいに不勉強です。
震災時にデマ量産っぷりはこの人たち
リテラシーがあるのかと不安になります。
リベラル野党の年齢別支持率を見ると
若者層で急激に減っていることをみると
若者層もしっかり情報収集しているのでしょう。
法政大学もいい迷惑だろうなぁ・・・
「法政大学にケチをつけるとは、リテラシーが低い」という人が出てきそう。
街中にシールを貼りまくる、百合子エンド音頭なる踊りを街中で披露する、こんな奴らがリテラシーあるとでも?
「私は馬鹿です」
と、厳かにさも偉そうに新聞で発表してしまう人って、どういう声をかけてあげたらいいのかわからないの。
(笑えばイイとおもうよ)
by石丸じゃなくて碇シンジ君
>「できるだけ考えずに投票できるように導く」
都民じゃないから、それほどしっかり見てた訳じゃないけど・・・
この指摘って斎藤蓮舫氏の選挙戦略そのものな気がするのです♪
訴えてたことは「小池都政を終わらせる」で、その手法は歌ったり踊ったり♪
どんな政策を実施するのか?ってことは、明治神宮の再開発阻止みたいな後ろ向きの話だけで、あんまし訴えてなかった気がするのです♪
このXに意見投稿された人のことは存じませんが、日本学術会議のメンバーなのかしらん? であれば、さもありなん、とぼんやり思いました。。。
(輝かしい御経歴)
・元日本学術会議 外部評価有識者座長
・週刊金曜日編集委員
・TBS「サンデーモーニング」コメンテーター
・以下の団体の代表等
「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」(他に上野千鶴子、東村アキコ等)
「のりこえねっと」(他に上野千鶴子、北原みのり等)
「戦争をさせない1000人委員会」(他に山口二郎、瀬戸内寂聴等)
・立憲民主党や共産党の集会・選挙応援などでの演説多数
寧ろ公職選挙法を守れない候補者やそれを推薦する方々の方がリテラシーが無いのではないでしょうか。
法律を守らないってことは、法律を読んでないか理解していないということですよね。
私があれだけ意を尽くして、日本人の意識を向上させてあげようとしているのに、「サンモニ」がこんなに○鹿にされてるなんて!プン
日本人の言語認識能力、リテラシーの劣化は、目も当てられないわ!イッテヤッタ
by ○政大学前総長にしてアッチ系テレビ番組常連コメンテーターの御方
よーくわかってますよ。蓮舫さんが支援を受けた共産党は社会主義、共産主義の実現を目指す党で、弱者救済などの政策は単なる人気取りに過ぎないということですよね。
蓮舫さんが所属していた立憲民主党は目指す所は意味不明ながら左派の影響が大きく、やはり弱者救済などの人気取り政策には無条件に賛成する。
まあ、公約もほとんどは人気取りであり、真にやりたいことは別にある感じ。
そういうところを見透かして正しい投票行動がなされていると感じます。決してリテラシーは低くない。