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日本人の9割が中国に悪印象:交流拡大で解決できない

言論NPOの調査によると、日本人の92.2%が中国に対し「良くない」印象を持っていることが明らかになりました。中国側では日本に「良い」印象を持つ人がわずかながら増えているのとは対照的です。これについて言論NPOの代表は対中感情の悪化について「交流が増えることで改善するだろう」と述べたそうですが、残念ながらそのように単純なものではないでしょう。現在の対中感情は中国のふるまいがもたらしたものだからです。

国民感情の悪化とは?

よく「国民感情が悪化する」という表現を見かけることがあります。

たとえば、「ハマスによるテロ事件の発生を受けて、日本国民のガザに対する感情が悪化すると予想される」、「イスラエルのハマスに対する報復攻撃を受けて、日本国民のイスラエルに対する感情が悪化すると予想される」、いった具合です。

ただ、ここでいう「国民感情」については、「ヒト、モノ、カネの流れ」といった経済統計と異なり、なかなかリアルタイムでは数値化し辛いものです。

いちおう、当ウェブサイトとして「定点観測」的に注目している調査がひとつあるとすれば、それは内閣府が毎年実施している『外交に関する世論調査』です。

この調査はだいたい年1回公表されており、多くの場合は「その年の10月頃に実施した調査を取りまとめ、同年12月ないし翌年の1月頃に公表される」、というパターンが多いようですが、その実施・公表時期は、年によって多少のブレがあります。

数字で見る日本の国民感情

この調査、日本国民の特定4ヵ国(米国、中国、ロシア、韓国)に対する親近感(「親しみを感じる」か、「親しみを感じない」か、など)や関係の良好性、重要性などに関する認識について、時系列で40年以上遡ることができるため、非常に意義があるものです(直近のものについては図表1)。

図表1-1 日本国民の4ヵ国に対する親近感(2022年10月時点)

図表1-2 日本国民の4ヵ国に対する関係の良好性に関する認識(2022年10月時点)

図表1-3 日本国民の4ヵ国に対する関係の重要性に関する認識(2022年10月時点)

(【出所】内閣府『外交に関する世論調査』をもとに著者作成)

ただ、この調査に欠点があるとしたら、やはり年1回程度しか公表されないことでしょう。

もちろん、長期的なトレンドを見るうえでは大変に有益な調査結果なのですが、調査を実施するタイミングによっては、日本と相手国との間で大きなイベントが生じたときに、それが国民感情にどのような影響を与えたかをリアルタイムで知ることが難しいのです。

そして、もうひとつの難点は、「相手国が日本についてどう思っているか」について知ることができない点にあります。

上記図表に示したものは、日本国民の感情であったり認識であったりしますが、相手国民の感情や認識は、この調査からは見えてきません。

言論NPOの最新調査

こうした観点から、当ウェブサイトとしては(「定点観測」とまではいかないにせよ)ある程度注目している調査がひとつあります。

それが、言論NPOが実施・公表している世論調査です。

言論NPOは10日、第19回目となる日中共同世論調査を公表しました。

中国人の半数を超える人が、世界で核戦争が起きると回答。その理由はロシアのウクライナへの対応―第19回日中共同世論調査結果を公表しました

―――2023年10月10日付 言論NPOウェブサイトより

調査は中国国際伝播集団と共同で今年8月から9月にかけて実施されたそうです(日本側では輿論科学協会、中国側では零点研究コンサルティンググループが調査に協力)。

結論的にいえば、日本側の世論は、中国に対し「良くない印象を持っている」(「どちらかといえば」を含む)が92.2%に達し、過去最高だった2014年(93%)に続き過去2番目の水準に達したそうです(ちなみに中国側は「良くない印象を持っている」は62.9%でした)。

日本の対中感情は安定して悪い

これについて言論NPOのウェブサイトに掲載されているグラフは、日中双方の国民感情が同一グラフに表現されており、少々読み取り辛いため、当ウェブサイト側にて日本側、中国側に分けてグラフ化してみました(図表2)。

図表2-1 日本国民の中国に対する印象

図表2-2 中国国民の日本に対する印象

(【出所】言論NPO調査結果をもとに著者加工)

どちらの図表でも、相手国に対し、「良くない印象を持っている」と答えた人が、「良い印象を持っている」と答えた人を上回っていることが確認できます。

ただ、中国側では調査実施年によって「良い印象」、「良くない印象」の割合が大きく変動しているのに対し、日本側では年を経るごとに「良い印象」が減り、「良くない印象」が高位安定している様子がうかがえます。

とりわけ中国側では対日感情は明らかに好転しており、

ちなみに日本人側の感情については、『外交に関する世論調査』でも、2005年頃から急速に悪化していたことがわかります(図表3)。

図表3 中国に対する親近感

(【出所】内閣府『外交に関する世論調査』をもとに著者作成)

独立する2つの調査で似たような傾向が出ていることからもわかるとおり、日本国民の8割ないし9割が中国に対し親しみを感じていないことは、どうやら間違いなさそうです。

その理由はおそらく中国側のふるまいにある

ではなぜ、感情がここまで「悪化」したのでしょうか。

言論NPOの調査ではその「理由」についてもアンケート調査を行っているものの、正直、選択肢に偏りが認められるため、その結果については本稿では引用しません。

したがって、ここから先はあくまでも想像ベースですが、やはり中国が共産党一党独裁国家であることに加え、中国による尖閣諸島周辺海域への侵犯が相次いでいること、日本の福島処理水を汚染水呼ばわりしていること、科学的根拠に基づかない輸入規制などが響いたのではないでしょうか。

それだけではありません。

自由の街だった香港では国家安全法が施行されましたし、日本と基本的価値を共有する友邦である台湾には軍事侵攻の意欲を隠していませんし、日本人拉致事件という犯罪を働いた北朝鮮という国に対しても、中国はダンマリを決め込んでいます。

最近だとチベットやウイグルなどでの人権弾圧などの実態も少しずつ日本人に知られてきましたし、中国当局が日本人を拘束するなどの事案も相次いでいます。

正直、これで中国に良い印象を持てという方が無理な相談でしょう。

交流が増えれば解決するというものではない

ちなみにこの調査を引用した時事通信の報道が、これです。

対中感情「良くない」9割超 中国人5割弱が処理水「心配」 世論調査

―――2023/10/10 18:32付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】

記事によると、言論NPOの工藤泰志代表は調査結果について、次のように述べたそうです。

両国の交流や政府間対話が動いておらず、相手への認識を報道によって判断している。(対中感情の悪化については)交流が増えることで改善するだろう」。

はて、そうでしょうか?

現在の日本国民の中国に対する厳しい視線は、おそらく、日中の交流が増えたことにより、少なくない日本人が中国リスクを適切に理解・認識するようになった結果ではないでしょうか。

とりわけ日中青年交流協会の元理事長で日中友好に尽力してきたことで知られる鈴木英司氏は2016年、「中国でスパイ活動をした」として拘束され、懲役6年の実刑判決をとして2016年に当局に拘束され、懲役6年の実刑判決を受け、2022年10月に帰国するまで収監されていました。

鈴木英司 日中友好の士が中国の獄中で過ごした6年

―――2022年12月23日付 中央公論.jpより

現在も中国当局に日本人が拘束されている事案が発生していますが、こうした中国側のふるまいこそが、日本側の国民感情を傷つけているであろうことは、容易に想像がつくところです。よって、非常に残念ながら、「日中交流を拡大したら、日本国民の対中感情が好転する」という話ではありません。

というよりも、日本は自由主義国家ですので、「悪化した国民感情を修復しなければならない」などと主張されたとしても、正直、そのような主張が共感を得ることは難しいでしょう。この国民感情は中国が招いたものだからです。

よって、悪化した日本国民の対中感情をどう修復するかは中国政府、中国共産党が考える話であって、私たち日本国民の側としては、無理に中国に親しみを感じる必要などないことは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 今から35年位前、おれは年に1回は中国に遊びにいった。20年位はつづいたかな。友達と行ったこともある。切っ掛けは中国人に結婚で騙されそうになった事か。取引先の社長から紹介するといわれてホイホイついていったのが始まりだった。その社長は大層な中華料理専門店をいとなんでいて、おれは信用したのだ。いゃぁ、、かわいかった。貴州省の貴陽の娘で20才と紹介された。おれが33の時。だけど結婚するには300万を要求され、哀れおれは振られたのだ。なんでも中国には結婚するときに親に感謝の気持ちでカネを出す習慣があるといわれたのだ、300万円がなかったわけじゃない。だけど執拗だったなぁ。破談にした後オレは、中国人とはなんなのか?ってな訳で貴陽まで彼女に逢いに行ったのだ、成田空港から上海の虹橋空港に飛び国内線で貴陽までいったのだ。詐欺師の中に飛び込んだのだ。前日に友人が成田空港近くのホテルに送ってくれた。貴陽に行って驚いた。彼女は16だという。当時は中国は20才からが結婚できる年齢だから先に300万円くれればあと4年で結婚させるという。いやいや騙されてたまるもんか!そんな与太話にのれるもんかと思ったおれは早朝はやくに上海に戻り帰国した。しかし、中国人はしつこかった。FAXが届き、いかに彼女がオレと結婚したいかを書き連ね300万円を要求するのだ。日本人社長には抗議した、彼の店とは取り引きを辞めた。信用ができないのだ。しかし何故だか大陸には憧れがあり毎年訪問した。それでも中国人を信用はすることはなかった。文中全部中国語です。

  • 概ね同感ですが、1点だけ。

    >>最近だとチベットやウイグルなどでの人権弾圧などの実態も少しずつ日本人に知られてきました

    チベットの実情には詳しくないんですが、ウイグルに関する中国政府への批判には多数の捏造やミスリードが含まれていると感じてます。
    具体的には、
    ①ウイグル人は弾圧を受けている。
    ②ジェノサイドが行われている。
    ③300万人が強制収用されている。
    ④ウイグル語を禁止して中国語を強制している。
    ⑤イスラム教を禁止している。
    といった内容です。
    事実に基づかない批判や印象操作は、ただの誹謗中傷になってしまいます。
    お隣の国には「被害者の証言があるのに否定するのか!?」と言う人が大勢いますが、その全てが事実を語ってるとは思えません。
    世界ウイグル協会による被害者の証言もそれと同様です。
    証拠が証言だけであれば先ず疑ってみて、他の状況証拠などと照らし合わせて判断すべきです。

    • なるほど、BBCの報道は信用しないということですか。

      比較的欧米に懐疑的な遠藤誉氏さえ、ウイグルでは矯正不妊手術を施していることをデータで示し、ジェノサイドと認めています。

      まぁ、日本は言論の自由があるのでブチャ虐殺を否定した宗男のように、突っ張ってても構いませんよ。

      • BBCを信用しないのではなく、BBCも朝◯新聞と同じぐらい偏向している、と言うより世界に公正中立なメディアなど存在しないと思ってます。
        遠藤誉氏の言論は知らなかったので、後ほど読んでみます。

        ぜひ↓こちらを読んでみてください。
        https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%AB%E4%BA%BA%E5%A4%A7%E9%87%8F%E8%99%90%E6%AE%BA
        両論併記になっています。
        私は、ジェノサイドを否定する側の主張の方に信憑性を感じます。
        その他にも私の考えとして、
        ・ジェノサイドを受けたはずのウイグル人の人口増加が漢民族より大きいのは、史上最も過酷な植民地支配を受けたと主張する民族がその間に人口を3倍に増やしたというのと通づるものを感じる。
        ・ジェノサイドがあったのであれば、他の民族と比較してウイグル人の人口ピラミッドが歪むはず。そういうデータが公表されていなくても、他の民族のデータは公表されていてウイグル人だけが公表されてないなど、そういうのがあれば信憑性を感じますが、ネットで調べた範囲ではそれを主張している言論が見つからない。
        ・新疆ウイグル自治区は入境規制の対象になっていない。ジェノサイドが行われている地域に他民族も外国人も自由に出入りできてウイグル人とも自由に接触できる状態を政府が放置するのは不自然である。
        ・中国政府に動機が無い。デメリットはたくさん思いつくけど、中国政府にとってのメリットがわからない。

      • 遠藤誉さんの言説を読んできました。
        先程紹介したWikipediaの『新疆ウイグル自治区における出生率の低下』の段をご覧になってください。
        遠藤誉さんのデータによると不妊手術が増加したことは分かりますが、何故それが政府による強制だと断定できるのかが分かりません。
        丸川和雄さんが言う、不妊手術に対する報奨金が大幅に増額されたことが原因、という方が妥当に思えます。
        なお、人口抑制策として不妊手術に報奨金を出すというのは、中国より先にインドで行われている政策ですので、インドを参考にして中国も導入したのではないかと思います。

  • 中国だけでなく韓国でもですが、この手の「対〇感情を改善したい」と訴える側は
    「とにかく交流だ、交流だ」と言うばかりなんですよね。

    「政治、歴史、軍事の問題は到底解決できそうにない」とあきらめているのはある意味
    正解かも知れませんが、かと言って「交流すれば仲良くなる」と言うのはどうか?

    昔、Enjoy Koreaと言う翻訳機能つき掲示板で日本人と韓国人が交流した所、
    レスバが頻発していたそうです。「仲が悪い人間と無理やり話をしたらもっと仲が悪くなる」
    のは当たり前だと思うのですが、それでも「交流、交流、交流」と繰り返すのは
    裏を返せば「交流でもダメならもう打つ手がない」と言う事なんでしょうかね?

    • 「話せばわかる」というのを絶対的真理だと信じ込んでいるお目出度い人たちなんでしょ。あるいは某国が「知れば知るほど嫌いになる国」と言われているのが理解できない人たちに違いありません。(某国≠中国)
      ま、それはそれとして、交流拡大自体は必ずしも悪いことではないでしょう。百聞は一見に如かずなどとも言いますし、自分たちの「常識」を疑う機会にもなりえますから。もっとも、それで政治的関係がどうにかなると思うのは、やはり実にお目出度い思考ですがね。

    • >裏を返せば「交流でもダメならもう打つ手がない」と言う事なんでしょうかね?

       そうです。これが日本人の特徴でして、戦前も交渉が行き詰まったら「打つ手なし」と戦争を始めたわけです。戦後は「戦争」をタブーとしたから壊れた蓄音機のように繰り返しているのですね。本質は何も変わっておりません。

  • 私自身の経験から言えば、交流したからと言って悪感情が無くなることはありません。
    尖閣諸島を狙ってるし、福島の排水で文句付けるし、日本人に嫌われるようなことばかりしてるのに悪感情が無くなるわけない。
    ただ交流したことで理解できたこともあります。
    中国政府が恐れてるのは自国民からの支持を失うこと【だけ】です。
    だから、政府に都合の悪いことは必死で隠そうとするし、どうしても隠し切れないことは「これは国にとって必要だった」と必死で説得しようとする。
    その過程で他国民からどう思われようが気にしない。
    政府にデメリットが無くて自国民からの支持を受けられそうなことであれば、他国民から悪感情を持たれるようなことでも躊躇なく実行する。
    元々そういう傾向がありましたが、習近平政権になってより強くなった印象があります。
    習近平政権の政策である『汚職の追放』や『富の再分配』は、富裕層からの反発が強い政策なので、庶民からの支持は絶対に必要です。
    そもそも、この政策を採り始めた目的が、「貧富の格差が拡大し過ぎて危険な水準に達しており、このままでは庶民の不満が爆発してしまう」というのを恐れたからです。
    現時点ではある程度支持を受けていますが、まだまだ達成には程遠い状況です。
    ですので、この政策がある程度軌道に乗るまでは、国際協調路線に戻ることはないと思います。

  •  中国の対日感情が上下しているのは共産党がメディアを通して操作ているからです。これはロシアにも言えることですが中国にとって世論は作るものです。牧羊犬をイメージすればわかりやすいでしょう。
     今は地政学における大転換期にあります。米国一極体制が崩れ、ロシアと中国が次の一極になるために世界に進出している状況です。当然極東の日本も無関係ではいられません。
     実は日中国交正常化において日米安保が問題視されたことをご存じでしょうか?米ソ冷戦において日本が防共の「不沈空母」として位置づけられていることに中国共産党が不快感を示したのです。これに当時米中接近を図ったニクソンが「日米安保は対ソ連のためであり、日本の軍事大国化阻止のためである」と説得にて是認させました。
     現在はお分かりのように対中国の重要要素となっております。ロシアがウクライナ侵略の口実として主張する「NATO東方不拡大の約束を破った」と似たような状況が起こっているわけです。
     今後中国は日米安保が日中関係の障害だとはっきり言うようになるでしょう。その時「日中関係のために日米安保を破棄しよう」と言える日中友好論者がいるかどうか見ものですね。