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韓国紙「日本の真心が足りない」

一歩譲歩したら無限に追加譲歩を求めて来る――。まったく予想通りの展開です。自称元徴用工問題、輸出管理適正化措置、FCレーダー照射事件、日韓通貨スワップ――、と、岸田文雄首相は日本の国益を次々とドブに捨てましたが、韓国紙にいわせれば、それでもまだ「積極的呼応」や「真心」が足りないのだそうです。

むしろ日本が被害者=日韓関係

日韓関係について考える際、欠かせない視点があるとすれば、「韓国は加害者、日本は被害者」、でしょう。

この「被害者/加害者」フレームワークは、もともとは韓国が好んでいたもので、「被害者は加害者に対し、謝罪や賠償を半永久的に要求することができる」、といった、ある意味では歪んだ発想を伴うものです。

ただ、現実の韓国の主張内容を見る限り、韓国が「受けた」と主張する被害は、多くの場合は歪曲であったり、誇張であったり、また、酷いときには単なる捏造であったりします。

その典型例が、自称元徴用工問題でしょう。

自称元徴用工問題は「戦時中、日帝に強制徴用された」、などと自称する者たち(自称元徴用工)やその遺族らが日本企業を相手取って損害賠償を求め、韓国国内の裁判所に訴え、一部では最高裁にあたる「大法院」で勝訴が確定しています。

しかし、当たり前の話ですが、こんな賠償、日本企業にとっては受け入れ不可能です。1965年の日韓請求権協定において、日韓間のあらゆる請求権の問題は、最終的かつ不可逆的に解決しているからであり、韓国のこの判決自体も、日韓請求権協定に照らし、立派な「違法判決」だからです。

自称元徴用工問題「解決案」を「評価」してしまった岸田首相

この自称元徴用工判決を巡っては、国際法違反であると主張する日本政府に対し、韓国政府、あるいは文在寅(ぶん・ざいいん)前政権は、ほとんど何ら対応を取りませんでした。

しかし、昨年5月に発足した尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権下で、この問題が「解決(?)」に向けて急速に進展し、結果的に今年3月には、韓国の財団が自称元徴用工やその遺族らに判決金を「第三者弁済」する構想を公表。

岸田文雄・現首相もこれを「評価する」と述べ、これをきっかけに日韓関係が急展開し、現在に至ります。

といっても、この第三者弁済自体が問題の根源的な解決になっていないことについては、『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』などを含め、これまでに何度となく示した通りであり、また、こうした岸田首相の知力のなさ、原理原則の欠如は、正直、政治家としては致命的でもあります。

「仮定のご質問には答えません」は岸田首相がちゃんと考えていない証拠衝撃的な「岸田ディール」。振り返れば振り返るほど「信じられない内容」と言わざるを得ません。とくに韓国の「ちゃぶ台返し」の可能性については、岸田文雄首相は記者会見で「仮定の質問には答えません」と述べ、シャットアウトしてしまいました。こうした記者団とのやり取りから浮かぶのは、「キシダ・フミオ」という政治家の「実務担当能力のなさ」、「戦略的思考力のなさ」、そして「プライドの高さ」です。不誠実な「キシダ・フミオ」岸田ディールの衝撃:首...
岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、自称元徴用工問題自体、もともとは韓国が起こした問題であることを踏まえるならば、それを韓国自身が解決するのはごく当たり前の話であって、今回の「解決策(※解決になっていない)」を韓国が提示したことを巡って、べつに日本が韓国に「借り」を持っている、という話にはなりません。

むしろ国際法違反の判決を解決していないという問題点が解決されていない時点で、むしろ韓国が「加害者」として日本に与えた被害が回復していないわけですから、むしろいまだに韓国は日本に対して「借り」があるという立場であるはずでしょう。

ただ、こうした韓国の日本に対する不法行為の数々を眺めてきた「コリア・ウォッチャー」の立場から見れば、自分たちの「加害行為」には目をつぶり、ありもしない「被害」を持ち出して日本に譲歩を迫るというのは、正直、この国の宿痾(しゅくあ)のようなものかもしれない、などと思えてなりません。

なかなかに強烈なコラム記事

こうしたなかで、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に、なかなか強烈なコラムが掲載されていました。

日本はなぜ「釜山万博支持」と言えないのか【コラム】

―――2023/09/10 12:29付 朝鮮日報日本語版より

執筆したのは同紙の論説室長だそうですが、なかなかにツッコミどころだらけの記事です。

たとえば、現在の日本政府が拉致問題解決に向けて北朝鮮と接触しているらしい、といった話題に関連し、北朝鮮が「韓国を排除し、韓米日協力の『弱い環』である日本を揺さぶろう」としている、などとする記述が出てきます。

日米韓連携の「最も弱い輪」とは、この場合、常識的に見て、政権が変わるごとに米国と中国の間を右往左往する韓国のことを指していると考えるのが自然でしょう。

しかも、コラム記事にはこんな記述が出てきます。

日本は学ぶべきところの多い大国だが、国力に似合った『大国外交』をする国ではない。価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する『そろばん外交』を駆使する」。

現在の岸田首相が「そろばん外交」を実践できているとは思えませんが、それよりも気になるのは、「大国外交」というキーワードです。

韓国メディアが都合に合わせて日本を「大国」と呼んだり「小国」と呼んだりするのは今に始まったことではありませんが、ここでいう「大国外交」とは恐らく、「大国にふさわしく、韓国に譲歩する度量を示せ」、といった、いつものアレでしょう。

「日本はもっと譲歩しろ」

そして、話はそこに留まりません。この「大国外交」からつながるのは、やはり、「日本の積極的呼応」、という表現に名を借りた、「もっと譲歩しろ」論です。

現在の岸田政権も同様だ。韓日間に和解のムードがあるからといって、日本側が何かもつれを解くなどといったスケールの大きい譲歩を行うだろうと過度の期待をしてはならない-ということを意味する」。

破綻直前まで行った韓日関係を復原したのは尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の決断だった。それは決して『タダ』ではない。尹大統領としては、国内世論の反発と反日逆風という大変な政治的損害を甘受して勝負手を打ったのだった。この構想は、日本の積極的呼応を前提としている」。

ずいぶんと盛大な勘違いです。

そもそも日韓関係を破壊するきっかけを作ったのが自分の国の裁判所であるという事実を、このコラム執筆者の方は、完全に失念していらっしゃるようです。

ただ、言い方を変えれば、このコラム執筆者の方は、岸田首相率いる日本政府に「もう一歩の譲歩」を促している、というわけです。いったい何が不満だというのでしょうか。

それが表れているのが、おそらくこんなくだりでしょう。

韓日間の最大の懸案だった強制徴用者問題で、尹政権は『第三者弁済』で問題を解決した。韓国企業の資金で先に賠償を行った後、『戦犯企業』の参加を誘導するという案だ。ところが6カ月たっても日本企業は一言の反応すら見せずにいる」。

韓国の犯罪行為である2018年12月の火器管制レーダー照射事件を不問に付したのも、外貨ポジションが脆弱な韓国を助けるための日韓通貨スワップを再開すると決定したのも、輸出管理上の「(旧)ホワイト国」に復帰させたのも、韓国に対する立派な譲歩です(というか国益をドブに捨てる行為です)。

それの何が足りないというのか、理解できません。

岸田首相は「愚か」

ちなみにコラム執筆者は、日本が「釜山万博」の誘致に支持を表明していないことに関連し、こうも述べます。

『万博相互支援』のような基本中の基本的協力すらためらうのであれば、日本の真心が疑われることは避けられない」。

「日本の真心が疑われる」、すなわち「日本は真心が足りない」、という指摘ですね。

正直、うんざりします。

このように、一歩譲歩したら際限なく、また、臆面もなく、次から次へと譲歩を求めて来るというのは、ある意味で典型的な韓国的行動です。その意味で、韓国に譲歩した岸田首相の行動は、まさに「愚か」のヒトコトに尽きるといえるのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • >尹大統領としては、国内世論の反発と反日逆風という大変な政治的損害を甘受して勝負手を打ったのだった。

    このあたりの考え方って、松川議員の論理と似てると思うのです♪
    任期のある大統領ひとりの韓国内での政治的な立場ごときと、将来にわたる日本の国益とを比較って、バカバカしいと思うのです♪

  • 要は「真心が足りねえよな?もっと形で見せろ」ってヤクザ理論ですよね?再選の噂もあるとか岸田の限り自民党には入れませんよ。
    次期総裁が日韓関係正常化するまでは。

  • 鈴置さん、ご体調が良くないのでしょうか?
    この頃デイリー新潮の更新が無く、心配しています…。

    • 特に根拠ありませんが、マスコミが「報道しない自由」を行使しているのカモ。

      例えば、「生放送出禁」とか。

      SKハイニクスがファーウェイに売っていたのがバレたんじゃないかという件とか、御登場なさっても不思議ではない状況だと思うのですが。

  • 外交に感情を持ち出す韓国の愚かさよ
    外交とは握手しながら相手の顔にナイフを当てるのが外交です

  • 自ら外交のカードになりうる3カード、、、スワップ、ホワイト、3品目輸出管理竹島、仏像、レーザー、慰安婦、徴用工、天皇侮辱、、、それを反古にして見返りを放棄した。折角、安倍晋三ー菅義偉ラインで築いた韓国への対応を岸田の大バカは水泡に帰した。奴が再選?入れねぇ。自民党には絶対におれの一票は入れねぇ。いや、、あいつが議員でいるうちは入れねぇ。今からでも軌道修正ができるのは、菅義偉しかいない。あんな形で政権を追われたんだ!国民に不信はあるだろうが、三顧の礼を尽くして総理をうけてもらわねばならぬ。やつを襲った犯人の気持ちがわかる。成功してほしかった。

  • 韓国が、まだ万博をやってないことが、ちょっと意外だったりする。
    で、釜山万博の支持くらいなら、処理水の件と、大阪万博への積極的な協力くらいで引き出せそうなものですが。

    もう、陳情外交は、通用しないことくらい理解すべきなんだよなぁ。

  •  まあ、日本に対してマウントを取りたい、道義的優位に立ちたい、というのは、韓国の願望ですからね。足許では、関東大震災における朝鮮人虐殺を盛り上げようとしていますが、それもなくなれば、また別のネタを探してくるでしょう。
     サッカーも勝てない、野球も勝てない、ラグビーもバスケも、勝てそうなものは、ないですからね。それだけ必死なんでしょう。
     国際政治は、ルールや論理的正しさによる規範力の弱い、いわば国力の違いが、交渉の優位・劣位を招く場だということを、理解したくないんだろうな。
     日本は、米国や中国には一歩譲らざるを得ない場面もありうるでしょうが、もはや韓国にはない(そんなこと言うのは朝毎東とサンモニだけ)。
     万博やるんなら、サウジの方が、お金もあるし、面白そうだと、素人的にも思いますが。
     

  • 「万博相互支援」は基本中の基本協力、だって? 世界文化遺産で相互支援を約束したにも関わらず、韓国が認定されたら即手のひら返しをして、日本の明治遺産に難癖をつけたのはどこの国だ。忘れないよ。

  • 昔から軽々しく他人に対して「真心が足りん」だの「誠意を見せろ」だの言ってくる輩には碌なのがいない。これ常識。

  • もうお金はあげないよ。
    とストレートに伝えるうまい方法はないのだろうか。

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