日本を訪れる外国人は、いまやコロナ禍以前の水準を超過し、3ヵ月連続で300万人を突破するなど、まさに訪日ブームが生じている格好です。こうしたなか、ふと気になって、日本人出国者数、韓国を訪問した外国人数という2つのデータを調べてみたら、どちらもコロナ前の水準に達していないことがわかりました。しかも、訪日外国人は多極分散傾向にあります。これは、日本のインバウンド産業の、ひとつの特徴といえるかもしれません。
目次
訪日外国人、3ヵ月連続で300万人突破!
『【速報】訪日外国人数「3ヵ月連続で」3百万人を突破』でも取り上げたとおり、日本政府観光局(JNTO)のデータによると、訪日外国人は3ヵ月連続で300万人の大台を突破しました。訪日外国人数の合計をあらためてグラフ化しておくと、なかなかに印象的です(図表1)。
図表1 日本を訪問した外国人合計
(【出所】JNTOデータをもとに作成)
訪日外国人はコロナ禍の2020年3月から22年9月頃まで非常に少なかったため、グラフでは2017年から19年までの3年間と、2023年、24年の2年間を示しています。
単月としてのそれまでの過去最多だった月は、2019年の299万1189人で、ぎりぎり300万人に足りませんでした。その直後からは、韓国の「ノージャパン」運動、およびその約半年後のコロナ禍によって、結局、「訪日客300万人」を達成することができなかったのです。
それが、今年、すなわち2024年に入り、年初から過去最大ペースを更新し続けており、3月にはあっけなく史上初の300万人台を達成。以降、3ヵ月連続して300万人の大台を超えている状況です。
ジワリ進む「訪日外国人の多極分散化」
しかも、訪日外国人に関しては、その多極分散化が、ジワリと進んでいます(図表2)。
図表2 訪日外国人・国籍別内訳(2024年1月~5月vs2019年1月~5月)
国 | 人数の変化 | 増減・増減率 |
1位:韓国 | 3,250,791→3,738,703 | +487,912(+15.01%) |
2位:中国 | 3,651,814→2,407,076 | ▲1,244,738(▲34.09%) |
3位:台湾 | 2,019,764→2,404,679 | +384,915(+19.06%) |
4位:米国 | 699,633→1,046,549 | +346,916(+49.59%) |
5位:香港 | 888,859→1,025,557 | +136,698(+15.38%) |
6位:タイ | 620,611→563,677 | ▲56,934(▲9.17%) |
7位:豪州 | 289,623→400,186 | +110,563(+38.17%) |
8位:フィリピン | 248,278→336,714 | +88,436(+35.62%) |
9位:ベトナム | 217,828→284,458 | +66,630(+30.59%) |
10位:シンガポール | 166,819→241,102 | +74,283(+44.53%) |
その他 | 1,699,553→2,192,782 | +493,229(+29.02%) |
総数 | 13,753,573→14,641,483 | +887,910(+6.46%) |
(【出所】JNTOデータをもとに作成)
2019年1月から5月までの期間、訪日客のトップを占めていたのは中国人で、その人数は365.2万人でしたが、2024年の同期間において、その人数は124.5万人減って240.7万人となり、中国と韓国の順序が交代するなどしています。
ただ、それ以上に興味深いのが、その構成です。
1位から5位までの5ヵ国・地域に関しては、2019年も2024年も、中国、韓国、台湾、香港、米国という5ヵ国・地域であるという点は共通しています(ただし、中国と韓国が入れ替わるなど、細かい順位の変動は生じてはいます)。
しかし、2019年に関しては、この上位5ヵ国・地域からの訪日客数は10,510,861人で全体の76.42%を占めていたのですが、2024年に関しては10,622,564人で、全体に占める割合も72.55%へと微減しました。
その分、それ以外の国からの訪日客数が少しずつ増えている、ということです。
なにより、コロナ前は中国人入国者数が全体の4分の1を超え、圧倒的なトップを占めていたのですが、2024年に関しては、中国人入国者数は全体の17%弱にまで低下しており、しかも、それなのに入国者数がトータルでプラスになっているというのは、なかなかに印象的でしょう。
出国日本人数は低調:コロナ前の水準に戻らず
ただ、それ以上に興味深いのは、日本を訪れる外国人が急増しているわりに、日本人の出国者数については増えている形跡がないこと、さらには近隣国(たとえば韓国など)に関しては、外国人訪問者数がむしろコロナ前と比べて減っていることです。
まず、日本人出国者数に関しては、図表3のとおり、いまだにコロナ前の水準に戻っていません。
図表3 出国した日本人
(【出所】出入国在留管理庁データをもとに作成)
タテ軸のスケールは、図表1とあわせています。
これによると、2024年の日本人出国者数は、2023年のそれと比べれば増えているのですが、過去最大水準だった2019年のそれと比べれば低調です。
実際、2024年1月~5月の累計で、出国日本人は486.8万人であり、これは2019年1月~5月の累計の802.1万にと比べて60%程度、といったところでしょう。
この出国者数、円安のせいで日本人が外国旅行に行かなくなったからなのか、それとも他になにか理由があるのかはわかりませんが、少なくとも日本人の海外旅行需要が減っていることは間違いありません。
訪韓外国人もコロナ前の水準未満
続いて韓国観光公社のデータをもとに、韓国を訪れた外国人の人数を確認してみると、日本と比べてかなり少ないという点もさることながら、コロナ前の水準と比べて訪韓外国人需要は戻っていない、ということがわかります(図表4)。
図表4 韓国を訪問した外国人合計
(【出所】韓国観光公社データをもとに作成)
コロナ前のピークだった2019年だと、韓国を訪れる外国人は(月による変動こそあれ)おおむね150万人前後で推移していたのですが、2014年に関していえば、毎月の訪韓者数は100万人を超えるかどうか、といった水準です。
また、年初からの韓国入国者を集計してみると、図表5のとおりです。
図表5 訪韓外国人・国籍別内訳(2024年1月~4月vs2019年1月~4月)
国 | 人数の変化 | 増減・増減率 |
1位:日本 | 1,084,937→855,124 | ▲229,813(▲21.18%) |
2位:中国 | 1,495,238→698,178 | ▲797,060(▲53.31%) |
3位:米国 | 307,268→411,366 | +104,098(+33.88%) |
4位:台湾 | 394,095→366,439 | ▲27,656(▲7.02%) |
5位:ベトナム | 172,524→143,212 | ▲29,312(▲16.99%) |
6位:香港 | 206,591→141,157 | ▲65,434(▲31.67%) |
7位:フィリピン | 164,993→107,761 | ▲57,232(▲34.69%) |
8位:シンガポール | 65,059→94,352 | +29,293(+45.03%) |
9位:タイ | 203,380→94,183 | ▲109,197(▲53.69%) |
10位:韓国系中国人 | 331,828→82,492 | ▲249,336(▲75.14%) |
その他 | 1,051,399→954,825 | ▲96,574(▲9.19%) |
総数 | 5,477,312→3,949,089 | ▲1,528,223(▲27.90%) |
(【出所】韓国観光公社データをもとに作成)
米国人の訪問者がコロナ前と比べて34%ほど増えていて、シンガポールからの訪問者数も増えていることが確認できますが、それ以外の各国・地域からの訪韓者数は軒並み落ち込んでおり、とりわけ日本人と中国人の韓国訪問者数が減っていることが印象的です。
訪日外国人増加は日本独自の現象か
冷静に考えてみたら、富士山などの自然遺産に加え、世界最先端の大都市・東京、伝統のある京都・奈良・鎌倉、安全で快適な新幹線などの乗り物、各地の温泉・スキーリゾートなどが豊富な日本と比べ、面積で4分の1強、著名な観光地も日本と比べて圧倒的に少ない韓国が観光客数で敗けるのは当然でしょう。
しかし、日本を訪れる外国人がコロナ前と比べて増えているのに、出国日本人、訪韓外国人が減っているという統計的事実は、やはり、外国人による日本訪問の需要が強く伸びていることの裏返しといえるのではないでしょうか。
いずれにせよ、当ウェブサイトとしては、日本経済が今後、インバウンド観光を産業の柱に据えていくべきだとは考えておらず、むしろオーバーツーリズム対策としての入国税導入や、外国人向けの各種優遇(消費税の免税や外国人向けのジャパン・レール・パスなど)の見直しが必要だと考えているクチです。
しかし、少なくとも昨今の訪日外国人増加は、日本独自の減少である、という可能性が高いのではないか、などと思う次第です。
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しかし、少なくとも昨今の訪日外国人増加は、日本独自の(減少)(現象)である、という可能性が高いのではないか、などと思う次第です。
訪日外国人は中国、韓国が減ってもらえれば喜ばしいのですが。
ユーレイルパスの日本版ですね。日本は国土が狭く航空機に比べて鉄道、バス、フェリー等内海航路はとても発達しています(新幹線や航空機でだいぶん減りましたが)。全国共通の外国人旅行者向けカードがあれば良いと思います。その際は1社か2社程度に統合し、例えば首都圏に強いSUICA系と京都、奈良、大阪に強いICOCA系にされたらどうでしょう?(モバイルも可)
クレジットカード化は時期尚早。機器が今の5倍ぐらいタッチしてから反応が早ければいいですが、まだノロいです。また紛失、盗難等のトラブル時が難題です。「日本は遅れてるな(嘲笑)」で結構。ココは日本流儀でやらせてください。
日本人が海外に出なくなったのは、円安が一番の理由でしょうが、それプラス「今頃行く気にならない」が強いのでは?それよりも、他にしたい事がある。わざわざ野蛮で危険な特に近隣アジア国(台湾除く)など、カネを落とす気は無いでしょう。
追伸
もちろん、入国税導入は取ります。
>わざわざ野蛮で危険な特に近隣アジア国(台湾除く)など、カネを落とす気は無いでしょう。
野蛮で危険な所は、世界の多くの所にあるでしょう。
それよりも、同じアジア、日本と同じなんですよね。
以前、NYで鳩バスみたいな市内ツアーに参加しました。仏教的な建物に行き仏像なんかありましたが、ここは、日本人街と思う位に雰囲気は同じ。実際には、中華街だったようですが。
わざわざ、こんなアジア的なものを見るためにツアーに参加した訳じゃないので、お金損した気分がしました。しかし、その後、船に乗り、NYの摩天楼群を海上から眺め、自由の女神に行き、欧米の雰囲氣を味わって満足しました。その時、英国の若夫婦と仲良くなりました。
だから、アジアには出掛ける気がしません。ましてや、隣国なんか。
幽霊ルパス?
韓国、何も無いですからね。韓流好きの変人じゃない限り、1度行けば気がつくんじゃないでしょうか。
日本はまだまだ観光資源があり、伸びる余地はまだあります。今までが少なすぎたと思いますが。オーバーツーリズムが問題かと思いますが。
韓国は所詮「小国」であり、日本と比較してしまうのも哀れというものです。韓国の話をする時、「小国の韓国は」と枕詞を必ずつけてはなしたほうが、話が通りやすいのでは。
韓国観光公社って 「韓国系中国人」 を 「中国人」 とは別に集計しているのか。
日本からの訪韓人数も同じように集計すればいいのに。