総務省は5日、2024年版の『情報通信白書』を公表しました。このなかで注目しておきたいのが、年代別のテレビ、新聞、ラジオ、ネットの利用時間に関する調査です。これによると2023年の最新調査では、10代の新聞購読時間(平日)がついに「ゼロ」となり、全年代平均でも5.2分と過去最低を記録しました。また、ネット利用時間はさらに伸び、ついに50代においても史上初めて、テレビとネットの逆転が生じています。
目次
総務省『情報通信白書』の注目データ
総務省が毎年公表している『情報通信白書』に、近年、『主なメディアの平均利用時間』というデータが掲載されています。
著者自身が調べた限りだと、最も古いもので2013年分以降のものが確認できますが、これは年代別に、休日と平日のテレビ、新聞、ラジオ、ネットの利用時間数を調べたものです。
こうしたなか、総務省が5日公表した2024年版の『情報通信白書』に、その最新データが掲載されていました。
令和6年「情報通信に関する現状報告」(令和6年版情報通信白書)の公表
総務省は本日、令和6年「情報通信に関する現状報告」(令和6年版情報通信白書)を公表しました。<<…続きを読む>>
―――2024/07/05付 総務省HPより
該当するデータは『情報通信白書令和6年版 データ集』のページにある『主なメディアの平均利用時間と行為者率』(※白書掲載番号は「Ⅱ-1-11-11」)という図表です(図表1)。
図表1 総務省が公表したデータ
(【出所】総務省ウェブサイト『情報通信白書令和6年版 データ集』)
全年代の利用時間をグラフ化:ネット利用時間はさらに伸びる
ただし、このデータのままだと少しわかり辛いので、本稿では著者自身が入手した2013年以降のすべてのデータを使い、平日の10代~60代に限定して、メディアごとの利用時間をまとめておきたいと思います。
まずは、全年代の平日の平均利用時間が、次の図表2です。
図表2 全年代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
(【出所】過去の情報通信白書等を参考に作成。以下同じ)
これによると、すべての年代を平均したネットの利用時間数は2010年代を通じて伸び続け、2022年には史上初めて、オールドメディア3媒体(テレビ・リアルタイム視聴、テレビ・録画視聴、新聞購読、ラジオ聴取)の合計時間数を超過。
2023年時点ではその差をさらに拡大させた格好です。
テレビ視聴時間などについては全体的に前年と比べ、全体としては減少しており、それとは対照的にネット利用時間数については、2022年の175.2分から、2023年には194.2分へと増えたためです。
各年代のグラフ6枚はどうなっているのか
続いて、10代から60代までのメディアの平均利用時間をグラフ化したものが、図表3です。まずは、これをそのまま眺めてみてください。
図表3-1 10代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表3-2 20代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表3-3 30代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表3-4 40代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表3-5 50代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表3-6 60代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表から読み取れる「2つの傾向」①ネット利用時間の増長
これらの図表からは、少なくとも2つの傾向が読み取れます。
ひとつは、最近になればなるほど、どの年代においてもネット利用時間が伸び、テレビ視聴時間、新聞購読時間、ラジオ聴取時間がそれぞれ減少していること、もうひとつは若年層になればなるほどネット利用時間が多く、テレビ視聴者、新聞購読者、ラジオ聴取者などは高齢層に極端に偏っていることです。
とりわけ今回の調査で目を引くのが、50代のネット利用時間です。
2023年においては史上初めて、50代のネット利用時間が173.8分となり、テレビ(リアルタイム)視聴時間163.2分を上回ったのです。
もちろん、50代においてはテレビの録画視聴時間、新聞購読時間、ラジオ聴取時間を合わせた「オールドメディア」の利用時間数がネット利用時間数を上回っているのですが、それと同時に、テレビがネットに逆転されると、案外早く、オールドメディア全体がネットに逆転されるものです。
たとえば40代の場合、2020年に史上初めて、テレビ(リアルタイム)視聴時間がネット利用時間に逆転されましたが、その翌年には、ネット利用時間がオールドメディアの合計利用時間をあっさりと抜き去りました。30代も2019年に、20代に至っては2013年時点で、その逆転が生じています。
いずれにせよ、ネット利用時間は若年層中心に伸びていたのですが、ここにきて、40代、50代にもネット利用者が急増してきた格好です。
図表から読み取れる「2つの傾向」②新聞の衰亡、テレビの苦境
一方のオールドメディアの側は、どうでしょうか。
とりわけ減少が著しいのが、新聞です。
たとえば、10代はもともと新聞の購読時間が短く、2013年においてもたった0.6分に過ぎなかったのですが、驚いたことに、2023年の新聞購読時間に関しては、ついにゼロ分(!)となってしまいました。
また、全年代の平均値が5.2分で、これは2013年の11.8分と比べて半分以下であり、60代に関しても2013年の28分から2023年には15.9分へと半分近くに減っていることが確認できます。
おりしも『朝日新聞部数はさらに減少:新聞事業は今期も営業赤字』や『値上げなのに売上減の某中小企業は2期連続で営業赤字』などでも説明したとおり、新聞は現在、部数も売上も急速に干上がっており、世の中からは「新聞層」―――新聞に情報の多くを依存する層―――が消えつつあるとの疑いがあります。
総務省のこの数値も、新聞がいまや人々からほとんど必要とされなくなりつつあることを示唆するものといえるかもしれません。
ところが、同じオールドメディアのなかでも、テレビは意外と堅調で、全年代における視聴時間数は2023年で135分で、これは2013年の168.3分からは減っているにせよ、新聞とは異なり「半減」というレベルではありません。
とりわけ60代に関しては、テレビ視聴時間数はまったく変わっていません(2013年は257分→2023年も257分)。この10年間でネット利用時間は36.7分から133.7分へと増えたものの、高齢層にとっては依然テレビが主要な情報入手手段であることを示唆しています。
もちろん、若年層ではテレビ視聴時間は大きく減っている(たとえば10代は2013年の102.5分→2023年の39.2分、20代は2013年の127.2分→2023年の53.9分)など、年代により事情は大きく異なります。
しかし、新聞が現在、陥っているとみられる苦境と比べたら、テレビはまだまだマシだといえるでしょう。
今後の注目点は「テレビvsネット」
もっとも、テレビの視聴者が高齢層に極端に偏っているという統計的事実は、現在、社会のそこここで発生していると思われる、「ネット層」と「テレビ層」との「分断」を説明するうえでは、非常に有力なデータのひとつではないでしょうか。
それに、テレビは高齢層からの根強い支持があるのかもしれませんが、『部数や広告費の減少で読む新聞・テレビ業界の「未来」』などでも取り上げたとおり、「広告媒体」という視点からは、テレビも現在、かなり苦戦していることは間違いありません。
だいいち、デスクトップPCやノートPC、タブレット、スマートフォンなどの電子デバイスを使いこなし、常時、ネットで能動的に情報を入手する層と、テレビが垂れ流す番組で情報を受動的に入手する層では、選挙での投票行動も、日常の購買行動も、まったく異なってくる可能性が濃厚です。
いずれにせよ、新聞業界の消滅はもう視野に入ったことは間違いなく、今後の戦いの焦点は「ネットvsテレビ」に移っていくのではないか、などと思う次第です。
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偶々目に入ってきた毎日新聞の記事見出し
「新聞社の「内向きの論理」にあらがう 元朝日・外岡秀俊さんの信念」
https://mainichi.jp/articles/20240703/k00/00m/040/294000c
東京編集局長時代に直面した「官僚気質」
吉田証言の検証呼びかけるも…深い後悔
信用度ビリ マスコミが生き残る道とは
有料会員ではないので中身は読めませんが、朝日新聞社の「まとも」だったらしい人のことを取り上げるあたり、毎日新聞社も現在の立ち位置を不安視している様子。
10年前に20代だった人は今は30代なんですよね♪
そういう目でデータをみても、年代毎の変化が人の入れ替わりってだけじゃくて視聴習慣の変化を表してるみたいに思えますね♪
20代13年
TV等 150分くらい
ネット 136分
↓
30代23年
TV等 100分くらい
ネット 200分くらい
生まれた年代で揃えた分析を出生コホートって言います.
10歳ごとの10年分のデータがあるので,出生コホート別に2013と2023のデータを並べてグラフ化すると,各コホートの経年変化(視聴習慣の変化)とコホート間の比較(人の入れ替わり)を分けて見ることができると思います.現状のグラフの上下で比較すると,人の入れ替わりの影響の方が大きいように思われますね.
週刊誌見出し風の戯れ文体行ってみます。
「新聞社経営崖っぷち
手に取ってもらえない新聞にめくられるチャンスはない
あさま山荘化進む新聞編集部
同調圧力に背く記者にはリンチ制裁
報道機関が失った信頼のツケ」
どこかに居そうな悪趣味見出し付け担当のノリでネオネチ活動続けます。
「なぜネットと和解できないのか
人口減少社会が後押しする新聞廃版商品化という運命」
「巨大テックに八つ当たり
新聞記者に足りないのは稼ぐ力」
「カネを払ってもらえる理屈は変わった
限界費用ゼロ化社会における売り上げ達成までのロジック」
道理で最近多いテレビコマーシャル:
関節痛、肩こり、補聴器、インプラント、頻尿に効く漢方薬、家族葬
BSでCMをよく出している有名企業。
SBIグループ(保険関係)、SONYグループ(保険関係)、オリックス(保険関係)、チューリッヒ(保険関係)、サントリー(健康食品)、アサヒ飲料(健康食品)、太陽生命(保険関係)、日本直販(通販)、夢グループ(通販)、世田谷自然食品(通販)、ビックカメラ(子会社のBS11でよく見かける)、毎日新聞(出資しているBS11でよく見かける)
大体このループが多いですね。
BSは地上波以上にCMの金太郎飴化が著しく、CMを出稿してくれる企業がいないのでしょう。
地上波だと15秒から30秒、長くても1分ですが、BSの場合だと、2分から3分ぐらいと比較的長いCMが多いですからね。
番組自体の尺の問題もあるのだと思いますが、見ていても「こんなのに食い付く情弱がいるのか」というのもありますしね。
テレビは視聴している客層をちゃんと理解していて、情報を分析する能力は最低限そなえている…、とみることが出来る?(笑)
需要の少ない広告枠が安売りされている。
出稿者は支払う費用のわりにたくさん買えるけれど、尺の長さに見合う広告制作費用を掛けるつもりはないから、内容が相対的に劣化する。集客力の落ちたショッピングモールがチープなつくりの廉売ショップ、手相占い、エステに置き換わっていくのと同じ展開です。新聞広告はどうかな。
大学生、社会人20代の方々が20世紀は当たり前だった
通勤電車の中で新聞、雑誌、文庫本を広げるなんてのが現代では全く想像できませんね。
また、メディアの使用状況も
〇テレビで地上波、BS、ケーブルテレビ、
〇テレビで録画番組視聴 に加え
〇テレビでyoutube 、アマゾンプライム、他ネットTV(これらはどれにカウントなのか?)
〇スマホで・・・ 〇パソコンで・・・
さらに細かく分けていったらまた興味深い結果が出てきそうではありますね。
かつてはゴールデンタイムに多くのアニメが放映されていました。
それら子供向け作品は全部朝や夕方、深夜に押しやられてしまいました。
子供の頃からテレビを見る習慣がなくなれば、大人になってもテレビを見ないのは自明です。
またアニメ番組についてはこのご時世になっても地方では放送日が遅れる、そもそも放送されない、など旧態を引きずっています。
現代では外国の方が日本のテレビよりもアニメを早く見れてしまうのです。
そうなればテレビよりもインターネットでアニメを見ることになるでしょう。
やはりわざわざテレビを見なくなるのは自明です。
目先の利権を追ってきたツケをこれからテレビ局は支払い続けることでしょう。
駅田 さま
私がまだ「子供」と呼ばれていた頃の1980年代後半から1990年代前半は、アニメの再放送が夕方5時台にやっていましたが、今や情報番組に占拠されています。
「それいけ!アンパンマン」も地域によっては、子供がまだ寝ているであろう土曜日や日曜日の早朝5時台に放送されており、これも7時台から11時台にかけて情報番組を入れた弊害だと思います。
うちの子供は46時中「テレビ見るー」と言って、テレビ消すと怒るけどなー
「若い人のテレビ離れ」は疑問しかない
ちなみに、好きな番組はyou tubeの自動車動画
どうせ5年後にはテレビみたいなオワコン見てないよ、お宅の息子さん
だって、みんなテレビじゃなくてコンテンツに興味があるんだから
5年後にはテレビなんか見ずにチューナーレステレビでゲームでもやってるんじゃね?