「再エネ普及を妨げる出力制御が増えている」。こんな記事に関して興味深いのは、X上でこの新聞記事に対し、科学的見地・経済的見地からの冷静なツッコミが殺到していることではないでしょうか。科学的・経済的な話題に関する記事になると、いまや、一般人の方が新聞記者よりも圧倒的に優れた知見を持っているという時代なのかもしれない、などと思う次第です。
本稿は、ちょっとした「小ネタ」です。
大手メディアに、こんな記事が掲載されていました。
「再エネの出力制御が増えている」、という記事です。
実際の新聞記事のリンクを読むと、リード文にはこんなことが書かれています。
「太陽光や風力などの発電事業者に対し、一時的な発電停止を求める『出力制御』が増えている。本年度もゴールデンウイークなど電気の消費量が減る春や秋を中心に、東京電力エリアを除く全国での実施を見込み、年間約58万世帯分の電気が無駄になる計算だ。このまま出力制御が広がると、再エネ普及の足かせになりかねない」。
この記述をそのまま読むと、「出力制御」が「再エネ普及の足かせになる」、という趣旨の指摘ですが、果たしてこれは正しいのでしょうか。
結論からいえば、これは正しくありません。
たとえくどくても何度でも指摘させていただきますが、『【総論】電力系統の維持に適さない太陽光発電の問題点』などを含め、当ウェブサイトではこれまで何十回、いや、何百回となく指摘してきたとおり、「出力制御」は太陽光発電などの欠点に起因する、やむを得ない措置だからです。
そもそも電力系統を維持するためには、電力の需要と供給を一致させる必要があります。どちらかが崩れたら周波数が狂い、最悪の場合、広範囲な停電やブラックアウトなどにつながることもあります。精密機器が壊れたり、医療事故が発生したりするかもしれませんし、社会への影響はシャレになりません。
しかし、たとえば太陽光発電の場合、天気が悪くなれば発電量は減りますし、逆に天気が良すぎると発電量が増え過ぎたりすることもあります。
「出力制御」とは、わかりやすくいえば「電力を捨てること」を意味しています。あるいは、「太陽光発電所で作られた電気の買取を電力会社がお断りする」、といった考え方です。送電容量を超えるわけにもいきませんし、需給均衡を図ることも重要だからです。
その際に適用されるのが「優先給電ルール」です。
優先給電ルール
- 火力発電(石油、ガス、石炭)の出力制御、水力発電の揚水、蓄電池への活用
- 他地域への送電(連系線)
- バイオマス発電の出力制御
- 太陽光発電、風力発電の出力制御
- 長期固定電源(水力発電、原子力発電、地熱発電)の出力制御
(【出所】資源エネ庁等)
これによると、電力が増え過ぎたときには、まずは①発電量の人為的なコントロールが容易な火力発電で発電量を抑えることで出力を制御し、あわせて水力発電(揚水発電)の揚水、さらに蓄電池などへの蓄電を行って調整を図ります。
ただ、それでも電気が余る場合は、続いて②連携線を使って他地域に電力を送ることで対応します(上記①の手段よりも②の「他地域への送電」の優先順序が低い理由としては、遠方への送電はロスが大きいことが考えられます)。
それでも余るときには③バイオマス発電の出力を制御し、太陽光や風力の調整はそのあとの4番目に行われます。また、原発の制御などが最後に置かれている理由は、長期固定電源はいったん止めると運転再開まで手間がかかるなどの事情によります。
すなわち、太陽光発電の制御が増えるのは、太陽光発電所の発電量が増え過ぎているのが原因であり、そもそも太陽光発電所が世の中から必要とされていない証拠でもあります(というよりも、再エネ賦課金の存在を前提としている時点で、コストが高すぎるのですが…)。
ただ、それ以上に面白いのは、X上でこの新聞記事に対し、科学的見地・経済的見地からの冷静なツッコミが殺到していることではないでしょうか。
科学的・経済的な話題に関する記事になると、いまや、一般人の方が新聞記者よりも圧倒的に優れた知見を持っているという時代なのかもしれない、などと思う次第です。
View Comments (31)
>このまま出力制御が広がると、再エネ普及の足かせになりかねない
出力制御の要因は、「身の丈に合わぬ再エネ(太陽光)普及によるもの」なのにね・・。
東京新聞がたくさん電気使って出力制御を減らすことに貢献しては如何か?
とポストしかけたけど、いろんな意味で環境に悪そうなので止めました♪
いつもお世話様です。
>東京新聞がたくさん電気使って出力制御を減らすことに貢献しては如何か?
>とポストしかけたけど、
「輪転機とか無駄な電気使うな」、言うたな!
「新聞刊行自体が無駄」、言うたな‼️
新宿会計士様
コメントありがとうなのです♪
それはそうとして、東京新聞のポストもあれだけど、そこで取材に応えてる龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)ってどんな方なのでしょうね?
環境経済学ってのは、発電方式による得手不得手なんかはいっさいないって前提で議論を組み立てる学問なのかな?って思ったのです♪
原発反対派の文系の人ですね。
無駄な発電はすべきではない?じゃあ日本国内の太陽光パネルを破壊すればいいですね。
危地田「買電は夜間のみとする」
東京新聞ではなく北京新聞なのでは?それか南京新聞かな?
トンキン新聞は偏左値が高い。
出力制御=電気の押し売りお断り
う~む、どこぞの電波や紙と同じような…。
制御じゃなくて「義務」にすべき。
発電事業者が要求に充たない供給しか出来ない時は莫大な違約金。
東京新聞に限らず、ほとんどのオールドメディアは馬耳東風を貫いていますからね。
どれだけまともなツッコミを連発されても、見ざる聞かざる言わざるを維持するでしょう。
早く彼らが廃刊せざるを得ない時代になって欲しい物です。
そうすればこのエネルギー問題も「ペテン」が通用しなくなって、
劇的な進展を見せてくれそう。
FIT (固定価格買取制度) の買取価格が引き下げられた時も、同じような記事を見た記憶が・・・左翼ってホントに市場原理が嫌いなんですね。
再エネが至上であり目的でありその邪魔となるものは白くても黒というような前提が無ければ出るはずのない記事ですね。あるいは再エネを生業にしている者の目線。
日本国の産業を発展促進する、国民生活を安定させる、次いで地球環境を保全する。エネルギー政策の"目的"はこれらにあると考えます。本件のような考え方は、それらの目的を忘れて、手段のみを追い求める愚行(経済に悪かろうが環境に悪かろうが何が何でも再エネ)としか思えません。
しっかし一事が万事というか。
・戦争をしたほうがまだマシな状況であっても不戦を叫ぶ
・犯罪の実績や傾向が明らかでも難民もどきを徹底保護
・対立が長く実利も無い隣国との友好に固執する
・以下枚挙に暇なし
いずれも人々がよりよく生きるための手段でしかない部分に拘泥、その美辞麗句のためなら損害を厭わず。健康のためなら死んでも良い、みたいな連中ですね。
主張が愚かすぎて本気とは思えず工作員としか思えない。しかし工作員にしては無能すぎる。彼らを評価する時はいつもこの矛盾に悩みます。
悪党に踊らされるルサンチマンを抱えた無知〇昧が適切かと。