国民民主党の前参議院議員である矢田わか子氏が首相補佐官に起用されるとの報道が出ています。矢田氏自身が現時点で国民民主党の公式な役職に就いていないことを踏まえると、形の上では「単なる民間人の登用」ですが、岸田首相側にはこれを機に国民民主党の連立入りに関する協議を加速させるという考えもありそうです。
先般の『「玉木首相」構想だけでない、少数政党としての動き方』などでも取り上げたとおり、国民民主党が連立政権入りするという構想については、一部では根強く残っているようです。
この点、現在の国民民主党にとって、安易な連立入りはリスクを伴います。
自民党という「巨大政党」と連立を組むと、連立相手が四分五裂して崩壊し、あるパーツは自民党に取り込まれ、あるパーツはほかの野党に取り込まれるなどして消滅してしまうことが多いからです。四半世紀近く自民党と連立を組んでいて崩壊していないのは公明党くらいなものでしょう。
かつての新自由クラブもそうでしたし、社会党、新党さきがけ(いわゆる「自社さ連立」)もそうでした。あるいは「自自公連立」を構成した自由党も分裂し、ある部分は民主党(当時)に取り込まれ、ある部分は保守党(保守新党)となり、最終的には自民党に呑まれています。
ただ、国民民主党は労組の支持を受けているとはいえ、政策面では自民党に非常に近く、とくに経済政策面では故・安倍晋三総理大臣が掲げていたアベノミクスにも類似しており、国防・外交に関しては現実路線を取っていて、現在の自民党が掲げるものとも親和性があります。
「自公国連立」構想が出ては消え、はたまた消えてもまた出て来るのは、ある意味で当然のことといえるのかもしれません。
こうした文脈で、現在進んでいる岸田文雄・現首相による内閣改造、政務官人事、党役員人事などに関連し、ちょっと気になるのが、この話題です。
首相補佐官に前国民参院議員の矢田稚子氏を任命へ…「自公国」構想実現への布石狙い
―――2023/09/14 20:02付 読売新聞オンラインより
国民民主党所属の参議院議員だった矢田わか子氏が首相補佐官に起用されると報じられています。
ここで引用しているのは読売新聞のものですが、ほかに朝日新聞や毎日新聞、テレ朝newsなど複数のメディアも似たような内容を報じていますので、情報としての確度はかなり高いと考えられます。
これについて読売は「複数の政府・与党関係者が明らかにした」としつつ、「国民との政策連携の仲介役となることを期待しており、自民・公明両党の連立政権に国民民主党を加える構想実現への布石とする狙いがある」、と評しています。
ちなみに矢田氏はパナソニックグループ労連副中央執行委員長などを経て、連合傘下の産業別労組である電機連合の組織内候補として2016年の参院選で民進党から初当選していたそうですが、22年の参院選で落選し、今年7月には「政治活動からの引退を表明」していたのだそうです。
すなわち、矢田氏自身は現時点で国民民主党の公式な役職等にも就いていないようであり、表向きは単なる民間人の登用ですが、ただ、「単なる民間人」を登用するというのも不自然な話であり、やはり読売が指摘する通り、国民民主党との連携という狙いがあるのでしょう。
また、現時点で矢田氏が国民民主党と無関係であれば、玉木雄一郎代表の公式な了解は不要でしょうし、国民民主党側も「わが党とは無関係の民間人だ」、という立場を貫くこともできるでしょう(国民民主党側の反応は現時点ではよくわかりませんが…)。
しかし、今回の登用が事実だとして、玉木氏ら国民民主党側の了解がなしに行われているということも、自然に考えてあり得ない話です。
国民民主党が連立入りすることが自民党や公明党にとって、国民民主党にとって、あるいは私たち日本国民にとって良いことなのかどうかはよくわかりませんが、今後の展開について注目する価値はあるのかもしれません。
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穿った見方をすれば公明党への牽制だろうな。いつでも連立を組み換えるぞ!とのメッセージに聞こえる。玉木が乗るかはわからないが布石を打ったってことだろう。立憲のヤキモキは当分続く。連合の芳野がどうでるか。ハムレット玉木だな。国民民主が欲にのまれれば崩壊はする。その都度の政策で存在感を発揮すればよい。不祥事議員を生まないこと。万が一には果敢に処罰すること。そうすれば国民のイメージは上がる。
電機連合は以前からか近年からかは知りませんが、国民民主だけじゃなく自民や公明とも政策懇談会みたいなのやってるので、人選にはその繋がりもあるでしょうね
矢田氏の首相補佐官への起用は、間違いなく国民民主との連携を考えてのことだと思います。
財務省の影響から抜け出せない政権ですが、公明党からの影響からは抜け出したいのでしょう。
少なくとも、国民民主を与党に組み込む流れになれば、公明党は間違いなく弱体化します。自民党にとって良いことに繋がるかは分かりませんが、日本にとっては新たな展開を迎える意味で、期待できる部分があります。
連合とのパイプというのも意味がある。
岸田氏は色々と画策しているようですね。
国民民主そのものとの連立は連合自体が否定的なモンで、電機連合を連合傘下から少しずつ引き剥がす乃至は電機連合との距離を詰めることで連合を引き寄せる!あたりを中期的戦略目標と定めて、まずは電機連合自体とのコミュニケーションを(ある程度)濃くする戦術に出たのでは?
この人事に関しては示現舎の三島氏も記事にしてますね。
岸田氏の策士っぷりを書いておられます。
読売記事の本人の経歴を見る限り、つい最近までバリバリ民間労組畑で残滓十分って感じですね。
数ある民間人の中から敢えてこの人を選ぶのであれば、国民や民間労組との連携への意思表示、メッセージと考えるのが素直でしょう。発する先は公明、国民、マスコミ、世論いろいろ考えられますが、一手であらゆるところに同時に波紋が広がるのはいい手だと思います。
観測気球でしょうが、抵抗勢力の公明などの反応はさすがに織り込んでるでしょうから、世間の反応も悪くない気がするので、実現しそうな気がします。
岸田氏って、内閣改造とか選挙とかの政局ネタ華やか季節になると、突然妙に核心を突くかのような一手を打つ(一手だけ)印象があります。
先日の国民の代表選後の記者会見で、マスコミ記者の質問が連立の言質取りをしつこくやったらしいです。マスコミとしては国民の連立ネタはおいしい政局ネタと認識しているのだと思います。
マスコミや岸田氏の腹づもりはわかりませんけど、官公労と民間労組の分断や、そこに立憲左派+共産をくっつけて「隔離」するのはいい方向性だと思います。
良い選択!
中国の日本支部と化した公明党から距離をおくべき!
林外相を外したのは英断!
宏池会が、元祖・中華帝国日本支部なんですが・・・
岸田首相は労組票の取り込みを狙っているのでしょうか?
それとも、公明党への牽制、国民民主党と維新の連携や連合への揺さぶり、など一石三鳥か四鳥を狙っているのでしょうか?
玉木代表には相談は無かったようですので、気分を害したかも知れません。
多分何も起こらないと思いますが。
参議院の公明の27議席に代わる目処がついたということですね。
自分の祖国を護るためではなく、中国の手先に堕ちた政党とオサラバでしょうか。
維新が21議席、国民が13議席。立憲は40議席。
令和7年の参議院の選挙で、維新が立憲の40議席は超えるかも。
味方だと思ったら、後ろから鉄砲が飛んでくる(選挙協力しません)・・・。
手打ちをしたみたいだけど、裏切られて平気な顔の自民党ではないでしょうに。
憲法改正が手遅れになる前に、背中にそっとサヨナラ・・・お別れですね・・。