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ロシアが日本産水産物禁輸へ?壮大なセルフ制裁の予感

ロシアはいったい何がやりたいのでしょうか。中国が科学的根拠なしに、日本からの水産物の輸入を禁止していることは有名ですが、報道によるとロシアがこれに参加する可能性があるようなのです。ただ、魚介類に関するロシアから日本への輸出は今年1月から7月だけで682億円に達しているのに対し、日本からロシアへの輸出はわずか2億0864万円。もしも日本が対抗措置を講じたら打撃が大きいのはロシアの側です。

ヒト・モノ・カネで読む経済

普段から当ウェブサイトで報告しているとおり、もしも経済を議論するならば、可能な限り、「数字」を使うことが必要です。

たとえば「日本とN国の関係はとても重要だ」、「日本はN国と地理的にとても近く、歴史的にも古代から交流があった」、などと言われても、あまり説得力はありません。本来ならば、「ヒト、モノ、カネ」という流れで、日本がその国とどのような関係を持っているのかを議論すべきではないでしょうか。

これを説明するために作成したのが、たとえばこんな図表です(図表1)。

図表1 日本とロシアの間のヒト・モノ・カネの流れ
比較項目 具体的な数値 全体の割合
訪日ロシア人(2023年1月~8月) 22,782人 訪日外国人全体(15,189,896人)の0.15%
ロシア在住日本人(2022年10月) 1,321人 在外日本人全体(1,308,515人)の0.10%
日本在住ロシア人(2022年12月) 10,681人 在留外国人全体(3,075,213人)の0.35%
対露輸出額(2023年1月~7月) 2908億円 日本の輸出額全体(56兆0781億円)の0.52%
対露輸入額(2023年1月~7月) 6207億円 日本の輸入額全体(63兆1088億円)の0.98%
対露貿易額(2023年1月~7月) 9115億円 日本の貿易額全体(119兆1868億円)の0.76%
邦銀の対露国際与信(2023年3月) 6095億ドル 邦銀の対外与信総額(4兆7752億ドル)の0.13%
露銀の対日国際与信(2023年3月) データなし 外銀の対日与信総額は1兆2496億ドル
日本企業の対露直接投資残高(2022年12月) 46億ドル 日本の対外直接投資全体(2兆0792億ドル)の0.22%

(【出所】日本政府観光局、外務省、法務省、財務省税関、国際決済銀行、JETROのデータをもとに著者作成)

日本にとってロシアは1%未満の国

つまり、日本にとってロシアとは、こんな相手国です。

  • 訪日ロシア人は22,782人で訪日外国人全体(15,189,896人)の0.15%
  • ロシア在住日本人は1,321人で在外日本人全体(1,308,515人)の0.10%
  • 日本在住ロシア人は10,681人で在留外国人全体(3,075,213人)の0.35%
  • 対露輸出額は2908億円で日本の輸出額全体(56兆0781億円)の0.52%
  • 対露輸入額は6207億円で日本の輸入額全体(63兆1088億円)の0.98%
  • 対露貿易額は9115億円で日本の貿易額全体(119兆1868億円)の0.76%
  • 邦銀の対露国際与信は6095億ドルで邦銀の対外与信総額(4兆7752億ドル)の0.13%
  • 日本企業の対露直接投資残高は46億ドルで対外直接投資全体(2兆0792億ドル)の0.22%
  • ロシア企業の対日直接投資残高は1億ドルで対内直接投資全体(3494億ドル)の0.02%

いかがでしょうか。

ここに列挙した項目に関しては、基本的にすべて1%未満であり、とりわけ日本のロシアに対する直接投資残高、人的な行き来が非常に少ないことがわかるでしょう。これらの項目のなかで、ヒト、モノ、カネの関係で辛うじて1%近い水準に達しているのは、「日本のロシアからの輸入額」のみです。

それだけ、日露は経済的関係が低い、という意味です。

輸入品はエネルギーとパラジウムとカニ

では、日本のロシアからの輸入品は、いったい何でしょうか。

財務省税関が公表する『普通貿易統計』のデータによると、2023年1月から7月までの輸入額(6206億7938万円)を品目別に分解してみると、こんな具合です(図表2)。

図表2 日露貿易額の主要品目(輸入、2023年1月~7月)
品目 金額 構成比
食料品及び動物 722億円 9.00%
魚介類及び同調製品 682億円 8.86%
鉱物性燃料 4192億円 61.52%
石炭、コークス及び練炭 844億円 18.47%
石炭 842億円 18.45%
天然ガス及び製造ガス 3279億円 23.95%
石油ガス類 3279億円 23.95%
原料別製品 953億円 22.46%
非鉄金属 747億円 18.85%

(【出所】財務省税関データをもとに著者作成)

日露貿易額はざっと6割が鉱物性燃料(とくに天然ガス)で締められており、これに続いて多いのが非鉄金属(パラジウムやアルミニウムなど)、そして魚介類です。魚介類のなかでもとくに多いのが178億円のカニであり、これだけで輸入金額の2.87%を占めています。

ウクライナ戦争でおそらく戦費の調達すらままならなくなっている現在のロシアにとって、カニは貴重な外貨獲得源なのです。

(ついでにどうでも良い話かもしれませんが、日本のロシアに対する魚介類の輸出額は、2022年実績で2億5792万円でした。2023年に関しては1月から7月までの累計で2億0864万円で、ちょっとした都心のタワマンの方が高いかもしれません。)

ロシアが日本産水産物禁輸?どうぞどうぞ!

さて、こうしたなかで、ロシアという国がいまひとつ、何がやりたいのかよくわからなくなってしまう話題を発見しました。

ロシア、日本産水産物の禁輸を検討 中国の措置に参加=食品安全当局

―――2023年9月27日 01:01 GMT+9付 ロイターより

ロイターによると、ロシアが現在、中国の輸入規制に倣い、日本産の水産物の輸入禁止を検討しているのだそうです。ロイターはロシアが「この問題について日本に協議を要請した」、とあり、日本との交渉後に最終的に決定するのだそうです。

思わず、「どうぞ?」と言いたくなってしまうかもしれません。

よくよく記事を読んでみると、ロシアが禁止しようとしているのは自国から日本への輸出ではなく、日本からロシアへの輸入であり、正直、日本経済への影響は「皆無」です。年間輸出額が100兆円に達しようとする日本経済にとって、2億5792万円という数値は、無視するよりほかありません。

ただ、それよりももっと興味深いのは、もしも日本が対抗措置としてロシア産の水産物の輸入を禁止した場合、ロシアにとって困った事態になるのではないか、という点でしょう。1月から7月までで682億円を稼いだ魚介類の対日輸出がストップしたら、いったいどうなることか。

これこそいま話題の「セルフ経済制裁」のようなものでしょう。

ロイターによるとロシアの食品安全監視機関・ロセルホズナゾールは声明で、「放射能汚染の可能性を巡るリスクを踏まえ、日本からの水産物の供給について、中国が実施している制限に(ロシアが)加わる可能性を検討している」、などと述べたそうですが、なかなかに理解に苦しむところです。

ロイターによるとロセルホズナゾールは日本政府に対し、「協議の必要性」に関する記載に加え、輸出向け水産物のトリチウム量などに関する検査情報を「10月16日までに提供せよ」と要請したのだそうですが、もし日本政府がこれに応じなければ、ロシアによる盛大なセルフ経済制裁が発動されるかもしれません。

今後の展開が気になるところです。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • やっぱり中国のフンだな。あらゆる分野で中国と同調行為をする。水産物だけじゃない。日本車の中古市場をこちらからとめてやればいい。クルマからは半導体も取れる。車体は再加工すれば使い様はある。ウクライナを後押しする意味でも工業製品は輸出するべきではない。たまには先制パンチをかませよ。

      • おしえてくれてありがとうございます。他の方にもお願いしたんだけどオレには「様」はいりません。「たろうちゃん」とかたりかけてください。ロシア産のイバラガニは美味しく食べてください。

        •  たろうちゃん

          >「たろうちゃん」とかたりかけてください。
              承知いたしました。

          • よろしくお願いします。クーラーを回すのもあとわずか。少し気温がさがったような。お互いに身体を大事にすごしましょう。ありがとう。

  • 尻に火が付いた国同士でこんな話をする余裕があるのかな。

    ロシアはチェルノブイリの事故を知っており、日本のALPS処理水がほとんど無害だということが理解しているはずだ。

    他にやることがないのか?

  • サムライアベンジャー(「匿名」というHNは、在日コリアンの通名と同じ恥ずべき行為) says:

     コメントの認証性も、会計士様の手間がかかりますね。そんなにブラックコメントが多いのでしょうか?

     ユーザー側で、そういう困ったチャンを追い出すことができれば理想的なのですが(例:中央日報日本語版のコメント欄)、私なら最初からIPでブロックする機能を用意しておきますが。

     私もWebコミュニティやWebサイトを作った経験が何度もあるので、こうした「困ったチャン」対処は大変ですよね。そういう「困ったチャン」は話して理解しようとすることができない人種なので、きっと人類じゃないのでしょう。物を投げるとガーとすぐ反応する爬虫類脳をお持ちなのでしょう。

     なんかいい手はないのでしょうかね。ブロックするしかないんですよね、ウーム。

  • 北海道にいるとロシアは割と身近な存在でした。
    稚内ではマトリョーシカがお土産で販売されていましたし、小樽ではロシア人をよく見ました。札幌在住時には若いロシア女性がコインランドリーで困っているのを助けた記憶もあります。「コンスタンチンくん北海道緊急搬送」は覚えていらっしゃる方も居るのではないでしょうか。

    しかしロシア(ソ連)という国はやはり信用できないです。
    昭和ヒトケタ生まれの亡義父(札幌生まれ札幌育ち)は「露助の野郎」と良く言っていました。
    高校時代に国語教師や社会科教師から赤く染められた自分は
    「学がないと、すーぐこんな発言になって」
    と内心バカにしていましたが、むしろバカは自分でした。
    その世代はソ連が何をしたのか、あの国とは仲良くなれないことを、正しく記憶しているんですね。

  • 本当に、ロシアは何をしたいんでしょうか……
    まるでオモチャのナイフを必死に振り回して脅しに使おうとしているかの様だ。
    本物のナイフは全部錆びて使い物にならなくなったのかな?

  • 新宿会計士様のご指摘のとおり
    ならず者ロシアさんのチンピラ画策も
    日露貿易の実態からはロシアへの
    セルフ経済制裁になるのにと同意します。

    まあ、窮地のロシアさんとしては
    冷静な分析ではこうした有り様にしか無いのに
    それでも窮余の主張をしてしまうのは
    日本の朝日新聞とかの偏向どぶサヨメディアが
    「ロシアの制裁は当然。
     日本政府は東北の漁民の生活を追い詰めてどうするのか」
    ?(笑)とかいうような、過去のような画策記事で
    ロシアとともに日本の社会と政権砲撃攻撃に
    立ち上がってくれることを期待してのものなのでしょう。

    ただ、ロシアが頼りとする
    朝日新聞を支持する少数のどぶサヨ支持者は
    もともとその生きザマがそんなこんなの人たち
    だと知られてきているなかで
    これまで 日本の社会と政権に対して
    「記事・社説・天声人語」といういわゆる
    どぶサヨ三連砲を中央右方面に連射してきた
    朝日新聞は、巡洋艦モスクワのように
    左に傾いてもはや沈没寸前で
    現在国際指名手配中のウラディミールプーチン容疑者(70)
    の援護射撃ができるような状況にはないのになあ
    と感じます。

  • 中国のホタテにしろ、ロシアの水産物禁輸にしろ、困るのは日本より自国なのに、馬鹿としか言いようがありません。一昔前ならオールドメディアが日本の被害ばかりを大音量で報道して、敵国である中露韓北の応援をしていましたが、誰もがネットで自由に情報を発信し受け取れる今の時代、寧ろ敵国側にダメージが大きいただの嫌がらせだと、容易に知ることができます。
    とにかく中露はこのまま我が道を行ってほしい。そして日本は毅然と対応してほしい。そうすればドンパチしなくても日本が勝ちます。