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「ろくな政党がない」なら、それは有権者の責任では?

共同通信調査で内閣支持率は「麻生以来」の3割未満に

「岸田内閣に対する支持率は、危機的な水準に」――。おそらく本日以降、この手の論説がさらに増えていくでしょう。共同通信が日曜日に報じた同社の世論調査では、支持率は「麻生内閣末期以来の30%割れ」となり、もちろん岸田内閣発足以来の最低値となったからです。ただ、この調査結果だけをもって「今すぐ岸田(氏)は首相を辞めるべし」、などと決めつけるべきではありません。選挙結果と世論調査は必ずしもリンクしないからであり、また、「良い政治家が出てこない」のは手っ取り早い成果を求める有権者の側の責任でもあるからです。

内閣支持率動向

内閣支持率は低下傾向に

当ウェブサイトでは「定点観測」的に、いくつかのメディア(※)がほぼ毎月実施・公表している内閣支持率調査をチェックしています(※当ウェブサイトにてチェックしているのは読売新聞、朝日新聞、共同通信、時事通信の各社の調査と、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同世論調査です)。

その最新版、つまり2023年10月分に関しては図表の通りです。

図表 内閣支持率(2023年10月)
メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
時事通信(10/6~9) 26.3%(▲1.7) 46.3%(+2.3)
朝日新聞(10/14~15) 29.0%(▲8.0) 60.0%(+7.0)
読売新聞(10/13~15) 34.0%(▲1.0) 49.0%(▲1.0)
共同通信(10/14~15) 32.3%(▲7.5) 52.5%(+12.8)
産経・FNN(10/14~15) 35.6%(▲3.3) 59.6%(+3.5)
日経・テレ東(10/27~28) 33.0%(▲9.0) 59.0%(+8.0)

(【出所】各社報道をもとに著者作成)

「増税メガネ、今すぐ辞めろ!」

これでわかるとおり、この6つの調査に限定していえば、いずれも支持率が不支持率を下回っており、前回比で見て支持率は低下、不支持率は読売新聞のものを除いて上昇しており、支持率と不支持率の差は、読売新聞のものを除いて、いずれも20ポイント以上です。

また、支持率は時事通信と朝日新聞に関しては20%台、それ以外のものはいずれも30%台であり、不支持率は時事通信と読売新聞を除いて過半数に達しています。

よって、これらの調査結果だけを見る限り、岸田文雄内閣は「退陣の瀬戸際」にあるように見えなくもありません。

実際、インターネット上では、たとえばX(旧ツイッター)などにおいて、岸田首相のことを「増税メガネ」(※)などと揶揄する意見も散見されますし、「この期に及んでこの増税メガネのことを支持している人がいるなんて信じられない」、などと公言するネット・ユーザーもいるほどです。

(※本当は「増税メガネ」以外に、さらに酷い罵詈雑言のたぐいの表現も見られるのですが、それらについては品位を保つ観点から、当ウェブサイトへの引用については控えたいと思います。)

すなわち、新聞、テレビなどのマスメディアによる調査結果、そして(パッと見たところの)インターネット上の評価を見る限りでは、「岸田首相にはもう一刻一秒でも早く辞めてほしいと人々が思っている」という証拠に見えてなりません。

岸田内閣の「終わりの始まり」!?

共同通信は「岸田内閣発足以来最低」「麻生政権以来の30%割れ」

こうしたなかで、いよいよメディアが岸田政権を「倒閣」する動きに出てきたのでしょうか。

共同通信が日曜日に報じた内閣支持率では、岸田内閣発足以来で見て、共同通信としての「過去最低」を更新したようです。

所得減税「評価せず」62% 内閣支持率28%、最低更新

―――2023/11/05 15:14付 Yahoo!ニュースより【共同通信配信】

内閣支持率28%、過去最低を更新 共同通信の世論調査

―――2023年11月5日 19:30付 日本経済新聞電子版より

記事タイトルからもだいたいわかりますが、内閣支持率は前回調査から4.0ポイント下落して28.3%と「過去最低を更新」。不支持率についても前回比4.2ポイント上昇し、56.7%と過去最高となったのだそうです。

まさに、「岸田内閣の終わりの始まり」、といったところでしょうか。

これについて共同通信は、「自民党政権の内閣支持率が30%を割り込むのは09年の麻生政権末期以来」だとしていますが、想像するに、これは「共同通信の調査としては」、ということでしょう。というのも、時事通信の調査だと、過去に何度か20%台を記録していたからです。

ちなみに今回の共同通信の記事によれば、岸田内閣の経済対策を「評価しない」と答えた割合が62.5%に達したのだそうです。

その理由についてはさまざまで、これらのなかには「経済対策より財政再建を優先するべきだ」とする回答が20.6%にも達しているのだそうですが、「わが国は財政危機だから財政再建が必要だ」、などとするプロパガンダに騙されている人が、少なくとも共同通信の世論調査に応じた人の20%以上はいるということでしょう。

それはともかくとして、当ウェブサイトでも『やらない方がマシの4万円減税:でも自民は敗けない?』などでも指摘したとおり、正直、岸田政権がやろうとしている「4万円の所得減税」は、経済・金融専門家にとっては、とうてい、合格点をつけることができないものではあります。

こうしたなかで、共同通信の「支持率は過去最低」、「麻生太郎政権以来の20%台」、「6割超が経済対策を評価せず」、などとする情報が独り歩きすれば、「そら、みたことか!」「もう岸田政権はお終いだ!」といった印象を持つ人が続出する可能性は十分にあります。

青木率は50%を10ポイント以上超過している

ただし、せっかくの「岸田首相、辞めろ!」ムードに水を差すようで申し訳ないのですが、ここで数点、冷静なツッコミを入れておきたいと思います。

真っ先に思いつくのが、先日の『回答者が高齢者に極端に偏るNHK世論調査=内部資料』でも紹介したとおり、メディアが実施する世論調査では母集団自体が極端に偏っており、その結果が信頼できない(可能性がある)、という論点ですが、この論点については脇に置くとしても、ほかにもツッコミどころがあるのです。

ひとつめは、「青木率」と呼ばれる数値の話題です。

これは、自民党の故・青木幹雄元参議院幹事長が提唱したとされる経験則に基づく指標で、内閣支持率と第1党に対する政党支持率の合計値が50%を超えているかどうかで内閣が退陣するかどうかを判断するという、永田町界隈では重視されているとされる指標です。

日経新聞の記事によれば、共同通信の調査の結果、政党支持率は自民党が34.1%でトップだったそうですので、これに内閣支持率28.3%を足せば、共同通信の「青木率」は2023年11月時点において62.4%と、依然として50%を10ポイント以上、超過している状況です。

「いくつかのメディアの調査で、内閣支持率が急落している」という点は事実だったとしても、こうした「青木率50%超」という状況を見る限りでは、「岸田内閣が今すぐ退陣に追い込まれる状況だ」、などと短絡的に判断するには、少し慎重であるべきかもしれません。

自民党に代替する野党がいない

続いて、野党に対する政党支持率です。

同じく日経新聞の記述によると、自民党以外の政党に対する支持率は、立憲民主党と日本維新の会が9.3%で同率並び、これに公明党4.7%、日本共産党4.0%、国民民主党3.6%、れいわ新選組3.5%、社民党0.5%、政治家女子48党0.4%、参政党0.9%――、と続いています。

Xなどを眺めていると、「自民党には腹が立った!」、「今度の選挙では自民党以外(の政党や公認候補者)に投票してやる!」、といったポストが目に付くのですが、そもそも自民党以外の政党に票を投じるにしても、その投票先がどこなのかによっては、自民党の議席はさほど減りません。

とりわけ、第1党が自民党、第2党が立憲民主党というなかで、第3党(?)である日本維新の会に票が殺到すれば、維新が躍進するのではなく、立民が議席を激減させ、自民党がむしろ議席を積み増してしまう、という現象が生じ得るのです。

これが、当ウェブサイトで「維新タナボタ効果」と呼ぶからくりです。

その仕組みは、こうです。

たとえば有権者数が40万人の選挙区で、投票率が常に50%だったとすれば、投票総数は20万票となるはずです。ここで前回総選挙では、1位の自民党候補者が9万票、2位の立民候補者が8万票、3位の維新候補者が3万票を獲得していたとしましょう。

この選挙区で、維新の候補者が自民、立民それぞれの候補者から10%ずつ票を奪えば、結果はどうなるでしょうか。

この場合の得票数は、自民党候補者が9,000票減らして81,000票、立民候補者が8,000票減らして72,000票となる一方、維新候補者は17,000票積み増して47,000票となります。たしかに維新候補者の得票数は「躍進」しますが、1位から3位までの順序は変わりませんので、自民党候補者が当選します。

また、もし有権者の自民党への不満が強かった場合、自民党候補者が2万票減らす一方で、立民候補者が5,000票しか減らさなかった場合、維新候補者は25,000票積み増して55,000票を獲得しますが、当選には至らず、立民候補者が75,000票、自民党候補者が7万票で立民が選挙戦を制します。

つまり、現段階で多少、維新が躍進したとしても、自民・立民の1位・2位争いに多少の影響を与えるのが関の山であり、そして、当選が危うい「ボーダー議員」は自民党にも60人前後いますが、立民側にも40人前後いますので、「現職でありながら落選のリスクがある議員数」という点では、立民も自民と大差ありません。

さすがに政権交代はあり得ない

その意味では、くどいようですが、もし本気で岸田首相が「破れかぶれで(?)」年内もしくは年明け直後の解散総選挙を仕掛けたならば、自民党としては、かつての安倍政権時代のような圧勝は難しいかもしれないにせよ、そこそこの議席を獲得する可能性は十分にあるのです。

一部メディアによると、自民党は次回総選挙で最大限負けたとして220議席、つまり現在よりもおよそ40議席前後を失う、という試算です。

この試算がいかなる前提条件に基づくものなのかがよくわからないにせよ、要するにこれを「最大限で敗けたとしたときの議席数」とすれば、「今すぐ解散総選挙が実施される」なら、自民党は過半数ライン(233議席)から「絶対安定多数」とされる260議席前後におさまる、といったところが現実的なラインでしょう。

なぜそう判断できるのかといえば、日本の選挙制度上、衆議院で総選挙が行われる際には、小選挙区に6割強、比例代表に4割弱が配分されるからです。

もちろん、こうした予測は前提条件次第でいくらでも変化します。たとえば解散総選挙の時期が遅れれば遅れるほど、「次の最大野党」候補である日本維新の会の選挙準備が整います。

また、立憲民主党を中心とする特定野党勢は、いまや多くの国民から呆れられている存在かもしれないにせよ、依然として特定の政党に対する支持は厚く、とりわけ日本共産党などとの選挙協力次第では、2021年の総選挙がそうだったように、そこそこ善戦する可能性はあります。

つまり、▼選挙実施時期、▼野党の選挙協力の在り方、▼有力野党の選挙準備――、といった要因に大きな影響を受けるのですが、どの予想に基づいたとしても、さすがに政権交代が発生する可能性が高いようには思えません。

政治家と有権者の関係

是々非々で正当に評価すべし

いちおう、誤解を恐れないように申し上げておきますが、上記の議論は、当ウェブサイトとして、岸田文雄内閣のやっている内容のすべてを「支持している」、ということを意味するものではありません。

というよりも、政治家というものは、「1か0か」で決めるべきものでもありませんし、「理想の政治家」が「今すぐ私たちの生活を良くしてくれる」というものでもないからです。

この点、個人的に岸田首相に対しては、「隙あらば増税を企んでいるのではないか」、「外務省、財務省などの言いなりではないか」、といった疑念を抱いているわけですが、そうだからといって、「岸田首相にはさっさと辞めてほしい」、「次の選挙では必ず自民党が負けてほしい」、などと思っているわけではありません。

いかなる政権であっても、是々非々で評価することが重要だからです。

正直、対韓外交、対財務省外交(?)のように、岸田首相の手腕には稚拙といわざるを得ない部分もあるのですが、それと同時に原発の再稼働・新増設方針を打ち出していること、いわゆる「安保3文書」を制改定したこと、などのように、高く評価すべき点も多々あります。

さらに、今年8月には、長年の懸案のひとつだった福島第一原発の敷地に溜まったALPS処理水の海洋放出も、少しずつではありますが、始まっています。

もちろん、海洋放出は岸田首相というよりも、前任者である菅義偉総理大臣の決断に基づく功績、という側面もあるのですが、ただ、決定者が菅総理であったからといって、岸田首相のもとで、粛々と海洋放出に漕ぎ着けたという点について、評価しないのは不当といわざるを得ません。

ただ、おそらく当ウェブサイトの読者の皆さまを含め、増税や減税を巡る岸田首相の発言の煮え切らなさには苛立ちを覚えている国民が多いことは間違いないでしょう。

当ウェブサイトではこれまでに何度も報告してきたとおり、現在の日本が必要としているのは、第一に減税です。

たとえば、世の中でインフレが進み、徐々に賃金水準も上がってくると、所得税の累進課税の税率区分、法人税法上の一括償却資産・少額減価償却資産、消費税法上の課税事業者判定、簡易課税判定などについても、それぞれ引き上げる必要があります(いわゆる「ブラケット・クリープ」対策)。

また、そもそも現在の日本では、税収が何年も連続して過去最大を記録する一方で、使いきれなかった予算が余っている状態にありますので、税金・社会保険料・再生エネ賦課金などの名目で取り過ぎた部分を、国民に還元することが必要です。

さらには、景気回復を一段としっかりしたものにするためには、可処分所得を増やすのは非常に良い対策です(もっとも、「インフレ期に減税し過ぎれば、景気が過熱する」、といった弊害は指摘されていますが…)。

このように考えていくと、客観的に見て、岸田首相の経済対策が不十分であることは間違いありません。

では、どうすれば良いのか?

こうしたなかで岸田首相が早期解散総選挙を決断したならば、上述の理由に基づき、自民党はたしかにそこそこの議席を獲得するでしょうし、そうなれば「増税方針を国民が支持した!」などと宏池会政権が勘違いする可能性も十分にあります。

では、もしも「岸田政権の経済対策は不十分だ」と考えている人たちが、投票行動を通じて自民党にそれを教えてやるためには、いったいどうしたらよいのでしょうか。

たとえば、「政治的には保守派」、「経済的にはリフレ派」、といった人がいたとして、自身が居住する選挙区で出馬を予定している自民党候補者が財政再建派だったら、どうすれば良いのでしょうか?立憲民主党の候補者に投票する?それとも投票先は日本維新の会?国民民主党?その他の少数政党?

「少なくとも自民党には絶対に投票したくはない」。

「だからといって立憲民主党も嫌だ」。

「日本維新の会も国民民主党も、どこか怪しい」。

そう思う人も多いのではないでしょうか。

このように考えると、日本国民を富ませ、生命と財産をしっかり守るような政策を遂行することで、国民福祉を向上させるとともに、世界平和への貢献まで企図するほどに優秀な集団がいたら、どれほどに素晴らしいことでしょうか。

「日本の国体を守り、伝統文化を継承しつつ、日本独自の叡智を現代に活かし、協和社会を作る」、「憲法を改正し、しっかりと国土を防衛する」、「産業を強くするとともに、日本に対し難癖レベルの歴史問題などを仕掛けて来る無法国家群に対しても毅然と対処しする」などの能力があれば、どれほど心強いことでしょうか。

自民党がだらしないからこそ、こうした政党が出現し、自民党に代わってそのような素晴らしい政党が日本の政治のかじ取りを担ってほしいというのは、多くの国民の共通した願いであることは間違いありません。

では、その具体的な政党とは、いったいどこでしょうか。

鶏と卵:良い政治家のためには良い有権者から

これについての答えを呈示する前に、有権者と政治家の関係を振り返っておきましょう。

いちおう念のため申し上げておきますが、残念ながら、具体的に「この政党に投票すれば良いですよ」、という「答え」を、当ウェブサイトとしては提示することはできません。というか、「自民党に投票するな」(あるいはその逆)、といった、具体的な投票行動を示唆する内容を、当ウェブサイトで記載する予定は(いまのところは)ありません。

しかし、その「ヒント」くらいなら、述べても良いかもしれません。ポイントはふたつあります。ひとつは有権者の側の心構え、そしてもうひとつは政治家の能力です。

このうち、多くの人が勘違いしているのは、「素晴らしい政治家がいないのは政治が悪い」、という思い込みです。これは非常に間違った考え方です。大原則は、「有権者自身がちゃんと自分自身の頭で考えて、誰を『選良(せんりょう)』とするかを決定する」、ということです。ここから外れてはなりません。

そもそも論ですが、選挙とは「よりどりみどりの素晴らしい候補者たちのなかから、自分自身とまったく同じ理想的な考えを持つ人を選び出す手続」でもありません。もっとわかりやすくいえば、「生ゴミ(※)の中から、まだ食べられる食材を選ぶ手続」のようなものです。

(※政治家を「生ゴミ」に例えてしまいましたが、さすがにこれは行き過ぎでした。生ゴミは料理などの過程で出て来るものであり、使い方によっては堆肥などに有効活用することもできるなど、有益な物体でもあるからです。この場を借りて、政治家などに例えてしまったことに関し、生ゴミには深く謝罪申し上げます。)

あるいは、政治というものは鉄道工事に似ている――、すなわち、大都会のひっきりなしに行き交う過密ダイヤの鉄道路線を、列車の運行を一切止めることなく、立体交差化したり、複々線化したり、線形改良したりするようなものである――、という言い方もできるかもしれません。

すなわち、「今の政治は気に入らない!保守の皮をかぶった自民党の議員どもに鉄槌を下し、お灸を据えてやる!理想の政党・候補者を大量に当選させ、現在の日本の政治を理想的なものに変えてやる!」――といった発想自体が、じつは大きな間違いなのです。

選挙に対し白け、「どうせ誰に投票しても世の中は変わらない」などと決めつけ、投票では棄権・白票を決め込み、そのくせ愚痴だけは一丁前。

こんな有権者こそが、じつは日本を悪くするのに積極的に加担しているのです。

政治家としての資質、第一に実務能力

ここで、以前の『政治家の実務能力の本質は「妥協で理念を実現させる」』などでも指摘したとおり、政治家には最低限、志(こころざし)と実務能力の2つの要件が必要です。いくら実務能力が高くても志が低ければ高い成果は出ませんし、いくら志があったとしても実務能力が伴っていなければ、努力は空回りします。

逆にいえば、志も高く、実務能力も十分な政党ないし政策集団がこの世に出現したならば、当ウェブサイトとしてもそのような集団のことを高く評価し、読者の皆さまに対しても、「この集団は素晴らしい!」「絶対に投票すべきだ」、などと力強く推すことでしょう。

先ほどの議論で、「だらしない自民党に代わる素晴らしい政党」とは、具体的にどこか、という問題意識を呈示しました。その答えを示しておきましょう。

結論からいえば、そんな政党、存在しません。

いや、「そんな政党、未来永劫、出現しない」と申し上げているつもりはありません。あくまでも「現時点では」、という話ですが、いずれにせよ、現時点においては、ゴミの中からマシなゴミを選ぶしかありません(※どのゴミが「マシなゴミ」であるかについては、有権者の皆さまがご自身にてご判断下さい)。

また、選挙のたびに、威勢だけはやたらと良いという新興政党も出現しますが、これらの新興政党、なかには日本を良い方向に代えていくだけのポテンシャルを持っている政党もあるかもしれませんが、そうでない政党もあるでしょう。

「新興政党」の定義にもよりますが、「ここ数年で設立された」、「一部の有権者からは強い支持を得ている」という意味では、これに相当する政党は、常にいくつか存在します。とりわけ、これらの中には国会や地方議会に議席を持っている、という事例もあります。

ただ、「自民党がダメだ」、という命題が真だったとして、「特定の新興政党が素晴らしい」、という命題が、自動的に成り立つわけではありません。むしろ可能性の議論でいえば、「自民党がダメ」だったとして、「特定の新興政党は自民党以上にダメ」、という可能性の方が高いです。

くどいようですが、良い政治家・良い政党になるためには、「志の高さ」もさることながら、実務能力が何よりも重要だからです。

妥協して理念を実現させる――できますか?

ここで実務能力にはさまざまなものがありますが、それらのうちのわかりやすいものといえば、自分たちの理念の中核部分を大事にしつつ、現実にあわせて譲歩できるところは譲歩し、妥協できるところは妥協して、最終的にその中核部分を何としても実現させるだけの粘り強さと交渉力ではないでしょうか。

そして、鶏と卵の関係ではありませんが、実務能力の高い政治家にはチャンスが廻ってきますし、さまざまな実務経験を通じ、実績を積めば、それがその人の実務経験となり、血肉となって実務能力を向上させます。腐っても自民党に所属した方が良い政治家になれる可能背が高いというのは、そういう意味です。

それに、『政治家の実務能力の本質は「妥協で理念を実現させる」』でも指摘したとおり、現実の政治の世界では、高邁な理想を唱えていれば話が済むというものではありません。さまざまな利害関係者が暮らす複雑な日本社会において、利害調整は必須だからです。

これには土地収用を例に取って考えるとわかりやすいかもしれません。

わしゃ、この先祖伝来の土地を、絶対に手放さんぞ!

この土地を手放せと言うなら、役所は誠意を見せろ!時価以上じゃなきゃ、絶対に売らんぞ!!

私たち、この土地を追い出されたら、もう行く先がないんです…」。

都市部で新たな道路や鉄道を通すために地権者に立ち退いてもらう必要があるとき、土地を失う地権者としては、できるだけ高い補償を受けようとするでしょうが、血税が投入される以上、役所としても無尽蔵に補償金を払うわけにはいきません。

そして、当たり前の話ですが、誰もが納得いく結果というものは出てきません。どこかの段階で、法律に基づいて交渉を打ち切り、最悪の場合は強制収容をも決断しなければならないかもしれませんし、そうなると表面しか見ていないメディアから役所が叩かれたりもします。

はて。理想論だけを唱えている新興政党に、これができるのでしょうか。

結局は有権者の問題

新興政党は、現時点で国会や地方議会などに議席を持っているもの、設立されたばかりのものなど、さまざまなものがありますが、非常に残念ながら、それらのなかで「現実に根差した解決能力を持っている」と断言できるものはありません。

もちろん、国民民主党や参院の会派「NHKから国民を守る党」などのように、個人的に、「ちょっと面白いな」と思えるような政党もないわけではないのですが、これらの政党が今後、日本のメインストリームとして存在感を発揮するかどうかは、彼らの今後の努力次第でしょう。

いずれにせよ、日本の政治をよくするためには、良い有権者が良い政治家を選ぶというスパイラルが必要であり、これもまた「鶏と卵」の関係――すなわち「良い有権者が増えれば良い政治家が増え、良い政治家が増えれば良い有権者が増える」、という関係――にあります。

もちろん、自民党にとってもうかうかしていると政権を失うという危機感を持っていただくのは良いことですが、それと同時に、自民党にお灸を据えたくらいで「良くなる」ほど日本社会は単純ではありませんし、そのように考える人たちは、少々、物事を単純化し過ぎる傾向があるのかもしれません。

いずれにせよ、成果というものは、ちょっと政権を変えたくらいですぐに出てくるというほど甘いものではないことは間違いありませんし、「良い政治家がいない」と嘆く前に、変わらなければならないのは、じつは私たち有権者の側なのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (23)

  • 政治に期待しないであれば投票率は下がり
    政権に怒りであれば投票率は上がるでしょう
    投票率が下がって得をするのは
    いつものことながら組織票を持つ党です
    それを待ってるやからもおるのでは?
    ここで呼びかけても投票率に影響することはないでしょうが
    もし選挙となれば所属党に拘らず
    一番ましに思える方に票を投じるつもりです
    皆様も投票所へは足を運んでいただきたいと願っております

  • 岸田文雄首相と掛けてくいだおれ太郎と解く。
    (そのココロは?)
    口パクの演技を続ける腹話術人形だから。
    空白の吹き出しに聞く力を発揮して代筆してもらっているから。

  • 日本の有権者は、すべての問題を一挙に解決してくれる新政党が出てくるのを待ち続けているのではないでしょうか。もちろん、そんな政党があるのか、また、そう見えていただけなのかは別問題です。(まあ、そんな政党がいれば、それに越したことはありませんが)

  • 自民は公明と選挙に対して補完しあっているのですが、自民が過半数が取れなくなったら、ほかの党と連立を組むということになると思います。
    維新が第三党以上に躍進したら自民と組むことになるのではないか思います。
    維新の政策は地域政党なので派閥もなく、基本構想が決定すれば迅速に実行に移せ、官僚に対しての調整できると思う。

    • >維新が第三党以上に躍進したら自民と組むことになるのではないか思います。

      維新は連立には参加しないと思います。
      馬場代表は可能性は否定しないと言っていますが、藤田幹事長は反対しています。
      今は部外者の橋下徹氏は自民との連立に賛成していますが。
      私は、連立には加わらないほうが良いと思っています。
      政権批判が難しくなりますので、フリーハンドを失う事になります。
      政策毎に批判するか協力するか検討しないと、維新の支持者を裏切る事になる場合もありますので。
      自民党は、国民民主との連立を探るのではないかと予想しています。
      併せて過半数を超えればですが。
      連合にも秋波を送っているようですし。

  • ハッキリしているのは自民党、公明党、立憲民主党、日本共産党には絶対に一票は入れないと言うことだ。維新、保守、国民民主党から一党選びたいとかをがえている。ただ保守党に関しては未知数の期待なんだな。維新は自らを第二自民党となぞらえ、大阪は万博の意味がわからない。景気浮揚なのか、建設業界への忖度なのかなんの為の万博なのかがわからない。国民民主党は過去に玉木党首の獣医学献金問題があるが立憲民主党と分裂この方一番マトモに写る。保守党は候補者の選定、発表があってからの判断になるがなんとかそだったら面白い。最近令和新撰組の山本太郎氏がいい演説をしていた。左翼色が強く、話題先行ではあるがいっていることは庶民感覚にちかい。ハッキリしているのは与党には一票を投じないということだ。それだけはいえる。

    • 大阪万博:前世紀の湾岸地区開発計画「テクノポート」頓挫以降ヒタスラ税金を呑み(近年は年四桁億規模)続けるだけで一向に「積み上がる開発投資に見合うリターン」の見込みも立たない夢洲などを"負の資産"から「税収を産み出す地区」に転換しようとする試み最新版の起爆剤イベント
      過去自民なども「オリンピック招致」などを試みて失敗を重ねており、地元では「維新さんのコレであかんかったらどんならんで」という空気もある
      少なくとも今回の万博で、長年海底トンネル開通済みで放置されていた市営地下鉄中央線(現大阪メトロ中央線)の夢洲乗り入れは完了する模様

  • 先日の大下容子ワイドスクランブルで江東区長選挙で当選した候補がWEBに有料広告を出した問題を取り上げていた。法律で禁止された事項なので江東区長の責任問題であることは明白だけど、番組の中で、コメンテーターの萩谷 麻衣子が容認できないコメントをしていた。
    「WEBへの有料広告が禁止されているのは資金力のある候補が有利になるから」と説明。
    だけど、新聞への有料広告は制限を付けた上で合法化されている。
    ネット時代なのに新聞はOKでWEBはNGなのか? これ自体おかしい。新聞の既得権益を守るための法律だろう。シニアしか見ない新聞には広告を認め、若い世代や現役世代が見るネットには広告NG。若い人には政策をアピールしてはいけない、シニアは新聞で政策を見てくれ。おかしいでしょう。それでいて若い人が選挙に行かないという話題はよくでている。
    テレビ局は親会社の新聞社を守るため、ネットへの広告解禁に触れないでいる。
    萩谷 麻衣子はテレビ局の意向にそったコメントを熱演していた。笑

    • 選挙期間中は、新聞でもダメなのでは?

      このコメンテーターの解説は的外れですね。思い付きで言っている、選挙運動について知見が無い。
      金の問題ではない。しかも、高々14万円だよ、お金持ちじゃなきゃ出せない金額でもあるまい。新聞広告の方が高い。
      選挙期間中は、どんな方法だろうが、法律で決められた方法以外で選挙運動はやってはいけない。それは、ルールに基づいてやらなければ、公平にならないから。
      しかし、選挙期間前なら、個人の努力は認められる。統一地方選挙は時期が分かっているから、選挙期間前の1か月間は、地元の候補者のネット広告がじゃんスカ、ポップで上がって来る。これは、14万円じゃ済まない金額を使っていると分かる。が、新聞広告に比べれば安い金額。金の無い候補者が不利になる金額では無い。
      江東区長の場合、選挙スタッフが素人でも知っている選挙運動のイロハのイを知らなかった、素人の上を行くド素人だったんだろう、としか思えないですね。
      Web広告は安いし、ターゲットも絞り易いので、かなりコスパのいい方法だと思うが、選挙期間中にやるよりも更に前にやった方が遥かに効果は高いはず。
      まあ、コメンテーターならこんな解説をしなくてはと思うが、この萩谷某さんは、広告のことも、Webのことも、現実にも知見の無い人なんでしょう。こんなのが、コメンテーターをやっているから、益々、TV離れ📺か

      • 上の返信は、さよりです。
        書いている途中で、アップしてしまいました。

        >TV離れ📺か
           ↓
        TV離れが進むんじゃないか?

        です。

  • 「増税メガネ」という言葉、誰が作り出したのか興味ある。
    自然発生的に出てきたとは思えない。
    若者が作るにしてはセンスがない。
    オールドメディア、朝日新聞あたりじゃないか?
    以前にも「“アベる”という言葉がはやっているらしい」というデマを飛ばしていた。
    反応は「そんなのお前が言ってるだけだろう」という情けないものだった。

    • ネットで「アサヒる問題」というWikipediaを見つけた。

      過去に「アベる」とともに「与謝野る」というのも流行らせようとして失敗しているようだ。

  • 有権者が悪い、身も蓋もない切り捨てで大爆笑
    まぁ今後ともこの国の政治がマトモになる機会なんてありゃせんので実に正しいのが悲しい
    バカや無関心な人がいきなり賢くなるなんて土台無理な話なんで路線変更には百年は掛かりそう

  • その通りです。
    私は機会を見つけては
    ・投票に行きましょう。投票率が低いと喜ぶのは議員です
    ・宗教組織や各種団体、活動家も喜びます。
    ・戦後ようやく普通選挙権を獲得できたのに捨てるのはもったいない。
    ・誰に投票するのかが分からなければ鉛筆をころがしましょう。
    と話をします。
    だいたいの人が嫌がらずに聞いてくれます。(投票に繋がれば尚良いのですが)
    変なおじさん状態です。

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