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5ヵ月連続200万人超え:コロナ前に戻る外国人観光

日本政府観光局が15日に公表した『訪日外客統計』によると、2023年10月に日本を訪れた外国人は2,516,500人(※速報値)だったそうです。訪日外国人数が200万人の大台を超えるのは6月以降5ヵ月連続のことです。ただし、これを手放しで歓迎して良いかは別でしょう。

日本政府観光局が15日に公表した『訪日外客統計』によると、2023年10月に日本を訪れた外国人は2,516,500人(※速報値)だったそうです。訪日外国人数が200万人の大台を超えるのは6月以降5ヵ月連続のことです。

2023年と、コロナ前の2019年以前の4年間について、日本を訪問した外国人の合計をグラフ化したものが、図表1です。

図表1 日本を訪問した外国人合計

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

この数値「だけ」で見ると、すでに日本のインバウンド市場はコロナ前に戻ったといえるでしょう。

ただ、図表2に示した国別内訳を見ると、現実にはそこまで単純ではありません。

図表2 訪日外国人(2023年10月)
人数 割合
1位:韓国 631,100 25.08%
2位:台湾 424,800 16.88%
3位:中国 256,300 10.18%
4位:米国 211,900 8.42%
5位:香港 179,300 7.12%
6位:タイ 124,600 4.95%
7位:フィリピン 69,200 2.75%
8位:シンガポール 55,100 2.19%
9位:カナダ 51,700 2.05%
10位:ベトナム 50,400 2.00%
その他 462,100 18.36%
総数 2,516,500 100.00%

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

速報値ベースですが、トップは韓国人の63万人で、これだけで全体の4分の1を占めており、これに台湾(42.5万人、16.88%)、中国(25.6万人、10.18%)が続きます。

ちなみにコロナ直前の2019年10月と比較しておくと、トップは中国の73万人で全体の約30%を占めていたのに対し、台湾は41.4万人でほぼ横ばい、韓国は19.7万人で全体の7.9%を占めるに過ぎませんでした(図表3)。

図表3 訪日外国人(2019年10月)
人数 割合
1位:中国 730,631 29.27%
2位:台湾 413,701 16.57%
3位:韓国 197,281 7.90%
4位:香港 180,562 7.23%
5位:米国 153,363 6.14%
6位:タイ 145,333 5.82%
7位:英国 68,401 2.74%
8位:フィリピン 64,690 2.59%
9位:豪州 51,563 2.07%
10位:マレーシア 48,864 1.96%
その他 442,179 17.71%
総数 2,496,568 100.00%

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

要するに、2023年10月と2019年10月と比べると、中国と韓国のトップが入れ替わった格好です。

また、10月の中国にとって、秋の大型連休「国慶節」に当たっていたにも関わらず、意外と中国人観光客は多くなかった、という言い方もできるかもしれません。いわば、中国人観光客の激減を韓国人観光客の急増が補った格好です。

これについて、2023年10月と19年10月を比較したものが、図表4です。

図表4 訪日外国人(2023年10月vs2019年10月)
2023年10月 2019年10月 増減
1位:韓国 631,100 197,281 +433,819
2位:台湾 424,800 413,701 +11,099
3位:中国 256,300 730,631 ▲474,331
4位:米国 211,900 153,363 +58,537
5位:香港 179,300 180,562 ▲1,262
6位:タイ 124,600 145,333 ▲20,733
7位:フィリピン 69,200 64,690 +4,510
8位:シンガポール 55,100 41,937 +13,163
9位:カナダ 51,700 37,667 +14,033
10位:ベトナム 50,400 46,510 +3,890
その他 462,100 441,124 +20,976
総数 2,516,500 2,496,568 +19,932

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

普段から当ウェブサイトにて指摘している通り、インバウンド観光客が増えること自体は日本経済に良い効果をもたらすかもしれませんし、こうした観光客の急回復は円安が日本経済に与えている恩恵のひとつでもあるのかもしれません。

ただ、これを手放しで歓迎できるかはまた別問題です。

オーバーツーリズムの弊害、あるいは観光業の日本経済に対する生産性などを考慮すると、個人的には日本が観光立国政策を進めることには疑問も残る点ではあるのでしょう。

新宿会計士:

View Comments (4)

  • 海外からの訪日客数のデータは月一の定期便で記事になっていますね。

    ちょっと気になったので、過去記事を遡ってみたのですが、

    >『急増する訪日外国人…「月間200万人超え」も視野に』

    というのが、5/18付けの記事のタイトルになっていました。今年4月の訪日外国人数です。

    で、これ以後の中国からの訪日客数がどう変化しているのか、数字を拾ってみたのですが、
    4月 103,300人、5月 134,400人、6月 208.500人、7月 313,300人、8月 364.100人、9月 325.600人、10月 256.300人となっていました。一月あたりの全体数が200万人前後と大体安定している中で、中国の訪日客数の変動がいやに大きいことが分かります。

    ここ2ヶ月の減少傾向がこのまま続くのかどうかは分かりませんが、政治的要因なのか、経済的要因なのか。一番考えられるのは、例の「核汚染水」に怖れをなしたってヤツでしょうが、失業して「寝そべり」だした若者層が、海外旅行どころじゃないってことになった、影響もあるかも知れないなと、思ったりもします。

  • 海外からの訪日客数のデータは月一の定期便で記事になっていますね。

    ちょっと気になったので、過去記事を遡ってみたのですが、

    >『急増する訪日外国人…「月間200万人超え」も視野に』

    というのが、5/18付けの記事のタイトルになっていました。今年4月の訪日外国人数です。

    で、これ以後の中国からの訪日客数がどう変化しているのか、数字を拾ってみたのですが、
    4月 103,300人、5月 134,400人、6月 208.500人、7月 313,300人、8月 364.100人、9月 325.600人、10月 256.300人となっていました。一月あたりの全体数が200万人前後と大体安定している中で、中国の訪日客数の変動がいやに大きいことが分かります。

    ここ2ヶ月の減少傾向がこのまま続くのかどうかは分かりませんが、政治的要因なのか、経済的要因なのか。一番考えられるのは、例の「核汚染水」に怖れをなしたってヤツでしょうが、失業して「寝そべり」だした若者層が、海外旅行どころじゃないってことになった、影響もあるかも知れないなと、思ったりもします。

  • かつて安倍晋三総理が掲げていた訪日観光客人数の目標数は4000万人だった。いまは別項の記事によれば6000万人でそれ自体は経済的波及もあるから、一概に論じる事はできないが人災、、マナーの欠如が喧伝される。日本を訪れ日本を理解し、日本を好きになって貰うのお題目はいいんだろうけどマナー欠如の人物もいるという。銀座の街中で(あの雑踏のなかで!)大便をする中国人やら鎌倉高校前の踏切だか横断歩道だかを占拠する(日本人を含めた)観光客。ゴミの問題もある。行き過ぎた観光誘致は当該地域に軋轢を生む。まずはマナーを!罰則は日本人と一律が望ましい。

  • 一般論的な話になりますが、日本&日本人の中では
    「一律に」
    「平等に」
    という奇妙な価値観が、間違って蔓延しているように思われます。

    「観光客が(一律に)邪魔」
    なのではなくて
    「よい観光客も悪い観光客も居る」
    というだけの話。

    悪い観光客だけ排除すればよいだけなのに、奇妙な価値観のせいか、行政がなんにもしませんな。
    なにも短絡的に、国籍人種宗教などで「一律に」網をかけろと言うてる訳ではないのです。
    新規立法する必要もない。
    既存の法体系でもやれることはまだまだあります。

    まじめに「JUST DO IT」ですわ。

    最近耳にしたNEWSで苦笑いだったのは、
    「オーバーツーリズム対策として高速道路の休日割引の中止を検討」
    外人でキャパ一杯なので、日本人は観光するな!と。

    hahaha。まぁ理屈は理解できますけどさぁ。