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立憲代表「クリーンで公正な政権作る:自民は下野を」

「自民党は今すぐ下野し、野党に政権を禅譲すべきである。立憲民主党ならばクリーンで公正な政権を作ることができる」――。いったい何をおっしゃっているのでしょうか。現在の衆議院の与野党の勢力図で見る限り、自民党が下野し、立憲民主党に政権を明け渡すことはあり得ませんし、それは民主主義の否定そのものです。また、立憲民主党が自民党よりも「クリーンで公正な政権」を作れるという保証もないでしょう。

不信任案否決は当たり前

立憲民主党は13日、衆院本会議で内閣不信任案を提出するも、否決されました。

当たり前です。

衆議院では自民党が(統一会派ベースで)262議席と、単独過半数(233議席)どころか一般に絶対安定多数と呼ばれる260議席のラインをも超える勢力を持っているからであり、さらに連立相手の公明党の32議席を含めれば、与党側が圧倒的な議席を保有しているからです。

これに対し、立憲民主党は(統一会派ベースで)96議席、ほかにも主要野党は日本維新の会が41議席、国民民主党が10議席(※前原氏等の会派離脱前ベース)、日本共産党が10議席――、などですが、全部あわせても過半数には到底届きません。

とりあえず無所属と欠員を除外し、残りのすべての議員を与党系と野党系に割り振ってみると、与党系が294議席で全体の63.23%に達しているのに対し、野党系が164議席で全体の35.27%に過ぎません(図表)。

図表 衆議院勢力図(2023年11月10日時点)
会派 議席 割合
自由民主党・無所属の会 262 56.34%
公明党 32 6.88%
与党系合計 294 63.23%
立憲民主党・無所属 96 20.65%
日本維新の会 41 8.82%
国民民主党・無所属クラブ 10 2.15%
日本共産党 10 2.15%
有志の会 4 0.86%
れいわ新選組 3 0.65%
野党系合計 164 35.27%
無所属 6 1.29%
欠員 1 0.22%
合計 465 100.00%

(【出所】衆議院『会派名及び会派別所属議員数』より作成)

「自民党は下野しろ」は民主主義の否定

この状況、べつに与党側が何らかの不正をした結果ではありません。2021年10月31日に公正に実施された衆議院議員総選挙と、その後の公正に実施された数回の補正選挙などを経て、決まったものです。

この点、数名の議員が選挙の時に所属していた政党を離脱したりもしていますが、そうした例外を除けば、この勢力図は、基本的に私たち有権者の選挙における選択の結果そのものなのです。

もちろん、この状態を「情けない」などと嘆くのは自由ですし、「日本の有権者はおかしい」、「自民党はもっと議席を減らすべき」、「どうして●●党がもっと躍進しないのか?」などとケチをつけることもまた自由ですが、ただ、だからといって「この状態は許せない」などと文句をつけたとしても、始まりません。

この状態が民主主義の手続によって決まったものだからです。

そして、この状態で自民党に対し「下野しろ」、「野党に政権を禅譲しろ」、などと要求することは、究極的には民主主義そのものの否定でしょう。

泉健太代表の演説に覚える違和感

こうした状況を踏まえたうえで、立憲民主党の泉健太代表の岸田文雄内閣に対する不信任決議案を読むと、何とも違和感を覚えるくだりが出てくることも間違いありません。

【衆院本会議】泉代表「一刻も早く内閣総辞職すべき」と迫る 岸田内閣不信任決議案

―――2023/12/13付 立憲民主党HPより

この記事の末尾にある『【衆院本会議】岸田内閣不信任決議案趣旨弁明(泉健太代表)2023年12月13日.pdf』というリンクをクリックすると、A4サイズで7ページにも及ぶPDFファイルのダウンロードが始まります。

経済学的に決して正しくない「悪い円安論」について触れている箇所もさることながら、とくに印象深いのは、末尾のこんな趣旨の記述です。

この際、派閥だけではない、その集合体の自民党そのものも解体、政権を野党に禅譲し、下野すべきです。立憲民主党は公正かつオープンな新たな政権をつくります。現在の自民党政権よりも、国民生活に寄り添った政策を推進する新政権を構成します」。

「自民党は下野せよ」、「野党に政権を禅譲せよ」は、泉氏の前任者である枝野幸男・前立憲民主党代表も主張していたことですが(『さすがに無理がある、民意を否定する「枝野内閣」構想』等参照)、さすがにこの「自民党は政権を禅譲せよ」という主張にはかなりの無理があります。

立憲民主党が「クリーンで公正な政権」?

しかも、ここのくだりに関しては、PDFファイルの文言と、実際に泉健太氏が演説した文言は微妙に異なっています。実際にネット動画等で確認すると、泉氏は次のように述べています。

もし自民党が下野するということであれば<中略>各党のクリーンな議員とともに、公正かつオープンな新政権を発足させます」。

立憲民主党の議員が「クリーン」だという時点で、なかなかに強烈なパンチです。パーティー券収入の政治資金収支報告書への不記載問題だけに限定しても、同じ問題は立憲民主党の議員にも生じているからです。

立憲・安住氏もパーティー券収入を不記載 政治資金収支報告書を訂正

―――2023年11月29日 18時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

なんだか、本当に強烈というほかありません。

個人的に現在の自民党・岸田文雄首相を無条件・盲目的に100%支持するというものではありませんが、少なくとも現在の立憲民主党が自民党に代わって政権を担い得る政党であるかと問われれば、そこはかなり微妙だと断じざるを得ません。

というよりも、自民党から問題が続々と噴出する間接的な理由も、おそらくは立憲民主党があまりにもだらけているからではないでしょうか。

立憲民主党が政権を奪取する最も簡単な方法

一般に多くの議会制民主主義国において、「最大野党」といえば、「いつでも与党を倒して政権に就くことができる政党」を意味します。その際の武器は、「現在の与党よりも魅力的な政策と候補者」です。

泉健太氏、あるいは立憲民主党が政権を奪取するうえで、一番簡単な方法は、「自民党よりも魅力的な政権公約を掲げ、自民党よりも魅力的な候補者を取りそろえたうえで、次回選挙で自民党を上回る議席を獲得すること」です。

日本の「最大野党」である立憲民主党は、しかし、かつて2009年に政権を奪取したものの、その後は選挙のたびに惨敗し、四分五裂してきた民主党・民進党の残骸のようなものであり、現在の立憲民主党が、当時の民主党政権の失敗に対し、マトモに正面から向き合っていない時点で、話になりません。

いずれにせよ、現在の岸田政権を巡っては、「安倍派」の閣僚の一斉交代などが取り沙汰されているなど、有権者からの不信感が募っているであろうことは否定しませんが、だからといって立憲民主党側が自動的に「クリーンで公正な政権を作れる」という保証はありません。

いずれにせよ、次回衆院選での有権者の選択が、ますます重要であることは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • 今回の話って自民党内のゴタゴタであって立憲民主としては何の関係もない話。
    解散権持った岸田さんが何か情勢判断を間違ったときに、漁夫の利で連立政権を組めるかもってところ。
    切り株の前に陣取ってウサギがぶつかって死ぬのを待つ的な話。

    派閥パーティーキックバックなんて伝統的な話がなんで今頃吹き出すのか不思議ではある。
    派閥そのものの必要性って中選挙区が終わった段階で絶対必要なものではなくなったから、どっかで解消されるものと思う。まあ、非主流派が自派閥も含めて全部潰しちゃう作戦に出たのかもしれない。

    とりあえず選挙はなくて、単なる内閣総辞職で派閥の色の薄いか無派閥の次の総裁が立つというのが基本路線かな。
    岸田さんにやぶれかぶれ解散をさせないためにどうするべきかの作戦が必要。

  • 「クリーンで公正な」だけで何もやらない政権なら素人でも務まります。
    立憲民主は、スキャンダルを突いているだけで、何も価値を作り出していないことに気付かないとね。まず先に、そういったスキャンダルが起きない様な法改正の提案をするべきじゃないの?

  • 安全保障から目をそらし
    エビデンス無しに汚染水と海外に向かって叫び続け
    冤罪で町を性犯罪者扱いし
    自身に気に食わない表現は焚書し
    80人以上逮捕される組織と懇意にしている
    そのリベラル四党が政権を握れば暗黒しか無いと思います

    自民以外でまともに政権を担える野党を作らないとまずいよなぁ

  • 私の地区で徳永会というのがあったのですが、今はどうかはわかりません。
    徳永会とは、少額の会費を集めて春秋にバス旅行をしていたようです。
    自民党が地方に強いのは、いまだに同じ様なことをしているのでしょう。
    少額でたとえ2千円の会費を集めても24千円にしかなりません。赤字の部分は脱税まがいのことをしているのかもわかりませんが、自民党の体質はこんなことでしょう。
    ただ、こういう会員は高齢者が多いのは事実ですね。
    それで、大阪に維新の会ができたのです。政治はクリーンにする時代が来ています。

      • 維新の会も不祥事がありましたが、元々は身を切る改革からのスタートです。
        多くの議員を育てていかないと、選挙には勝てません。他の政党から入ってきている議員や、経験のない人もいます。政党としては浅いかも知れないが、党の幹部までグレーではないと思います。
        国民が党を育てないと、永久に自民ドロドロの政府になってしまうと思います。

    • 大阪府庁と大阪市役所の
      「すんげー腐敗」
      をなんとかした実績だけでも、維新は大阪で30年ほどエラソーにしてても構わないと思いますね。

      東京に住んでたり、今の若い人とかは、知らないのですよ。

      ワンルーム勇者のマックスみたいな?

      • 小池都知事がクリーンかどうかはわかりませんが、一人では何もできないように思います。Jリーグではないけれど地域政党から始めることは可能ではないですか。
        自民党以外の政党なんて、今までできていなかったのですからね。
        松下政経塾に期待していたのですが、政党はどこでもいいとしていたので結局バラバラになってしまったようです。

  • 素朴な感想ですけど
    ①激変の今、日本国民が政権に求めているのは、クリーンで公平の政権でしょうか。有能な政権でしょうか。もっとも、岸田総理が有能なのか、立憲がクリーンで公平なのかは別問題です。そもそもこれらは相対的なもので、下には下が、上には上があるものです。(マスゴミは、愛読者以外の日本人から浮き上がっているのかもしれません。なにしろ、マスゴミは自身の声で、愛読者が多数に見えるものです)
    ②立憲は、立憲自身が自分をクリーンで公平であると決めているのではないでしょうか。
    ③(これは自分でもまさか、とは思いますが)立憲は合法的手段では、政権が奪取できないなら非合法手段で政権を奪取することを考えているのではないでしょうか。今が新しい戦前なら、戦前には(どの国かは無視すれば)そのような例もあります。(もちろん、実際に実行するか、実行できるかは別問題です)

    • 政党支持率で、自民党の支持が減りましたが、減った分は立憲ではなく無党派になりました。ということは、彼らは立憲には期待していないことになります。AI(?)がすべてを決定する新党ができれば、無党派はそちらに流れるのでしょうか。

  • つまり、「民主主義の手続きである選挙を経ずして、立憲民主党を与党にせよ」と。
    政党支持率 7.4%(NHK世論調査)の政党を。
    国会議事堂を襲撃せんかの威勢のよさですが、あきれてものも言えません。

  • パーティー券のキックバックって用は自民党がパーティー券を作成して議員が購入して自民党に支払う。議員は立替金で処理。

    ノルマの枚数の収入を使って立替金を処理、キックバック分が売れなかったことにしてパーティー券を返却したことにする。返却分の入金で立替金はきれいになくなる。

    キックバック分のパーティー券の販売金は、20万円未満の寄付金として処理する。

    こうすると問題なしになるのでないかな?パーティー券の返金分のチケットは各議員が期日が過ぎたとして処分した可能性はあると思うけどね。処分の方法はいろいろだろうね。

    こうすると、収支報告上は行先のないお金は存在しないのと違うかな?
    キックバックでは無く、未販売分の返金と言うことですね。
    元自民の立憲の岡田さんも同じことしているだろうね。「間違いない!」と思うよ。

  •  クリーンなだけで良いなら、インキタトゥス氏が議員だって良かろうし、リンブルバット氏がアメリカ大統領やったって通用するでしょうよ。

     まぁ彼らはそれぞれ馬・猫なんですが。ところで立憲って全然クリーンじゃないんですが、どうせ能力も無いとくれば、もはや馬や猫に劣るんですね。

      •  大変失礼致しました。クリーンな馬ならびにネコと和解させて下さい。
         連中と違って、言語が通じずとも意思は通じますしねぇ。

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