宮城県が4月1日に導入した「再生可能エネルギー地域共生促進税」の試みは、興味深いところです。これは0.5ヘクタール以上の森林などを開発して再エネ発電設備を設置した場合、一定要件を満たしていない場合には営業利益の20%を税金として徴収する、というものだからです。ただ、こうした宮城県の試み自体は「自治体レベルの対策」としては大変興味深いものではあるものの、やはりそもそも論として、国策として再エネを推進するということ自体の妥当性については疑問です。
こんなにある!太陽光発電の問題点
「太陽光発電といえば、欠陥だらけだ」。
この点については、改めて指摘するまでもないでしょう。
『【総論】電力系統の維持に適さない太陽光発電の問題点』などを含め、これまでに当ウェブサイトでは何度となく指摘してきたとおり、そもそも太陽光発電には、少なくとも大きく3つの問題点があります。
①そもそも安くない
まず、太陽光発電は、そもそも安い発電手段とはいえません。
パネルなどの設置にかかる費用だけでなく、中小規模事業者などによるずさんなパネル設置に伴う土砂流出や火災などのリスク、それらに対応するためのコスト、将来の破棄費用コストなどを考えると、原子力発電などと比べて決して安価とはいえません。
したがって、「安いから」というだけの理由で太陽光発電を推進するのだとしたら、それは政策として大きく間違っている、ということです。
というよりも、各家庭・事業所に決して安くない負担を強いている再エネ賦課金制度(『なぜ石油価格が下がると再エネ賦課金の額は増えるのか』等参照)を使わないとペイしないという時点で、太陽光発電が経済合理性に反していることは明らかです。
電力系統の維持に障害:環境にも悪い
②出力が安定しない
次に指摘しておくべき問題点は、太陽光発電は出力が安定せず、人為的にコントロールすることもできない、という点です。
電力系統では供給(発電)側と需要(消費)側の電力量がぴたりと一致していないといけません。周波数が狂うからです。しかし、太陽光発電は季節、時刻、緯度などの条件だけでなく、その日の天気などによっても出力が大きく変動するという性質があります。
このため、太陽光発電の割合が増え過ぎると、給電側としてはその瞬間の天候から発電量を予想しながら電力供給を微調整しなければならず、「需給バランスの一致」という目標を達成することが難しくなるだけでなく、「電力を捨てる」という問題にも直面します。
③環境に優しくない
そして、もっとも皮肉な点のひとつが、そもそも太陽光発電が「環境に優しくない」ことです。
「太陽光発電は地球温暖化ガスを排出しない」といわれますが、それはあくまでも「発電する際には」、という話であって、パネルを生産したり、運搬して設置したり、あるいは将来廃棄したりするときも含めて、地球温暖化ガスを排出しない、というわけではないでしょう。
太陽光発電を再エネ賦課金で推進するには無理がある
しかもパネルを設置することで山林の保水能力や光合成能力が低下し、却って地球環境を悪化させることがあるほか、近年、相次いでいるパネルや蓄電施設などの火災も問題です。それも、太陽光発電関連施設を巡る火災は多くの場合、鎮火が困難です。
実際、先日の『メガソーラー火災で燃え尽きるまで消火できない蓄電池』でも取り上げたとおり、たとえば鹿児島県伊佐市のメガソーラー施設の蓄電池置き場で発生した火災では、水を掛けたら爆発・炎上するという蓄電池の性質上、消防隊も燃え尽きるまで手を出すことができなかった、という「事件」がありました。
こうした点を踏まえると、いいかげん、再エネ賦課金制度で国民に負担を強いながら、太陽光発電を含めた、決して安くもなく安定的でもなく、さらには環境にも優しくない再エネ発電の推進については、そろそろ抜本的に見直すべきでしょう。
もし「国策として」推進するならば、その財源は「再エネ賦課金」ではなく、国会で環境税の仕組みを新たに立法化するなり、国債を発行するなりして充当すべきであって、しかも政策の費用対効果については厳密に監査するという仕組みが必要です。
宮城県の再エネ地域共生促進税
こうしたなかで、ちょっと興味深い取り組みがあるとしたら、宮城県のこんな話題ではないでしょうか。
再生可能エネルギー地域共生促進税について
―――2024/03/14付 宮城県HPより
宮城県によると、同県では「再生可能エネルギー地域共生促進税」という新たな法定外普通税が創設され、4月1日から施行されました。
これは0.5ヘクタールを超える森林を開発し、再エネ――具体的には太陽光、風力、バイオマス――の発電設備をを設置しようとする場合に、その発電出力に応じて設備の所有者に課税する、というものです(※2024年3月31日までに稼働済みの施設などは対象外)。
(※なお、「一般社団法人環境金融研究機構」の2023年11月19日付記事によれば、税率は営業利益に対して約20%だそうです。)
また、税制自体は2029年4月1日に失効が予定されていますが、失効前に課税の在り方を見直すとされており、制度延長もあり得るのだそうです。
ただし、「地域との共生が図られていると認められる場合」などには非課税としており、いわば、再エネ発電事業者にとっては、地域との合意形成にあたって丁寧な説明や地域住民との対話、環境への配慮、さらには地域がメリットを感じられる方策等について検討することが必要となった格好です。
試みとしては興味深いが…
ちなみに非課税の認定を受けるためのプロセスについては、宮城県のウェブサイトに掲載されたパンフレットの2ページ目なども参考になるでしょう(図表1、図表2、図表3)。
図表1 非課税となる事業を目指すには
図表2 認定までの手順
図表3 地域の合意形成等にかかる基本的な考え方
(【出所】いずれも宮城県ウェブサイト)
こうした課税の考え方、大変興味深い取り組みです。
正直、太陽光などの再エネ発電施設を巡っては、各地でトラブルが頻発していたなかで、一定条件を満たさずに設置された場合には営業利益の約20%を税金として没収されるのを回避するためには、業者としても地域との合意形成を図らざるを得ません。
正直、国や政治家は一体何をしているのか、という思いがないわけではありませんが、こうした宮城県の試みは、太陽光発電を含めた再エネ施設を巡る立地の適正性を確保するとともに、不適切な施設の設置コストを事業者に転嫁しようとするものであるという意味においては、非常に面白いといえます。
ただ、こうした宮城県の試み自体は「自治体レベルの対策」としては大変興味深いものではあるものの、やはりそもそも論として、国策として再エネを推進するということ自体の妥当性については疑問です。
やはりそもそも論として、このような施設をこれ以上日本各地に設置するのが国策として正しいとも思えません。再エネを巡ってはどこかの段階で、抜本的な制度改正が必要ではないか、などと思う次第です。
View Comments (1)
うーん、太陽光発電だけじゃなく原子力とか風力とか水力とか、その他諸々に拡充出来そうな気がしてきますね