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豊田会長の「問題発言」真意はメディアに対する苦言か

トヨタ自動車がなぜ『トヨタイムズ』を創設したのか。その理由はおそらく、少なくとも2つあります。ひとつはトヨタの資金力からすれば、そのようなメディアを創設するのはたやすかったこと、そしてもうひとつが、新聞、テレビなどのメディアに対する不信感ではないでしょうか。こうしたなか、トヨタ自動車の豊田会長の「今の日本は頑張ろうという気になれない」という発言が話題となっていますが、この発言自体、メディアに向けられたものだったとする指摘が出てきました。配信したのは自動車専門サイトの『ベストカー』です。

2024/07/25 13:40追記

本記事の当初タイトルが『豊田社長の「問題発言」真意はメディアに対する苦言か』となっていましたが、豊田章男氏の肩書きはトヨタ自動車の「社長」ではなく「会長」でしたので、タイトルを訂正します。

豊田会長及び読者の皆さまには心よりおわび申し上げます。大変に申し訳ございませんでした。

気軽に創設できるネットメディア

個人がメディアを創設できる時代

本当に、凄いことが生じています。

その気になれば、どこの誰であっても―――たとえば、いまこの文章を読んでいるあなたであっても―――、「メディア」を立ち上げることができるようになったからです。

それも、べつに役所の許可など必要ありません。

日本は自由主義国ですので、たとえば会社形態で事業を営もうと思えば、会社の定款を書いて公証人の認証を受けるなどし、必要書類を法務局に提出すれば、それだけで会社の完成です(※厳密には設立前に類似称号の調査なども行う必要があるほか、税務関係の届け出なども必要です)。

設立する会社が株式会社ではなく合同会社なら、定款認証手続すら必要ありません。また、会社形態ではなく個人事業として営むのであれば、極端な話、最低限、税務署に開業届くらい提出しておけば良いのではないでしょうか。

そして、必要な機材・環境を整えたら、もう今すぐにでも、「メディア」事業を始めることができます。

文字情報を配信するだけであれば記事を執筆するためのPC、タブレットの機材とともに、インターネット回線くらいがあれば良いでしょう。

たとえばレンタルサーバー会社と契約し(通常、オンラインで完結します)、自身のニューズ・サイトを開設すれば、それで立派なメディアの完成です。この場合、サーバーのレンタル代金、ドメインの維持費などは、最大でも年額で数万円程度です。

また、その最大数万円の費用もケチりたいのであれば、無料で始められるブログ・サービスを利用することもできます(この場合は広告収入に限度がある、などと指摘されているようであり、また、使い勝手では独自ドメインと比べて若干劣るかもしれません)。

YouTubeだと初期投資はかなり抑えられる

その一方で、映像配信を行うならば、それこそ「ユーチューバー」になれば良いのです。

機材も最低限、動画編集用のソフトウェアがインストールされたPCとカメラがあれば十分で、ほかに自撮り棒などを活用しているユーチューバーの方もいますが、そうなると極端な話、自分ひとりで運営できます。

また、(著者自身が調べた限り)YouTubeにチャンネルを開設するうえで(今のところは)費用は不要であり、動画のアップロードも無料です。すなわち初期投資として機材代などを支払えば、今すぐに無料で動画のアップロードを始めることができます。

それどころか、無料でアップロードした動画が何万回も再生されるなどしたら、それに広告が付き、クリエイターに広告収入がもたらされますし、一部の「ユーチューバー」は、動画配信で生計を立てているほどです(といっても、「売れっ子」はほんの一握りですが)。

つまり、現代の社会では、私たちはその気になれば、非常に少ない資本で、不特定多数の人々に向けて情報を発信することができるのです。

また、X(旧ツイッター)などのように、既存のSNSのなかには、広告収入で収益化を図ることができるという仕組みが実装されているという事例もあり、Wordpressだの、ブログだのといったまどろっこしい手法(さほどまどろっこしいとも思えませんが…)に依存しなくても、情報発信を業とすることができます。

著者自身が調べた限り、Xの収益化条件はわりと厳しく、また、収益化の条件を達成していたとしても、現時点では「Xへの投稿」だけで生活が成り立つというものではなさそうですが、それでもこの世に「ユーチューバー」が存在するのと同様、Xで生計を立てていく人が今後、出現しても不思議ではありません。

記事の有料販売、メンバーシップなど、選択肢は広がっている

ちなみに事業化の手法は広告収入だけではありません。

たとえば、『note』を使って有料記事を執筆し、記事が売れた分だけ自分の収入になる、という手法も考えられますし、『note』の有料記事の仕組みを真似て、自身のウェブサイトにも有料化の仕組みを導入しても良いかもしれません。

当ウェブサイトの場合は、「読んで下った方々の知的好奇心を刺激すること」を目的としているため、現在のところ、記事の有料化については考えていません。

ただ、技術的には記事の有料化は個人レベルのウェブサイトでも十分に実装可能ですし、また、有料記事だけでなく、「投げ銭」システムなども実装することも考えられます。

また、人気インターネット番組『虎ノ門ニュース』のように、無料・有料双方のコンテンツを流す、というビジネスモデルを試すメディアもあります。『虎ノ門ニュース』の場合は、YouTubeで無料配信するコンテンツと、「メンバーシップ」(月額590円だそうです)に登録している人だけがアクセスできるコンテンツに別れているそうです。

つまり、現代の社会では、インターネットを使えば、個人でも法人でも何らかの「メディア」を始めることができますし、その「メディア」は、広告や有料記事・有料コンテンツなど、いくつかの手段で収益化することができる、ということです。

もちろん、その「メディア」が儲かるかどうかは別問題ですが、ただ、ここで重要な点があるとしたら、「誰でも」「政府の許可なく」「好きなタイミングで」事業を始めることができる、ということです。

オールドメディアの問題点

この点、日本には「記者クラブ」なる制度が存在し、ごく一握りのメディア人(とりわけ新聞社、テレビ局、通信社の関係者など)しかアクセスできない情報というものが存在しています。とりわけ官庁がらみの情報が、その典型例でしょう。

よく新聞、テレビが、「政府はXXを行う方向で検討に入った」、などと報じたりしますが、こうした報道は政府関係者が新聞・テレビに対してそのような情報をわざとリークしたものだったりします。多くの場合、独立系のネット・メディア関係者には、そのような情報など入ってきません。

ただ、逆にいえば、情報源に関して新聞、テレビなどのオールドメディアがネットメディアに対して持っている優位性とは、この「記者クラブ利権」くらいしかないのかもしれません。

じつは、官公庁や国際機関・国際組織は現在、たいていの一次情報を、ネット上で一般向けに公開しています。

たとえば、当ウェブサイトでは経済・金融に関する統計情報を話題として取り上げることが多いのですが、これらの統計情報を丹念に読み解いていけば、官公庁の解説がなくても、日本経済の現状などについて、正確な姿を描き出すことが可能です。

新聞やテレビが描き出す日本といえば、たとえば、「悪い円安に苦しんでいる国」、「国の借金が多く、財政破綻しそうになっている国」、「人手不足倒産などに苦しむ国」、といったものですが、一次情報からちゃんと事実関係を調べていくと、オールドメディアの報道が必ずしも正しいとは限らないことに気づくのです。

トヨタイムズとオールドメディア

科学を軽視する新聞の退潮は当然のこと

さて、いずれにせよ現代社会では、「その気になれば誰でも一次情報を手に入れることができる」ようになっており、また、ネット空間では多様な意見が流れていて、何らかのテーマについて調べる際には、さまざまな情報を参考にすることができるようになりつつあります。

なぜこんなことを長々と述べているのかといえば、この状況は、新聞、テレビなどが情報空間を支配していたかつての時代とは、状況が大きく様変わりしているからです。

以前の『新聞は「価値がないから誰も読まないメディア」では?』では、「紙の新聞も『誰も見ていないからこそ価値がある』というメディアになりつつある」という「珍説」をもとに、新聞が垂れ流している情報にほとんど価値がなく、次第に世の中の人々から見向きもされなくなり始めている、とする実情を解説しました。

じっさい、新聞部数は急落していますし、新聞広告費も激減し、(総務省の調査では)人々が新聞を読む時間もどんどんと減っています。今年公表された最新調査だと、10代の新聞購読時間が平日でゼロ分を記録したりしています。

なぜ新聞がここまで急速に廃れているのか。

その要因として真っ先に思いつくのは、「新聞は紙媒体であるがために、情報がどうしても遅くなってしまう」というものですが、著者自身の見立てだと、これはその主因ではありません。

端的にいえば、いわゆる「1940年体制」で新聞業界からは健全な経済競争が失われ、一握りの有力紙が情報提供を独占し、大して付加価値のない情報を不当に高い値段で売っていたという実態が、社会のネット化によって盛大にバレはじめたことで、自滅の道を進みつつある、というものです。

「科学振りかざすな」、「科学を隠れ蓑にするな」

日本の新聞を語るうえで欠かせないのが、その専門性のなさと科学の軽視です。

たとえば、日本政府は2021年に、福島第一原発の敷地内で溜まり続けているALPS処理水の海洋放出を決断し、実際に2023年8月以降、複数回に分けて海洋放出が実施されています。

もちろん、この放出に当たっては、科学的知見に基づき、トリチウムを含めた放射性物質の含有量、放射線量の水準などに関し、事前に定められた基準に適合するように計画が策定され、国際原子力機関(IAEA)などとの協議を経て決定されていますので、科学的に「安全である」と断言して間違いありません。

ところが、この福島原発処理水を巡って、一部の大手全国紙は「科学を振りかざすな」だの、「科学を隠れ蓑にするな」だのとする、メチャクチャな主張を社説などで繰り広げてきたのです。

日本のメディア人が、なぜか「反原発」、「反米軍基地」、「憲法第9条死守」などに凝り固まっている事例が多いのは比較的有名かもしれません。

ただ、こうした一部メディアのメチャクチャな主張は、多くの場合、科学的な裏付けを欠いているものの、インターネットが出現する以前であれば、こうした主張に反論するすべが、ほとんどありませんでした。日本全国の不特定多数の人々に向けて情報を発信する手段が限られていたからです。

もしかしたら、朝日新聞の記事の批判が読売新聞に掲載される(あるいはその逆)、といった事例も、ごくたまにあったのかもしれません。

しかし、そのような場合でも、世の中のすべての人々が同じ新聞を読んでいるわけではなく、たとえば朝日新聞に誤報ないし不適切な報道が掲載され、それを読売新聞が批判したとしても、こうした読売新聞の批判が朝日新聞の読者に確実に届くとは限りませんでした(朝日と読売を入れ替えても同じ議論が成り立ちます)。

こうした状況が大きく変わるきっかけが、インターネットの出現と普及、そして発展です。

現在、オールドメディアメディアが何らかの不適切な報道を発信したとしても、インターネット空間では不思議なことに、どこからともなくファクトチェックをする人が出現し、こうしたファクトチェックがネット上で拡散するなどし、こうした実績が積み重なり、それが新聞に対する不信につながっているのです。

当然、こうした不信の目が向けられる対象には、新聞だけではなく、テレビも含まれます。

この点、今にも滅亡しそうになっている新聞業界と比べると、地上波テレビ業界に関して言えば、まだ一定の社会的影響力を保っています。著者自身、地上波テレビが現在の新聞並みに「滅亡寸前」の状況に至るまでには、まだ5~10年の歳月が必要ではないかと推察している次第です。

しかし、地上波テレビにしたって、若年層になればなるほど見向きもされなくなるという傾向が強く、とりわけ直近の総務省の白書では、2023年調査ではついに50代において、平日のネット利用時間がテレビ視聴時間と逆転しています(『ネットが好調、新聞・テレビは苦戦=メディア利用時間』等参照)。

速いか遅いかの違いであって、地上波テレビが新聞業界と同様に衰退への道をひた走っていることについては疑い余地がありません。

テレ朝看板キャスター引き抜いた『トヨタイムズ』の狙いとは?

こうしたなかで、もうひとつ考えておきたいのが、「誰もがメディアを始められる」という状況が、この経済社会において何を意味するか、です。

冒頭に指摘したとおり、現代社会では情報を発信するためのコストは、かつてと比べれば極端に低下していますので、私たち個人のレベルであってもブログサイト、ウェブ評論サイト、Xアカウント、YouTubeアカウント等を低コストまたは無料で開設することができるのです。

ということは、資金力のある大企業だと、自社で直接、メディアを作ってしまうことができるはずです。

その典型例は、もしかすると、トヨタ自動車かもしれません。

トヨタ自動車といえば、日本でも最も収益力の高い自動車会社として知られていますが、「テレビっ子」にとっては頻繁に、テレビCMで社名を見かける会社のひとつでもあるはずです。

しかし、そんなトヨタ自動車は現在、自社の「メディア」を持っています。

それが、『トヨタイムズ』です。

トヨタイムズでは、元テレビ朝日アナウンサーの富川悠太氏がトヨタ自動車所属のジャーナリストとしてさまざまな動画に出演するなど活躍しています。いわば、富川氏がトヨタ自動車の事実上の「広告塔」のような存在、というわけです。

富川氏といえば、2016年以降、テレビ朝日・ANN系列の看板報道番組『報道ステーション』のメインキャスターとして人気を博していたことでも知られていますが、その「エース・アナウンサー」を、事業会社であるトヨタ自動車が報道機関から引き抜いた格好です。

当ウェブサイトは「芸能サイト」ではないため、その引き抜きの舞台裏などについては存じ上げませんし、あまり詳しく調べるつもりもありませんが、客観的な事実だけで見たら、テレビ局の看板番組の看板キャスターを一般事業会社が自社メディアのキャスターとして引き抜くというのは、かつてなら考えられない現象です。

冷静に考えたら、これも奇妙な話です。トヨタ自動車の本業はあくまでも自動車などの製造・販売であって、「報道機関」ではないからです。

しかし、そのトヨタ自動車は(円安などの追い風もあってか)、2024年3月期決算で営業利益(連結ベース、IFRS)で初の5兆円台に乗せるなど、本業は非常に順調です。

正直、私たち個人のレベルでも、たいした投資をせずに「メディア」を作ることができるわけですから、トヨタ自動車程度の資金力や収益力があれば、テレビ朝日の看板キャスターを引き抜いて自社専用のメディアを立ち上げるくくらいは造作ないことではないでしょうか。

豊田会長の発言の真意とは?

ただ、トヨタ自動車が自身のメディアを立ち上げるコストが低い、というのはその通りですが、それでもやはり、事業会社であるトヨタ自動車が報道機関のような部門を立ち上げるのは、不自然です。

どうしてトヨタ自動車は『トヨタイムズ』などを立ち上げたのでしょうか。

あくまでも想像ですが、トヨタ自動車は自社の事業などに関する新聞、テレビなどのメディアの報道の在り方に、不満―――あるいは、「もっとこう報じて欲しい」、「このメディアの報道は正しくない」、といった苛立ち―――を抱いていたのではないでしょうか。

そう思える根拠が、ひとつ、出てきたのかもしれません。

豊田章男会長「今の日本は頑張ろうという気になれない」の本当の宛先は…メディアだった

―――2024/07/23 10:49付 Yahoo!ニュースより【ベストカーWeb配信】

これは、トヨタ自動車の豊田章男会長による、「今の日本は頑張ろうという気になれない」とする発言がネット上で話題になっている、とする点に関連し、自動車情報専門メディアでもある『ベストカー』が検証する、というもので、なかなかに説得力がある優れた記事です。

記事でも触れられている通り、この豊田会長の発言は、ネット上では「国交省に対する批判だ」、「日本に対する批判だ」、といった見方もあるのですが、これについて同記事では、こう指摘されています。

しかし、豊田会長の発言とその文脈を読むと、『メディア』へ向けた言葉であることが分かる(そのメディアが曲解して拡散の一部を担っているのだから目も当てられない…)」。

これについてベストカーは、豊田会長のこの発言が行われた場所、日時などの状況をもとに、なぜそれが「メディア業界に向けられた発言」だといえるのかについて解説するのですが、これが大変に説得力があります(場所と日時が持つ背景情報としての重要な意味については記事本文でご確認ください)。

そのうえでベストカーは、こう指摘します。

今回の豊田会長の発言は『交通安全をさらに進めるためには何が必要か』という文脈の延長で出た話である」。

いったいどういうことでしょうか。

豊田会長の発言はメディアに向けられたものだった!

記事では豊田会長の、こんな発言をさらに引用します。

交通事故防止のためには、自動車会社だけ、クルマ側だけでは、出来ることには限界がある。交通安全を推し進め、事故死者ゼロを本気で進めるのであれば、道路インフラ側や歩行者側、自転車や(電動キックボードなどの)新モビリティ側など、社会全体が一体になって進める必要がある」。

この発言、まったくその通りです。

交通事故を防止するためには、自動車の運転アシスト機能であったり、はたまた部分的・全面的な自動運転機能であったり、といった工夫を実装することも大切ですが、それだけでは不十分です。

役所の怠慢などの影響もあってか、東京都内の幹線道路などではそこかしこに違法駐車が放置されているなど、交通違反の取締は不十分ですし、自転車、電動キックボード、さらには(おそらくは違法な)モペッドなどの強引な運転も見かけるからです。

すべての責任を自動車会社に押し付けるかのような風潮、著者自身は感心しません。

ただ、豊田会長は、こうも述べたそうです。

こうした話は、なかなか自動車会社からは言えない。言っても広がらない。我々もがんばりますが、そこは(メディアの)皆さんのお力を借りたい」。

日本のサイレントマジョリティは、日本という国にとって、いま、日本の自動車産業が世界に対して互角以上に戦っていることについて、ものすごく感謝してくれていると思います」。

「(自動車関連会社が)間違ったことをしていたら怒ればいいと思います。そのうえで、応援していただけるのであれば、応援しているということが、自動車業界の中の人たちにまで届いてくれると、本当にありがたい。そうしないと本当に、本当に、みんなこの国を捨てて出て行ってしまいます」。

つまり、今後50年を見据え、交通安全社会を作っていくために、社会全体が手を取り合うべき局面において、メディアがその十分な役割を果たしていない、というのが豊田会長の問題意識ではないでしょうか。

そして、居並ぶメディア関係者に一瞬、目線を送って、「問題の発言」がなされました。こんな具合です。

ただ、いまの日本は、ここで踏みとどまって、頑張ろうという気になれないんですよ」。

強いものを叩くことが使命だと思ってらっしゃるかもしれませんが、強いものがいなければ、国というものは成り立ちません。強いものの力をどう使うかということを、しっかり皆さんで考えて、厳しい目で見ていただきたい。強いからズルいことをしているだろう、叩くんだ、というのは、これはちょっとね」。

何のことはありません。

文脈を読むと、豊田会長の「頑張ろうという気になれない」という発言は、「メディア報道がそういう状況を作っている」という苦言だったのです(この『ベストカー』の記事が正しければ、ですが)。

日本に新聞社・テレビ局は必要ですか?

このように考えていくと、日本の多くの新聞やテレビなどのオールドメディア、果たして日本社会に必要なのでしょうか?

福島原発の処理水放出の件でも多くの人が痛感したとおり、一部のメディアは科学的知見を無視し、あたかも処理水の放出が危険であり、日本政府や東京電力の姿勢が不誠実であるかのような印象操作に終始し、処理水放出の人々の不安を払拭するような役割を果たしませんでした。

また、「日本には国の借金が山ほどある」、「依然、厳しい財政状況が続いている」、「いずれ日本は財政破綻する」、といった、経済理論に照らしても、現在の日本の資金循環に照らしても誤っている言説を垂れ流し、不要な増税を煽ってきたのも日本のメディアです。

さらに最近だと、「悪い円安」論を通じて日銀の金融緩和を敵視するかの言説も多く垂れ流していますし、つい先月は、一部のメディアが上川陽子外相の発言を盛大に切り取り・歪曲して報じるという事件も生じています(『林智裕氏が公表の待望「ネチネチ論考」が素晴らしい件』等参照)。

正直、一部のオールドメディアの報道は、日本社会にとって役立っていないばかりか、有害ですらあります。

最近、一部のメディア人らは、「日本から新聞、テレビが消滅すると、日本の言論空間は暗黒になる」、などと主張しているようですが、新聞、テレビが消滅したところで、人々は案外困らないどころか、むしろ不正確な情報が減ることでメリットが高まるのではないでしょうか。

もちろん、豊田会長も指摘する通り、トヨタ自動車自身を含めた自動車会社で何らかの不正などがあれば、それらについては批判することも必要でしょう。同様に、福島第一原発の処理水海洋放出についても何らかの問題があるならば、それらについて批判することは必要です。

しかし、現在のオールドメディアがやっていることのなかには、科学的知見を無視した、まったく筋違いな批判も含まれているようです。

こう考えていくと、そもそも日本のオールドメディアがこれまで、彼ら自身に求められている役割を正確に理解してきたとは言い難いところですし、そんなオールドメディアが経営的に立ち行かなくなり、消滅したところで、日本経済に実害はないと思われるのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (19)

  • 文脈を無視した切り取りからの歪曲や捏造は日本の特定メディアの文化だと述べても問題はないのでは?と。

    「良いか悪いかは特定メディアが裁く」といったところも。

  • トヨタ社長のメディアに対する苦言を、マスゴミが聞くようなら、マスゴミは、ここまで落ちていないのではないでしょうか。
    蛇足ですが、YouTubeなら新聞社、テレビ局と違って初期費用が抑えられます。ということは、テレビ局より視聴者が少なくても、費用効果という点では、ビジネスとして成り立つのではないでしょうか。

    • 「豊田社長に出来るのだから、俺も出来るはずだ」という人(マスゴミ業界人なのか。政治家なのか。それとも、どこかの社長なのかは分かりませんが)が、大勢、出てくるのではないでしょうか。もちろん、上手くいくかは別の話です。

    • 毎度、ばかばかしいお話を。
      ○○(適当なマスゴミ業界人の名前を入れてください):「テレ朝看板キャスターが、トヨタイムズに引き抜かれたということは、俺も、いずれ引き抜かれるはずだ」
      ありそうだな。

  • >Xの収益化条件はわりと厳しく

    コミュニティーノートの着弾で収益化できなくなる仕組みは良いですね。
    ネットニュースにおける「確信的な見出し詐欺」にも適用が望まれます。

    *「ウソでなければ良い(ミスリードや不作為は許容される)」ではありません。

  • もう故人になられた有名自動車評論家の方が、晩年に以下の論考を残されました。まだHV車ぐらいで、EVがやっと出始めて、PHVや水素ガス車等は現実的にはほとんど一般化されて無かった頃です。

    「これだけ素晴らしい自動車という便利で有益な移動手段を人類は手に入れたのに、何故、交通事故は減らないのか。衝突しても車内の人が怪我しない車、歩行者をはねてもソフトに当たり、怪我が無い車、車同士がぶつかっても人へのダメージが少ない車が、どうして作られないのか」と苦言、理想を語られたことがあります。無論、コレは第一はトヨタ自動車始め日本勢、独仏伊米車に対しての発言でしたが、一概にメーカーを責めたわけではありません。

    交通事故防止のために、近年は電動アシストやクルージングコントロール、前方車との距離を一定に保つシステム、不意に近づき過ぎる車への警報装置、ABS、エアバッグ、前方後方カメラ等様々な安全対策が取られてます。でも自動車会社だけで、出来ることには限界がある。出来っこない。

    事故死者ゼロを進めるのなら、今開発中の交差点の無い四つ角の廃止(信号機無し)、歩道、自転車道の抜本的な整備、電動キックボード等の取り扱い、そして交通ルールを遵守するという歩行者にも啓蒙活動が再度必要になります。

    「自動車会社を応援しているということが、本当にありがたい。そうしないと本当に、本当に、みんなこの国を捨てて出て行ってしまいます」豊田会長の重い言葉ですね。オールドメディアは強いものを叩くのが使命ですか。それより、メディア自体必要がありますかね?

  • 豊田会長がこの前後で何を語っていたか報じた記事を初めて見ました。ありがとうざいます。

    >強い者をたたくのが使命と思っているかもしれないが、強い者が居なかったら国は成り立たない

    これも報道しない自由でしょうか。逆ギレしている人もいますが。
    https://twitter.com/koike_akira/status/1814788812691865816

  • 豊田会長は以前からマスコミに苦言を呈していましたね。詳細は失念しましたが「この情報を発信することで、世の中にどのような影響を与えたいかのポリシーが無い」って感じだったと思います。

  •  豊田社長の発言の背景は型式指定の「不正申請」が念頭にあると思われます。この型式指定は事故のおける乗員の安全確保の基準ですが、それを満たしているからと言って交通事故が防げるわけではありません。メーカーは日々ユーザーのために安全な車をできる限り安い値段で提供しようと苦心しているのに、それに一言も応援も激励もなく、「不正」があったら嬉々として叩く。「こんな国にいられるか」という本音が出たのだと思います。
     テスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏は革新的な経営者として日本でも称賛されていますが、テスラ車の自動運転にまつわる事故については一言の謝罪もなく「統計学的に自動運転はそれがない普通の車より事故が少ない」と主張しました。こんな発言、日本なら大炎上必至でしょう。

  • イギリスの公共放送BBCにトップギアという番組がありました。過去形で書いてしまいましたが、現在も放映されているどうかはよくわかりません。ただ動画はyou tubeその他の動画サイト等に数多く残されているので、今でも視聴できるようです。

    その中に「Killing a Toyota 」つまり直訳すれば「トヨタを殺す」という、物騒なタイトルの回がありました。鉄球をぶつけたり、海水につけたり、挙げ句にはてには火を付けたりと、さまざまな破壊行為をトヨタハイラックスに行い、そのあとでちゃんと動くかどうかをテストしているのですが、我等がトヨタ車は見事に蘇り、制作スタッフとスタジオに集まった視聴者の期待を裏切っていく、という痛快な内容となっています。

    最後に数々の試練を蒙った当のハイラックスがスタジオに登場し、その場にいた多くの人々の歓呼の声に迎えられ番組は終了したようです。

    https://www.youtube.com/watch?v=xnWKz7Cthkk&t=128s

    トヨタ車が、特にランドクルーザーやハイラックスのよう悪路走行を得意とするな車両が、いかに頑丈で、且つメンテナンスフリーで長持ちするものであるかは、もはや世界の常識となっているといっても過言ではないでしょう。その基盤を築いたのは、国交省の木っ端役人が設けた安全基準に飽き足らず、常にそれ以上の性能を追い求めてきた各メーカーのエンジニアたちの、たゆまぬ努力と精進の結果に生まれたものではないでしょうか。

    一方マスゴミも、木っ端役人の撒き散らすリーク情報に踊らされすぎだと思います。その審査基準の根拠についても、もっと深掘りすべきであろうに、そんな気配すらありません。木っ端役人の尻馬に乗り、ノー天気にメーカーを叩いて悦に入っている姿勢すら感じとれてしまいます。

    トヨタ(だけに限らず他メーカーにも)にも下請けいじめなどの問題は数々あろうかと思いますが、それはそれこれはこれ、という是々非々の対応が必要でしょう。今回問題となった型式認定に於けるメーカー独自の安全基準というのは、ドイツのFWの排気ガス排出データの改竄のような悪意から生じた案件とは違い、各メーカーのより高い安全性能の追求という善意から生まれたものと考えています。

    例えば、国交省の役人たちの唱える「おらが村さの安全基準」だけでは、アイサイトのような優れた衝突回避技術は絶対に生まれません。それは交通衝突事故ゼロを目指すメーカーと、そこに所属する数多くのエンジニアたちが日々各種の問題と取り組み、血のにじむような挑戦を継続してきたからこそ実現することができたものです。大袈裟に言えば日本の技術者達の英知の結晶だといえましょう。蛇足ながら、私も日々その恩恵に浴して過ごしております。

    そうした日本の誇りともいえる人々の、足を引っ張ったのが他ならぬ監督官庁である国交省であり、その国交省におもねり風評被害を広めようとしたのは、またもや腐ったマスゴミであった、そのような構図にしか私には見えませんでした。

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