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首相は「増税メガネ」→「減税メガネ」に豹変しては?

社会のネット化が進んだということは、私たち一般国民がネット上で噂しているトレンドが、岸田首相の目にも止まっている可能性がある、ということです。風のうわさによると岸田首相は「増税メガネ」というあだ名を気にしているとか。もしそうなのだとすれば、それを返上するためには、さっさと「減税メガネ」になれば良いのです。

インターネットの社会的影響力

誰が何と言ったところで、ネットの社会的影響力が日増しに強まっていることは、間違いありません。

ひとむかし前であれば、インターネットは一部の「オタク」たちのツールに過ぎませんでした。2008年から09年ごろに、「新聞・テレビなどのマスゴミ(※)は許せない」、「ネットに事実がある」などと叫んでいた、社会不適合者である怪しい某自称会計士などは、その典型例でしょう。

(※「マスゴミ」とは、インターネット上で自然発生したと考えられる、「マスコミ」と「ゴミ」を組み合わせた造語。)

ただ、こうした「一部のヘビーPCユーザーたちのツール」に過ぎなかったはずのインターネットは、いつのまにか一般の人々にも広まり、いまやネットの利用時間は、全年代において、テレビの視聴時間を上回っているほどです(図表)。

図表 メディア別利用時間(全年代、2013年以降)

(【出所】総務省『情報通信白書』掲載のデータをもとに著者作成)

スマホで生活が変わった!

背景には、なんといってもスマートフォンをはじめとする、気軽に使用可能な電子デバイスの普及、という事情があります。スマートフォンは2010年以降、急速に普及し、いまや世帯保有率は9割を超え、本当にさまざまな場所で、スマートフォンが利用されています。

そして、スマートフォンは私たちの生活を非常に便利にしてくれています。

山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士の場合も、ここ数年、あまり使わなくなったものがあるとすれば、その筆頭格は、「紙のおカネ」、「紙の切符」です。モバイルSUICAを搭載したスマートフォンが1台あれば、スーパーでもコンビニでも、最近だと自販機やタクシーですら利用可能です。

そういえば、先日は飛行機に乗るための電子チケット、新幹線のeチケットを使用したのですが、これらも予約から決済、発券、使用まで、いっさい紙に印刷することなく、すべてがスマホ上で完結してしまいました。これも驚くべき話です。

※iPhoneの場合だと、発券済みの航空券は航空会社のアプリなどから「ウォレット」に追加すれば、搭乗直前にスマホにQRコードを表示させればOKです。また、新幹線はEXアプリ(東海道新幹線等)、「えきねっと」アプリ(東北新幹線等)で購入可能で、それをSUICAに紐づければ、それでOKです。

政治家がスマホを見ていないはずなどなく…

もちろん、スマートフォンなどが便利過ぎるがために、四六時中、スマートフォンが手放せなくなるという「スマホ中毒」は困りものですが、ただ、さまざまなツールとして利用可能であり、オンデマンドでデータを検索することができるこのデバイスは、多くの人々にとっては、もはや必需品のようなものなのでしょう。

現に、街中を少し歩いてみただけでも、最近だと歩きスマホをする者にぶつかられそうになることも多いですし、都会を走る通勤電車のなかでは、多くの人々がスマートフォンを食い入るように見つめています。

これが10数年前であれば、通勤電車内では新聞紙を器用に折りたたんで読み込んでいるサラリーマンをよくみかけたものですが、最近だとそもそも紙媒体の新聞を読んでいる人たち自体が、あまり見当たりません。

「会計士」と名乗る怪しい者の報告によると、ある車両では乗車していた客のうち、10人に7人くらいがスマートフォンを見つめていたのだそうですが(残り3人は寝ているか小説を読んでいるかのどちらかだった模様)、社会の構成員の多くがネットに抵抗感を持っていないことは間違いありません。

そして、政治家ですら、スマホを通じて得られる情報を気にしていることもまた間違いないでしょう。

「増税メガネ」とはずいぶんと無礼な…

そうなってくると、X(旧ツイッター)を含めたネットの世界で流行している単語は、そのまま社会で流行している単語になることも必然です。

そうした流行語のひとつが、「増税メガネ」です。

誰かが意図的に流行らせているのか、それとも自然発生したのかは知りませんが、これは少し前からXなどで見かけるようになった表現であり、当ウェブサイトにも10月2日付の『岸田さん、「減税メガネ」で衆院選圧勝を目指しては?』という記事のなかで、「増税メガネ」という表現を用いています。

ただ、この「増税メガネ」も、ずいぶんと無礼な表現です。

もちろん、岸田文雄首相は日本の「最高権力者」(?)でもあるため、民主主義国たる日本において、最高権力者たる首相に対しての「名誉棄損」というものは成立しないのですが、それでも岸田首相自身が具体的に何らかの増税を決断したわけではないことを踏まえると、レッテル貼りそのものでもあります。

しかし、岸田首相が「増税メガネ」と呼ばれるのには、それなりの理由があることも間違いありません。

たとえば、岸田首相がまだ政調会長だった2020年ころ、コロナ禍で政権が定額給付金を検討していたころ、岸田氏は(おそらく財務省の口車に乗せられたのか)「所得制限つきの給付金」案を取りまとめ、これを安倍晋三総理大臣が「所得制限なし」に変更させたという事例がありました。

また、岸田氏は首相に就任する前から、たとえば消費税を巡っても「あれだけ苦労して(税率を)上げたのだから、下げるべきではない」、などと述べたと伝えられているとおり、「増税には前向きな首相」とする印象がネット上で確立している可能性はあるでしょう。

実際、当ウェブサイトでも昨年の『税収3兆円増えているのに「1兆円の増税が必要」の怪』でも指摘したとおり、防衛費の増額に伴う「1兆円増税」という案が一部メディアに報じられたのですが、こうした増税に関する話題が相次いでいることも、「岸田(氏)は増税メガネ」論の根拠となっているのかもしれません。

(※なお、余談ですが、岸田首相を巡り、最近では「増税メガネ」だけではなく、「増税レーシック」などの派生形もあるようです。どうでも良い話かもしれませんが…。)

山崎元氏が「増税メガネ」返上を提案

こうしたなかで、経済評論家の山崎元氏が18日、ウェブ評論サイト『ダイヤモンドオンライン』に、『岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか』、と題した記事を寄稿しています。

岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか

―――2023.10.18 5:55付 ダイヤモンドオンライン『山崎元のマルチスコープ』より

山崎氏はこの「増税メガネ」について、「岸田首相本人がまだ増税したわけではないのに『増税』をあだ名にされ、愛情やユーモアが一切感じられない冷たい印象を与える『メガネ』と組み合わさった」という点に着目。

「まだやっていない増税」が岸田首相のトレードマークのようになってしまっている理由を過去の自民党総裁選や首相就任直後の言動などに求めたうえで、「岸田首相は首相でいたいだけの人」などと容赦なくこき下ろしている、というものです。

まるでどこかの怪しい自称会計士のウェブサイトあたりに掲載されていそうな議論です。

ただ、この記事の興味深い点は、これが岸田首相に対する単なる悪口で終わっていないあたりにあります。

山崎氏は『「増税メガネ」を返上したいなら対策は簡単だ』の節の中で、こう説きます。

岸田氏が『増税メガネ』というあだ名を返上するための手段は簡単だ。<中略>例えば、『岸田の首相在任中は、消費税率を引き下げることはあり得ても、いかなる場合も引き上げることはあり得ない』と、一切の留保条件を付けずに言い切ってしまうことだ」。

これは、ひとつの考え方でしょう。奇しくも当ウェブサイトで先日主張した「減税メガネ」論とも少し重なるかもしれません。

そのうえで山崎氏はこう述べます。

税収の上振れは一時的なものではなさそうだ。この際、還元を理由に消費税率を引き下げてしまうとどうだろうか。それだけで、おそらく選挙では負けようがない。選挙で勝てば、政権は強化されるのが政治的なセオリーだ。首相でいたいだけが目的なら、合理的な手段になる」。

大変に筋が通っています。

岸田首相の良い意味での豹変はあるのか?

そのうえで考察しておきたいのは、インターネットが社会の隅々にまで浸透したことで、岸田首相が本当に「減税メガネ」という表現を気にしている可能性があることでしょう。

山崎氏も指摘する通り、一般大衆というものは、政治家のことをじつによく見ています。

増税したわけでもない岸田首相が「増税メガネ」と呼ばれるのも、「岸田(氏)なら増税をやりかねない」と国民が見透かしている間接的証拠でもありますし、そうであるならば、山崎氏の指摘を受け入れ、岸田首相も「増税メガネ」を返上すべく、決断したら良いのではないでしょうか。

ちなみに『強く復活する現在の日本経済に最も必要なのは「減税」』でも指摘したとおり、経済を活性化させるための本格的な減税だけでなく、現在の日本には、インフレ増税(ブラケット・クリープ)を防ぐための制度メンテナンス的な減税が必要です。

差し当たってはブラケット・クリープをなくすために、給与所得控除、所得税率、法人税法上の「800万円の壁」、消費税法上の「1000万円/5000万円の壁」などの手当てが必要でしょう。

また、将来的には消費税に「0%の軽減税率」を設け、食品、生活必需品のすべてを事実上免税にする、社会保険料率などを変更する、といった、思い切った経済対策も実施すべきです。

正直、自民党の経済対策低減に所得税と消費税などの減税が盛り込まれていない時点で、萩生田光一・政調会長(安倍派)には失望しかありませんが、岸田首相がこれをどう挽回していけるかについては、有権者としては注目点のひとつでしょう。

岸田首相が「良い意味で」豹変するのを期待したいところです。

新宿会計士:

View Comments (20)

  •  昨年の12月に自民党内の反対を押し切り、「防衛費増額で不足する財源は法人税などの増税で賄う方針」を決めた岸田首相が、今度は「税収増を国民に還元する」として、党の税制調査会に所得税減税の方針を指示する方針らしい。
     所得税減税はありがたいですが、内閣支持率アップ→解散総選挙での勝利→総裁選での再選が透けて見えて、いただけない気がします。何よりも、政権を担うものとしての軸がない。
     それならいっそのこと、コロナの時のように一律10万円給付にした方が、国民の支持率はあがるのではないでしょうか。
     私はとうに岸田政権の見切りをつけていて、自民党内の政権交代に期待して、来るべき総選挙では、自民党以外に投票すると決めています。
     「年内解散があるとしたら、12月1日解散、5日公示、17日投票」とも言われますが、それなら早くしてもらいたいなあ。

    • コメント失礼します。
      > コロナの時のように一律10万円給付にした方が、国民の支持率はあがるのではないでしょうか。

      私は給付金は反対です。
      今回の措置の争点は、私は財務省が『税金を取りすぎていることを認めるかどうか』だと思ってます。ここを認めない限り0点です。

      給付金は公明とを利するだけです。いつまでこんな不毛な「取り立て&バラマキ」をやるのか。バラマキは利権が生まれます。ばらまくくらいなら取らなければよい、と言うのが自然だと思います。

      • 追加)(書き漏れ)
        > ここを認めない限り0点です。
        なので、評価をするとすれば、給付ではなく、減税の一択です。

      • MASUOさま
        コメントありがとうございます。
         私は、「一律10万円給付すべき」と申し上げているのではありません。そんなもの殆どが貯蓄に回るだけですから。財政支出としては愚策です。
         ただ支持率アップを狙うなら、その方が効果的だろう、と思います。所得税減税だと、やり方によっては金持ち優遇との批判が起こるでしょうし、仮に定額減税にしても、本当に困っている人(非課税世帯)の切り捨てとの批判が生じます。
         要すれば、軸となる考えもなく、その時の支持率に一喜一憂して、受けの良い政策を採ろうとする岸田政権は、信用ならない、と申し上げたいのです。
         「財務省が税金を取り過ぎている」に賛同する訳ではないですが、それを軸として、国民に信を問うなら、それもありだと考えています(安倍さんは、賛否あるアベノミクスを正しいと信じて、ブレませんでした。一国の総理はそうあって欲しい。)

        • 匿名様、仰りたいことはわかりました。
          ありがとうございます。

          > ただ支持率アップを狙うなら、その方が効果的だろう
          支持率アップのための給付金なら、それこそブレているように思います。本当にブレずにやるのであれば、減税一択です。

          > 本当に困っている人(非課税世帯)の切り捨てとの批判が生じます
          どちらにしても、批判されます。
          非課税世帯に厚く給付すれば、納税世帯には「俺らが税金払っているのに・・・」と不満を募らせます。

          繰り返しで恐縮ですが、今回の争点は、殿上人、王侯貴族、影の支配者とも言える財務省が、『自らの過ち(税金を取りすぎている)』を認めるかどうかです。そして減税と言う、その『前例』を作るかどうかに注目してます。

          私は、財務省は死んでも自らの過ちは認めないと踏んでいるので、減税はしないと思ってます。(やっても法人税減税)

          岸田は少し批判されると、すぐに迎合する悪癖があって、ルーピー鳩山を彷彿とさせます。もちろん岸田にもいいところはありますが。
          ブレずに、多少批判されても、しっかりと信念と原理原則を貫いてほしいという気持ちは同じです。

  • マスメディアの"政治記者"某に拠ると岸田首相ナンダカ週明けの所信表明演説で「減税」ブチ上げるツモリらしいでっせ?
    まーでも「所得税減税」だと低所得者層には響かない気もしますけんど、ソレでエエんかね??
    ソノ減税策に政権を浮揚させ得る効力はアリヤナシヤ???
    補選の推移と併せてヲチっすナ

  • 「ワシの政権下では消費税率を下げることはあっても絶対上げない!」
    宣言した途端に罪務省カンケーから不祥事噴き出して首相引摺り降ろされたりして

  • 騙されてはいけない。過去の数多ある政権の中で選挙に勝利したあと、「民意をえた」と詭弁を弄し前言を翻した例などや幾らでもある。確かに増税は確定はしていない。だけど物価高を放置し、エネルギー関連の高騰を無視している現状は実質増税と変わらない。増税メガネより無策無能メガネの方がしっくりくる。

  • この度の増減税論争で、誰も(特に増税派の連中が)税収弾性値のことを云わないのか、些かに不審を覚えております。

    GDPが1%が増えれば税収が何%増えるのか、人によっては2%あるいは3%にもなるとか。

    私自身そのあたりの事情に疎く、できれば新宿会計士様に詳しくレクしていただけたらと思う今日このごろです。

  • 「増税メガネ」は「財務省のポチ」を返上したくて官邸がリークしたという陰謀論を持っています。(笑)
    「増税メガネ」って、正直ピンとこないんですよね。語呂が悪いというか。
    流行語大賞的な理屈で考えた流行語のような匂いを感じるんです。

    ということでgoogleトレンドで見て見ましたが、初出は8/25のようです。検索ワードが少しばかり発生したその日に、日刊スポーツ(朝日系)がそれを報じています。

    googleトレンド:
    https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=today%203-m&geo=JP&q=%E5%A2%97%E7%A8%8E%20%E3%83%A1%E3%82%AC%E3%83%8D
    「増税メガネ」では分析できず「増税 メガネ」でやってますので、8/25以前にもチョコチョコグラフの反応はありますが、before:で絞って検索してみましたが岸田氏に対する初出はその日のようです。

    日刊スポーツ:「増税メガネ」がトレンドワードに 増税イメージ強い岸田文雄首相の呼び名「秀逸すぎる」の声
    https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202308250001346.html

    反応が記事と同日なので、ネットが先なのか記事が先なのかわかりませんが、新聞が記事にするとしても早くてもその翌日でしょう。
    日刊スポーツ含むマスコミ界隈がブームを作ろうとしたのではと疑念を抱いています。
    ネット発ではなく、マスコミ発のあだ名かも知れません。
    「学者の国会」ってのもTBSがそう報じるまでは検索ワードに上がったことすらなかった事実はよく知られていますね。

    ところで、岸田氏については増税の実施はしていなくても、増税に何度も言及してますので、そのあだ名は当然だと思いますけど。(笑)

  • 一度離反してしまったからには、当分アンチ自民でいくつもりだが、もし財務省解体や再編を検討し始めたなら一考する。憲法改正なんかよりよほど重要だ。
     なお岸田氏を、ポストに就きたいだけの人と見るのは軽く見すぎだと思う。ポストについたうえで権力を行使したいひとで、多くの国民が嫌がることを、権力で強制したいひとなのではなかろうか。簡単にいうとより多く取って分配するという親分したいだけの小者なのだ。

  • 選挙が終わってから反古にするくらい岸田氏ならやるでしょう。少なくとも再選選挙勝利すれば「信認を得た」と残りの任期で消費税上げるでしょうね

  • 増税メガネ呼ばわりされたくなければコンタクトレンズに変えるかレーシックでも受けたらいいんジャマイカ。

    そしたら海外から取り寄せの高級メガネをかけた庶民感覚とはズレた首相という誹りも免れられるし。
    ホテルのバーラウンジがどうの、オーダーメイドのスーツがどうの、ホテルのパンケーキがどうの、腕時計の値段で何人飢餓に苦しむ子供が救えるかだのとうるさい阿呆が未だに涌いてくるのは鬱陶しいですし。

  • 岸田さんにはぜひ減税メガネに変貌してもらいたいと思っています。
    ところが岸田さんは自分の頭で考える事が出来ない人です。
    親類縁者は財務省の関係者ばかり、その人たちは国民の生活など無視して全員増税派ですね。
    政治家は政治理念を持たないといけません。その為には経済の知識や国際政治の知識も必要です。とっさの判断が求められるのに、テロ組織のハマスとパレスチナを同一視する発言をするなど、政治センスの無い事が露呈しました。
    批判されればそれに姑息な対応をする政治姿勢は、政治家として落第ですね。

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