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都知事選挙で見えた「オール左翼」マイナス百万票効果

東京都知事選で「2位にすらなれなかった」齊藤蓮舫氏を巡っては、その後も選挙違反の証拠がいくつも出て来ています。正直、知名度もそこそこにありながら、なぜあそこまで強引な選挙戦を展開しなければならなかったのかが不思議でなりません。というのも、普通に無所属で出馬し、クリーンな選挙戦に徹すれば、2022年参院選で「オール左翼」陣営が獲得した230万票前後は獲得できていた可能性があるからです。まさにに「立憲民主党+日本共産党」のマイナス効果は100万票、というわけでしょうか。

「立憲民主党に衝撃走る」=報道

7日に投開票が行われた東京都知事選は、現職の小池百合子氏の圧勝に終わり、挑戦者のひとりである「蓮舫」こと齊藤蓮舫氏の得票数は、前安芸高田市長の石丸伸二氏に負けて2位にすら入れず、3位に留まりました。

これに関し、毎日新聞が選挙当日に、こんな記事を配信していました。

蓮舫氏〝大敗〟に立憲衝撃「信じられない」 共産との連携、裏目か

―――2024/07/07 22:02付 毎日新聞デジタル日本語版より(最終更新 7/8 13:16)

「(齊藤)蓮舫氏の票の伸び悩みで、立憲民主党内に衝撃が走った」、とする趣旨の記事です。

毎日新聞だけではありません。

たとえば時事通信政治部も9日、こんな記事を配信しています。

蓮舫氏3位、立民に衝撃 共産との共闘限界論―都知事選

―――2024年07月09日07時04分付 時事通信より

これらの記事からも、立憲民主党の党内で、今回の東京都知事選に大きな衝撃が走っていることは、どうも間違いなさそうです。

オール左翼候補者は直近参院選で235万票を得ていた

ただ、これについて、著者自身は正直、「なにをいまさら?」という気がしています。「立憲民主党と日本共産党が組んだとしても、相乗効果は生まれない」というのは、過去の選挙戦の分析からも明らかだからです。

都知事選「オール左翼」「泡沫」の得票から見えること』でも引用した選挙データによると、齊藤蓮舫氏の今回の得票数は1,283,262票。投票率が前回よりも上がった関係か、投票総数は6,823,242票に増えたため、得票「率」は18.81%と計算できます。

ただ、この128万票少々という得票は、国政選挙などから予想される得票数と比べても、かなり低いといえます。

というのも、2022年の参議院議員通常選挙では、立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党の4政党の所属候補を合わせると、約235万票、投票総数(約630万票)に対して37%ほどの票を得ているからです(これら4党を便宜上、本稿では「オール左翼」と呼びます)。

図表1は、2022年参院選における「オール左翼」の5候補と2024年都知事選における齊藤蓮舫氏の得票数・得票率を比較したものです。

図表1 オール左翼4党の5候補(敬称略)の2022年参議院議員通常選(東京)得票数と得票率
候補者と所属 得票数 得票率
【当】山添拓(日本共産党) 685,224 10.88%
【当】齊藤蓮舫(立憲民主党) 670,339 10.65%
【当】山本太郎(れいわ新選組) 565,925 8.99%
【落】松尾明弘(立憲民主党) 372,064 5.91%
【落】服部良一(社会民主党) 59,365 0.94%
上記合計【A】 2,352,917 37.37%
2022年参議院選・投票総数 6,295,764 100.00%
都知事選・齊藤蓮舫得票【B】 1,283,262 18.81%
2024年都知事選・投票総数 6,823,242 100.00%
B-A ▲1,069,655

(【出所】総務省『参議院議員通常選挙 速報結果』データをもとに作成)

共闘効果は「マイナス百万票」!?

すなわち、上記図表でいうところの「B-A」の「マイナス1,069,655票」こそが、立憲民主党と日本共産党の「共闘による成果」、といえるのかもしれません。

もちろん、この図表1の比較は、少し不正確でもあります。れいわ新選組は今回の都知事選について、「静観」の姿勢を貫いており、齊藤蓮舫氏を表立って支援していた様子はないからです(山本太郎代表自身が2020年の都知事選に出馬していたという事情もあるでしょうか?)。

ただ、上記「A」から山本太郎氏の得票数である565,925票を引いたとしても、「B-A」の値はそれでも「マイナス503,730票」となるため、いずれにせよ、立憲民主党と日本共産党の「共闘」は、立憲民主党に対してマイナスをもたらすのかもしれない、といった仮説が成り立つのです。

もともと都知事選では左翼系候補者は弱かったという仮説も

もっとも、過去の都知事選で見ても、やはり「オール左翼」系の候補者は100万票前後、あるいは100万票を割り込むことが多いというのも実情です。2020年には宇都宮健児氏と山本太郎氏があわせて150万票少々を獲得したのが例外でしょうか。

近年だと、単独候補として最多得票を得たのは2016年の鳥越俊太郎氏の135万票であり、齊藤蓮舫氏の今回の128万票という票数も、「オール左翼」というカテゴリーで見れば、そこそこ健闘していたという言い方もできるかもしれません(図表2)。

図表2 オール左翼系候補者の東京都知事選における得票状況(敬称略)
選挙区分 得票数 得票率
2024年(齊藤蓮舫) 1,283,262 18.81%
2020年(2名) 1,501,428 24.48%
うち、宇都宮けんじ 844,151 13.76%
うち、山本太郎 657,277 10.72%
2016年(鳥越俊太郎) 1,346,103 20.56%
2014年(宇都宮けんじ) 982,595 20.18%
2012年(宇都宮けんじ) 968,960 15.04%

(【出所】東京都選挙管理委員会データをもとに作成)

有権者に思いは届いた、そして有権者はそれを拒絶した

なお、ここから先は当ウェブサイトの主観ですが、今回の選挙で齊藤蓮舫氏が落選した最大の要因は、「齊藤蓮舫氏の思いが有権者に伝わらなかったから」、ではありません。

齊藤蓮舫氏本人、あるいはその支持者らのさまざまな言動が有権者にきちんと伝わったうえで、それらを有権者が拒否したからです。

たとえば6月2日、土砂降りの有楽町駅前で雨宿りする一般人らをひさしの下から強引に追い出してまで行われた演説は、「齊藤蓮舫氏が雨に濡れない場所で演説し、それを一般民衆が土砂降りの雨の中で聴かされた」というものでした(『「びしょ濡れ聴衆」が象徴する政治家としての立ち位置』等参照)。

また、(著者自身も含め)多くの東京都民の自宅や職場などには、なにやら怪しげなビラも投函されているようです(図表3)。

図表3 なにやら怪しげなビラ

(【出所】2024年7月6日から7日にかけて著者入手。引用・転載自由)

このビラ、齊藤蓮舫氏の名前は入っていませんが、齊藤蓮舫氏を思わせる人影が印刷され、齊藤蓮舫氏が掲げる7つの公約が印刷されているため、明らかに齊藤蓮舫氏の陣営(またはその関係者)などが制作し、ポスティングしたものであろうと推察されます。

(※これについては『「3位以下で落選→選挙違反で摘発」の流れとなるのか』などでも解説した手法を用いて、警視庁へのネット通報を予定しています。)

例を挙げれば他にもいくつもありますが、これらのなかには事前運動などを含め、公選法で禁止されている行為に該当するケースも多いと考えられます。こうしたルール無視の強引な選挙戦術が、一般人を「ドン引き」させた可能性は濃厚でしょう。

こうしたなかで取り上げておきたいのが、こんな話題です。

渋谷や新宿に「R」シール多数 小池氏側は蓮舫氏側が都知事選で貼ったとみて「剥がして」

―――2024/07/08 16:54付 産経ニュースより

産経は8日付の記事で、黒地に白抜きで「R」のロゴを書いたシールが、渋谷や新宿といった繁華街の電柱や歩道用防護柵、道路標識などに多数貼られていることが判明した、と報じています。

じつはこの産経が報じた話題、X(旧ツイッター)上ではリアルタイムでかなり話題となっていたのですが、これも齊藤蓮舫氏の陣営が、選挙のルールはおろか、街の美観を守る、公共標識を大切にする、といった、社会の構成員としての基本的なマナーすら蹂躙する行為です。

産経によると(齊藤)「蓮舫氏は無関係との立場」だそうですが、小池氏の陣営幹部らがこのシールについて、「早急に剥がすように」求めている、などとしています。

今回の齊藤蓮舫氏の得票も、結局のところ、こうした「ルール無視」、「自分勝手」な選挙戦に対する一般都民からの拒絶感のあらわれだったのかもしれません。

もっと普通にやってればよかったのでは?

もちろん、参院選の得票数などから判断して、「オール左翼」の直接的・間接的な支持層と思しき有権者が、投票総数の3~4割を占めていることは間違いないとは思われるのですが、それと同時にこれらの有権者層には、立憲民主党と日本共産党が共闘すれば、離反してしまう人もかなり含まれているのでしょう。

それに、齊藤蓮舫氏は2010年の参院選で、170万を超える票をたった1人でかっさらったほどの知名度がある政治家だったわけですから、今回も正直、強引な選挙違反を繰り返しながら、そこまで無理して選挙戦を進める必要があったのかは疑問です。

日本共産党と結託などせず、徹底的に無所属・クリーンな選挙を貫けば、もしかしたら参院選での「オール左翼」の230万票か、それに近い水準の票を得ることができていたかもしれません。

しかし、今回の選挙戦の惨敗によって、齊藤蓮舫氏が秋の参院補選や近い将来行われる衆院選などで再出馬するのも難しくなったのではないでしょうか(東京選挙区の参院補選で、自民党が候補を立てれば、という話ですが)。

今後、齊藤蓮舫氏が国政に戻るうえで、現実的に最もあり得るシナリオは、「来年夏の参院選で全国比例代表で出馬」、といったところだと思いますが(辻元清美氏のパターンでしょうか?)、立憲民主党にとっても齊藤蓮舫氏は、ますます「使い辛くなった」のが実情ではないかと思います。

なにより今回の都知事選は、立憲民主党を含めた「オール左翼」にとってもひとつの転機となるのではないでしょうか。

というのも、「自民党が『政治とカネ』の問題で批判されていて、立憲民主党に追い風が吹いている」(という設定)だったはずなのに、立憲民主党出身のもっとも著名な政治家のひとりである齊藤蓮舫氏が惨敗したわけです。

齊藤蓮舫氏のみならず、その出身母体である立憲民主党自体の先行きを象徴しているとみるのは、あながちうがった見方ではないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (65)

  • >共闘効果は「マイナス」
    どちらも虚数iだったのでしょうか。それとも、併用したら激烈な副作用が出たのでしょうか。

    自民党もxx学会との共闘を見直すきっかけにしてもらいたいです。

  • レンホーを3位以下にするため、石丸に投票した。石丸に期待したわけではない。旧民主党に属した奴には、絶対に投票しない。立憲を引きずり落とし、存在出来なくさせる。いち有権者の誓いだ。

  • >もっと普通にやってればよかったのでは?

    え?「普通」が通じない「不通」な人達では?

  • 蓮舫氏は、当選するつもりがなかったのではないかと思われる。
    でないと、あんな選挙活動はしてはいけない。
    石丸氏もyoutuberのような活動をして、後で広告費収入を稼いだようです。
    その点で小池百合子氏は、余裕を持って離島まで行ったようだ。

  • 「都有地に外国人学校が建つ。」
    「移民増による治安悪化。」(特亜の若者の流入。留学とか就職とか。)
    「外国人地方参政権を認める。」
    「不動産価格の急上昇。」
    「中国の外事警察が大々的にできる。」
    等々が懸念されて、敬遠されたのでは?

    文在寅の様な不動産価格の引き上げと、特亜富裕層に山手線内の不動産を売る(結果的に日本人は山手線内から追い出される)がセットか?
    元台湾人といっても、本省人なんでしょ。
    韓国や中国で若者の失業率が増大しても、都知事が配慮すべき事ではないだろ。

    シンギュラリティーを迎えたら、「特亜若者のために、日本人が失業しろ。」とか言うカモ知れない。

    • 蓮舫が留学したのは台北ではなく北京。大陸と台湾、どちらにアイデンティティを感じているかはこれで一目瞭然でしょう。
      本名は斎藤蓮舫はなのに、中国風に「蓮舫」と名乗っているのは日本よりも大陸にアイデンティティがあるからじゃないでしょうか。

  • レンホー陣営の選挙の応援活動は
    諸団体のおこぼれにあずかりたい下心だけが見えて
    足を引っ張るだけの結果だったように思います
    取り巻きに界面活性剤のように周囲を取り囲まれて
    全体を見る目が失われてしまうのでしょう
    ユルパンマン氏もハイキンマン、ケンキンマン、ゼイキンマンなどに囲まれて
    セレブ気分で浮かれているうちに
    いつの間にやら支持する者が官僚と利権関係者だけになってしまったのも
    似たような経緯かもしれません

  • まあ、我々庶民の立場で「おっ投票してみようかな」と思うような発言や行動は1つとしてありませんでしたね。
    左寄りのお年寄りとかになんか響くものはあったのでしょうが。

    最近の選挙は低投票率で有利になるのは、左寄りサイドな感じですね。昔のような自民党がやる組織による選挙は出来なくなっている。

    補欠選挙などでの立民の躍進はたぶん総選挙となったら全くなくなる。

  • あっ東京選挙区の補選は行われません。定数の4分の1を超える欠員が生じたわけじゃないので。次の通常選挙で最下位当選が任期三年になります。

  • R4氏が共産党本部に挨拶に行った後、「給食費無料化」「子供の健保代ゼロ」など具体的な公約(としか見えない)が書かれたビラが共産党からばら撒かれました。彼女のいつもの不用意な発言の多さから、細かい政策調整などやっていると思えなかったです。(やってたかも知れませんが)
    彼ら、R4氏の写真使ってやり放題の権利を得た、くらいに思ってたじゃないですかね。
    今回の現象を見て、共産党と組むとそういうことになるんだなーと思いました。ボーッとしてると乗っ取られますよ。

    https://www.yomiuri.co.jp/election/tochijisen/20240708-OYT1T50022/
    有権者が重視したのは「景気」「少子化」「政治とカネ」「高齢化福祉」あたりだったそうです。
    R4氏自身は「外苑」を随分強調してたようですが、有権者からはほとんど考慮されてなかったっぽいです。外苑は共産党も主張してましたね。

    • > R4氏自身は「外苑」を随分強調してたようですが、有権者からはほとんど考慮されてなかったっぽいです。外苑は共産党も主張してましたね。

      都知事選翌日の各紙の社説を眺めたところ、朝日、毎日、東京の三紙が揃って、小池氏に対し外苑再開発と、関東大震災に際し亡くなった朝鮮人の慰霊祭への慰霊文について注文つけていました。

      中の人同じかよ、と思わずツッコミ。

      朝日新聞は再開発を「見直しを含め再考してもらいたい。」 とまで。

      先日、伊藤忠、三井不動産が声明を出しましたが、全く届いていないようです。蓮舫知事ではなく小池知事であっても、最高裁でも問題無いとされた民間事業をひっくり返せ、という主張には変わりないようです。

      蓮舫さんが外苑再開発を争点にしてくれたおかげで、新聞を含む「オール左翼」が、相手の説明には耳を傾けず、自分達の正義の為なら、法治を蔑ろにして構わないと主張しているということが、良く分かりました。

      蓮舫さんに感謝です。

      • 日本共産党 公式
        https://x.com/jcp_cc/status/1808096911544705295
        #神宮外苑 は国民共有の財産です。
        事業者の経済的利益ありきの開発は相応しくない!
        政府は事業者でなく住民の声を聞け!
        #山添拓 議員が神宮外苑の再開発をただしました。

        外苑は「国民共有の財産」だと国会の委員会で発言しています。
        私的所有権の制限と言われないようにしているつもりかも知れませんが、個人や企業の自由な経済活動に公権力が口を出す意味がわからないとも思えません。悪質です。共産党の面目躍如とも言えます。
        ATMも気楽なもんですね。

      • あまり詳しい訳ではなく、判決は知りませんでした。ご紹介ありがとうございます。面白かったです。昨年3月ですか。
        よそもんが利害関係者になる法的根拠はないので却下。
        イコモスの緊急声明とやらもいい加減だし環境影響評価で考慮済み。
        そんな感じですかね。

        この人達の情熱はなんなんでしょうね。

  •  東国原さんがこんなこと言ってます。
    「蓮ちゃん、やっぱり生理的に嫌いな人が多いと思います。本当に厳しいことを言いますけど」

     私はおかっぱヘアーの黒縁つりメガネの人も生理的に駄目です。

    • >おかっぱヘアーの黒縁つりメガネ
      大木凡人氏ですかね・・・あ、TY氏か。

      「石丸構文」爆誕で、なぜか○○氏の株が勝手に上がっているそうです。「毒が無いのがいい」とか。
      意味がわかりません。

      •  石〇さん応援していたのですが・・サイ〇パスな香りがしてきました。

           石〇さん、頑張ってみてください。
              石×さんになりませんようにm(_ _)m。

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