「外遊」は「外国に遊びに行くこと」ではありません
首相、閣僚、国会議員らの「外遊」を「外国に遊びに行くこと」だと勘違いしている人というものは、一定数は存在するようです。ですが、さすがに岸田文雄首相がゴールデンウィーク中に3泊6日という強行軍でフランス、パラグアイ、ブラジルを訪れたことを「税金の無駄遣い」、「成果が何もない」などと決めつけるのはいかがなものでしょうか。そのようなコメントをネットに書き込むこと自体、不勉強・不見識という自身の恥を世間にさらしているようなものなのですが…。
エッフェル塔物見遊山事件
昨年夏、自民党の松川るい・参議院議員ら御一行様が「研修」などと称してフランスに出掛けた件が、ネット上で「大炎上」した、という「事件」がありました。
これについては当ウェブサイトでもいくつかの報道をもとに取り上げましたが(たとえば『保守層を激怒させる?松川るい氏「ディナークルーズ」』等参照)、調べれば調べるほどに、なかなか強烈な話題だったことは間違いありません。
というのも、一部メディアが報じた旅程を見ると、明らかに仕事時間よりも観光時間の方が長いようにも見受けられるからです。
もちろん、この松川氏らの海外旅行は自費と自民党の党費で賄われていたようであり、「税金で物見遊山をした」という批判自体は当たりません。
しかし、その自民党の党費の一部は政党助成金ですので、広い意味では税が財源ですし、また、公費で雇われている外務省職員らが「子守り」などに駆り出されているわけですから、「国民に一切負担をかけていない」、というわけではないのです。
物見遊山の問題点
当ウェブサイトでは、「ただでさえ、自民党に対し逆風が吹いているなかで、かつ、(当時の)安倍派に所属している議員という立場で、エッフェル塔の下で能天気にポーズを決めた写真(図表1)をSNSにアップロードする無神経さ」に焦点を当てた次第です。
図表1 例の写真
とりわけ当ウェブサイトで指摘した、この松川氏ら一行の「事実上の物見遊山」騒動の問題点は、こうです。
- 国会議員という立場にある者の特権は、外国の事情を(良い面、悪い面含めて)きちんと学び取り、それを日本の現状に合わせて応用し、高度な政策立案に役立てること
- そもそも自民党所属の国会議員であれば、ウクライナ戦争の影響を含め、欧州のエネルギー事情を視察したうえで政策当局者と意見交換することもできたはずだし、フランスに行くならば暴動の原因と移民政策を探ることもできたはず
- しかし、その国会議員らが、なんだかよくわからない目的のために欧州くんだりにでかけ、先方の国の課長補佐レベルの人などからレクチャーを受け、余った時間を「セーヌ川ディナークルーズ」や「シャンゼリゼお買い物ツアー」などに充てているのを見ると、自民党支持層ほど失望することは当たり前の話だ
- 今回の旅行に参加した国会議員らに対してもまた、「あなたたちはそれでも自民党の国会議員ですか?」、「そんなことをしている暇はあったのですか?」と問い詰めたいと思う有権者は多いのではないか
…。
岸田首相の弾丸外遊を批判する人たち
この点、誤解していただきたくないのですが、国会議員であれ、地方議員であれ、バカンスを取って遊びに行くこと自体は否定される行為ではありません。
実際、このゴールデンウィーク中にも某政党の党首が東南アジアの某国に出掛け、連休明けに「ゴーグル焼け」のような状態で登院したということがSNS上で話題となっていますが、これもじつは「バカンス旅行」だった疑いが生じているようです。
ただ、当ウェブサイトが当時問題視したのは、それを「自民党の議員が」やってしまったことの軽率さです。
今後、首相や閣僚クラスが外遊を行ったとしたときに、一部では「どうせ首相も物見遊山をしに行ったんだろ?」といった反応が出て来ることを、個人的には非常に危惧していました。
結論的には、こうした危惧は現実のものとなりつつあるようです。
岸田総理の3泊6日の超弾丸外遊に世間では厳しい声「俺たち円安で海外旅行も……」「海外なんて行ってる場合か」
―――2024/05/14 06:51付 Yahoo!ニュースより【ABEMA TIMES配信】
アベマタイムスは14日、岸田首相がゴールデンウィークを使ってフランス、パラグアイ、ブラジルと3泊6日の外遊を行ったことについて、こう述べています。
「世間からは『俺たち円安で海外旅行もケチケチ旅行だったのにうらやましい』『海外なんて行ってる場合か』といった厳しい声が上がった」。
正直、この「外遊」という単語を「外国に遊びに行くこと」だと勘違いしている人が多いのは本当に残念ですし、その原因の一端がメディアにあることも事実ですが、個人的にはこの「エッフェル塔騒動」がかなり響いている可能性があるのではないか、と推察しています。
昨年のエッフェル騒動も響いている可能性も…
もちろん、「3泊6日」で「欧州と南米に行く」という日程の時点で、岸田首相が「遊びに行っているわけではない」、ということくらい、想像がつきそうなものです。普通に考えて、3泊6日の日程でセーヌ川クルーズなどやっている暇などありません。
ただ、このアベマの記事に関しても、一般読者からと思しきコメントを読んでいると、「政治家の外遊は税金の無駄遣い」だの、「外遊したにしては国民に対してどんな成果があったのかという報告もない」だのといった苦言が相次いでいます。
やはり、政治家らがエッフェル塔のふもとで変なポーズで写真を撮ってSNSでばら撒いたことが、「絵的に」、外遊という単語を印象付けてしまった可能性がかなりありそうです。
もっとも、それと同時に「税金の無駄遣い」だ、「外遊の成果の報告がない」だといった発言をする人は、情報リテラシーが非常に低いことも間違いありません。
たしかに報道等を眺めていると、岸田首相や閣僚らのゴールデンウィーク中の外遊については、「税金を使って物見遊山に出掛けた」という印象を抱く人も多そうですが、その理由は、「メディアが肝心なことを報じない」からでもあります。
ここで首相官邸ウェブサイトの『フランス、ブラジル及びパラグアイ訪問等についての内外記者会見』や外務省ウェブサイトの『岸田総理大臣のフランス、ブラジル、パラグアイ訪問』などを見れば、その成果の詳細がすべて公開されているため、少なくとも政府が首相外遊の成果を「何も報告していない」、というのは事実誤認です。
というよりも、せっかく目の前にインターネットとつながっている箱があるのですから、外遊の成果があったのかなかったのかについては、ちょっと調べたらわかりそうなものでしょう。この手のニューズ・ポータル・サイトの怖いところは、コメント者の無知が世界中にさらされることにあるのかもしれません。
これでも「成果なし」と断言できるのですか?
ただし、政府のウェブサイトの公表内容はわかりやすいとは言い難いものですので、ここではもうひとつ、こんな図表を紹介したいと思います(図表2)。
図表2 岸田首相のフランス、ブラジル、パラグアイ訪問の成果
(【出所】首相官邸X公式アカウント)
図表の出所は、首相官邸X公式アカウントが発信した、次のポストです。
「岸田(首相)は何のためにゴールデンウィークを使って外国に出かけたのか」といえば、その答えは「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く姿勢を毅然と示すため」、です。
フランス大統領・首相らとはウクライナ情勢について意見を交わしたほか、当然、台湾有事についても検討したでしょうし、パラグアイと言えば「知る人ぞ知る親台湾国家」でもあります。そしてブラジルは南米最大の大国でもあり、今回の南米訪問では多数の経済ミッションも帯同しています。
以上を踏まえたうえで、「岸田首相の外遊は税金の無駄」と書き込んだ人物にもう一度聞きたいのですが、はたしてそれでも「岸田首相の外遊は税金の無駄」だというのでしょうか?3泊6日という強行軍で、岸田首相がその合間を縫って物見遊山に興じていた、とでもいうのでしょうか?
本当に、意味がわかりません。
ちなみに、本当に仕事をしている政治家・閣僚であれば、国会日程がないゴールデンウィークにこそ、普段行けない外国に積極的に行きたがるのは当然のことです。
首相や閣僚、国会議員の仕事は国を背負っているものであり、こうした観点からの外国訪問を、私たち一般庶民の海外旅行と同列で論じること自体が不適切でもあります(くどいようですが、国会議員のなかには物見遊山やシュノーケリングに興じている人もいるようですが…)。
いい加減、最低限の事実関係すら調べずに、マスコミ報道を受け売りに「税金の無駄遣い」だとかいう決め台詞をインターネット空間に書き込む吐くことが「格好良い」と思うことはやめた方が良いかもしれません。
それこそまさに、そのコメント主自身の無知・不見識の証拠ではないか、などと思う次第です。
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結局のところ、所詮、人は感情の生き物なのだから、「何をした」ではなく「誰がした」でしか判断できないのではないでしょうか。(結論、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」)
ネクストキャビネット
政権を取ったらこの面子を大臣にします。
そうした立場の議員が血税ごっつあんと言って外遊を非難しています。
政権を取った暁には外遊を辞めるのでしょうか?
日頃紛争は外交で解決を言っているにも関わらず外交を否定するのはどういう了見なのでしょうか?
尽くリベラル野党は政権を任せる訳にはいかないと思った次第です。
政権を批判するのはもっともなことだと思いますが
論理展開などがあまりに稚拙過ぎます。
野党やマスゴミが稚拙仕草を続けるのは、ソレだけ国民有権者を"バカにしている"証左やもシレヤセン
マスメディアでも軌道修正を試みているげなトコロも有るような気がしないでもありませんので、なんとはなく変化を感じる気がしないてもない、気がするのも、インターネットを通じた"こーどじょうほうかしゃかいのしんてん"の功なるところかもシレマセン(ナラ罪は??)
コロナ禍の時も派手に全国移動していたのはクォリティーペーパーを含む既存マスコミの報道を見る限り野党の方々が圧倒的で、しかも全国を飛び回って政権与党の悪口だく言ってました(報道による)。
コロナ禍真っ最中にコロナの話でもないに聴衆集めて大集会。
かと思えば既往症を理由に国会登院を拒否したり。
緊急時に役にたたない上に迷惑かけて悪名を売る議員は要りません。
>最低限の事実関係すら調べずに、
自分たちがそうだ(だった)から、岸田首相もそうに違いない。
野党・メディア面々の主観にもとづく『自己投影』なのでは?
>「外遊」という単語を「外国に遊びに行くこと」だと勘違いしている人
旧民主党の面々はマジで勘違いしてたから文字通りの物見遊山に出かけたのでしょう。当時口蹄疫で外遊などしてる暇など無かったのに。その民主党の流れをくむ立憲だからこそ自己投影的な難癖を付けているのでしょう。
>「岸田首相の外遊は税金の無駄」と書き込んだ人物
キシダガーにどれだけ論理的な説明をしても無駄でしょうね。
「約50件の協力文書に署名」
これを読んで、ポッと行っただけの首相がそんな安請け合いするのか!!
とか言い出しそうな層がいるだろうけど、そんな文書はとっくに詰め詰めに詰められていて、署名するだけの状態になっているだけなことはある程度社会生活を送っていればわかりそうなものですがね。
投稿者「遊!?外遊はけしからん!! 」
遊撃手「……」
遊牧民「……」
さて真面目な話、岸田総理が遊びに行っていたというのであれば、応対した各国も「受け入れて付き合って遊んでた」ことになります。大変無礼ですね。
「遊」は、「目的に応じて自由に動く」という意味もあるから、目的を達成するために激務である場合もあるんですよね。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/kanji/%E9%81%8A/
日本人なら誰でも知ってる中国の物語「西遊記」とかもあるね
今回の「外遊」は、中国が影響力の拡大を狙っている中南米を西側につなぎとめ、何故かロシアに宥和的なフランスの勝手な振る舞いを牽制するという意味で、大変有意義な「外遊」だったと思います。
アメリカも、日本のこのような努力に対しては心強く感じるのではないでしょうか?
日本の外交も、アメリカ追従型から大きく変わりつつあるように感じます。
普通の頭を持った大人なら、この時期に、3泊6日の強行軍で、この余り関係性の無い3カ国に、何故行ったのか?と考える。
国会が休みになるから、連続した日にちが取れる。
フランスは、最近、更に中国と接近している。
ブラジル、パラグアイは、大統領が代わった。
パラグアイは、南米唯一の親台湾国。
親中的なフランスの後に、パラグアイ。
フランスへの当てつけか?とか。
まさか、バイデンさんに言われたから行ったのか?とか。
いろいろ考えると面白い。裏で何が動いているのか?と。
遊びに行くなら、こんな強行軍で、こんな取り合わせで行かないだろうことは、普通に分かること。
首相の外遊は、裏で、どんな意図があるのかを考える、頭の体操になる。
所で、松川るい氏のあの写真を見て感じたのは、外遊にかこつけて、エッフェル塔の前であんなお上りさんみたいなポーズで写真撮るなんて、今までフランスに自費で旅行に行けなかったのか?、意外とこの人、貧乏?可哀想だな、ということ。
フランスは昔から八方美人の蝙蝠外交しているいて、それを「悪い事」とも思ってないので
その手の当て付けは気にせんだろ
中国と仲良くして、その裏で台湾とも関係強化は普通にやっている
素晴らしい考察です。
しかしながら、コウモリ外交しなきゃならない程に、自分が強く無いと思っているという実態があるということですね。
ドイツに易々とマジノラインを破られる程の弱さ。
八方美人外交をやっていても、自力が無きゃ足下をいつも見られている。
お隣のスイスと真逆です。
”外遊”を文字通り”海外に遊びに行く”と勘違いしている人はどうしようもありません。
「そういう意味の単語じゃないですよ」と言っても聞き入れてくれるケースは
見たことも聞いたこともなく、「うるさい黙れ(適当なレッテル)はブロック!」と
言う反応か、あるいは完全黙殺しているかのどっちかです。
”税金の無駄遣い”は一応あり得ない訳ではないのですが、かと言って金を使わない
外交などもっとあり得ない。お高い接待も、金持ちがもっと儲ける為の商談も、
軍事力を背景にした脅迫ですらも、結局はどれもこれもカネ、カネ、カネ。
「国民の生活が苦しいんだからそっちの金を回せよ!」は気持ち的には分かるのですが、
余程の緊急時(コロナ過や地震など)以外は国民に金を配るのは
ただの人気取りにしかならない。教育やインフラなど”リターン”が見込める
”投資”以外はそうそう国民に金を使ってはならないのが政治と言うもの。
ハッキリ言って、「生活保護」なんて制度がある現代日本は人類史の99%と
比べると超がつく程恵まれているんですけどねえ。ほんの100年前は、どれほどの
人間が「貧乏だから」と言う理由だけで死んでいったのか……
でも「海外に金をばら撒くな!国民に配れ!」と言う人達にそれを
受け入れるのはとても難しいのでしょうね。
私的に政治関連は興味が薄いので、XのTLに流れてきた以上の情報収集はしてないので、誤情報かも知れませんが、シュノーケリングに興じたかも知れない某党首のゴーグル焼けした顔ですねw
(勿論、ゴーグルを付けてタイの各地を積極的に廻り、被災地復興の情報収集を可能性も微粒子レベルで存在するかも知れませんが…どんな世界線の活動だよっw)
https://twitter.com/donsokusan/status/1788862203854221691
別に私生活や個人趣味まで滅私奉公で動けなどという批判をするつもりは毛頭ないです。
ただ、これに文句をつけない(養護する)のであれば、外交の仕事で海外を回っている活動に文句をつけることは普通は考えられないです。
自分の脳内のスタンダードがブレブレでなければ相容れないです。
普段から、まず先入観で「敵は悪」と決めつけてから叩くロジックを後づけしてる人々はこういうダブスタによるブーメランが頻発するのだと思いますね
春のアメリカ訪問の際 岸田はエコノミークラスじゃない、すべて送迎がある、すべてセッティングされてる、だからそこからみても年収200万円で十分だ、コメントを見たことがあった。
そのコメントの方の世界の基準なんでしょうね。。。
驚きました。