例の「ブライダル補助金」について、推進している議員のブログの記載を調べてみたところ、どうやらこれは何らかの新たな立法措置に基づくものではなく、経産省の既存の組織内に担当者を設置したうえで、各年の予算措置に基づいて実施される事業である可能性が高まってきました。ただ、ブライダル産業の裾野が広いことはわかりますが、その産業への補助を実施するにしても、名目が「少子化対策」というのは、やはり変です。
目次
ブライダル補助金が少子化対策に?
『「ブライダル補助金」で人口減少問題は解決するのか?』では、自民党(安倍派)の森まさこ参議院議員のツイートなどをもとにした「ブライダル補助金」に関する話題を取り上げました。
自民党参議院議員の森まさこ氏はツイートで、「ブライダル補助金」なるものを創設した、などと述べています。ただ、この補助金制度自体、関連する省庁の情報を調べてみても、なんだかよくわかりません。しかし、少子化の大きな原因も結局のところ、子育てにかかる負担が見通せないことにある可能性が濃厚です。あくまでも一般論ですが、変な補助金の仕組よりも、子育て世帯に係る負担を減らすために、硬直的な仕組みを改める、扶養親族控除を復活する、消費税等の免税品目を増やす、といった支援の方が有益ではないでしょうか。ある人... 「ブライダル補助金」で人口減少問題は解決するのか? - 新宿会計士の政治経済評論 |
もっとも、同記事の中では「『ブライダル補助金』制度なるものの詳細はよくわからない」と述べ、過度な批判は控えようと努めたつもりです。これについては正直、情報発信者である森氏のツイート自体も不正確なものであり、正直、制度自体がよくわからなかったからです。
たとえば、森氏のツイートでは、経産省の「サービス産業課」なる組織名が出て来るのですが、現実に「サービス産業課」なるかはありません。正確な組織名称は「サービス政策課・サービス産業室」です。最も重要な部署名自体を間違えている時点で、情報の真否がよくわからないのが実情といえます。
森氏のブログで確認してみた
ただ、この「ブライダル補助金」制度について、引き続き、官庁などのウェブサイトを確認しても、なんだかよくわからないというのが実情なのですが、これに関しもう少し詳しく調べるために森氏の個人ブログを閲覧してみると、2つの記事を発見しました。
1つ目が、これです。
先週の活動報告 一部ご報告
―――2023年02月06日 09時56分付 アメブロより
該当する部分は、こんな具合です(改行が無駄に多いので、引用に当たっては適宜、修正しています)。
◇2月2日(木)
この日はまず、未来ウエディングJAPANの発足式にてご挨拶いたしました。私は、自民党人口減少対策議連の会長として、人口減少対策に10年以上向き合ってきました。
結婚するかどうかはひとりひとりの自由な選択を尊重しつつ、希望する人には『出会いから結婚妊娠出産育児へ切れ目ない支援を』のスローガンを初めて少子化大臣として掲げたのが10年前。
若者の結婚とウエディング業界の皆様を応援し続け、ようやく昨年初めて、ブライダル担当を経産省の中に設置させることに成功しました。
補正予算にも、コロナ対策、インバウンド対策として、ブライダル補助金を入れることができました。
地域の花屋さん、写真屋さん、衣裳屋さん、仕出し屋さんと、ブライダル業界は裾野が広く、地方創生、地域活性化にも繋がります。
補助金について、勉強会もして参ります。
続いて2つ目が、これです。
先週の活動の一部 ご報告
―――2023年08月14日(月) 09時32分付 アメブロより
ここから、該当する部分を抜粋しておきましょう(同様に無駄な改行は修正しています)。
◇8月10日(木)
この日は10時より、私が会長をつとめる自民党少子化対策議連の要望により経産省に新設されたサービス産業課内のブライダル担当からレクを受けました。
そして、議連の要望が叶い新設されたブライダル補助金の第一次、第二次公募の結果について報告を受け、夏の概算要求に向けた対応も説明を受けました。
これを受けて秋に議連を開いて議論して参りたいと思います。
コロナ禍で打撃を受けたことは間違いないが…
この2つの記事から判明する内容は、「ブライダル補助金」は自民党少子化対策議連の要望により、 「▼コロナ対策、▼インバウンド対策」を兼ねたもので、「裾野が広いブライダル業界」を支援することで、地域の関連産業活性化などにも寄与する、といった言い分が繰り広げられています。
ただし、「ブライダル補助金制度」と銘打っていますが、何らかの新法を通したわけではなく、おそらくは既存の制度の枠組みを使い、サービス政策課サービス産業室に「ブライダル担当」が設けられて、各年度の予算措置により補助金をばら撒くつもりなのでしょう。
このあたり、現実にブライダル業界がコロナ禍で大きな打撃をこうむったであろうことは、容易に想像がつく点ではあります。
そもそも結婚式自体に法的な位置付けはなく、少し古い調査ですが、アニヴェルセル株式会社が2016年に実施したアンケート調査では、結婚式と会食(披露宴)をともに実施した割合は55.5%である一方、結婚式も披露宴もしていないという割合は28.7%にも達しています。
結婚式場の運営会社がコロナ禍の以前に実施したアンケート調査でさえ、3割近くが式も披露宴も行っていないというのですから、結婚適齢期人口が減少していること、コロナで結婚式や披露宴を行わない人が増えた可能性があることを踏まえると、ブライダル業界が非常に厳しい状況にあることは間違いなさそうです。
夕方のスーパーで子育てトーテムポールを発見できますよ!
ただ、こうしたブライダル業界への補助金を、産業政策の観点から実施する分には理解できなくはないのですが、やはり森氏のいう「少子化とブライダル補助金」の両者を絡めるのは、因果関係的に見ても、かなりの無理があります。
ブライダル業界を補助すれば少子化の解決に寄与する、というものではないからです。というよりも、「ブライダル補助金が少子化解決に寄与する」という発想自体、かなりぶっ飛んでいて、端的に言えば変です。
想像するに、例の「エッフェル塔議員」なども含め、国会議員の皆さんは、保育園の現場を詳しく知っているようには思えません。というのも、『「ブライダル補助金」で人口減少問題は解決するのか?』でも詳しく議論したとおり、子育てをする「環境」自体が、現代の日本社会では整っていないのです。
これに少し補足をしておくと、たとえば多くの保育園では、園で出たおむつは保護者が持って帰る必要があります。おそらく仕事帰りに我が子を迎えに行く親御さんにとっては、仕事で疲れて保育園に立ち寄り、おむつをレジ袋(※どこかの大臣のせいで有料化されましたね)に詰めて持ち帰らねばならないのです。
保育園の帰りにむずかる子供を何とかなだめながら、使用済みおむつを含めた大量の荷物を抱えてスーパーに立ち寄り、家に帰ってから晩ご飯の支度をする――。
これについてもし想像がつかないなら、是非とも夕方、保育園の近くのスーパーにでも行っていただきたいと思います。運が良ければ、一人目の子供を肩車し、二人目の子供を抱っこ紐で抱っこしたうえで、両手に荷物を持った「子育てトーテムポール」状態の親御さんを見かけることができるかもしれません。
ちなみにこの「子育てトーテムポール」は、幼い子供が2人以上いる人ならば、経験があるかもしれません。条件次第では必然的に発生してしまうからです。
すなわち、どちらかの子供から抱っこをせがまれ、仕方なしに抱っこすればもう片方の子供が拗ねて座り込み、動かなくなるので、仕方なしに片方を抱っこ紐で抱っこし、もう片方を肩車せざるを得ないことによりめでたく完成するものです。
こうした「子育てトーテムポール」は、園で発生した大量の衣類、荷物、使用済みおむつ、買い物袋なども同時に持って帰らなければなりません。
保育園利用者にアンケート調査でも取っていただければわかると思いますが、多くの親御さんが望んでいるのは、「おむつは園で処理まで済ませてほしい」、「朝夕の忙しい時間帯に保育園の準備はできるだけ楽したい」、といったところではないでしょうか。
病児保育問題、従業員の休業補償は?
なにより、現在の日本の保育園は多くの場合、子供が突発的に37.5度以上の発熱をした場合には、容赦なく親御さんに連絡がいきますし、37.5度を超えている状況ではそもそも預けることができませんので、多くの場合は父親か母親のいずれかが仕事を休まなければなりません。
この点、子供にもよりますが、多くの場合は3~4歳以上になると、子育てはかなり楽になります。おむつが外れ、トイレも自分で行ってくれるようになり、また、頻繁に発熱することが飛躍的に下がります。
したがって、社会全体として見たら、「魔の3歳児」までを抱えている人たちはさほど多くないはずであり、子供が幼いうちの数年間くらいは、子供の発熱などを理由とした有給休暇を特別に付与してくれるだけでも、親としてはかなり有難いのではないでしょうか。
もしも「少子化対策」をするならば、貴重な財源は、ブライダル補助金よりも、子育て用品などに係る消費税の免除、子供の突発的な発熱などにより勤務できなくなることで生じる損害の補填などにこそ使う方が生産的ではないかと改めて思うのですが、いかがでしょうか。
View Comments (8)
きっと森議員のところにブライダル業界から「うちもコロナで大打撃なので補助金下さい。」って陳情が来たんでしょうね。
さらにブライダル単体だと力が弱いから観光業界とも組んでバックアップをお願いしたのでしょうか。
観光業界と言えば某二階議員など政界に太いパイプがありそうですしね。
コレジャナイ感が強すぎて、ある意味「異次元の少子化対策」ですけど。
なぜブライダル補助金が少子化対策と銘打っているかの考察。
日本の婚外出生率は2%である。つまり、日本において、子供は結婚した夫婦から生まれる。夫婦を増やすことで子供が生まれる基盤が整う。結婚に補助金を出すことで夫婦が増える。よってブライダル補助金は少子化対策である。
というロジックなのではないでしょうか?
ぬいさんに同じく。
自分の後援団体(予定?)に利益を引っ張って来てこそ政治家という昭和な価値観で主張してるだけでは?って感じます。
育児中の病児保育補填ですが、もろもろの特典って今の日本じゃワークシェアリングが機能してる大企業じゃないとそもそも機能しないんじゃないかと。
中小企業の場合、受注側の社員従業員のコロナや忌引き休暇などでの納期遅れは発注側が費用負担を求めてはダメとかが有効かと。
鉄道や新幹線みたいな計画通りの進捗を社会全体に拡大すると、結局「システムに押し潰される」人が増えるんじゃないですかね?
自宅近くで見た光景。
保育園児が5-6人乗れる乳母車はよく見かけるが、それを引いているのが白人男性、押しているのが白人女性。2人で乳母車の園児たちに英語で何か話しかけ、園児たちが「イエース!」「ノー!」などと答えている。英語の幼児教育の一環なのだろうか。
そういうことをする白人を採用するのはカネがかかるだろう。
おそらく本当に大した意味はなく、ブライダル・ウェディング業界にただ便宜をはかるだけだと体裁があまり良くないので、日本国の大きな課題である「少子化」を取って付けただけ……な気がします。本来の目的ではないのに取って付けたので「効果がないのではないか」となるのは、まぁ当然なのかなっと。
>こうしたブライダル業界への補助金を、産業政策の観点から実施する分には理解できなくはないのですが、
産業政策の観点からの実施だったら、特定業界に絞った補助金じゃなくて、間口を広くして、波及効果なんかが高い事業をしようとする業界や事業者に補助したら良いと思うのです♪
あと、ブライダル業界が構造的な苦境にあるんなら、そこを助ける補助金よりも業態転換を促す補助金が良いと思うのです♪
ブライダル業界も少子化の影響で将来的に市場が縮小していきます。
また、結婚式にかける費用も、給料が上がらないためか、少なくなっています。
つまりこの業界は、件数と単価共に低下しています。
このような業界は、補助金を貰うのではなくビジネスモデルを変える必要があると思うのですが。
それともこれが新しい資本主義と異次元の少子化対策のモデルケースなのでしょうか?
ひと頃何でもかんでもコロナ助成金でしたが、これからは何でもかんでも少子化対策費になるのでしょうね。韓国では女性部という省庁が莫大な予算を持って好き放題していると聞きますが、日本もそうなりそう。国の借金ガー、増税ガーという癖に、政治家は白アリのように国を食い潰す。
私は国民全員が結婚して、国民全員に子供がいるべきとは思いません。LGBTの方、生活力が無い人、家庭を持ちたく無い人、子供嫌いの人等、そういう人達にお金配って無理やり子供を作らせる必要はありません。富裕層、中間層、子供大好き層に3人以上子供を作らせるべきと思います。そうした層向けに世の中の整備と直接助成をすべきかと思います。一人産むごとに一千万円助成、これで解決するし、余計な役所や公務員は不要です。