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バス運休問題切り札として期待の「レベル4自動運転」

生産年齢人口の減少の影響もあってか、自動運転に注目が集まっています。自動運転にはまったく自動運転が実現していない「レベル0」から完全自動運転が実現している「レベル5」までの6段階があるのですが、現時点ではレベル3、そして一部地域ではレベル4まで実用化されています。ただ、レベル4についてはまだ実施個所が少ないのですが、読売報道によると政府はこれを来年度までに全国に拡大・促進する考えを示しているようです。

人手不足?路線バス運休問題

人手不足が深刻化しているとされるなかで、やはり懸念されるのは、とりわけ公共交通インフラの崩壊です。

最近だと、地方などを中心にバス路線の運休が続いているとの報道も多く、とりわけ運転免許を返納した高齢者にとっては「足」がなくなり、生活が成り立たなくなる可能性も指摘されています。

深刻な運転手不足で…路線バスが完全「日曜運休」11路線182本 利用者「免許返納したのできつい」「普段も1時間1本なのに」 必要な運転手99人に対し現状74人

―――2024/01/22 22:17付 Yahoo!ニュースより【NBS長野放送配信】

みんなの足・路線バス「運転手不足」深刻 各地で運休・減便相次ぐ 法改正で4月さらに悪化 「いまの路線なくなる」と専門家

―――2024/02/15 06:29付 FNNオンラインより【関西テレビ配信】

これらの記事によれば、「運転手不足の『妙案』はあるのか」、などとも記載されています。

経済評論的な立場からすれば、「運転手不足解消の妙案」といわれれば、「適正な報酬を払う」以外にはないと思われますが、ただ、運転手報酬の引き上げは運賃の値上げや税金の投入などを通じ、コスト増圧力をもたらすことも間違いありません。

さらにはインバウンド(訪日外国人)の急増により、京都など、一部の地域では公共交通機関が観光客により「パンク」しているのではないか、などと指摘されているのですが、運行需要が急増したからといって、バスを大幅増便するわけにも行きません。

運転手の数も、限られているからです。

自動運転のレベルとは?

だからこそ、こうしたなかで注目が集まるのが、自動運転です。

JAFのウェブサイトに掲載されている『自動運転はどこまで進んでいますか?』というページによると、国土交通省などは自動運転を6段階に分類しており、現在は「レベル3」の「条件付自動運転車(限定領域)」まで実車化が進んでいる、としています。

運転別レベルの6段階とは、「自動運転する技術がない」状態をレベル0とし、「条件なく、すべての運転操作を自動化している」状態をレベル5とするもので、JAFが引用する「2020年12月国土交通省資料」には、こう書かれているそうです(図表)。

図表 自動運転のレベル
レベル 概要 運転操作の主体
レベル0 運転自動化なし 自動運転する技術が何もない状態。 ドライバー
レベル1 運転支援車 システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う。 ドライバー
レベル2 運転支援車 システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う。 ドライバー
レベル3 条件付自動運転車(限定領域) 決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。 システム(システム非作動の場合はドライバー)
レベル4 自動運転車(限定領域) 決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。 システム
レベル5 完全自動運転車 条件なく、全ての運転操作を自動化。 システム

(【出所】「2020年12月国土交通省資料」をJAFウェブサイトより孫引き)

現時点ではレベル3までほぼ実現

まず、レベル1とは「衝突被害軽減ブレーキや、設定した車間距離を保ちながら加減速ができるアダプティブクルーズコントロール(車間距離制御装置)のようにアクセル・ブレーキ操作の支援、または車線中央付近の走行を維持する車線維持支援機能のようにハンドル操作を支援するクルマ」です。

次にレベル2とは、「レベル1の技術を組み合わせてアクセル・ブレーキ操作とハンドル操作の両方を支援したクルマ」をさします。

このレベル1、レベル2に関しては、たしかにすでに多くの自動車で実装されており、たとえば自動車を持っていない人が休日の家族サービスでレンタカーを借りたりすると、たまにこうした機能が実装された自動車に出会うこともあるかもしれません。

ただし、JAFによると、これらのレベルだと自動車がドライバーにとって代わるものではなく、「ドライバーは常にハンドルを握っている必要があり、運転の責任はすべてドライバーが負う」という意味では、従来型のシステムと変わりません(そのため「自動運転車」ではなく「運転支援車」と呼ばれます)。

その一方で、「レベル3」は「条件付自動運転車(限定領域)」と呼ばれ、JAFによると次のような特徴を満たしているそうです。

  • 高速道路などの限定された領域においては自動運転システムによる自動運転が行わる
  • ただし、走行環境によりシステムが自動運転を継続できなくなった場合は、ドライバーがシステムからの要求に応え、いつでも運転に戻れなければならない
  • 具体例としては高速道路における自動運転モード機能などがある

レベル1やレベル2と比べれば、運転はかなり楽になります。

ただし、走行環境次第では自動運転が継続できなくなることもあるため、このときにはドライバー自身が運転に戻る必要もあるなど、まだ完全な自動運転と呼ぶには不十分でしょう。

レベル4はすでに始まっているが…

さて、ここで問題となるのは、レベル4以降の実現について、です。

東京海上日動のウェブサイトの2023年4月時点の『自動運転レベル4が始まる!?』によると、昨年4月以降、このレベル4、すなわち「ドライバーがいない状態で走行する車両」を「特定自動運行」するための許可の制度が始まっているそうです。

これは場所や天候、速度などの条件が満たされることを前提に、自動運転システムがすべての運転を行うというもので、これを行うためには、たとえば次のような条件を満たす必要があるそうです。

  • 各都道府県の公安委員会に申請し許可を得なければならない
  • 特定自動運行を実施する者は、運行計画の遵守や業務従事者への教育などの義務が課される
  • 運行する地域の理解を得る必要がある
  • 運行に当たっては特定自動運行主任者を配置し、運行の遠隔監視を行う必要がある
  • 交通事故など不測の事態が発生した場合は速やかに救急や警察への通報、現場措置業務実施者を現場に向かわせるなどの対応が必要

…。

個人的な印象ですが、一部の新交通システムなどにおいて実現している自動運転を、公道で行えるようにするようなものでしょうか。

そして、レベル3とは異なり、レベル4だと「限定領域内」であればすべてシステムが操作を行うため、極端な話、その「限定領域」内であれば、その車両にお客さんを乗せて目的地まで運ぶ、といった自動運送業も成り立ちそうです。

読売報道ではレベル4を全国で推進へ

こうしたなかで、読売新聞が12日、この「レベル4の自動運転」に関し、こんな記事を配信しました。

自動運転「レベル4」全国で推進、ライドシェアにバス・鉄道事業者…デジタル行財政改革の取りまとめ案判明

―――2024/06/12 05:03付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】

読売は「デジタル行財政改革の取りまとめ案が11日に判明した」として、2025年度までにレベル4の自動運転を全都道府県で推進することなどが盛り込まれる、と報じました。

このあたり、一般発表に先立って新聞に情報を漏洩するというのはいかがなものかとは思いますが、それはともかく読売の報道によると、交通分野の柱は自動運転の事業化加速で、2025年度までに全都道府県で自動運転バスなどの通年運行事業の実施または計画策定を目指すそうです。

というのも、5月1日時点で一般道での自動運行バスの通年運行が実施されている事例は全国で16箇所に留まり、これらのうち「レベル4」の事業に至ってはたった1箇所なのだとか。

昨年4月に「レベル4」が始まっているはずなのに、どうしてここまで少ないのかといえば、やはり審査に必要な期間が11ヵ月と長いことが挙げられます。読売によると、この審査期間については2ヵ月に短縮すことなども盛り込まれたそうです。

個人的には、岸田文雄首相の政策のすべてに無条件に賛同するわけではないにせよ、こうしたデジタル化の加速・支援については、大変に良いことだと考えています。

また、読売記事ではほかにも、医療費の効率化を図るため、1枚の処方箋を繰り返し使用できる「リフィル処方箋」の活用推進なども謳っているそうですが、中高年にもなれば慢性疾患を抱えている人も多いはずですので、こうしたリフィル処方箋については是非とも推進していただきたいところです。

いずれにせよ、働き手不足は待ったなしです。

自動運転にはまだまだ課題はあるにせよ、これらの推進が、社会の電子化・電子決済の普及などとともに、こうした「生産年齢人口の減少に対抗する生産効率化手段」の切り札ととして、有効活用されていくことについては期待したいところです。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 完全自動運転にするためには、大雪、豪雨、路上駐車、(もしかして街路樹の大量の落ち葉)などでも、道路の状況が変わらないようにする必要があるのではないでしょうか。
    蛇足ですが、大阪名物の二重路上駐車、三重路上駐車は、どうなりましたか。

  • まーどーせ技術は進展してゆくんでショーけど…
    近く万博が開かれるといふ人工島の隣島、カツテ"ふしあわせ"の象徴のひとつとされた「高いビル」と大手スポーツ用品メーカーのビルの間片側二車線右側で信号待ちしていた時、左側車線を万博用の自動運転実証実験車とおぼしきクルマが赤信号突っ切ってったのを目の当たりにシマシタ
    関係者らしい何人か乗ってましたが、会話が弾んでいたのか誰も進行方向はおろか周りも視てない様で唖然喰らっちゃいました()
    自動運転コワイなぁ~と思ったオモイデでス

    …サスガにあれから時間も経っとるしもうちと安全運転でけるように仕込んどるよね? きっと??

    • >関係者らしい何人か乗ってましたが、会話が弾んでいたのか誰も進行方向はおろか周りも視てない様で唖然喰らっちゃいました()

      大阪人に、自動運転車なんか使わせちゃいけないですね。
      米国で、テスラかなんかの自動運転テスト中に、運転席に座っていた若い女性が、自動運転だからとスマホいじっていたら、自動運転車、どこかにぶつかったというニュースがあった。
      大阪人みたいなのは、あちこちにいるらしい。

      • さすがNATTOしぶとおまんな
        てなハナシは置いといて

        東京オリパラでも自動運転車と選手の接触(事故やなソレ)が報じられとりましたからな、今般のは「路線バス」の穴埋めがメインテーマなだけに選手村などより更に諸要素増える一般道に自動運転はだいぶ段取りしんどおまっせ
        まー『人手不足』をニシキノミハタにナシクズシオシキリ方向ナンデショーけど、ナンゾあったトキの責任の所在と被害対応はよっぽど詰めとかんと結局最現場の下っぱと被害者がワリ喰うヤラシィハナシになんでナ
        クワバラクワバラ…知らんけど

  • デジタル化を推進するのは良いのですが、そこに中国企業が入ってくるのはまずいでしょ。

  • わけのわからない外国人導入に比べれば働き手不足対策としては王道でしょう。

    ただ、「並の人間の運転より安全な乗り物を提供する」条件は譲れない。

    限定条件として雪が降ったら運休。豪雨、歩きスマホの突撃や道路に陥没があったら停止。でよいと思います。夕日が眩しくても走ってほしいが無理なら運航停止でも可。(運用で逃げられるか)

    何か太陽光発電みたいですが。

    • 道交法上も人、緊急車両に次ぐ優先順位を与え、自転車、一般車等は道を譲る。接触時は100%自転車、一般車の過失とする等整理が必要かな。

  • 別のスレでも書きましたが、これは
    「ハードウェアの問題ではない」
    「社会合意さえあればOK」

    田舎では社会合意が成立している、という意味だと思いますけどね。

    年間数万人(今は数千人)の交通事故死亡者があったとしても、人間が運転する自動車の運行を認めて来たのがこれまでの日本です。

    年間n人の事故死者があったとしても、
    「バス無しよりはマシ!」
    と田舎では判断したいうことかと。

    絶対値での是非ではなくて、想定値で
    「こういうコスパだけど、なぜ導入するのか?/しないのか?」
    ですよね。

  • バスがレベル4の運転をするためには、道路からバス以外を排除すれば良い
    ゆとりーとらいん名古屋

    • 半径5キロメートル以内に、タワマン建てまくって、そこに地域の全員を住まわせればよい。そうすれば、バスも要らなくなる。