都知事選から2週間経過するにも関わらず、ネット上ではいまだに一部政治家の話題が炎上し続けている大きな原因は、端的にいえば、オールドメディア(とくに新聞、テレビ)の社会的影響力が下がって来ている証拠ではないでしょうか。当ウェブサイトの用語でいう「腐敗トライアングル」とは、官僚、メディア、野党議員のことですが、その「腐敗トライアングル」の真ん中のマスメディアがいま、まさに崩落しつつあるのかもしれません。
目次
民主主義と腐敗トライアングル
日本は民主社会:選挙がとても大切
この日本には、民主主義の手続で選ばれた者が最も大きな権限を持つ、という大原則があります。
政府の各省庁のトップは大臣または長官ですが、大臣の場合は基本的に政治家が任命されますし、国務大臣を束ねる存在である内閣総理大臣は、国会議員(通常は衆議院議員)から互選され、その国会議員は国民の直接選挙を通じて選ばれます。
もしも国民の「総意」が現在の政権に「ノー」を突き付けようと思えば、とても簡単です。
各選挙区や比例代表で与党(現在は自民党が中心で、一部選挙区では公明党)の候補者を大量に落選させ、野党(たとえばその時点の最大野党、現在は立憲民主党)の候補者を大量に当選させれば良いのです。
こうした制度を、一般に「議院内閣制」と呼びます。
すなわち、内閣は国会に対し責任を負う、という仕組みで、実際、国会(とくに衆議院)と内閣は、「内閣不信任案」「衆院解散」という意味で、表裏一体の関係にあるのです。
「そんなことを言っても、日本の場合は首相を直接選挙で選んでいるわけじゃないから、日本は民主主義国とはいえない。実際、2012年12月以降、自民党が独裁を続けており、日本では政権交代が生じ得ない」。
こんな反論をいただくかもしれません。
しかし、日本のような議院内閣制の国は、じつは、かなりたくさんあります。
G7諸国(米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)に限定しても、米国以外の各国は、いずれも議院内閣制(かそれに部分的に類似した仕組み)を採用しています(厳密にいえば、フランスは米国型と議院内閣制の折衷のような政治体制です)。
日本は紛れもなく民主主義国
そして、議院内閣制の国においても、政権交代は生じています。
たとえば7月4日英国で政権交代がありましたが、これは下院総選挙(定数:650人)の結果、リシ・スナク首相(当時)が率いる保守党が惨敗し、キア・スターマー党首が率いる労働党が単独過半数を獲得し、14年ぶりに政権を奪還したものです。
また、日本でも2009年8月に実施された衆議院議員総選挙で、当時の民主党が定数480議席中の308議席を獲得して圧勝し、それまでの第1党だった自民党が119議席と惨敗したことで、政権交代が発生しています。
その意味において、日本は紛れもなく民主主義国です。
そして、2012年12月の衆議院議員総選挙以降の大型国政選挙では、自民党が8回連続して獲得議席数で第1党となっていることは事実ですが、これはべつに自民党が何らかの不正を行ったからではなく、自由で公正に実施された選挙の結果です。
よって、自然に考えるならば、これは選挙のたびに有権者が自民党に信任を与えたということであり、言い換えれば、「自民党以外の政党」には第1党の地位を与えなかった、ということです。
有権者の多くが脅されて自民党以外の政党に投票することを事実上禁じられているような状況ならば問題ですが(ちなみにそんな国が、日本のすぐ近くに存在します)、少なくとも現在の日本においては、「政権与党である自民党の行為により、選挙の自由が犯されている」、という状況にはありません。
(おもに野党議員、野党候補者らによる深刻な選挙違反行為なら、事実上、野放しにされているという問題点ならありますが…。)
ごくたまに、左派政党を支持していると思しき自称知識人、自称ジャーナリストらの間で、「アベが不正を行っていた」、などとする言いがかりが出てくることがありますが(その典型例が「もりかけ・さくら・統一教会」でしょう)、こうした主張の多くは根拠を伴っていません。
このように考えていくと、現代日本の大きな問題点は、「自民党が」選挙を歪めている問題ではないのです。著者自身も自民党が好きなわけではありませんが、少なくとも言いがかりをもとに、自民党がやってもいない不正を、あたかも自民党がやっているかのごとく言い募るのは感心しません。
腐敗トライアングルとは?
そして、改めて指摘しておきたいのが、腐敗トライアングルの存在です。
この「腐敗トライアングル」は、当ウェブサイトでは『【総論】腐敗トライアングル崩壊はメディアから始まる』などを含め、かなり以前から提唱して来たもので、わかりやすくいえば、「民主主義の手続によって選ばれたわけではないのに、不当に大きな権力・影響力を持っている勢力」―――官僚、メディア、野党議員―――です。
たとえば官僚は、司法試験や国家公務員試験などの試験に合格して官庁などに採用されたに過ぎない者たちでありながら、霞が関の中枢で政府提出法案を起草したり、成立した法律に基づき政令・省令・通達・告示などを制定したりしていて、事実上、日本の法律の解釈や運用を独占しています。
なかでも許認可権限や予算を握る官庁は極めて強く、並の政治家を大きく上回る権力を握ることもあります。
国税庁と主計局という、国家財政の「入口」と「出口」を一手に支配している財務官僚などがその典型例ですが、ほかにもNHKという「特殊負担金」で国民から受信料を半強制的に徴収している利権組織を管轄する総務省など、問題のある省庁は多く見られます。
ただ、本来ならば、政治家がしっかりしていれば、官庁の暴走を止めることができるはずなのですが、それを妨害しているのが新聞、テレビを中心とするマスメディア(あるいは「オールドメディア」)であったり、オールドメディアの支援を受けている特定野党の議員であったりします。
マスメディアは「第四の権力」
そして、これらのオールドメディアの記者・関係者らもまた、私たち有権者からの「選挙」で選ばれた存在ではありませんし、野党議員も選挙の結果得た議席数は、与党となるのに不足していたということですから、「私たち有権者から与党として選ばれた人たち」ではない、という意味では、まったく同様です。
このうちマスメディアは官僚と結託し(というよりも、官僚に記者クラブで「飼われ」)、官僚機構にとって都合が良い情報を垂れ流す傾向があります。「日本の財政は危機的状況にある」だの、「日本は財政再建を必要としている」だのといった虚偽の情報を積極的に展開してきたのも、多くの場合、マスメディアです。
(余談ですが、こうした悪質なプロパガンダとしては、最近だと「悪い円安論」などが挙げられると思います。これも「日銀金融緩和悪玉論」として、アベノミクスの功績を全面的に否定するようなものですが、こうした「悪い円安論」を積極的に主張しているのは、経済学などの専門家ではなかったりするのが興味深いところです。)
また、ネット上の書き込みを見ていても、「日本の議員の定数は多すぎる」、「もっと議員を減らすべき」といった主張を見かけることもありますが、これも著者自身は、官僚とマスコミによる悪質な刷り込みであるという疑いを持っています。
報道という絶対的な力を、マスメディアは事実上の権力として悪用しているフシがあるからです(その意味でメディアは自分たちを「第四の権力」などと位置付けているようです)。
実際、日本の衆院の定数は465議席ですが、日本より人口が少ないドイツ、フランス、英国は、下院の定数がそれぞれ598議席、577議席、650議席であり、人口当たりで比較すれば、日本はむしろ国会議員(とくに衆議院議員)の人数が少ないといえます。
また、同じ議院内閣制の国でいえば、イタリアが400議席、カナダが338議席ですので、定数自体は日本より少ないのですが、イタリアの人口は日本の半分、カナダの人口は日本の3分の1ほどですので、やはり人口当たりで比較すると、日本の議員定数は非常に少ないのが実情です。
著者自身は、参議院については権限を大幅に縮小したうえで議員定数も100人程度に減らして良いと思っていますが、衆議院については逆に、465人では少なすぎ、むしろ800~1,000人程度に増やすべきと考えている人間のひとりです。
官僚機構の利害とマスメディアの刷り込み
ではなぜ、「国会議員の人数が多すぎる」、などと国民が思い込んでいるのか。
それは、官僚機構にとって、国会や政治家の力が弱い方が好都合だからです。
安倍政権以降、自民党は国会(とくに衆院)で絶対安定多数かそれに近い水準の議席数を保ってきましたが、こうした状態だと、政権が官僚に対してかなり強くなり、さまざまな法律が政治主導で通されるようになりがちです。
実際、財務省が「悲願」としていた消費税・地方消費税の合計税率を5%から10%に引き上げるという作業も、故・安倍晋三総理大臣のせいで、結局、当初予定の2015年10月から2019年10月へと4年間も延長されてしまいました。
一部の新聞は2018年10月頃に、「消費税の合計税率を10%に着実に引き上げるべき」とする論陣を張りましたが、著者自身はこれらについて、財務省からの指示で新聞社が政権に圧力を加えるために書かせたと考えています。
8%の軽減税率の恩恵を受けている新聞社が財務省の指示を無視できないのは、ある意味で当然のことかもしれません。
上記見立てが事実だとしたら、これはとんでもない話です。
私たち有権者が選んだ政権に対し、私たち有権者が選んでいない官僚ふぜいが、同じく私たち有権者が選んでいない新聞社を通じて圧力を掛けたのですから、これは民主主義の原理に背く行為であり、民主主義への冒涜だからです。
メディアの腐敗、都知事選であらわに
立憲民主党の不祥事を隠すメディア
問題は、それだけではありません。
マスメディアの報道姿勢には、(すべての社がそうだとはいいませんが)一般に、自民党議員に厳しく、旧民主党系―――現在だと、とりわけ立憲民主党―――の議員に対して異常に甘い、という特徴があります。
端的にいえば、「報道」を「第四の権力」としているフシがあるわけです。
実際のところ、自民党議員がやると、それこそ「鬼の首を取った」かのごとく大騒ぎするようなネタであっても、それを野党議員がやると、俗にいう「報道しない自由」を行使して全力で擁護するのが日本のマスメディアです。昨年末から今年にかけて生じた事例だけでも、たとえば次のようなものがあります。
ケース1 安住淳衆議院議員国対委員長
立憲民主党の衆議院議員で国会対策委員長の安住淳氏は2023年11月、自身の資金管理団体の2022年分の政治資金収支報告書に、30万円分のパーティー券収入を購入した団体名と金額を記載しておらず、前日付で報告書の訂正を行ったことを明らかにした。
立憲・安住氏もパーティー券収入を不記載 政治資金収支報告書を訂正
―――2023年11月29日 18時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より
ケース2 野間健衆議院議員
立憲民主党の野間健衆院議員(鹿児島3区)が代表を務める政治団体が、政治資金パーティー収入の50万円を2020年分の政治資金収支報告書に記載しておらず、総務省に25日付で訂正を報告したことが27日、産経による野間氏の事務所への取材でわかった。事務的なミスだと説明している。
立民・野間健氏の政治団体、パーティー券収入50万円記載漏れ 総務省に訂正報告
―――2024/03/27 16:22付 産経ニュースより
ケース3 川田龍平参議院議員
文春オンラインは3月、立憲民主党の川田龍平・参議院議員(48)の後援会の収支報告書に、支援者からの寄附金の不記載があることが『週刊文春』の取材で明らかになったと報じた。文春はこの後援会が川田氏の資金管理団体と所在地が同じであるなど、川田事務所とほぼ一体の関係にあるとみられる、としている。
参院議員・川田龍平に政治資金規正法違反の疑い! 隠蔽された寄附者は一審有罪判決を受けたあの“臓器移植仲介人”
―――2024/03/13 16:12 文春オンラインより
ケース4 梅谷守衆議院議員
梅谷守衆議院議員は地元の会合などで日本酒や現金を配っていたことが2月頃までに明らかになったが、この件に関して立憲民主党は徹底的に説明責任から逃げ回り、あげくの果てに、梅谷議員を「党員資格停止1ヵ月」などの「激甘処分」で済ませた。
…。
どれも、異常な事態です。立憲民主党の不祥事を、メディア自身が積極的に隠蔽しているフシがあるからです。
しかも、これらは、あくまでも氷山の一角です。
もしもマスメディアが「報道」という「権力」(?)を正しく使用するならば、こうした立憲民主党の不祥事の数々を、自民党の「不祥事」(?)と同等の熱量をもって報じているはずですが、実際にはこうした報道はほとんど見られません。
結局は官僚に跳ね返ってくるという皮肉
裏を返していえば、立憲民主党などの野党にこうした酷いダブル・スタンダードが許されてしまっているのも、結局のところ、日本のマスメディアの報道姿勢が、自民党に対し異常に厳しく、特定野党に対し異常に甘いからなのです。
そして、こうしたマスメディアの報道姿勢が、「強い国会」「強い与党」が邪魔で仕方がない官僚組織の利害と一致していることは間違いありません。
余談ですが、立憲民主党を中心とする特定野党には「仕事のできない議員」が大勢所属していることは間違いありません。なぜなら、特定野党の議員の多くは、国会質問の提出がいつもギリギリとなるため、官僚の多くが深夜残業を余儀なくされているという事情があるからです。
質問通告の締め切り8割守らず 官僚は未明まで作業
―――2023/01/29 17:23付 産経ニュースより
その意味で、「強い与党」を嫌う官僚機構が記者クラブでオールドメディアの記者を飼い、そのオールドメディアの記者らが特定野党議員を選挙で勝たせるのに加担している結果、官僚機構自身に「特定野党議員のパワハラ」という被害が及んでいるというのは、なんとも皮肉なものだと思う次第です。
東京都知事選での異常事態
さて、こうした構図が、改めて明白になる事態が、つい最近、ありました。
それが、2週間前の東京都知事選です。
『齊藤蓮舫氏は選挙後2週間の行動で国政復帰が困難に?』などを含め、当ウェブサイトではこれまで何度となく指摘してきたとおり、「蓮舫」こと齊藤蓮舫・前参議院議員(※立憲民主党を離党)の都知事選における振る舞いは、立憲民主党の悪いところが凝縮されたようなものだったのではないでしょうか。
そもそも齊藤蓮舫氏自身、事前運動などの明らかな選挙違反行為を繰り返しており、たとえば選挙の告示日(6月20日)よりもかなり前の時点から、都知事選に自身が出馬する旨、および自身を支援してほしい旨を訴えてきました(『斎藤蓮舫氏「街頭演説」の問題点』等参照)。
これは、明らかな事前運動です。
ですが、「官僚はメディアに甘く、メディアは特定野党に甘い」の法則のためでしょうか、都知事選はすでに終わっているのに、捜査当局が齊藤蓮舫氏を「容疑者」として捜査している様子は見られません(これなども検察、警察といった官僚機構が、いかに腐敗しているかという事例そのものではないでしょうか)。
また、選挙戦の最中には「法定外のビラ」と思しきビラを撒いていたり、齊藤蓮舫氏を象徴するとみられる「R」の文字が描かれたシールを(勝手連などが)街中にベタベタ貼りまくっていたり、といった、公選法などの法令違反の疑いが濃厚な行為、非常識な行為が見られました。
さらには、選挙後には混乱に拍車をかけていきます。
たとえばこの「Rシール」を巡っては、齊藤蓮舫氏は当初、産経新聞記者の質問にたいし「まったく意味がわかりません」などとすっとぼけ、誤魔化しきれなくなるとみるや、慌てて方針転換し、秘書を通じて「原状回復」を呼び掛けるなどの混乱ぶり。
そして、連合の芳野友子会長、朝日新聞の記者などに対し、次々と「噛み付く」などし、おそらくは少なくない有権者の不興を買っているのではないかと推察されます。
そんな齊藤蓮舫氏が、立憲民主党から国政に復帰する可能性は、いったいどの程度あるものでしょうか。
昨日なども論じたとおり、都知事選での得票状況などに照らし、衆院東京第26区から出馬するという可能性は極めて少なくなりましたし、齊藤蓮舫氏自身の振る舞いなどから考えても、衆院東京比例で出馬するとも考え辛いところです。
また、2025年参院選で東京選挙区から出馬することとなれば、現職の塩村あやか氏とバッティングする可能性もありますし、最悪、「共倒れ」というシナリオも出てきます。かといって、全国区で比例票を喰うのも、立憲民主党内で反発が生じかねません。
結局、齊藤蓮舫氏が立憲民主党からすんなり国政復帰できるとすれば、齊藤蓮舫氏の議員辞職に伴う参議院議員補選ができるだけ早く(正確に申し上げるなら、最速で今年秋、つまり10月第4日曜日に)実施されることくらいしか考えられないのではないでしょうか。
土砂降りの雨で濡れない齊藤蓮舫氏
ただ、当ウェブサイトでもこれまでずいぶん、齊藤蓮舫氏の「敗北」について、その背景を含めて考察して来たつもりですが、個人的には6月2日に有楽町で行われた街頭演説に、すべての答えが詰まっていたのではないかと思うようになりました。
『「びしょ濡れ聴衆」が象徴する政治家としての立ち位置』でも指摘しましたが、齊藤蓮舫氏が演説した当日、東京都心では土砂降りの雨が降ったのですが、齊藤蓮舫氏自身は有楽町駅前広場にあるひさしの部分に陣取り、濡れずに演説を行いました。
個人的に違和感を覚えたのは、この行動です。
パフォーマンスに長(た)けた政治家なら、ここでびしょ濡れになりながら(あるいは傘を差しながら)演説していたのではないか、という気がしてならないからです。
選挙演説を行う側は雨に濡れない場所に陣取り、選挙演説を聞かされる側(≒有権者の側)はびしょ濡れ。
この姿に、やはり齊藤蓮舫氏、いや、長年、新聞やテレビに甘やかされ続けて来た野党政治家の「甘さ」の本質を見る気がするのです。
ブロガーの藤原氏もメディアの責任を指摘
さて、ブロガーの藤原かずえ氏が執筆したこんな記事を、産経ニュースが日曜日、配信しています。
都知事選「R」ステッカー問題、マスコミの「報道しない自由」は有権者への裏切り 新聞に喝! ブロガー・藤原かずえ
―――2024/07/21 10:00付 産経ニュースより
文字数は1,000文字ちょっとと短い文章ですが、要点がすっきりとまとめられており、大変良い文章です。
藤原氏は今回の都知事選を巡って、メディアの大きな責任を指摘しているからです。
藤原氏がとくに問題視しているのは、今回の都知事選でマスメディアが「小池百合子、(齊藤)蓮舫、石丸伸二、田母神俊雄―の4氏を安易に有力と判断して報道を集中させたこと」です。なぜなら、それにより有権者の選択が「事実上限定されてしまった」からです。
これについて記事では、このように指摘されます。
- 乱立する候補者の中からマスメディアが有力候補者を合理的に選定し、限りある報道資源を集中させることは有権者に利益
- しかしながら過去の得票の経験的評価に基づく総合判断によって有力候補者を選定している現在の方法論では、たとえ政策の完成度が客観的に優れていようと無名の新人候補は無視されてしまう
この点は、まったくその通りでしょう。
いや、もう少し踏み込んでいえば、ひまそらあかね氏のように、ネット上でのみ選挙活動を行い、結果的に110,196票を獲得したにもかかわらず、メディアからいまだに無視されているような候補者もいます。
先ほど指摘した、「オールドメディアが報道の力を第四の権力として乱用している」という現象は、今回の都知事選でもあますとこなく示されたのではないでしょうか。
これについて藤原氏は、次のように、新聞を批判します。
「特定の党派の政治家に対しては言葉狩りも辞さずにその一挙手一投足を監視する新聞が、民主主義を揺るがす公然の事実を報じないのは有権者に対する裏切りです。事案の可否を判断するのはマスメディアではなく有権者であることを肝に銘じる必要があります」。
まったく同意せざるを得ません。
ネットメディアの隆盛
もっとも、藤原氏の指摘の中にも、メディア統制の終焉を予見させる事象が含まれています。それが、次の記述です。
「例えば、早稲田大学マニフェスト研究所による各候補者の公約の検証で大差をつけて最高評価を受けたのは、無名の新人候補の安野貴博氏でしたが、報道量の少なさは致命的で、約15万票を得たものの、順位は5位にとどまりました」。
逆にいえば、メディアの扱いがほとんどなかったにも関わらず、安野氏という人物は、田母神氏(267,699票)に次ぐ154,638票を得たわけです。
これこそ、ネット時代の本格的な到来を予見させるものです。
そして、齊藤蓮舫氏が都知事選終了後に、それこそ「政治家としての再起」が不可能になるほどに追い込まれてしまったのも、著者自身に言わせれば、オールドメディアの社会的な影響力が急激に落ち込んでいることの裏返しです。
先ほども指摘したとおり、マスメディアは、「報道」の力を事実上の権力として乱用しているフシがあります。
私たち国民が直接選挙で選んだわけでもないマスメディア関係者が、事実上の「第四の権力」を握る「権力者」として振る舞ってきたというのも異常事態ですが、こうした異常事態を適正化するためには、いったい何が必要か、考えておく価値があります。
これについては、一部のメディア人らは「新聞やテレビの報道を適正なものにするための機関を設置すべきだ」、などと主張します(『「新聞版BPO」創設よりも自由競争貫徹の方が現実的』等参照)。
しかし、著者自身はこの考え方にはくみしません。
「新聞版BPO」などを創設したところで、「テレビ版BPO」と同様、まったく機能しない、ただのアリバイ作り団体に成り下がる可能性が濃厚だからです。
思うに、自主統制組織が機能するためには、その組織の構成員が、それなりにしっかりとしていなければなりません。しかし、(すべてがそうとは言いませんが)新聞業界には腐敗し切ったメディアも多く見かけますし、それらのメディアは正直、誰にも相手にされなくなり、潰れてしまうというのが、経済合理性に適った現象です。
というよりも、世の中ではすでに、ここまで多くのネットメディアが出現しているわけです。なかには下手な地方紙などを大きく上回るページビュー(PV)を稼ぐサイトも複数出現していますし、それらのなかには人々から支持され、商業ベースに乗る、というケースも、今後、続々と出て来ることでしょう。
そして、今までだと「報道しない自由」という「バリア」が効いていて、野党議員もちょっとやそっとの不祥事ではビクともしなかったのが、最近だとこの「報道しない自由」が効かなくなってきたのです。新聞、テレビの社会的影響力が日々、すごい勢いで低下しているからです。
齊藤蓮舫氏を巡っても、都知事選が終わってから2週間も経過するにも関わらず、いまだにネット上で話題が鎮まらないのも、結局のところはオールドメディアの社会的影響力の低下と、ネットの社会的影響力の飛躍的な上昇に原因があるのではないでしょうか。
マスメディアの「行く末」
正直申し上げるなら、新聞はいまのままで良いと思いますし、テレビもいまのままで良いと思います。
新聞を取る人はますます減り、テレビを設置する人もまた同様に、ますます減っていくだけの話だからです。
『ウェブサイト運営8年で見えたオールドメディアの未来』でも報告しましたが、当ウェブサイトは先日、満8歳を迎えました。
著者自身が「石にかじりついででも」このサイトをしばらく続けようと考えている理由は、やはり、オールドメディアの行く末を見届けてみたいという知的好奇心があるからです。
当ウェブサイトを果たしていつまで続けられるのかはわかりませんが、読んでくださる方々の知的好奇心を刺激するような話題を探し続けたいと思っていますので、是非ともご愛読と、お気軽なコメントを賜りますよう、こころよりお願い申し上げる次第です。
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>捜査当局が齊藤蓮舫氏を「容疑者」として捜査している様子は見られません
検察、警察が動かないのは、特定野党の目指す権威社会が、彼らの理想なのでしょう。
仰る通り検察や警察は全体主義や社会主義と大変親和性が高いと思います。
政治家が監視しないといけないのでしょうけど、検察や警察の行き過ぎを監視する政治家は、検察や警察から敵視されるのでしょうね。
今回の東京知事選で、これまでの選挙戦の常識にことごとく逆らった「ひまそらあかね候補」が11万票の7位になったということは、この手法も取り入れたなら、他の候補も11万票上乗せできた可能性があった、ということでしょうか。
ひまそらや石丸は、
「やり方」
で票を稼いだのではなくて、
「主張の内容」
で票を稼いだのだと思いますが。
既存メデイアへの批判票が来たと推測
私の都知事選の分析:
小池の票は (A)自民基礎票 ―(B)自民パーティー券問題での減―(C)アンチ小池票(自民支持だが小池はイヤという層)+(D)2期の実績評価票
蓮舫の票は (A) 立憲基礎票 + (B) 自民パーティー券問題での増―(C) アンチ蓮舫(立憲支持だが蓮舫はイヤという層)
石丸の票は基礎票はなく (B)自民パーティー券問題での増 +(C)アンチ小池+(C)アンチ蓮舫
(E)既存政党が嫌いで何か新しいものを求める層
蓮舫の敗因は共産党色が強く(A)の票が大きく目減りしたこと(連合が逃げたのも大きい)(B)の票が石丸に流れたこと (C)が立憲が考えているより大きかったこと(要は嫌いな人が多い)
石丸の躍進の原因は(B)の票を取り込み、(C)の受け皿になりなったこと。
(E)は山本太郎が立候補した時の現象と似ているような気がする。
ネットを駆使したらしいが私のところには届いていなかったので実感はない。
小池の(D)2期の実績評価票は結構大きいんじゃないかな。いままで無難にやってきたのだからもう1期やらせようという層だ。
ほぼ同感です。
小池の実績評価もその通りかと。
コロナ対策やWBPC問題などで
「じゃぶじゃぶにバラまき」
してますから、甘い汁を吸えるポジションの人たちからすれば、全力でサポートしたでしょうし。
ひどい目にあってる人は騒ぐけど、
おいしい目にあってる人は黙ってますからね。
地方でそんなことやってたら財政破綻しますが、日本の中で東京都だけはバカみたいに歳入があるから平気なんですね。
そういうのヤメロ!
と、言ってたのが、ひまそらと石丸だと思います。
11万票と165万票の附託。
事前運動等をみると、オールドメディアの「報道しない自由」が勝利してませんか?
保守系候補がコレやったら、オールドメディアは、鬼の首でもとったかの様にドンチャン騒ぎしていると思いますが。
積極的に票を誘導する力は衰えたカモ知れないが、不都合な真実を隠蔽する力は残っている?
もう,斎藤蓮舫氏のドタバタショーは結構です。マスコミは取り上げて持ち上げたりするだろうが、情報不要、勝手にしてくださいと言う心境。今の世に選挙終了3週間目突入で、フレッシュさを保つ話題はありません。それぐらいスピードがあるはず。会計士さん仰る通り、「オールドメディアの社会的な影響力が急激に落ち込んでいる裏返し」でしょうね。
私の次の興味は都民でも無いし、参議院議員補選では無く、参議院議員選挙と来年秋と言われる衆議院議員総選挙、それに何方が就任されるか分からないが、その後の首班指名です。岸田総理は前半はともかく、後半はまあまあの評価だと思いますが(私は支持してませんけど)、もう結構。
またオールドメディアは「第四の権力を握る権力者として振る舞ってきた」のだから、私の地元の異常な状態を続ける兵庫県・斎藤元彦知事(斎藤って 笑)のパワハラ、おねだり体質、部下への恫喝行為にもメスを入れて欲しいですね。既に二人犠牲者(一人は長期離脱中)が出ています。記者クラブあるんでしょ?あと「新聞版BPO」なんてのも要りません。テレビと同じで何の役にも立たないし、ヘンな肩書きを持つ人を増やすだけです。
出所が県職員とかいふ風聞に由りますと、一番の黒幕は泣きの演技でサッサと退出したとかで、県職員からは「逃げたな」だそうで…
ガチヤバは補助金やら助成をエサやテコにあれやこれややらかしがあったとかナントカ
判りやすい“御輿のやらかし”で誤魔化して逃げ切る算段ヤナイノ? とか??
>齊藤蓮舫氏を巡っても、都知事選が終わってから2週間も経過するにも関わらず、いまだにネット上で話題が鎮まらないのも、結局のところはオールドメディアの社会的影響力の低下と、ネットの社会的影響力の飛躍的な上昇に原因があるのではないでしょうか。
元国会議員の蓮舫が朝日新聞に圧力を加えるより、蓮舫がいちブロガーとかに圧力やSLAPP訴訟をした時の方が、一般人から見た蓮舫の凶悪さが際立つと思うので、蓮舫にはそんな事もやらかして欲しいですね。