本稿では「日本という国を変えていくためにはどうすれば良いか」という、いつもとは少しだけ異なった視点で、政治家の実務能力について、「リアリスト」的に思考してみたいと思います。その際、いまちょっとした流行となっている「新興政党を作って日本を変えること」というアプローチについても、現実的な視点から考察してみましょう。経営学的に見れば、新興政党アプローチは効率の良い手段ではありませんが、日本維新の会という「成功(?)例」から見えてくるのは、10年単位で根を張ることの重要性です。
政治家の仕事は「理想を現実化すること」
政治に不満を持つ人はそれなりに多いと思います。
ただ、その一方で、「自民党にお灸を据えたらすべてが解決する」というほどに現実の政治が単純なものではないことも、また間違いありません。
本稿ではややリアリスト的な視点から、日本を変えるための方法として、「①個性的な少数政党に所属すること、②敢えて信念を曲げて大政党(自民党など)に所属すること」、そして「③イチから新興政党を作ること」、という3つを検討してみたいと思います。
もっとも、それを議論する前に、考察しておかねばならない論点が、いくつかあります。その最たるものが、「政治家の仕事」です。
当ウェブサイトの勝手な決めつけかもしれませんが、政治家の仕事とは、「理想を現実化すること」にあります。これについては具体例として、憲法改正――とりわけ「第9条の改正」――を例にとってみましょう。
第9条をどう変えるか
まずは改憲の条文を読みましょう
ある人が「憲法改正」を理想に掲げて政治家になったとしましょう。この人がそれを成し遂げるためには、いったい何が必要ですか?
これについてもあくまでも現実に即して考える必要があります。
憲法第96条第1項を読んでみると、こう書かれています。
日本国憲法第96条第1項
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
衆議院(定数465議席)と参議院(定数248議席)のそれぞれ3分の2以上、つまり衆議院議員の少なくとも310人、参議院議員の少なくとも166人の賛同を得たうえで、改憲を発議し、それを最終的に国民投票に諮ったうえで、過半数の賛成を得なければなりません。
したがって、まずは「改憲に賛同する人たち」を、衆議院で310人以上、参議院で166人以上当選させ、さらに国民が納得するであろう改憲案を起草して衆参両院で賛同を得る、という、わりと高いハードルをクリアする必要があるのです。
次に必要なのは「選挙の現実」を知ること
では、衆参両院のハードルについてはわかりました。その次に必要なのは、「選挙の現実」を知ることです。ここから先が、本当のリアリスト(現実主義者)的な視点です。
衆院選では第1党が比較的容易に圧倒的多数の議席を占めることができる反面、参院選では比例代表や中選挙区の選出議員の比率が4分の3近くを占めるため、第1党が「圧倒的多数」を占めるのは困難だからです。
まず、衆議院議員の任期は最長で4年ですが、解散総選挙があり得るため、通常は4年に1回よりももっと多い頻度で選挙が行われます。1947年4月25日の第23回衆議院議員総選挙以降、戦後の総選挙は27回行われていますが、平均任期は1047日(約2.87年)です。
しかも、衆議院の場合は全465議席のうち6割超に達する289議席が小選挙区に配分されていて、第1党が圧倒的に有利になりやすく、実際、小選挙区での戦い方次第では、「改憲勢力」が3分の2の多数を得ることは十分に可能です。
これに対して参議院の場合は解散がなく、総選挙も行われません。任期は6年で3年に1回半数ずつが改選されるという仕組みであり、ときの政権が参議院を解散することはできず、参院選で一度大敗を喫すると、第一次安倍政権以降の自民党政権のように、政権運営が苦しくなることもあります。
これに加えて参議院は全248議席のうち「1人区」は64議席と全体の約4分の1に過ぎず、比例代表が100議席、東京都や大阪府など当選者が複数人いる「中選挙区」で選ばれるのが84議席あるため、少数政党が比較的当選しやすいという選挙制度です。
こうした日本の選挙制度の仕組みを踏まえるならば、「衆参両院で3分の2の多数を占めること」は、非常に難しいことがわかります。とりわけ参議院で3分の2を得るのは、衆議院と比べて遥かにハードルが高いのです。
連続在任日数2822日、通算在任日数3188日という、史上最長の政権を率いた故・安倍晋三総理大臣ですら改憲ができなかったわけですから、「改憲を成し遂げる」ことがいかに難しい事業であるかが、なんとなく想像できるのではないでしょうか。
憲法第9条の改正もハードルがとても高い
さて、政治家の本来の仕事とは、自分自身の理念を現実社会に落とし込んでいくことにあるのですが、これについては先日の『政治家の実務能力の本質は「妥協で理念を実現させる」』でも論じたとおり、基本的には「妥協の連続」です。先ほどから指摘している「第9条の改正」についても同じことがいえます。
たとえば改憲ひとつとってみても、「僕が考え付いた素晴らしい憲法案」を、310人の衆議院議員と166人の参議院議員に承認してもらい、さらに国民の過半数に賛同してもらうのは至難の業です。
現実には、もし運良く改憲賛成派が衆参両院の3分の2を占めたとしても、「あれも変える」、「これも変える」、ではこれらの議員の承認を得るハードルは高くなりますので、やはり現実的には、多くの国民が「変えるべき」と考えている条文(たとえば憲法第9条)に焦点を絞らざるを得ません。
現実的なことを申し上げるならば、憲法第9条を第1項、第2項両方とも丸ごと改廃することは困難でしょう。せいぜいできるとしたら、第2項の一部を削除するか、第3項を追加するか、そのどちらかではないでしょうか。
第9条の構造
さて、文章の途中ですが、非常に長い余談です(※この余談部分は本論と微妙に関係していますが、やや脱線していますので、本稿の主題部分だけを読みたいという方は、いったん読み飛ばしてください)。
もし日本国憲法の改正がごく一部に留まったとしても、北朝鮮による日本人拉致問題を筆頭に、北方領土問題、竹島問題など、現在の日本が抱える問題は、解決に向けて一気に動き出す可能性が濃厚です。
ここで事実確認をしておきましょう。
日本国憲法第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
あまり知られていませんが、第9条のうち、じつは第1項については、いわゆる「不戦条約」(1929年7月発効:昭和4年外務省告示第64号、英語では “The Kellogg-Briand Pact, 1928” )第1条の条文をほぼそのまま踏襲したものでもあります。
改正すべきは第9条全体ではなく第2項のみ
この不戦条約の規定自体、「侵略戦争」を禁止したものに過ぎず、「自衛戦争」を禁じたものではない、とする解釈も一般的に見られるものであるため、正直、多大な労力を費やしてまで変える必要がある条文ではないかもしれません。
しかし、第2項に関しては、やはり変える必要があります。日本語として読むと、「自衛隊を含めた戦力の存在が違憲だ」、あるいは「自衛戦争自体を禁止した条文だ」、などと読めてしまうからです。
もちろん、一部の論者が主張するように、「陸海空軍の戦力保持の禁止」は「第1項の目的を達成するため」に限定され、「侵略戦争のための戦力を保持することを禁止しただけのものであり、自衛のための戦力を保持することまでは禁止していない」、といった解釈が成り立つ余地はあります。
しかし、後段の「国の交戦権は、これを認めない。」の記述に関しては、明らかに「蛇足」です。
「交戦権」の範囲をどう定義するかにもよりますが、もしこの「交戦権」に「自衛戦争の権利」を含めるならば、たとえ自衛のための戦争であっても「交戦をしてはならない」という規定にも読めるからです。
自衛隊のウェブサイトにある『憲法と自衛権』というページには、こんな趣旨の説明があります。
- 交戦権とは『戦いを交える権利』という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であって、相手国兵力の殺傷と破壊、相手国の領土の占領などの権能を含むもの
- 自衛権の行使にあたっては、わが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することは当然のこととして認められており、たとえば、わが国が自衛権の行使として相手国兵力の殺傷と破壊を行う場合、外見上は同じ殺傷と破壊であっても、それは交戦権の行使とは別の観念のものである
- ただし、相手国の領土の占領などは、自衛のための必要最小限度を超えるものと考えられるので、認められない
この見解の通りならば、たとえば北朝鮮による拉致事件を解決するために、北朝鮮に自衛隊や警察を派遣し、強制捜査を行い、金正恩(きん・しょうおん)ら北朝鮮指導者一味の身柄を拘束して日本に連行するという行為が違憲である、と読めてしまいます。
拉致は北朝鮮という国家による犯罪行為ですが、犯罪行為の首謀者らを逮捕することや、連れ去られた拉致被害者らを武力により取り返すことが違憲であるとすれば、それはおかしな話です。
(※余談ですが、拉致事件を巡っては、「どうやって北朝鮮に拉致被害者を返してもらうか」、「どうやって北朝鮮に事件の全容を教えてもらうか」ではなく、「どうやって北朝鮮に侵攻して拉致被害者を取り返すか」、「どうやって北朝鮮の指導者らを逮捕し、犯罪手口を自白させるか」を議論すべきだと思う次第です)。
第9条第2項の一部を変える/第3項を追加する
だからこそ、憲法第9条については第2項の末尾の「国の交戦権は、これを認めない。」のくだりを削除するか、それとも次のような「第3項」を追加するか、そのどちらかの対応は必要だと思います。
③ 前項の規定にかかわらず、自衛権の発動はこれを妨げない。
ただ、たったこれだけのことで、自衛戦争すら禁止されているかのごとき現在の日本の問題点が、かなり解決するはずです。自衛隊を日本軍に正式に改組し、軍法を整えることもできるでしょうし、念願の拉致事件解決に向けて、まずは対北朝鮮自衛戦争というアクションを起こすことも、少しはハードルが下がるでしょう。
(※どうでも良い話ですが、日本「軍」が拉致問題解決のために北朝鮮に軍事侵攻すれば、その瞬間、北朝鮮は崩壊するでしょう。そうなったら日本は一切手を出さず、大韓民国憲法において北朝鮮を含めた領域を自国領と定義する韓国に、北朝鮮統治を全面的にお任せすべきでしょう。)
ただ、べつに日本「軍」が北朝鮮に実際に侵攻する必要などありません。憲法が改正されただけで、金正恩は震えて眠れなくなるでしょうし、そうなると日本軍の軍事侵攻を待たずに、北朝鮮は拉致問題で日本に全面降伏してくるかもしれません。
同じく日本領を不法占拠し続けている韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領やロシアのウラジミル・プーチン容疑者、日本領海を頻繁に侵犯している中国の習近平(しゅう・きんぺい)主席らも、同様に、震えて眠れなくなるかもしれません。
(※もっとも、そうなる前にプーチン自身が国際司法裁判所に身柄を拘束され、戦争犯罪者として裁かれるという可能性もありそうですが…。)
改憲ひとつとってみても思い通りにはいかない
さて、長い余談を失礼しました。本論に戻ります。
ここでは憲法改正を例にとって、たとえば第9条をちょっと変えるにしても非常にハードルが高いであろうという点を概観しましたが、こうした議論を踏まえると、「これだけ苦労してこれっぽっちしか憲法の条文を変えられないのか」、などと落胆する人もいるかもしれません。
とりわけ、「もしも改憲派が衆参両院で3分の2を占めたら、すぐにでも『僕が考える理想の憲法』が実現し、日本が素晴らしい国になる」、などと考えている人からすれば、こうした現実に対しては、失望しかないのかもしれません。
当然、本稿で示したような、「第9条のほんの一部をちょっと改正するだけ」の改憲しか実現できなかったとすれば、もっと踏み込んだ改憲を期待していた人からは激しい反発も生じるでしょうし、なかにはその改憲を実現した総理大臣に対し、「●●は売国奴だ」、などとする批判も出るかもしれません。
そして、「自分の思い通りにならないこと」に対するフラストレーションが講じて、極端な主張を掲げる政党(たとえば穏健な保守政党を装った、ただの極右政党)を支持したくなる気持ちも、わからないではありません。
ただ、それと同時に理解しておかねばならないことは、戦後80年近くの間、改憲を阻む勢力に3分の1を超える議席を与え続けて来たのが、ほかならぬ日本の有権者だった、という事実です。
もちろん、インターネットがなかった時代、政治的に偏向した新聞やテレビなどの大メディアが有権者の意思決定に悪影響を与え続けて来た、という要因も否定できませんが、もしそうだったとしても、日本国民の意思に基づく選択の結果として、憲法改正が阻まれてきたことは事実です。
こうした事実を踏まえるならば、もしあなたが「改憲派」だったとしても、あまり劇的な憲法改正が最初から実現するとは期待すべきではありません。
たとえば改憲問題ひとつとってみても、憲法改正という「理想」は決して諦めずに、しかし現実をしっかりと見て、まずは「最初の一歩」を動かすことができる人こそが、本当の意味での政治家といえるのです。
多数派を構成する3つのアプローチ
それを実現するために必要なのは「数」
以上、改憲を例にとり、長々と論じてきた内容をヒトコトで要約すれば、「政治家とは、理想を捨てず、現実との折り合いをつけることができる人物」といえるでしょう。
そして、日本は大統領制ではなく議院内閣制を採用しているため、政治家として何らかの政策を提唱しようと思うのならば、ひとりで国会議員になっても、正直、ほとんど意味がありません。法律をひとつ通すにしても、そもそも議員立法のためには一定以上の人数が必要だからです(図表)。
図表 議員立法に必要な賛同者数
区分 | 衆議院 | 参議院 |
予算を伴わない法案 | 20人以上 | 10人以上 |
予算を伴う法案 | 50人以上 | 20人以上 |
(【出所】衆議院『議案の審査』をもとに著者作成)
以上を踏まえたうえで、現代の日本社会を動かすためには、最低限、何らかの政党に所属することは必要ですし、理想をいえば、衆議院議員ならば最低20人以上、参議院議員ならば最低10人以上を動かす力が必要です。
個性的な少数政党に所属してみる
では、どうやってこの多数派を作っていくのでしょうか。
これについてはさまざまなアプローチがあるとは思いますが、ここでは①個性的な少数政党に所属すること、②ある程度自分の信念を曲げつつも、最大与党である自民党に敢えて所属すること、そして③新党をつくること、の3つを考えてみましょう。
手っ取り早いのは、現在の(そして当面の)与党である自由民主党に所属すること、それが無理だとしても、自民党に対して何らかの影響力を与え得る政党(現在だとさしずめ公明党か日本維新の会、国民民主党あたりでしょうか?)に所属することのどちらかでしょう。
このうち「①少数政党に所属すること」については、以前の『「少数野党」に投票することが決して無意味でない理由』でも論じたとおり、「少数野党には基本的に意味がないものの、ときと場合によっては少数政党でも力を持つことはあり得る」、というものです。
あなたがもし、「少数野党」を支持していたとします。選挙でそのような政党に貴重な1票を投じたとしても、その政党はしょせん「少数野党」なので、「その政党が掲げる政策が実現することはあり得ない」、「したがって、選挙では棄権する」。もしあなたがそんなことを考えているのだとしたら、そうした考え方は、即刻改めてください。政界は一寸先が闇です。与党が過半数割れを発生させるなどした場合、あなたが少数野党に投じた票は、結果的に無駄にならないどころか、わが国の政治を変えていく原動力となるかもしれません。解散総選... 「少数野党」に投票することが決して無意味でない理由 - 新宿会計士の政治経済評論 |
現在の国民民主党がその典型例でしょう。
玉木雄一郎氏という、ある意味で個性的な政治家が、自身の信念に沿った内容を主張し続け、野党でありながらもときとして予算案に賛同するなどし、硬軟取り混ぜて自民党に自分たちの主張の一部をうまく呑ませているというのは、少数野党としては面白い動きです。
一部では現在の自公連立政権に3番目の連立与党として加わってほしい、といった期待もあるようです。
ただし、日本の憲政史上、自民党と連立を組んだ政党は、たいていの場合、政党自体が粉々になり、四分五裂して消えていくという運命にあります。
古くは1976年に結党され、1986年に多くのメンバーが自民党に合流して解党した新自由クラブがその典型例ですが、それだけではありません。1990年代以降の新党さきがけ、日本社会党(現在の社民党)、自由党、保守党、保守新党などもその事例でしょう。
自民党と長年連立を組んでいて解党していないのは公明党くらいなものです。
よって、過去の経緯も踏まえると、自民党には近付きすぎると危険であることは間違いないでしょうし、(個人的にはこれといった根拠があるわけではないにせよ)現在の国民民主党も連立入りすれば数年でバラバラになり、自民党に吸収されるのが関の山だと見ています。
自民党に所属してみる
次に考えられるアプローチが、②の「敢えて自民党に所属する」という選択肢です。
インターネット上で人気が高い政治家のひとりが青山繁晴・参議院議員ですが、「青山ファン」にとっては「なぜ青山氏が自民党所属なのか」、という疑問を持っているケースもあります。
ただ、青山氏の発言から判断するに、青山氏自身は「自由民主党」に拘っているようですが(※青山氏は「自民党」という略称を使用しません)、これは賢明な戦略です。上記で論じてきたとおり、自民党が与党であるという現実を踏まえ、自民党内部に賛同者を作り、自民党を内部から変えることが手っ取り早いからです。
青山氏といえば「拉致問題解決」と並んで「自前資源(メタンハイドレード)の開発」が持論ですが、ときとして自身の信念を曲げ、賛同したくない法案にも賛同しているのは、メタンハイドレードの開発を前に進めたいという「現実的なアプローチ」があるからでしょう。
個人的に青山氏の言動には誇張も多いと考えており、これに加えて「政治家としての青山氏」の主張内容に全面的に賛同するつもりはありませんが、ただ、青山氏の政治家としての動き方は、大変に参考になるものでもあるでしょう。
それに、青山氏は自民党内で「日本の尊厳と国益を護る会」という有志のネットワークを作っており、今年3月9日時点で85人が所属しているそうですが、これは大したものです。「自民党を中から変える」という青山氏の理念は、青山氏なりに結実しつつあるのではないでしょうか。
新党をイチから作り上げる
こうしたなかで、もうひとつ検討しておきたいのが、「③新党をイチから作り上げ、それにより日本を変えていく」、というアプローチです。
端的にいえば、非常にハードルは高いと言わざるを得ません。そもそも新たに政党を起こした場合、政治家としての実務スキルがない状態でスタートせざるを得ないからです。
『政治家の実務能力の本質は「妥協で理念を実現させる」』などを含め、以前からしばしば指摘している通り、政治家に最低限必要なのは志(こころざし)と実務能力の2つですが、いくら志があったとしても、実務能力が伴っていなければ、努力は空回りします。
まず、政治家としての実務能力には、さまざまな必須項目がありますが、その最たるものは「どうやって選挙に勝つか」という戦略面にあります。
先ほども少し指摘しましたが、現実的には新興政党でも参議院の比例代表や中選挙区(とくに1回の改選で6人が当選する東京都や4人が当選する神奈川県、愛知県、大阪府など)では比較的ハードルは低いのですが、衆議院の小選挙区や参院の1人区で当選するのは至難の業です。
じっさい、最近国会議員選挙で当選者を輩出している新興政党(れいわ新選組や参政党、NHKから国民を守る党など)の事例でも、まずは参院比例代表で議席を獲得しているケースが多く、例外は2022年参院選で東京都選挙区(当選者6人)で立候補して当選した山本太郎氏くらいなものです。
そして、少なくともれ新、参政党、N党の3党に関しては、衆議院の小選挙区、参議院の1人区では議席を獲得していません。日本維新の会にしても、2021年の選挙では、小選挙区で勝利を収めたのは大阪府の15選挙区と兵庫県の1選挙区、合計16区のみです。
このように考えていくと、「新しい政党を作って日本を変える」というアプローチは、正直、あまり効率は良くない、というのが実情なのです。
くどいようですが、運良く議席を得ることができたとしても、所属議員が数名の政党では議員立法もままならないでしょうし、議員としての任期中にめぼしい活動もできず、成果も上がらず、次回選挙ではブームが去ってしまい、あえなく落選してしまう、というのは、新興政党ではこれまで何度も繰り返されてきたパターンです。
経営学的に見た「新党経営」
ただ、それでも本稿では、敢えて「経営学的な観点」から、新興政党運営を考えてみたいと思います。
政党を運営するためには、まずは所属する政治家の数を増やすことが必要であり、理想をいえば地元に密着し、地道に地方議会の議員を増やすなどの努力が必要でしょう。そのためには、新興政党はまず、各地方に組織を作り、党員やボランティアを募り、国政だけでなく地方選でも地道に候補者を立てていくべきでしょう。
政治日程としていえば、今年4月の統一地方選が地方議員(あわよくば都道府県知事、市区町村長)を効率良く当選させるチャンスだったのですが、これを逃したのであれば、毎年4月、10月に行われる衆参両院議員補選を見据え、まずは「勝てる選挙」を探す必要があります。
それと同時並行でやらなければならないのは党員の募集であり、政治資金規正法に基づく会計報告などに向けた内部統制づくりも必要です。可能ならば党代表を含めた幹部全員が、弁護士に加え、政党監査などに詳しい公認会計士ないし監査法人などからの勉強会を依頼し、受講した方が良いかもしれません。
(※ちなみにどうでも良い話ですが、山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士の場合、「登録政治資金監査人」の登録を行っていませんので、残念ながらそのレクチャーのご依頼を受けることはできません。悪しからずご了承ください。)
そのうえで、3年に1回必ず訪れる参院選では、比例代表で確実に数議席を獲得できるような体制を作るほか、これと並行して中選挙区(たとえば東京都などの都市部の選挙区)で1議席以上を獲得すること、不定期に行われる衆院選でもまずは比例代表での当選を目指すことが重要です。
最低でも2回、参議院議員通常選挙の比例代表(とあわよくば選挙区)で議席を獲得しようとすれば、そこまでに最短でも4~5年の歳月が必要です。現在から準備を始めたら、最短で2025年に行われる参院選と28年に行われる参院選、2025年までに行われる衆院選の3つの選挙の準備をすべきでしょう。
足掛け10年:維新の事例
ただし、『解散総選挙の可能性を日程で読む』でも述べたとおり、現実的に考えて、12月24日までに投開票となるよう、衆院の解散総選挙が行われる可能性がないわけではありませんが、もしそうなってしまった場合、今年の衆院選で候補を立てるのはスケジュール的に間に合わないかもしれません。
あるいは、拙速に候補を立ててしまい、妙な人物が当選しようものなら、却ってその政党の評判を落とすことにもつながりかねません(N党から立候補したものの、参議院を除名されて逮捕された東谷義和氏の事例がその典型例でしょう)。
したがって、新興政党を作って国政の場で存在感を発揮するようになるまでには、やはり足掛け10年程度の期間は必要です。
ここで参考になる新興政党の先行事例としては、日本維新の会が挙げられます。
維新を巡っては正直、賛否両論あるとは思いますが、衆院で41人、参院で21人の議員を輩出し、近い将来には「立憲民主党を抜いて最大野党になってやる」と鼻息を荒くしているほどですから、「経営学」的に見て、新興政党としては成功した部類であることは間違いありません。
この維新が成功(?)した要因のひとつは、大阪府と大阪市などでガッチリと地盤を作ったことにあります。
衆院選では大阪府の18の小選挙区のうち、公明党の3選挙区を除く15選挙区のすべてで当選していますし、2022年の参院選では改選4議席のうち2議席を獲得するなど、圧倒的な強さです。維新は大阪の地盤が安定しているため、ある意味安心して、他地域(たとえば東京都)などに進出できるのです。
新興政党が地に足を付け、維新のように10年単位で根を張って勢力を拡大していけるかどうかは、結局のところ、その政党次第、といったところでしょう。
(もっとも、仮に「敵を多く作るような評論家」らが新興政党を作ったとしても、10年後といわず、2~3年後には空中分解している将来しか見えない、と思う人もいるかもしれませんが、はて、どうなることでしょうか。)
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大阪も、都構想に2度失敗しています。一回目には市民賛否投票が過半数に達しなかった。この時は公明党を取り込んで実施したのですが、うまくいかなかった。敗因は市民に周知する部分が足りなかった。
この時は公明党が支持者の市民へのアピールが足りなかった?
二回目は、議会で公明党が難色を示して?実現しなかった。
大阪都構想は、地方行政の集約・効率化の要であり大阪府の市・近畿の他府県にも影響を与える構想でしたが、維新の会の原点であります。これにより日本の各地方に波及し、国会への進出を目指しています。
そういう政党があってもいいのではと思う次第であります。
新党が生き残っていくためには、追い風が吹いている間に、ある程度の岩盤支持層をつくる、ということでしょうか。まあ、新党も10年たてば、新党とは言えなくなりますが。
実は維新って、最速と言っていいスピードで政治的な勢力を拡大しているんですよね。
橋下徹氏が、その知名度と地元での活動実績を背景に、一足飛びに有力都道府県の知事に当選(この「活動実績」が極めてリベラル…というか左翼的なのも、私が維新を今ひとつ信用できない理由なのですが)。
そして、橋下氏が知事として実績を上げつつ、自民党会派を分裂させて、府議会最大勢力級の与党を獲得する。
つまり、泡沫政党として政治的に無視される段階をスキップしてスタートしているわけです。
先日、X内でとあるインフルエンサーが、視聴者5万人程度の新党代表のYouTubeライブをスクショして「新党の強みはこの発信力!」とか言っていたので()、「たった5万人ですか?」と若干の煽りを入れつつ、国政選挙で議席を得るために必要な票数を説明して差し上げましたw
それにしても、あの支持者の方々は、具体的な方策もなしに、結党しさえすれば国政を左右し得る勢力になると信じきっておられるようで…
「信者」とはああいうものなのだな、と実感した次第です。
「永遠の0議席」
amazonで売っていなかったなどと抗議するのはご遠慮ください。
維新の会というのは、たかじん(家鋪 隆仁)がある政治問題の番組の司会をしていた時にコメンテーターとして弁護士の橋下徹が参加していて、当時大阪府知事選があったのでノリで「お前がやれ」と橋本徹にいったのが始まりです。その時のお題目というか旗印が、大阪都構想でした。ですから政策は、あまり偏見のないいわゆる市民政党です。
>参議院は全248議席のうち 「1人区」 は64議席と全体の約4分の1に過ぎず、比例代表が100議席、東京都や大阪府など当選者が複数人いる 「中選挙区」 で選ばれるのが84議席ある
1人区の選挙は小選挙区選挙と同じだから、参院選の選挙区選挙は、地域によって異なる選挙制度で行われているようなものですね。
毎回、選挙が終わると 「1票の格差」 を問題にして、全国で訴訟を起こす人達がいるけど、こちらの方がよほど問題だと思います。
1人区が増えたのは、まさに 「1票の格差」 を解消するために、地方の議席を減らしたからです。
しかも、頻繁に区割りの見直しが行われる衆院選の小選挙区と違って、参院選の選挙区は都道府県単位だから、1票の格差は大きいまま。
参議院はいっそのことアメリカ上院のように各都道府県に同数の議席を割り当て、地域代表と憲法で位置づけてしまえば良いのではないかと思う。そうすれば「地方軽視だ!」などの世迷い言もある程度減るのではなかろうか。
その代わりとして、衆議院の方は徹底して人口比例にすれば良いのではないかと妄想します。
抵抗は大きいでしょうけど。
日本保守党について。
日本には良くも悪くも「出る杭は打たれる」と言う文化があります。
新参者は余程謙虚に、上手く立ち回らないと生き残れないように思います。
申し訳ないですけど、某作家には謙虚な姿と言うものが私には想像できません。
加えて、現在マスコミは報道しない自由を行使してますが、自身の敵と認識した場合は、数多の嫌がらせやネガティブキャンペーンをやってくることが予想されます。特に「保守」などと言う、自身の対極の勢力に対しては、想像を絶するものがあるかもしれません。
結論としては、10年と言う期間を生き残るのはなかなか難しいのではないか、と思う次第です。
誤解の無いように、私は日本保守党を応援してます。10年と言わず20年、30年と続いてほしいと思います。そのためには、謙虚に、けんか腰にならず、しっかりと地に足を付けて活動してほしいです。最近政治塾を開くという噂を耳にしましたが、いい傾向だと思います。
まぁ、村八分もマスコミのネガティブキャンペーンもどちらにしても、有権者が政治に関心を持って選挙に行くことが大事だと思いますが。。。
※私には想像もできませんが、スタートダッシュを切れる『ウルトラC』(古い?)みたいなことってできるんでしょうかね。もしできるのなら、一気に党勢を拡大して、既成事実を作るのもありだと思うのですが・・・
本稿も、食堂の例えがよく当てはまりそうです。
この町には、純和食が求められているのに無い、と思う料理人が居る。
さて、雑多なメニューでやや中華やアメリカ風が多い自民食堂に入って、下っ端から和食を少しずつ推していくのか。これだとかなり時間はかかってしまうし、本当にやりたいことまでできるかどうか。
最近少しずつ客が増えた和食を標榜しているがイマイチ振り切れていない国民軒や維新屋にそこそこの待遇で入って腕を振るうべきか。しかし自民食堂に打ち勝って本格和食の有名店というまでもっていけるかどうか。それぞれ変な従業員も居るし、片方は和食というか大阪料理屋で主に味より節約で収益を上げてきた体質、でなんかたまに幹部がピロシキとかボルシチ推してる。
はたまたいきなり一人で店を構えてうちこそが本格和食だと名乗りを上げるか。しかし新しい店には警戒感が強い(以前ヒデェ店が出来たとき歓迎されたがすぐに食文化を破壊した)この町では、最初から信用はまずされない。
自民食堂の文句ばかりでメニューがろくになく客席にアレが転がる不衛生な立憲、町を破壊せんと毒物すら出す共産、北朝鮮郷土料理しか出さない社民、やたら高額な有機無農薬野菜をふんだんに使って料理はほどほどに和食を謳ってたかと思ったらなんか関係ないセミナーで金をむしる参政、その他諸々に入るよりはよほど良いでしょうけど。
たしかに自民党にお灸をすえる、、で解決はしない。解決はしないが変革につながる可能性はある。考えさせること。そこから始めなければなにも前にすすまない。選挙に勝ちたいから減税を口にする。下らない知識しかないタレントを有名だからで当選させ票のかさあげに利用させるし、利用される。生稲晃子、今井絵理子、中条きよし、蓮舫、三原順子、元プロ野球の石井、だれかいるのか?三原順子だけは法案をとおしてはいる。子宮けいがん検診だっけなぁ。自分が子宮癌になった経験があるからな。あぁ、、愚か者~で名をはせた女性もいたな丸川珠代だっけ。国民にも責めはある。こんな連中を選ぶんだから。憲法改正は国民がむきあわなければいけなくて、日本のまわり朝鮮上下。ロシア、中国が話し合ってまともな国ではないことは明白であろう。話し合ってわかるなら北方領土も尖閣諸島も竹島もかえっている。不戦の誓い?こんな事いっている国は日本だけだ。九条教から抜け出すべし。
単年度で予算を使い切る。予算を多額に獲得して使い切った人は優秀という評価。単年度決算の弊害で毎年度大赤字で借金はうなぎのぼり。多くの人が何十年も指摘しているこの部分を再構築する経営視点の「新党」がほしい。
日本保守党の「結党宣言」「綱領」が発表されましたので、それへの評価を期待して読み進めたのですが…
論評に値しないとのご判断なのでしょう。
綱領が無い綱領が無いと批判されておられたようでしたので、些か拍子抜けでございました。
>青山氏は自民党内で「日本の尊厳と国益を護る会」という有志のネットワークを作っており、今年3月9日時点で85人が所属しているそうですが、これは大したものです。「自民党を中から変える」という青山氏の理念は、青山氏なりに結実しつつあるのではないでしょうか。
自民党内で有象無象が徒党を組んだところで、何も出来はしない。
例えば、過日の対中非難決議の顛末。
当初あった「非難」「人権侵害」はおろか「中国」さえも削られた。
一体どこが日本の尊厳と国益を護るだ。
私、入会しましたよ。
なんか、政治が楽しくなってきましたよ。岸田氏の批判をして溜飲を下げてるだけから、何か変わった気がします。
この党が自民党政治を変えるとか、この党が10年後どうなってるとか、そんなのは誰も分かりません。日本の端っこにいて花の東京は遥か遠くですが、ただ応援したいだけです。
わたしは一般党員になりました。
こんなこと人生初のことで、自分でも驚いています。
以下余計なことですが、お許しください。
今は黙殺してますけど、そのうち「朝日」さんたちが批判を始めるでしょうね。
ターゲットは百田氏個人(ネット上では発表直後から盛んに行われています)
貶めるためならば、あらゆる印象操作、捏造をも辞さない。バレたら小さな訂正記事を出せば良い。かつて安倍総理にやったように…
でも「朝日」さんたちよ、あの二人の反撃能力を甘く見てると、大変なことになるかも知れないよと、衷心からご忠告申し上げたいw
失礼いたしました。
私は家族割党員です。私もまさか自分が政党党員になるとは思ってもいませんでした。育成ゲームに参加しているような気分もありますね。
朝日系のABEMAに出演しましたし、朝日といえども節度は守ると思います。この国が良い方向に行くと信じています。
わたしもあの番組見ました。
百田代表(仮)がいつ暴走するかハラハラしながら(半分期待しながらw)
意外にも的確に対処されていたなというのが感想です。
圧巻は有本さんでした。
あの番組は「朝日」さんたちとの前哨戦だったかも知れません。
失礼いたしました。
>※余談ですが、拉致事件を巡っては、「どうやって北朝鮮に拉致被害者を返してもらうか」、「どうやって北朝鮮に事件の全容を教えてもらうか」ではなく、「どうやって北朝鮮に侵攻して拉致被害者を取り返すか」、「どうやって北朝鮮の指導者らを逮捕し、犯罪手口を自白させるか」を議論すべきだと思う次第です
旧統一教会を排除するように、朝鮮総連や朝鮮学校を排除すれば、金氏朝鮮はそれなりに苦しくなるんじゃないかと。
ついでに特別永住許可を10年後とかに取り消し、原則として不法滞在者として朝鮮半島へ強制送還するってのも併せて行えば、ワクワ…興味深い事例を確認出来るんじゃないかと。