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維新が「最大野党」目標を明確化

「次の選挙で維新が立憲民主党を獲得議席数で上回ることができるのか」。これについては思考実験としてはなかなかに興味深いところです。立憲民主党といえば、マスコミからは「報道しない自由」で守られている反面、ネット層からはかなり嫌われているようであり、次の選挙で維新・立民の逆転はあり得る、などと期待する向きもあります。ただ、現実の小選挙区での選挙結果分析を見るに、事態はそこまで単純でもなさそうです。

立憲民主党は「最大野党」、なのだが…

立憲民主党といえば、最大野党です。

わが国の憲政史上で見ても、あるいは諸外国の事例などで見ても、最大野党といえば「与党に代わっていつでも政権を組成する立場」でもあるとともに、「与党とともに議会制民主主義を健全に運営する主体」としての役割を果たすことが期待される存在でしょう。

ところが、現在の立憲民主党が、その「最大野党」としての役割を果たしているとは言い難いのが実情です。

立憲民主党、あるいはその前身の民進党・民主党時代も含め、2012年以降に関しては、残念ながら自民党を圧倒する議席を得たことはありません。これについては大型国政選挙(衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙)について眺めていくと明らかでしょう。

衆院選・民主党と立憲民主党の獲得議席数
  • 2005年…480議席中113議席(23.54%)
  • 2009年…480議席中308議席(64.17%)
  • 2012年…480議席中*57議席(11.88%)
  • 2014年…475議席中*73議席(15.37%)
  • 2017年…465議席中*54議席(11.61%)
  • 2021年…465議席中*96議席(20.65%)

(【出所】総務省。2017年以降が立憲民主党)

2012年以降、選挙で勝てなくなった最大野党

2005年以降のデータで見ると、衆院選に関しては2012年以降、民主党・立憲民主党の獲得議席数は100議席を超えたことがありません。

ちなみに「マスコミ偏向報道」で政権を奪取した2009年の選挙では、480議席中、じつに308議席を獲得していました。また、2005年は「小泉郵政解散総選挙」で惨敗したとされるわりに、旧民主党は100議席台を取っていたのも印象的です。

参院選・民主党、民進党、立憲民主党の獲得議席数
  • 2007年…121議席中60議席(49.59%)
  • 2010年…121議席中44議席(36.36%)
  • 2013年…121議席中17議席(14.05%)
  • 2016年…121議席中32議席(26.45%)
  • 2019年…124議席中17議席(13.71%)
  • 2022年…124議席中16議席(12.90%)

(【出所】総務省。2016年は民進党、2019年以降は立憲民主党)

一方、参院選に関しては、政権交代(2009年)の2年前に行われた2007年の通常選挙では半数近い議席を得ていますが、政権時代の2010年には獲得議席を44議席(全体の3分の1強)に減らしています。

また、政権を喪失して以降に関していえば、全体の4分の1に相当する32議席を得た2016年の選挙を除くと、どの選挙でも獲得議席は16~17議席に留まっており、獲得した議席率で見ても10%台前半、といったところでしょう。

ネット層では立憲民主党への不信感も強い

これについては、「かつては(たった3年3ヵ月とはいえ)政権を担ったほどの大政党でありながら、現在はここまで少数政党に落ちぶれている」という見方もできるかもしれませんが、それとは逆に、「政権を喪失後もしぶとく最大野党の地位を維持している」という見方もできるかもしれません。

正直、民主党政権時代の「惨状」は、いくらマスメディアが「報道しない自由」を使って実態を覆い隠そうとしたとしても、隠しおおせるものではありません。

とりわけ民主党政権時代に導入された「再生可能エネルギー賦課金制度」「太陽光発電推進」などの政策は、原発稼働停止などとあいまって、今日に至るまで日本の電力供給を不安定なものにしています。まさに民主党政権の「負の遺産」そのものでしょう。

ただ、立憲民主党を巡っては、「多くの国民から不信感を持たれている」と指摘する人も多いのですが、そのわりに(得票数は多いとはいえないながらも)依然として最大野党の地位を保持し続けているわけですから、こうした事実については軽視すべきではありません。

ではなぜ、立憲民主党は現在でも最大野党の地位を維持しているのでしょうか。

これにはいくつかの原因が考えられます。

そのひとつが、「なぜかマスメディアが立憲民主党に対して甘いこと」ではないでしょうか。

自民党の不祥事は針小棒大に報じるわりに、同じような不祥事を起こしたのが立憲民主党だったならば、「報道しない自由」を駆使して徹底的に立憲民主党を守る――。

これには『立憲民主党不祥事の話題避けるテレビこそ自民党応援団』でも触れた、テレビ朝日の番組で田崎史郎氏が立憲民主党の梅谷守・衆議院議員の「有権者買収疑惑」を指摘したところ、玉川徹氏が「別にここで取り上げなくてもいいかなと思います」と応じた、という「事件」などがその典型例でしょう。

このため、インターネットを普段からあまり使用しないような人たち(俗にいう「情報弱者層」)を中心に、立憲民主党に対しては依然として根強い支持があるのだ、といった仮説が成り立ちます。

こうした仮説を置くと、立憲民主党が最近になればなるほど選挙で勝てなくなりつつあることの説明もつきます。新聞を読む人やテレビを見る人が少なくなり、インターネットを中心に情報を集めている層が増えてくれば、新聞、テレビの偏向報道が通用しない層も増えて来るからです。

現実の事象ははそこまで単純ではない

ただ、社会は残念ながら、「情報のネット化」だけで説明がつくほど単純なものでもありません。

もちろん、インターネット・ユーザー層には自民党支持者が多く、立憲民主党支持者は少ないのではないか、といった仮説は成り立つのですが、これについては残念ながら、現時点までに確たるデータで証明できているものではありません。

また、最近だと一見すると保守的な意見を持っていると見られていたネット・ユーザー層のなかに、「アンチ自民党」のような傾向を示すユーザーもいますし、少なくとも「ネット・ユーザーはすべて自民党支持者だ」、などと決めつけるだけのデータはありません。

おそらく現実の社会でインターネットの社会的影響力が強まり、新聞、テレビなどのオールドメディアの社会的影響力が弱まっていることは間違いないとは思われる反面、だからといって立憲民主党に対する支持者がゼロになる、というほどに、現実社会は単純なものではないのです。

そのことを示すデータがあるとしたら、それは、立憲民主党が小選挙区で意外と強いという点ではないでしょうか。

先ほど、直近(2021年)の衆院選では立憲民主党が獲得した勢力は96議席に留まった、とする話題を紹介しました。

しかし、トータルの議席はたった96議席だったとしても、そのうち小選挙区で立憲民主党が57議席を獲得していたという事実については、あまり軽視すべきではありません。

もちろん、小選挙区で見て圧倒的に強いのは自民党で、2021年では当初公認ベースで当選した259議席のうち、小選挙区が187議席を占めていたという点は、自民党の選挙の強さの証拠です。

しかし、衆院の小選挙区は「その選挙区で当選できるのはたった1人である」、ということを意味しており、得票率で1位ではない候補者(たとえば2位の候補者)は落選します(某氏の名言「2位じゃダメなんですか?」という問いかけに対する適切な回答は、「2位じゃダメなんです」、といったところでしょう)。

維新が野党第一党を掲げるが…

このように考えると、前回の選挙では日本共産党などを含めた選挙協力が成立していたという事情もあるとはいえ、やはり立憲民主党が、「小選挙区で勝てる候補者」を多く擁しているという事実については、あながち軽視することはできません。

このあたり、立憲民主党ではなく、それ以外の政党(たとえば日本維新の会あたり)が立憲民主党に代わる最大野党に躍進すべきだ、などと述べる政治評論家も多いのですが、果たしてこれは現実的なのでしょうか。こうしたなかで気になるのが、こんな話題かもしれません。

日本維新の会「野党第一党」掲げるもハードル高く 選挙区での「地力」で立民との差は歴然

―――2024/3/24 18:24付 産経ニュースより

産経ニュースによると、維新は24日に開いた党大会で、「次期衆院選で野党第一党の座に就く」という目標を明記した活動方針を決定したのだそうです。

これについて産経は「世論調査での維新の支持率が野党第一党・立憲民主党を上回るケースもある」ことから「現実味を帯びたプランと受け止める向きもある」としつつも、「立民の『地力』は決してあなどれない」と指摘しているのですが、これはまったくその通りでしょう。

産経ニュースによると維新の馬場伸幸代表は党大会で、「保守政党同士の『改革合戦』に日本を持っていく」と力説したそうで、これ自体については日本の政治の在り方として、ひとつの正論でしょう(維新が「信頼に足る保守政党」なのかどうかは別として)。

また、維新は近年、選挙のたびに堅調に党勢を拡大してきており、たとえば2021年の衆院選では公示前の11議席から4倍近い41議席へと躍進しています(※もっとも、2022年の参院選では獲得議席は改選124議席中12議席で立憲民主党の16議席を下回っています)。

しかし、現実問題として維新は小選挙区で強いとはいえず、産経は「選挙区での維新の弱さ」に着目します。

産経の記事を少し補足しておくと、維新の場合、当選者41人のうち小選挙区で当選したのは16人(うち大阪府下が15人、兵庫県が1人)で、小選挙区で立候補した94人のうち、得票数で見て17人が2位、58人が3位に留まっています。

最大野党逆転なら日本の政治情勢は多少好転する…のか?

このあたりは、俗にいう「裏金」疑惑などで「自民党に逆風が予想される」なかとはいえ、維新が次回選挙で、各小選挙区で立憲民主党(や自民党)の候補者を上回る票を獲得することができるものなのか、個人的には疑問でもあります。

もちろん、維新は前回2位だった17の選挙区での躍進が期待できるのに加え、いくつかの選挙区では有力候補者の出馬が内定しているなどの状況にあることなどから、次回選挙では小選挙区での当選者を(前回の16人から)最大で30~40人程度に大躍進させる、という可能性はあります。

しかし、前回の選挙で立憲民主党は60人近くが小選挙区で当選しているわけですから、次回選挙で維新が立憲民主党を議席数で上回るのかどうかについては、正直、際どいところでしょう。

また、当ウェブサイトでは普段から指摘している通り、維新の候補者が自民党ないし立憲民主党の候補者から票を奪ったとしても、そもそも維新候補者が「1位争い」からかけ離れているような場合は、結果的には自民、立民のいずれかの候補者の勝敗に影響を与えるだけで終わってしまう可能性もあるでしょう。

(※ちなみに当ウェブサイトではこれを「維新タナボタ効果」、などと呼んでいます。)

もっとも、維新が躍進することが日本の国益なのかどうかは置いておくとして、少なくとも立民が最大野党の地位から転落すれば、改憲議論を含めたわが国を取り巻く政治状況が現在よりは多少好転するのかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (10)

  •  地力をチリョクと読んでしまうのですがさておき。
     地力、岩盤支持というか、本気で立憲を支持している方々もそれなりには居るのかもしれませんが。「最大野党だから」が理由で勝手に入ってくるアンチ与党票というのは、結構な数なのではないかと考えています(個人の感想です)。
     立憲が民主党時代から(社会党?)持ち続けてきた、勉強も要らず責任も持たず威張り散らしてラクにセンセイが出来るポジション。与党に敗けるのは無限に許されますが、他野党に敗けるのは再起不能になるのではないかな。なにせ実力を示す機会が無いのだから(無いのを良いことに適当に無理難題を掲げてきたし、実現性を問われてもまさに言い訳に使ってきた)。

  •  自民党が裏金事件を起こしても、第三者委員会を組成し事実解明に努めるといった自浄作用が行われず、形ばかり(それも総裁ヒアリングによる安倍派幹部の自主的対応の期待)の党内処分ですまそうとしている状況で、主権者たる国民の採り得る対応は、何なんだろうと考えています。
     立憲民主党に政権を任せるといった選択はありえない。自民党に代わり得る健全な保守野党を育成しつつ、まだましな自民党内の党内野党に当面の政権を委ねるのかな、というぐらいしか思いつかない。
     その観点からいくと、維新は”健全な保守野党”になりうる存在か、と期待しています。現段階では、人のレベルもまだまだですし、関西以外への浸透も足りない。でもね、他に選択肢はなさそう。何をやっても許されると思えば、自民党は更に堕落していくと、思います。

  • 国会議員の選挙のやり方が自民党独占に偏りすぎているので先週から調べています。
    調べる方法はwikipediaしかないので、webの衆議院名簿と組み合わせて現在作成中です。
    現状は、北海道から北関東の途中まで71名の一覧が完成しています。
    途中ではありますが、選挙の話が出てきたのでとりあえず公表します。
    自民党所属は71名中43名うち
    統一教会に関係しているのは19名
    親族後継者関係は20名
    地方議員や省庁・役所及び議員秘書から自民党になった議員は15名
    重複している議員もいますが後継者関連は金回りがよく、金のない議員は統一教会の支援を受けているようです。
    参議院も調べかけたのですが、比例当選が多く240名中100名でどこの出身か判りにくかった。
    いずれにしても自民党は地盤固めが強く、半数は後継者で後は金のない議員は統一教会から支援を受けている状態です。
    自民党は、パーティ券でいわゆる裏金作りばかりしている人が多いようです。パーティ券の内容が判ればいいのですが、中には統一教会や外国からの寄付まがいがないか調べてほしいと思います。

  • 立憲民主が、ある一定数の議席を得るのは、労組(連合)の組織票の受皿だからでしょう。それが、立民の“地力“の中身でしょう。社会党の1議席が無くならないのも、その分の固定票数があるからです。
    維新には、組織票は望めないので、何か特別なオリジナルなドグマを創り出して、固定支持層を形成する必要があります。
    大阪は、橋下氏が劇的な改革をやったので、岩盤支持層を形成出来たのでしょう。

  • 私の感覚だと、維新もクズ政党に違いないですが、立憲民主党よりも遥かに「マシ」です。

    なので、まず第一歩として、立憲民主党から最大野党の利権をはく奪するために、維新には頑張って欲しいです。共産、社民、れいわは論外として、ぶっちゃけ、立憲民主党以外だったら、どの政党が野党第一党でもいいのですが、一番可能性が高いので、ひとまず応援します。

  • 丸山穂高氏の離党を認めず除名にして鈴木宗男を除名にしなかった維新を応援する気にはまったくなれなくなりました。こんなダブスタ政党が野党第一党というのも困りますが、他人に厳しく自分に甘すぎるブーメラン政党よりかはマシかもしれませんね。怖いもの見たさで日本保守党が野党第一党になったら政治も面白くなるかもしれませんが、消えて無くなるのが早いか?それにしても投票先が無く本当に困ったものです。公明、社民、共産、れいわなんちゃらは論外、仕方無しに腐った自民にしておくか?国民民主ガンバレ。悩み多き今日この頃です。

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    立憲支持者:「新しい戦前ということで、自民党議員を粛清すれば、現有議席でも、立憲が与党に、維新が最大野党になる」
    理屈では、そうです。

  • 大阪維新は応援していますが日本維新はどうしても人材的に無理があるように思います
    野党1位になれば人も集まってくるのかしれませんが、そのような人が集まるのも問題あるのかもしれません
    ただ、自民党は少なくとも過半数割れになり、過半数をとる為に維新と一緒になるのがベストではないかと思います、それで公明党が外れていくとさらに自民党が弱くなるのが良いかと思います
    維新は消費税減税の5%減税を飲まないと手を組まないとか言って、少なくとも実質賃金が2年で下がった分を取り戻せるまでは時限的にも行うとしてほしい
    国民の大多数が景気が悪くなっていると感じている状態で外需の良さを内需に回す事をしないため、早くしないと為替で円高になるとまたデフレに戻ってしまう
    せっかく高い価格でも仕方ないとインフレの価格を見慣れているのにお金がないので買えない、少しでも安い物を探す一般の人がいかに多いか
    選挙したときに投票に行くかどうかが分かりませんが、景気が悪いと思っている人が岸田さんのせいだとわかり違うところに投票に行く行動をとってくれればと思います
    情報がテレビや新聞よりネット中心になっていく中で投票行動がどう変わってゆくのかも興味があります

  • うーん、奈良県のメガソーラー設置案だの、住民投票で否定されても何度も大阪都構想を上げてくるだの、伝統文化軽視だの、維新は住民の声は聞いていないようなのであまり支持はできないですね。
    しかし、野党第一党になるというのは、流れが今までと違う方に向かうかもしれないのでよいかもしれないです。投票はしませんが。