「中国政府が講じた日本産水産物の禁輸措置は科学的根拠を欠くが、長期化は避けられない。中国が聞く耳を持たないからだ。世界的な日本食ブームとはいえ、新たな販路を開拓するには時間がかかる。そこで私たちの食卓で、日本の水産物の消費を増やすべきだ」――。これは、当ウェブサイトでもこれまでに指摘してきた論点です。それとほぼ同じ内容の社説を、西日本新聞が配信しました。歓迎せざるを得ません。
「福島汚染水」という一部政党の悪質なデマ
『処理水≠汚染水:「デマツイート」は言論の自由に非ず』を含め、当ウェブサイトではすでに何度も強調してきたとおり、福島第一原発の処理水は「汚染水」ではありませんし、処理水の海洋放出は科学的に設定された基準を順守して行われていて、安全です。
このことは、何度強調しても強調のし過ぎではありません。
ただ、それでも残念なことに、一部政党に所属する国会議員や一部のメディアは、処理水の放出が危険であるかのごときデマを続けています(ここまで来ると、極めて悪質です)。
この点、読売新聞オンラインに15日付で掲載された、同社が9月13日から14日にかけて実施した世論調査結果に、たいへん興味深いものがあります。
2023年9月 電話全国世論調査(内閣改造) 質問と回答
―――2023/09/15 05:00付 読売新聞オンラインより
読売新聞によると政党支持率は自民党が31%(前回比+1)、立憲民主党が4%(前回比+1)、日本維新の会6%(変わらず)の一方、れいわ新選組が1%(前回比▲2)、社民党ゼロ(変わらず)などです(今回も前回も、公明党、日本共産党、国民民主党の3政党は3%でした)。
つまり、立憲民主党は最大野党でありながら、引き続き支持率では日本維新の会に抜かされています。また、次期衆院選挙の比例代表で投票したい政党でも7%で、維新の13%を大きく下回っている状況です(ちなみに自民は32%)。
ただ、個人的に注目したいのは、処理水を「汚染水」呼ばわりした者が所属する政党の支持率です。立憲民主党、れいわ新選組、日本共産党、社民党の4政党を合計すると、支持率は8%に過ぎないのです。
もちろん、これらの政党の支持率が低迷している理由が「汚染水呼ばわりする者が所属しているから」なのかどうかは、これらの調査だけでは必ずしも明らかではありませんが、「汚染水呼ばわりをする者が所属しているほどの政党だから、支持率が低迷しているのではないか」、といった仮説も成り立つでしょう。
いずれにせよ、国政政党ないし国会議員が「汚染水」呼ばわりして風評加害を行っているのですから、呆れます。
国を挙げてデマを広める中国
ただ、「汚染水」呼ばわりをしているのは、一部政党、一部国会議員、一部新聞、一部記者に留まりません。外国ではこうしたデマを国単位で大規模に行っている事例も出ています。
その典型例が、中国でしょう。
現実に中国は科学的根拠を無視し、日本産の水産物の禁輸を始めていますし、それによって日本の水産業は主力の輸出先を失った格好です(※ただし『中国の「日本産食品の禁輸措置」は日本経済に影響なし』でも述べたとおり、「日本経済全体」に対しては、この措置は大きな打撃をもたらすものではありませんが…)。
福島処理水の海洋放出を口実に、中国が日本産食料品の事実上の禁輸措置を講じている、とする記事が出てきました。ただ、「数字」で見ると、そのことが日本の経済、産業にどこまで揺さぶりとなるのかは疑問です。いや、もっといえば、もしも日本が対抗措置を講じた場合、むしろ中国経済に生じる影響の方が大きいのです。どうして中国当局はここまで頭が悪いのでしょうか。観光と農業、伸び代はあるが…日本がこれから伸ばしていく産業分野は、いったいどこでしょうか。あるいは、日本がこれから重点を置かねばならない産業は、いったいど... 中国の「日本産食品の禁輸措置」は日本経済に影響なし - 新宿会計士の政治経済評論 |
つまり、処理水の放出は、福島など近隣県に対し、健康被害をもたらしているわけではないのですが、経済的損害をもたらしている、というわけです。
これについては『政治家は「ふるさと納税」で中国の輸出規制に対抗せよ』などでも指摘したとおり、私たち一般国民のレベルで対抗措置を講じることができます。「積極的に日本の水産物を購入して消費すること」で、中国による禁輸措置を無効化できるのです。
そもそも論として日本の輸出高は年間100兆円前後ですが、そのうちの食品などについてはカテゴリー全体で1兆円に届くかどうかというレベルであり、そのなかのさらに水産物に限定すれば、数千億円というレベルです。国民ひとりあたり年間2~3千円分、水産物の購入額を増やせば済む話でしょう。
西日本新聞の社説が素晴らしい!
こうしたなかで、当ウェブサイトでは新聞、テレビなどの「オールドメディア」の報道姿勢を批判することも多いのですが、西日本新聞というメディアに15日付で掲載された社説に関していえば、ほぼ100%、完全に同意せざるを得ません。
【社説】水産物禁輸対策 国内産を食べ支援しよう
―――2023/09/15 09:01配信【西日本新聞配信】
端的にいえば、大変に説得力のある良記事です。
西日本新聞は中国の禁輸で関連事業者が大きな影響を受けていると指摘しつつ、「中国政府の禁輸措置は科学的な根拠を欠く」と断じ、「処理水に関する日本政府の説明機会も拒んでおり、長期化は避けられそうにない」と懸念を示します。
ただ、すばらしいのはその先の記述です。
「水産物に限らず、輸出入を特定の国や地域に過度に依存するのはリスクが大きい。/20年に新型コロナ感染が世界的に拡大した当初、日本ではマスク不足が深刻化した。材料となる不織布の生産を中国に依存していたためだ」。
なんだか山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士のウェブサイトあたりに掲載されていそうな記述ではないか、といった錯覚を覚える人もいるかもしれません。同社説の指摘通り、輸出入、インバウンドなどを特定国に過度に依存することは、政治的にも経済的にも大変大きなリスクです。
そのうえで同紙はこうも指摘します。
「中国は共産党政権の支配力が強く、経済もその意向を受けやすい。日本の重要な貿易相手であるとはいえ、高い依存度は経済安全保障の観点からも見直す必要がある」。
全面的に同意せざるを得ません。
西日本新聞はそのうえで、水産品分野では世界的に高まる日本食ブームの影響を受け、新たな輸出先の開拓に活路を見出す必要性があるとしつつも、「食文化の違いがあるので、一朝一夕には進まない」と指摘。そこで「私たちの食卓」で水産物を消費することの重要性を強調します。
「具体的には給食や社員食堂での提供、ふるさと納税の返礼品やネット販売に力を入れる。魚を使った新たな加工食品や新メニューの開発も消費拡大につながるだろう」。
「日本の水産品は品質に優れておいしいだけでなく、健康にもよい。私たちが消費量を増やせば、食料自給率の向上につながる」
…。
もしかして、この社説の執筆者の方は、例の怪しいウェブ評論サイトをご愛読なさっているのでしょうか?
いずれにせよ、たいへん説得力のある、バランスの取れた論考です。
こうした正論は大歓迎ですし、こうした認識が広まっていくことを期待したいと思う次第です。
View Comments (15)
ええっ、「あの」西日本新聞社が!?w
なんかヘンなモンでも食ったんですかね?
>自民党が31%(前回比+1)、立憲民主党が4%(前回比+1)、日本維新の会6%(変わらず)の一方、れいわ新選組が1%(前回比▲2)、社民党ゼロ(変わらず)などです(今回も前回も、公明党、日本共産党、国民民主党の3政党は3%でした)。
単純に言っていい話ではないのは当然だけど、一見れいわ支持者1%が自民支持に回ったように見えるのも複雑ですな、立件支持に回るのはまだわかるけどw
新聞社はいよいよ食えなくなってしまい、天下の西日本新聞がついに主旨替えした、みたいな妄想してしまいました。次は琉球か??
琉球・沖タイ・カナロコ・東京はもう変われないと思いますよw
今更宗旨替えしてももう間に合わないだろうし、普通の記事が書けるだけの取材力や執筆力もあるとは思えません。共同・時事の完全コピペ新聞になって衰退の一途を辿ればいいと思いますw
正論は、気持ちいいですね。(正論丸でも飲んだのかな?)
以前にも、西日本新聞に掲載された論考を好意的に取り上げられたことがありましたね。
今回の論考も、彼(小出浩樹氏)の執筆によるものなのでしょうか?
西日本新聞の小出氏、韓国の杜撰判決をファクトで論破
https://shinjukuacc.com/20210117-01/
>やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。
この注意にもろに引っかかりそうなコメントですので、アウトなら削除をお願いします。
ChatGPTでちょっと遊んでみました。わたしの問と、間髪を入れずに出てきた回答が、以下。
Q 中国の日本水産物の禁輸措置が続いていますが、国内消費を増やせば、その影響は十分低減できるとの議論もあります。実際にそれは可能でしょうか。
A(ChatGPT) 中国における日本水産物の禁輸措置に対処するために、国内消費の増加が有効な対策の一つと考えられますが、その実現可能性にはいくつかの要因が影響します。以下は、国内消費増加の可能性と課題についての概要です。
可能性: 国内市場の広がり: 日本の水産物は国内外で高い評価を受けており、国内市場での需要が依然として高いです。需要が供給に追いつける場合、国内市場を拡大する可能性があります。
消費者教育: 消費者に対して、安全で高品質な日本水産物の価値を伝える教育活動が行われれば、需要を刺激することができます。例えば、食品の安全性や健康への利点についての情報提供が含まれます。
多様な提供方法: 様々な価格帯や提供方法で日本水産物を消費者に提供することが、幅広い層の人々にアピールする手段となります。レストラン、スーパーマーケット、オンライン販売など、さまざまなチャネルを活用できます。
【課題:】
価格と供給: 日本の水産業は高品質な製品を生産する一方で、価格が高いことがあります。競争力を維持しつつ価格を抑えることが必要です。
競争: 他国からの競合水産物に対抗する必要があります。価格、品質、バリエーション、ブランド力などで差別化が求められます。
規制と品質管理: 国内市場を拡大する際には、食品安全性の規制を遵守し、品質管理に注意を払う必要があります。
消費者の選好: 消費者の食事選好は個人によって異なります。一部の消費者は国産品に偏っているかもしれません。そのため、多様な選択肢を提供し、消費者の好みに合わせたマーケティングが必要です。
宣伝とブランディング: 国内市場での日本水産物の宣伝とブランディング活動が重要です。消費者に製品の付加価値や特徴を伝えることが必要です。
要するに、国内市場での日本水産物の消費を増やすことは可能ですが、競争激化や消費者の選好に対処し、価格や品質に注意を払う必要があります。また、政府、業界団体、生産者、小売業者など、さまざまなステークホルダーが協力し、消費拡大のための取り組みを行うことが成功の鍵となります。
瞬時にこれだけの文章が出てくるのはスゴいですね。以下はわたしのコメントです。
聞き方を変えれば、また違った回答が出てくるだろうから、確かなことは言えないが、「西日本新聞」の社説執筆者の方、ChatGPTを下敷きになんて安直なことは、やってないようですね。しかし、当サイトの読者としては、論旨がこれまでこのサイトで目にした記事と、余りに酷似している気がする、その辺はどうなんでしょうね、
経営やマーケティングなどのビジネスに関する総論は、この分野の一般的な知識や見識をもった人間であれば、誰が意見を言っても大方同じことを言います。
chatGTPは、特に総論が得意ですから同じような事を言います。
つまり、やるべき事の総論は分かっているのです。
問題は常に、目の前の「この問題」に関して具体的にどうやるか?です。
現実社会では、この具体策を企画から実行の詳細までに落とせる着実な人間が少ないのです。更に、その全体を統括して実行し成功に導ける人間、つまり、強力な実務家が少ないのです。
例えば、産業の6次元化と言いますが、これをやろうとすれば、例えば、漁業ならば、漁協が強大な反対勢力として立ちはだかります。
更に、魚をどう加工してどのような商品にするか?、販売先や販売ルートはどう開拓するか?などについても独自にやって行かなくてはなりません。
東京チカラめし、という丼飯のチェーンがあります。その創業者は、現在、6次化漁業をやっていますが、漁協の許可を貰うのが一番大変だったようです。そして自前で加工して、給食センター等に納入しているようです。何をどう加工するのか、どこへ納めるかの販路開拓も全部自分達でやったようです。
北海道のホタテの漁協にしても、福島の漁協にしても、自分達は「漁をしてくるだけ」の商売から脱却する気持ちはサラサラ無いようです。
東京チカラめしの創業者のような努力はする気が無いようです。
因みに、中国の業者は北海道からホタテを仕入れて加工して、全世界に売っています。
何故、彼等は、売れるのでしょうか?
北海道の漁協は、そんな事を考えた事も無いでしょう。
それを調査研究すれば、自分達も独自の販路を持てるかもしれないのに、です。
自分達で出来ないのであれば、何処かと提携することを考えればいいのでは無いですか?そういう努力をしないで、直ぐに補助金に頼ろうとするのであれば、いつまでも自分達の商売は安定しないですね。
東京電力の社員食堂のメニューはすべて魚にする。
国産の水産物を年間3000円分多く食べるとして、人が食べる食物量の総和は増えるわけじゃない。
その分輸入の水産物なり、国内外の牛肉その他の肉類を減らすしかなくなる。
であれば中国産の水産物には実損額相当を報復関税として輸入減圧力にすべきじゃないかと思う。
とは言うものの安さに釣られて特売の中国産うなぎを買ってしまったが。
>特売の中国産うなぎを買ってしまったが。
それはいけません。体にも良くないと思います。私が食べて差し上げますけど。
先週の土曜日に青森産のホタテ6kg買いました。美味しかったです。
また、陸前高田市にふるさと納税、鮮魚ボックス。9.9万円寄付しました。
楽しみです。9回届くそうです。
生鮮食品では、モノによりますがもとから国産が比較的大きな比重を占めていると感じます。消費のパイを拡大する施策も欲しいところですが、大きくは、輸入品を多く使っているであろう加工食品メーカーなどが呼応してくれれば。どうしてもコスト増が絡んできますが、甘受できるかは結局消費者次第かな?メーカーが福島応援キャンペーンなど張れば、今までよりも特に自社宣伝に寄与しそうなのですが。
西日本新聞の"正論"に関しては、多少思うところがありました。[自分の意見が正論だと思っている→同意見の記事が出た→これは正論で見直した]という図式が成り立つなと。かつては朝日あたりのデタラメも多くの人に正論と評価されていたでしょうし、例えば朝鮮日報やら環球時報やらの言説も、正論だと感じる人間・勢力がいるはずで。
その時点で、可能な限り、客観的に検証可能で、事実に則した…判断を自信を持ってしていくという他ないのだなと。
中国の海産物禁輸はアメリカ主導の半導体包囲網を断ちきる目的がある。その中国のおひざ元が揺らぎはじめた。海外にでる富裕層は事態を読んでいる。嫌がらせ電話は、海外に出れない中間層か下層の人間だろう。必ず下火になる。パイナップルを買い上げ台湾をた助けた日本なら「一致団結箱弁当」じゃないが、頑張れる筈だ。ただなぁ、補助金をせしめたんだろ?他国に新規開拓の努力はみせないとなぁ。
補助金だすなら漁業関係者にではなく魚に補助金を使ってほしいです。
今は魚も高くなり気軽に食べられなくなっています。
補助金で安く手に入れば需要は一気に増えると思うのですがどうでしょうか。
>ただ、個人的に注目したいのは、処理水を「汚染水」呼ばわりした者が所属する政党の支持率です。立憲民主党、れいわ新選組、日本共産党、社民党の4政党を合計すると、支持率は8%に過ぎないのです。
福島みずほに汚染された福島汚染党?
「汚染水呼ばわりをする者が所属しているほどの政党だから、支持率が低迷しているのではないか」と書かれていて、思いついたのですが、立憲民主や共産党は、まともな政策や主張では政権を取れるほどの多数の支持を得られないから、トンデモ論で少数でも堅い支持層を獲得する戦略に切り替えたのかもしれません。
新宿会計士さんが度々指摘しているように、政権持つのは大変だけど、批判だけしていればいい、野党の議員でいたいという目的のために。