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「お客様は神様」論と配送業者「過剰サービス」の弊害

「お客様は神様」論、くたばれ!

「お客様は、神様」。そんな発想でしょうか。勘違いしたユーザーは後を絶たないようです。X(旧ツイッター)を眺めていて、久しぶりに驚いたのは、配送品の段ボールの角が少し潰れていたことに腹を立て、配送業者に苦情を申し立てたというツイートです。はて?この方は、商品ではなく段ボールを買ったのでしょうか?なかなかに理解に苦しみます。段ボールを全く傷つけずに配送せよとは、過剰サービスにもほどがあるからです。

「お客様は神様」を実践するマイセン男

当ウェブサイトで以前からしばしば取り上げているテーマのひとつが、「お客様は神様」、です。

わかりやすくいえば、「こっちはカネを払ってる客なんだから、何を要求したって良いんだ」、といった、まことに非常識で残念な発想です。

当たり前の話ですが、この経済社会において、カネを払う側と製品・サービスを提供する側に上下関係などありませんし、ましてや「カネを払っている方が偉い」、といった発想はあり得ません。「相応の製品・サービスと適正な金額を交換する」、という取引が存在するだけです。

それなのに、わが国にはなぜか、「カネを払っている方が偉い」、といった傲慢な考え方に染まった者も多く、酷いケースでは飲食店や小売店などで、店員さんに対して大変無礼で偉そうな態度を取るという者もいます。

以前の『「お客様は神様」と「デフレマインド」のコンビニ業界』でも取り上げた、コンビニエンスストアで未成年の学生バイト店員に対し、「マイセン(くれ)」とぶっきらぼうに要求し、店員が反応に困っていると声を荒げたという高齢の男のケースなどは、その典型例でしょう。

コンビニで高校生店員相手に「マイセン」とキレ散らかす者は客扱いしなくて良いのでは?「お客様は神様」だと勘違いしているのでしょうか、コンビニで高校生店員に対し、「マイセン(くれ)」などとぶっきらぼうに要求し、店員が「マイセンって何ですか?」と尋ねたところキレ散らかしたという事例があるようです。まったくとんでもない話です(※個人的に、そのような者は客扱いせず、毅然として追い返すか警察を呼んで良いのではないかと思います)。ただ、こうした横柄な客の存在には、「お客様は神様」という間違った態度に加え、コ...
「お客様は神様」と「デフレマインド」のコンビニ業界 - 新宿会計士の政治経済評論

三波春夫はむしろ風評被害者

ちなみにこの男にとっての「マイセン」は「マイルドセブン」、つまり現在の銘柄でいう「メビウス」のことを意味するのだそうですが、勝手に略称を作ってそれを若い店員にぶっきらぼうに伝えるというのは、なかなかに強烈です。

しかも、昔の銘柄名とその略称(?)を知っている店員さんならともかく、相手は未成年です(ということは非喫煙者でしょうか?)。

正直、コンビニも優秀な店員さんに辞められたくなければ、このような者を客とみなさず、威力業務妨害かなにかで警察に通報しても良いのではないか、といった気もしますが…。

この点、何度も説明して恐縮ですが、「お客様は神様」の「語源」は、歌手の三波春夫だといわれています。

しかし、三波春夫のいう「お客様は神様」は、「カネを払えば客はどんな理不尽なことをやっても良い」、という意味ではありません。そのことは、株式会社三波クリエイツ代表取締役の三波美夕紀さんの説明(『三波春夫オフィシャルサイト』の『「お客様は神様です」について』というページ)などを読めば、明らかでしょう。

(※その意味では、三波春夫も風評被害者のようなものです。)

段ボール問題と流通問題

こうしたなか、少し古い記事ですが、本稿ではこんな話題を取り上げておきたいと思います。

世間が知らない「段ボール箱も商品のうち」がトラックドライバーに及ぼす深刻な影響

―――2021/09/27 8:13付 Yahoo!ニュースより

これは『Yahoo!ニュース』に今から約2年前に掲載された、フリーライターの橋本愛喜氏が執筆した記事です。タイトルにある「段ボール箱も商品のうち」とは、「段ボールに傷が付いただけで配送業者に苦情を申し立てる顧客が多い」、という、現代日本の現状をレポートするものです。

在米経験もある橋本氏自身は、「段ボールはあくまでも梱包材に過ぎず、(配送の結果)角がつぶれたり、穴が開いたりするのは当然だ」と考えていたのですが、自身のSNSで段ボールについての簡易的な意識調査を行ったところ、回答者119人中約32%が「商品」と答えたことに「大きな衝撃を受けた」と明かします。

実際、記事で取り上げられている事例といえば、「商品の段ボールに直接ラベルが貼られていたこと」」に憤慨し、アマゾンで最低評価を点ける利用者の存在でに加え、流通現場における大変理不尽な慣習です。

荷物の積み降ろしの際、中の商品がたとえ無傷でも、その商品が入っている段ボールにわずかな擦れや汚れ、角潰れがあるだけで返品・買取させられることがあるのだ」。

その詳しい実例や個別の声については、リンク先記事で是非ともご確認ください。なかなかに驚く限りです。

Xで見かけた理不尽なツイート

この記事から2年が経過し、さすがに人手不足が各地で問題となるなかで、現在でもこんな理不尽な苦情を申し立てる者がいるとは思いたくないところですが、こうしたなかでX(旧ツイッター)発見したのが、配達に対して苦情を申し立てるツイートです。

いちおう、リンクを示しておきますが、ツイート主の方は著名人というわけではなく、おそらくは通常の一般人であると思われるため、ツイート自体の埋め込みは控えます(※といっても、この人物は過去にも別件で「炎上」しているようです。本稿公開後にツイート主がツイートを削除した場合は閲覧できなくなりますが、ご了承ください)。

このツイート主が投稿していた内容は、こんな具合です(引用に当たっては、誤植を修正したうえで要旨にとどめています。本当はもう砕けた口語表現が使われています)。

何をどうしたらこうなるの?この(段ボールの)角は意図的に潰れていないか。中身は無事だからいいけど配送業者は手抜きし過ぎ。段ボールなら傷んでも良いと思っているのか。

角が意図的に潰されているのだとしたら、たしかにそれは気分を害しても仕方がないかもしれません。

ただ、該当ツイートに添付されていた画像を確認しても、ほんの少しだけ角がへこんでいますが、段ボール自体はきれいな状態で届いており、しかも「中身は無事」だったというのですから、いったい何が問題なのかよくわかりません。この方も段ボールを後生大事に保存するつもりなのでしょうか?

しかも、この人物の別のツイートによれば、配送業者に対してすでに苦情を申し入れているのだそうですが、段ボールを潰さず配送せよとは、過剰サービスにもほどがあります。

ちなみにこのツイート自体はリプライ欄が閉じられており、ツイート主が「フォローしているか@ツイートしたアカウント」のみしか返事ができないものですが、そのかわり、引用リツイート(RT)は7日午後2時半時点で1,200件近くに達している状況です(「いいね」は100件前後、といったところでしょうか)。

もし段ボールが潰れるのが嫌ならそういうサービスを使うべき

もしもこのツイート主のように、配送途中で段ボールを潰すのが絶対に許せないと考えるならば、そのようなサービスを利用するのが筋ではないでしょうか。

というよりも、通常の配送コストで段ボールなどの梱包材を含めてきれいな状態で配送しろと要求すること自体、どう考えても異常です。日本全体における流通コストを無駄に上昇させているのは、まさにこのように理不尽なことを要求する一部のユーザーではないでしょうか。

そして、以前紹介した「マイセン男」と同様、段ボールの角がちょっと傷ついた、などの理由で業者に苦情を申し立てることは、やはり大きな問題でしょう。

もっとも、このように明らかに理不尽な内容をX(旧ツイッター)に投稿する人物が出て来ることは、逆に、「お客様は神様」という文化を死滅させるうえでは、じつは好都合なのかもしれません。

いちおう、当ウェブサイトから読者の皆さまに改めてお願いしておきますが、もしあなたが客の立場であったとしても、「カネを払う側が偉い」などと驕り高ぶることは控えていただきたいと思います。大の大人がふんぞり返るのは、たいへん見苦しいものです。

コンビニエンスストアやスーパーではレジの店員さんにあいさつする、飲食店では入退店時にあいさつする、他人と会話を交わすときには敬語を使う――。

たったこれだけのことです。

社会人なら当たり前のことであり、決して難しくないはずだと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (27)

        • でも紙と神が同音なのは偶然ではないと思っています
          ひとたび紙に墨書したら、誰も消すことが出来ないという意味で神の言葉に等しい重みがあったからではないか、、と考えておる次第。

      • 紙様は変形しても紙様なので、紙様にケチを付けることは、紙様を冒涜することになります。紙様の祟りが無ければいいのだが。

  • X界隈では引用リポストで流れてきてるので、周辺では有名になっている案件ですが、
    当人が返信制限をしているので、直接の批判は届かないのですね。これ
    直接のツリーを見ると、見事に当人擁護のコメントが並んでいるので、狭い界隈でエコーチェンバーが形成されている実例だと思います

    とても双方向の自由言論空間とは言えないので、こういう空間とソコに生息する人たちに外の光を当てる試みとして、イーロン・マスクの「コミュニティノート」実装と「ブロック」機能の制限は有効なのではないかと思っています。
    勿論、過剰なつきまといや嫌がらせの案件もあるでしょうから、そっちの対応とバランスを取りながらセットでということが望ましいとは思いますが

  • 直接関係はしませんが、昔話を思い出しました。
    旧国鉄の職員が、貨物列車から荷物を地面に放り投げて搬出していたのを見たことがあります。当時は、親から、郵便小包で壊れ物を送ることが出来ないと聞かされたことがあります。
    それが、宅急便ができて劇的に変化し、壊れ物も送ることが出来るようになったと記憶しています。
    中身が壊れずに荷物を送って、受け取れることの有難さを再認識しました。

    • 品物を箱に入れ、紙で包み、紐を十字にかけて緩まないように縛り、荷札をつけて郵便局へ持っていって「お願いする」。これが郵便で小包を送る方法。
      几帳面だった叔母に紐のかけ方を仕込まれたので、今でも得意な分野の作業なんですが(笑)

      ヤマト運輸がどれほどこの国を変えたか、若い人には機会あるごとに伝えるようにしています。

      • 我輩は猫派である様
        レスを頂き、ありがとうございます。
        昔は、郵便小包を送る必要が生じたとき、親が、壊れ物ではなくても、仕方なくやむを得ず、あれやこれやと、厳重梱包をしていた印象があります。
        本当に宅急便は、荷物をきちんと送りたい、受け取りたい人にとって救世主だったと思います。

  • まさか自分が神様とは思ってないでしょう。
    神の存在を信じるなんて心境からは、ほど遠そうな御仁だし、

    自己の尊厳を傷つけられた、くらいの感覚なんじゃないかな。
    ずいぶんちっぽけなプライドと言えば、そうかも知れないけど、
    まあ、誰しも虫のいどころが悪ければ、ムカッとするくらいはあるかも知れない。

    だけど、とくとくとして、写真付でそれをXに投稿して、
    おまけに、業者に通報したとまで吹聴するに至っては、
    最早これ、病気に近いんじゃ?

    一億二千万を超える人が住んでる日本ですから、
    こんな人が一定数いても、そう不思議はないかも。

  • 永らく「おもてなし」マインドのサービスを当たり前に受けてきた日本人の中には「マイセン男」や「ダンボール難癖クレーマー」のような勘違い(ふんぞりかえり)人間が出てくるのでしょうね。…井の中の蛙大海を知らず。
    こういう方々は日本ではサービスと言えないような扱いを受けたらクレームをつけるんでしょうかね(きっと借りてきた猫みたいに大人しいのではないでしょうか)

    本件とは関係ない小生の黒歴史
    40年程前、初めての海外旅行の帰国前の空港で、硬貨をたくさん持っていたので、丁度ピッタリの金額の品物を買って硬貨一掃だと出したところ、ガムを噛みながら接客していた売店のおねえさんが「たあーっくす!」と一言。付加価値税などなかった当時の日本。外税なんて打ち忘れていたので大慌てで手持ちの紙幣を出した結果、手持ちの硬貨は倍以上になったとさ。

  •  今までは、こういった話題が出ると「当社ではダンボールまで丁寧に扱います」として客を引っ張るというような社が多かったのではないでしょうか。
    「当店はライバル店より夜1時間遅くまで営業です。」
    「どこも休みな元日も、うちだけは店を開けます。」
    「うちだけ突き出しが無料です。」
    「おまけをつけます。」
    etc.
     最近のこれらを不毛だからもうやめよう、要求するのはさすがにおかしいだろう、というのは揺り戻し、疲れですかね。体力のあるところは売上アップの見込みがあればダンボール保護をサービスに謳うでしょうし、ユーザーがそんなもんと言うかもしれませんし、資本主義的ですね。

  • ソノマタ昔、BtoCの小売営業しとった頃は"頑固親父の店"で"DQN来店者"に「帰れ!」と言いたい! なんつー夢想に逃避しとったこともアッタナ~、と(トオイメ

  • 先日旅行者であっても非常識な振る舞いをする人間にたいしては宿泊を拒否できるように旅行法が改正されたとのニュースがあったな。なにを非常識とするのかは各々変わるんだろうが、要は人に迷惑をかけるなってことだよな。大声で喚くとか女性客につきまとうとか、いろいろあるわな。しかしコンビニのマイセン野郎は高齢だとか。オレのだいじな娘が丁度セブンイレブンでバイトを始めるころだったから分からないことは先輩方に聞けと注意したくらいだし、段ボールくんはあまりに配送業者に感謝が無さすぎる。そんなに段ボールが潰れるのがイヤなら自分で取りに行けばよろしい。場所に依っては費用もかかるし、時間もかかる。非常識な輩は客でも況してや神様でもない。

  • 昔、友人が自転車を買いに行くのに付き合ったことがあります。生憎、買いたい自転車のタイプのものは、タイヤカバーに少し傷があるものが1台しか無かったのでどうするのかな?と見ていたら、全く何の躊躇も無くそれを買ったので、傷付いてるけどいいの?と訊いたら、どうせ、1ヶ月もしない内にどこか傷が付くんだから、同じ事ことだ、と言いいました。
    いや、人生、生きていくの楽でいいな、と思ったものでした。それからは、商品の本質だけを考えて買い物をするようになったら、確かに、人生のつまらない些事に煩わされることが一つ減りましたね。
    このX投稿の御仁は、こうやって人生の揉め事(重荷)を日々溜め込んで行って、人生は大変だと嘆いて、その憂さ晴らしに、ネットでディスりコメを書いて、更に、重荷を溜め込むサイクルから抜け出せ無くなり、と、不満と怒りのエンドレスループを自分で作り出しているんだねぇ。ご苦労さんといいたい所だが、こんなのに付き合わされるのは、災難としかいいようがないですね。

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