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    Categories: 外交

訪韓日本人急増も「日韓関係改善」と言い切れない理由

韓国観光公社が先日、2023年5月の訪韓外国人統計を発表しました。これによると韓国を訪れた外国人は867,130人で、そのうち5分の1強に相当する183,691人が日本人でした。そういえば、日本を訪れる外国人のうち、トップを占めているのは韓国人です。「日韓の相互往来回復で日韓関係改善が見える」。こんな記事、そろそろどこかのメディアが書きそうですので、あらかじめ牽制しておきます。

訪韓外国人トップは日本人:約5分の1強

「日韓の相互往来回復で、日韓関係改善が見えて来た」――。

こんな珍説を、そろそろどこかのメディアが書きそうなので、あらかじめ牽制しておきたいと思います。

韓国観光公社が先日公表した『訪韓外来観光客』(※韓国語)によると、2023年5月に韓国を訪れた外国人は867,130人でした。トップは183,691人の日本人で、これに中国、米国、台湾などが続いています(図表1)。

図表1 訪韓外国人(2023年5月)
出身国 人数 構成比
合計 867,130 100.00%
1位:日本 183,691 21.18%
2位:中国 128,171 14.78%
3位:アメリカ 101,915 11.75%
4位:台湾 66,654 7.69%
5位:タイ 31,597 3.64%
6位:シンガポール 30,557 3.52%
7位:ベトナム 29,422 3.39%
8位:香港 28,617 3.30%
9位:フィリピン 28,094 3.24%
10位:インドネシア 22,531 2.60%

(【出所】韓国観光公社データをもとに著者作成)

ちなみに訪韓外国人のうち、日本人の割合は約5分の1でトップを占めていることがわかります。

また、韓国に入国した日本人の数は、3,701人だった2022年5月と比べると、じつに+4,863.28%(!)という水準です。これだけを見ていると、「日韓関係の急速に改善によって、日本人の訪韓者数も増えている」、などと思う方もいらっしゃるかもしれません。

ヒストリカルに見ると、まだ訪韓日本人は低調

しかし、前年同月と比べて入国者数が激増しているのは、当たり前の話です。コロナ禍の影響もあったためです。

これについては過去十数年分と比較してみるとよくわかります。

「前年」と比べて訪韓日本人が増えていることは間違いありませんが、たとえば比較する対象をコロナ禍直前に置くと、また違った姿が見えてきます。たとえば2019年5月の訪韓日本人は286,273人でしたので、これと比べると依然として35%程度の落ち込みとなっています。

これに関し、韓国に入国した日本人の推移を確認しておくと、図表2のとおりです。

図表2 韓国に入国した日本人

(【出所】韓国観光公社データをもとに著者作成)

訪日韓国人は急増している

その一方で、図表1と図表2に相当するものを、日本政府観光局(JNTO)のデータからも作成しておくと、図表3図表4のとおりです。

図表3 訪日外国人(2023年5月)
人数 割合
1位:韓国 515,700 27.16%
2位:台湾 303,300 15.97%
3位:米国 183,400 9.66%
4位:香港 154,400 8.13%
5位:中国 134,400 7.08%
6位:タイ 80,700 4.25%
7位:フィリピン 49,900 2.63%
8位:シンガポール 49,700 2.62%
9位:ベトナム 45,800 2.41%
10位:カナダ 42,300 2.23%
その他 339,300 17.87%
総数 1,898,900 100.00%

(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)

図表4 日本に入国した韓国人

(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)

相互往来は「韓国>日本」

以上の通り、日韓ともにお互い、「入国外国人のトップ」を占めていること自体は事実です。

しかし、図表をよく眺めてみると、やはり日韓往来に関しては、また違った姿が見えてくることも事実でしょう。これについてもう少しわかりやすくするために、日韓往来(訪韓日本人、訪日韓国人)を同一のグラフに示したものが、次の図表5です。

図表5 日韓相互往来

(【出所】JNTO、韓国観光公社データをもとに著者作成)

何のことはありません。日韓「相互」往来と言いながら、現実には、訪韓日本人の数を、訪日韓国人の数が大きく上回っているのです。巷で「日韓関係改善」といわれているものの正体が、なんとなく見えてきます。

もちろん、訪韓日本人の数が低調な理由は、渡航先としての韓国の人気がないためである、などと決めつけるべきではありません。そもそも現在の日本では、出国日本人の人数を、入国外国人の人数が、大きく上回っているからです(図表6)。

図表6 インバウンドvsアウトバウンド

(【出所】JNTO、法務省データをもとに著者作成)

したがって、「日本人が韓国に行かなくなった」のか、「日本人が(韓国を含めた)外国に行かなくなったのか」、という事情については、分けて考える必要はあります。やはり韓国は台湾と並び、日本にとって地理的に最も近い外国のひとつであるため、今後、訪韓日本人が増える可能性はあります。

ただ、最近の訪韓日本人の急増を「日韓関係改善」と安易に結びつける風潮、感心しません。データでちゃんと見るのであれば、日韓相互往来だけで日韓関係が「改善した」とまで結論付けるには、少し早すぎるといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • 2019年10月時点の相手国での消費額は、訪日韓国人は訪韓日本人の約3倍だったそうですが、ここ四半期での互いの消費額が知りたいですね。(量より質が決め手)
    我が国は韓国みたいに航空便乗り換えの数時間の暇潰し観光はカウントしていないですよね?

    • すみません。上記の消費額は総計であり、個人当たりではありません。失礼しました。

  • よくもまあ毎月毎月10万人異常の人が韓国に行くものですね。仕事で行かれる方も多いのでしょうけれども、やはり観光目的が多いのでしょうか?何がそうさせるのやら?何処が良いのやら?現役時代に業務上幾度となく訪問した経験を持つ私には、かの国の良さ?は全く理解できませんでしたが、かと言って他人の行動を否定するような愚かなことはいたしません。これからイカれる方は、くれぐれも身辺安全にご注意され楽しんできてください。と思います。

    • 韓国の空港での乗り換え客も入国者にカウントしてるのでは?そのまま滞在してるとは誰も言ってない気がしますが

    • 月に2-4万人はクルーズ船の下船客かもしれない。
      私、先月、西日本沖縄クルーズというのに行ってきた。日本人乗客3500人を乗せて西日本、沖縄の港をめぐるのだが外国船籍のため最低1か所は外国の港に寄港しなければならない規則になっている。地理的にほぼ済州島か釜山だ。
      このようなクルーズ企画が私の申し込んだ会社で月に2つか3つあり、他の旅行会社も外国船籍のクルーズ船を使ってやっている。滞在時間は4-6時間程度で買うのは韓国のりくらい。
      逆に韓国人のクルーズ旅行があるかといえば、ゼロ。
      あの国の高齢者は貧しいようだ。

    • 単なるトランジットではないにしても、日本には数十万の在日韓国・朝鮮の人がおられますし、帰化した人も含めれば半島系の方は百万人以上ではないでしょうか。親戚の結びつきが強いようですので、行ったり来たりされる方も少なくないと思います。

      • 大阪の繁華街大丸心斎橋店ど真ん前でわかものに道を聞かれたことがあります。丁寧な日本語を話し整った身なりの彼がほんの数時間前の関空便で到着したことは持ちものから明白でした。彼の探しものとは追加の土産に違いないと判断しました。日本の背広は近ごろ真っ黒ですがフレッシャーのはずの彼が選んでいるのはちょっとクラシックなブルー系。道を教えてあげたあとに結論したのは、彼は大阪市内に住んでいるおじさん?おばさん?に大学卒業のあいさつをしに何年かぶりに?飛行機に乗ってやってきたに違いないというものでした。

    • スレが伸びてるのに、誰も触れないので・・・

      一之介 様
      >よくもまあ毎月毎月10万人 "異常" の人が韓国に行くものですね。
      >これから "イカれる" 方は、くれぐれも身辺安全にご注意され楽しんできてください。

      ウィットに富んだコメントで、笑わせてもらいました。🤣

  • 半ば無理矢理、国策の様にソウル仁川空港や金浦空港に寄港して、トランジットで入国にカウントしているのでは?それでないと、日本の海外からの訪日客(190万人)と、韓国の訪韓客(86万人)とでは、およそ2対1ぐらいの割り合いにしかなりません。

    大した観光資源も無いし、リピーターも少ないはずの、明らかに「数字だけを積み上げた」としか思えません。また日本人もナニシニ韓国へたった1か月で18万3千人も行くのか?好きなヒト居るんですネ〜。まっったく理解出来ませんわ。

  • マスコミの韓国上げに踊らされて訪韓する人々は一定数はいるでしょうが、文在寅前大統領時代に何が起きたかをきちんと知っている大人はもう二度と韓国を信用していないことを示す数字と考えています。
    現韓国大統領が交代すれば、再びちゃぶ台返しが付き物であることは分かり切っています。K国に騙され続けているのは、自分の代だけ成功すればよいと考える確信犯のK首相(奇しくも同じK)とその取り巻きくらいくらいでしょう。後始末が大変やで。