クマの駆除で日当が最大10,300円。低報酬などに怒った猟友会が町の依頼に基づくクマ駆除を断ったところ、町は「長年無報酬で協力してもらっている地元ハンター」に出動を依頼した―――。こんな恐ろしい記事が、ネット上で話題となっています。物事にはすべて適正報酬というものがあるわけですが…。もっとも、クマ出没件数が近年、急増していることもまた事実。メガソーラーなどとの関係はないのでしょうか?
クマ出没注意
少し前から、街中でクマが出現する、といった報道を、かなり頻繁に目にするようになった気がします。
環境省が公表している『クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]』というファイルの情報によると、クマの捕殺数は近年、たしかに上昇しており、2023年においては全国で9,095頭と、2008年の1,370頭と比べて、なんと6.6倍に増えています(図表1)。
図表1 クマ捕殺数
(【出所】環境省『クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]』をもとに作成)
都道府県トップは秋田県
ちなみに2023年実績でいえば、クマの出現数、捕殺数ともにトップだったのは秋田県でした(図表2)。
図表2 都道府県別クマ出現数・捕殺数(2023年)
都道府県 | クマ出現数 | クマ捕殺数 |
1位:秋田 | 2,183 | 2,183 |
2位:北海道 | 1,422 | 1,422 |
3位:福島 | 896 | 887 |
4位:岩手 | 832 | 804 |
5位:山形 | 780 | 775 |
6位:青森 | 625 | 625 |
7位:新潟 | 433 | 432 |
8位:長野 | 421 | 362 |
9位:群馬 | 346 | 344 |
10位:宮城 | 241 | 238 |
その他 | 1,098 | 1,023 |
計 | 9,277 | 9,095 |
(【出所】環境省『クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]』をもとに作成)
これは、なかなかに驚くべき話といえるかもしれません。
なぜクマの発見・駆除件数が増えているのか、その理由については正直、よくわかりませんが、2023年に関しては東京都で6頭、神奈川県で7頭、京都府で83頭のクマが出現しているなど、クマ問題は全国化の様相を呈していることは間違いありません。
個人的には、全国各地で環境を破壊しながら設置されているメガソーラーで住処を失ったクマが増えているのではないか、といった仮説も浮かぶのですが、残念ながら著者自身は金融評論家であってクマ評論家ではないため、このあたりの事情についてはよくわかりません。
猟友会はあくまでも「任意団体」
もっとも、このクマの駆除も、一筋縄ではいかないのが現状のようです。
クマに限らず、一般にイノシシ、シカなどを含めた害獣は、地元の猟友会などが駆除を請け負うことが多いのですが、この猟友会は、べつに公的な団体ではありません。森林ジャーナリストの田中淳夫氏によれば、猟友会はそもそも任意の「愛好者団体」に過ぎません。
田中氏が執筆し、東洋経済オンラインに2020年12月1日付で掲載された『猟友会が「害獣駆除の決定打にならない」理由』という記事によれば、この猟友会は、べつに獣害対策を担う組織として存在するのではなく、基本は「狩猟愛好者の団体」です。
「まず市町村レベルの地域の猟友会があり、それをまとめた都道府県猟友会、そして全国組織の一般社団法人大日本猟友会が存在する。狩猟の適正化や野生鳥獣の保護、会員向けの共済事業などを目的として掲げている。地域の猟友会もたいてい任意団体だ」。
したがって、多くの場合、猟友会側は「公務」として害獣の駆除を行っているわけではなく、あくまでも任意団体が駆除に「協力」してくれているに過ぎません。そして、「任意団体である」ということは、条件が折り合わなければ(たとえば自治体側が提示する報酬が低ければ)、べつにこれに協力するいわれもありません。
北海道奈井江町では現在、猟友会側がクマ駆除を辞退したとして、「問題になっている」のだそうです。
交渉決裂「論点が違う」奈井江町 猟友会クマ駆除辞退問題 他方クマ対策にハンタードローン活用の自治体も
―――2024/06/11 19:00付 Yahoo!ニュースより【HTB北海道ニュース配信】
北海道のHTBが11日に配信した記事によれば、猟友会側が低報酬などを理由にクマの駆除を辞退している問題で、町は猟友会への依頼を断念したそうです。
これによると町が今年4月、猟友会側に「鳥獣被害対策実施隊」への参加を呼び掛けたものの、町から提示された日当は最大で10,300円。これに対し猟友会側は「高校生のコンビニバイトみたいな金額」と反発し、猟友会の奈井江部会は低報酬や業務内容などを理由に辞退を申し入れた――、などとしています。
その後、奈井江町側は報酬を増額する方針を示したものの、猟友会側は危険な任務であるにも関わらず報酬が低いことに加え、実施隊の要綱の問題点や人手不足などの問題が解消していないとして、最終的に交渉は決裂したのだとか。
え?「長年無報酬で協力してもらっている地元ハンター」
そして、この話題に関連し、同じくUHBが水曜日に配信したこんな報道が、ネット上でちょっとした話題となっているようです。
熊撃ちハンター”日当8500円” 地元猟友会と交渉決裂した北海道奈井江町でヒグマ目撃…住宅から約300メートル離れた場所に親子グマか 地元猟友会とは連絡つかず
―――2024/06/12 15:23付 Yahoo!ニュースより【北海道ニュースUHB配信】
これによると奈井江町で引き続きあらたなヒグマが目撃されたものの、「猟友会とは連絡がつかない」ので、警察や町職員に加え、「長年無報酬で協力してもらっている地元ハンター」に出動を依頼した、とあります。
本稿ではわかりやすく太字に変えましたが、サラッと恐ろしいことが書かれています。
「長年無報酬で協力してもらっている」。
問題はまさに、こういうところではないでしょうか。
そもそもすでに交渉が決裂しているのに猟友会側に連絡を入れるというのもよくわかりませんが、それ以上に、長年、地元ハンターをタダ働きさせているというのは、何とも恐ろしい話でもあります。何事にも「適正報酬」というものがあるからです。
もっとも、費用負担という観点からは、これを地元自治体に押し付けて良いのか、という議論もあってしかるべきでしょう。
とりわけメガソーラーとクマの関係を軽率に決めつけるべきではありませんが、もしもメガソーラーなどの強引な推進が鳥獣被害を拡大させているのならば、太陽光発電の事業者やそれを推進した国などにも、その費用を負担させるべきです。
(※余談ですが、あくまでも個人的には、発電効率が極端に悪いメガソーラーについては、その社会悪をもっと周知すべきだとも思っているクチです。)
View Comments (33)
「熊がかわいそうだ」という(都会に住む)動物保護団体が、文句を言わないのでしょうか。
愛護団体の人間からすれば、地方に住んでる土人よりプーさんの方が大事ですからね。
毎度、ばかばかしいお話を。
町:「長年、無報酬だったものに、予算をつけるとすると、その代わりにどこを減らすかで、町がまとまらない」
ありそうな。
>「熊がかわいそうだ」という(都会に住む)動物保護団体
に引取りにきてもらったら良いのではないでしょうか?
お近くにおいて、もしくは同居して、
愛してあげてください。と、思います。
ハンターって、猟銃所持許可証を持っている人のこと?
それで、お友達と猟友会を作れば、何となくプロっぽくなるのか?
ハンターも、趣味で猟銃持っていても、実際に熊を仕留めれる機会はないから、このチャンスを公式に与えられて嬉しいのか?
それなら、有志団でも作っておけば良いのかも?
そう言えば、かの有名男優、狩猟免許取って猟師になったとか?それで、山暮らししているとか。
しかも『同じ猟友会』のメンバーが隣市で役所の依頼で警察官と一緒に居て羆を駆除したらライフルの所持資格剥奪されましたからネ
道内他市町村と金額較べてもあまりにも安いし
立派な新庁舎建てるカネ有るのに、駆除した羆の運搬解体焼却処理まで込みで10300円はナメ過ぎデショ
自治体によっては駆除したら6万たら10万たら出すトコもあると云われれば、実際にカラダ張る方もバカにすんなとなりそうなモンで
猟友会にすりゃもう町と道警で勝手にヤレば? となってもしゃーないンちゃうかなぁ
知らんけど
前述のハンター氏は裁判して4年(!)がかりで所持許可の取り消しを撤回させましたけど、件の地区は猟友会メンバー70代5人で仕事もしてるそうですよって、もう役場職員が役場内に公務員猟友会でも組織したら? とか思てまいますわ
究極のタダ働き。
>「長年無報酬で協力してもらっている」
というより自治体は「無料で狩りをさせてやっている」しかも「熊胆」取り放題と思ってるんじゃないか。
無料で狩やらせてやる、なんでしょね。だから、金払う必要無い、と。
江戸時代は、鷹狩りなんて、戦の訓練とか言って殿様の趣味を、大金掛けてやってたみたいですから。
狩は、面白いのか?
近所の人は、30人位のグループで、年に何回か猪狩をやるのが趣味だと言ってました。その後の、猪鍋が美味い、とか。
「熊胆」は、未だ漢方で使われているんですかね?
熊旦、取り放題なんて言ったら、全国から、ハンター押し寄せるか?
猟友会には日当8500円(発泡で1万300円)しか払う余裕がないというわりに総予算22億かけて新庁舎建ててますよね(令和6年5月7日完成)
旧庁舎は50年経って老朽化してたので止む無しかもしれませんがなにかこう不合理を感じてしまう
庁舎で22億円は安すぎなので、地元の建設業者も
「行政との付き合いもあるので赤字を承知で請け負った。次からは断るかも」
という裏設定あるかもよ
保護司や民生委員で行政自体が味を占めちゃたんだろうなぁ。悪く言えばだけど。消防団なんかもあるけども、ほぼ無償な公務について制度の見直しがあって然るべきだと思う。
銃を撃ちたい人に、大きな獲物を撃つ機会を上げる、というつもりなんでしょうね。
形式的には新宿も田舎も同じ日本ですが,現実には田舎にはそれぞれ固有の「しきたり」という非明文法があって,それに従わないと村八分になります。田舎には,自治会,村祭り実行委員会,その他諸々の○○会という任意団体があって,その役員はしきたりに従って本人の意志と無関係に無給で努めないといけないのが普通です。猟友会も同じなのでしょう。ついでに,田舎の選挙は都会の選挙と原理が違いますから,WEBでごちゃごちゃ意見を書いても,田舎には通じません。
ハブみたいに買い取り制にすれば良いのでは?
1頭100万円ぐらいで。そのぐらいのインセンティブが必要かと思います。
ところで人食い熊はどれくらいいるのでしょうか?調べもせずに
ゴメンナサイ。m(_ _)m
日本中から、熊がいなくなる。
1頭百万円なら、今から猟師に転職する人が増えるかも。